5 自分を救う方法とは
あなたが誤嚥により呼吸ができなくなった時は、家族も御近所の方々も友人もあなたを救うことはできません。「3 誤嚥時の救急法」で述べた救急救命法を身に付けているはずがないからです。
だからといって、家族や周囲の人々に救急救命法を無理強いしても、大切なことと感じて学んだあなたとは異なります。人の命を助けようと自ら学んだ救急救命法以外は、しょせん猿の物まねで役に立つとは思えません。
運よく救急車を呼んでもらえても、救急車が到着するまでは5分以上かかります。救急車が到着するころには、あなたの命の炎が燃え尽きているでしょう。あなたが救急救命法を身に付けていても、あなた自身を救うことはできないことを認識しましょう。
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1) 自分の命を守るために
あなたを救うのはあなたしかいないのです。災害は忘れたころにやってきます。常に誤嚥が起こり、窒息という事態が差し迫っていると考えるべきです。歳を重ねるたびにそう思うことが大切です。
健康で逝くための「自分の身体と向き合う」で説明している内容を再掲します。
〇 口の健康チェック
口に水を含んで「30秒間」ぶくぶくできるかやってみましょう。唇から水が漏れたり水を飲みこんでしまったら、口の筋肉が弱っている証拠です。ぶくぶくした水をコップに戻してみたら、食べ物の残りが混じっていませんか。このような場合、口臭が強くなる、歯や歯肉の病気になる、誤嚥性肺炎になる危険性があります。口腔ケアをしましょう。
口を閉じて行う体操(それぞれ5回行います。)
① 舌で上唇を押す。
② 舌で下唇を押す。
③ 舌で左右かわるがわるに左右の頬を押す。
〇 唾液を出しましょう
唾液には、会話をスムーズにする、口の中をきれいにする、良い菌の働きを助ける、消化を助ける、食べ物を味わう、飲み込みやすくするなどの効果があります。
ハンバーグに代表されるような、やわらかい食物ばかりを食べるような噛まない食生活を続けると唾液腺は退化します。唾液腺をマッサージをすると唾液がでます。刺激を受けることで唾液腺が活性化し、唾液が出やすくなります。
耳下腺は、耳たぶのやや前方、上の奥歯あたりの頬に人差し指をあて、指全体でやさしく押します。梅干しやレモン汁のような酸っぱい食べ物を想像すると、スーット唾液が出てくるところです。5~10回繰り返してやさしく押します。
顎下腺は、顎の骨の内側のやわらかい部分です。指をあて、耳の下から顎の先までやさしく押します。5~10回繰り返します。
舌下線は、顎の先のとがった部分の内側、舌の付け根にあります。下顎から舌を押し上げるように、両手の親指でグート押します。5~10回繰り返します。
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2) むせるための力をつける
食べ物やだ液などを飲み込む際には、ほほ、舌、のどなどの口の筋肉を使うことは想像しやすいと思いますが、からだの筋肉も大きく関係しています。食べる動作を思い出してみてください。
まず目で食べ物を認識し、箸やスプーンを持ちます。次に手を伸ばして食器をつかみ、箸やスプーンで食べ物を取り、口まで運びます。この時、手だけではなく頭を支える首や肩の筋肉、腕や肩の筋肉がスムーズに協働して動くことで一連の動作が行えます。
さらに、食べる際には姿勢も大事な要素の一つになります。適切な姿勢を保つことが難しいと、誤嚥のリスクが高まります。また、万が一誤嚥してしまった場合は、しっかりとむせることができると気管に入ってしまった食べ物を吐き出すことができます。
この「むせる」という動作には、背筋や腹筋、そしてしっかりと足を地面につけてふんばる足の筋肉なども必要になります。 全身の筋肉が、それぞれの役割を果たすことでスムーズに食べることができますし、また万が一の場合でも安全の確保ができます。
どれか一つが欠けても食べることは困難になります。そのため嚥下体操には、口だけではなくからだの筋肉を動かす要素が含まれていることを知ってください。万が一、誤嚥や誤飲をしてしまった方への対応をする際には、医療従事者や救急スタッフなどへ正しく情報を伝えるようにしましょう。
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3) これまで実践していたこと
ある日のこと、ボーッとテレビを見ていたら三浦雄一郎氏が出演されていた。舌の先端を下へ向けて出し入れしている。毎日朝晩100回ずつ行っているというお話だった。残念ながら、どのような目的なのかは聞き漏らしてしまった。
放送が終わって、舌の先端を下へ向けて出すと首筋とそれに伴う筋肉が引っ張られるような感じがした。喉の奥の筋肉も引っ張られるような気がする。ひょっとしたら、鼻腔を塞ぐ軟口蓋や食道入口部、頭蓋谷や気道防御機構も引っ張られるのではないだろうか。
三浦雄一郎氏の元気な様子を拝見すると、誤嚥性肺炎とは無関係のような気がした。おそらく舌を出す体操で喉全体を鍛えられているからではないだろうか。素人は三浦雄一郎氏を見習って、この体操を毎日朝晩続けてみようと考えた。
舌の先端を下へ向けて出し入れする体操を朝と晩に100回ずつ行い、1年が過ぎてこの間に誤嚥は起きなかった。
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3) 実際に効果があったこと
災難は忘れたころにやってきた。デパートの食品売り場を妻と散策していたときに、大豆をつかったハンバーグの試食販売に遭遇した。何度も食べたことはあるが、爪楊枝に刺されたハンバーグを試食するとやはり美味しい。妻も試食して1パック買うことにした。
購入の意思表示をすると、試食販売の方が別の味も試してくださいと、爪楊枝に刺した別のハンバーグを差し出した。受け取ってなぜか急いで口へ入れると、ハンバーグの一部が気管へ入ったような気がして、しまったと思った時は遅かった。
連続して猛烈な咳が続き、咳と共にハンバーグの粒のようなものが3~4粒出てきたがまだ気管に異物が感じられて咳は止まらない。何度も咳をしたがハンバーグの欠けらがなかなか出てこない。
試食販売の方が心配して、吸い物を入れた発報スチロールのお椀を差し出した。食道のつまりではないので手を振って断り、頭が下になるように体を曲げて咳をすると、コロンとハンバーグの粒が喉から飛び出して舌の上に乗った。
気道の違和感が消えて咳が止まり、異物がすべて吐き出されたことが分かった。咳の音は非常に高く、吐き出される空気の勢いもかなり早く感じた。おそらく舌を出す体操で喉全体を鍛えられているからだろうと思えた。
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