はげちゃんの世界

人々の役に立とうと夢をいだき、夢を追いかけてきた日々

第19章 AEDによる救命法

小学校で外部講師を招き保護者と教員向け「救命講習会」が開催され、許可を受けて見学した。二次災害防止や電極パッドを貼る前の処置を省略し、パッドは糊が劣化して肌との間に空気が入っても無視、唖然とする講習を見て正しい方法を伝えなければと思った。

インターネットで消防庁の一般市民向け応急手当WEB講習を視聴し、非常に内容が充実しているので感動した。これに、日本赤十字社の救急救命講習と資格継続講習で学んだ知識を加え、AEDによる救急救命の基本と実技をまとめた。お役に立てば幸いである。

1 応急手当の予備知識

 1-1 安全の観察

傷病者を発見したときは周囲の状況を把握し、その場に立ち止まって自分自身の安全を確認します。さらに、左右から自動車や自転車、車椅子や通行人などがこないか、前後から自動車や自転車、車椅子や通行人などがこないか、上からの落下物や道路上に損傷がないかなど安全を確認します。

特に、二次災害の危険性があるときはその危険を排除してから傷病者の手当てを開始します。危険を排除することが困難な場合は、その危険を排除できる専門家に通報します。

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 1-2 手当と通報の観察

傷病者を観察して、直ちに手当や通報すべき状態であるかを判断します。通報すべき疾病は、「意識障害・気道閉塞・呼吸停止・心停止・大出血・ひどい熱傷・中毒」などで、これらの疾病は発見者が直ちに手当をしないと生命にかかわります。

正しい手当を行うために、観察に時間をかけ過ぎて119番通報や手当の遅れがあってはなりません。傷病者の生命の兆候、「意識・呼吸・脈拍・顔色や皮膚」の状態に異常がないか、手足を動かせるかを瞬時に観察します。

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 1-3 生命の兆候の観察

傷病者に意識があり呼吸がある場合でも、生命の危機が迫っている場合があります。傷病によっては、時間的余裕があっても救急者以外での移送は状態を悪化させる危険性が高い場合もあります。これらを判断するために生命の兆候を観察します。

  1-3-1 意識がない

あご、首、舌の力が抜け舌下の根元が落ち込み(舌根沈下)、食物や食物のかたまりがひっかかって喉の奥が塞がった場合は、そのまま放置していると呼吸ができなくなり窒息します。

  1-3-2 瞳孔や目の動き

瞳孔が大きく開いて(散大)いたり、点のようにしか開いていなかったり(縮小)、左右の瞳孔の開きが異なったり、左右どちらかの方向に眼球が偏っている場合は、生命の危機が迫っていると考えられます。(脳外傷・脳卒中・薬物の影響)

  1-3-3 呼吸の状態

傷病者が倒れている場合は、傷病者の口や鼻に救助者の耳や頬を近づけ、傷病者の胸の方をみながら呼吸の状態を観察します。この時の角度は45度が最適です。

傷病者の吐く息が救助者の頬に感じられるか、胸や腹のあたりが上下に動いているか、息が浅い・深い・早い・遅いなどを観察します。気道が塞がり遺物や唾液等が詰まるとゴロゴロやヒューヒューといった音が聞こえます。

心停止が起こった直後には「死戦期呼吸」と呼ばれる呼吸がみられる場合があります。死戦期呼吸とは、子どもが大泣きしたときのしゃくりあげるような呼吸が途切れ途切れに起きる呼吸のことです。死戦期呼吸は呼吸停止と判断します。

下顎呼吸は、呼吸にさして口を半ば開きかけた状態で、下顎のみを動かして吸気時に顎が下がるような呼吸です。下顎呼吸も呼吸停止と判断します。

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  1-3-4 脈拍の状態

脈拍は手首(橈骨動脈)、股の付け根(大腿動脈)、首(頸動脈)を、人差し指と中指の先のふくらみで軽く押さえて観察します。乳児の場合は、上腕内側の中央(上腕動脈)または股の付け根(大腿動脈)に触れて観察します。

手首や股の付け根のあたりの脈拍が触れにくい場合は、血圧が下がっていると考えられるので、この場合は頸動脈に触れてみます。脈拍がゆっくりしている場合や安静にしているのに早い場合は、危険な状態と判断します。

  1-3-5 顔色や皮膚の状態

顔色、手足の色、特に唇や爪の色が青黒くなった状態を「チアノーゼ」といい、呼吸ができない、心臓に異常がある、薬品などによる中毒で、血液中の酸素が不足しています。

顔色や皮膚の色が白く、皮膚にさわってみると冷たく湿った状態を「蒼白」といい、血液の循環が悪く大出血で血圧が下がっている、心臓発作などで心臓のポンプ機能が低下している場合です。顔色や皮膚の色が赤みを帯びた状態は、血圧が高い、一酸化中毒、熱中症が考えられます。

  1-3-6 手足の状態

傷病者に救助者の指を握らせる、傷病者が自分で手足を動かせるかどうかを観察します。手足を動かせないときは次のようなことも考えられます。

片方の手又は足を動かせないときは末梢神経や骨・腱・筋肉を損傷している。片側の手と足が動かせないときは脳を損傷している。両手・両足を動かせないときは頚椎を損傷している。両足を動かせないときは胸椎や腰椎を損傷していることも考えられます。

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 1-4 反応の確認

安全確認ができたら傷病者の全身状態を観察しながら近づき、傷病者の反応(意識)を確認します。傷病者の片側に膝をついて腰を下ろし、体をかがめるようにして耳元に口を近づけます。

救助者は傷病者の肩を軽く叩きながら、「大丈夫ですか」「分かりますか」と徐々に大きな声をかけて反応があるかないかを確かめます。反応があれば傷病者の訴えを聞き、必要な応急手当をします。

呼びかけや刺激に対して目を開けるか、何らかの返答又は目的のあるしぐさがなければ「反応なし」と判断します。突然の心停止が起こった直後には、ひきつるような動き(けいれん)が起こることがあります。このような動きは「反応なし」と判断します。

 1-5 協力者を求める

救助者一人で傷病者を助けることは難しいので、協力者を求めて「119番通報」と「AED(自動体外式除細動器)の手配」を依頼して手当を開始します。AEDはどこにシールありますかと質問されたときは、「官公庁や地下鉄駅、大病院やドラッグストア、デパートやコンビニです」と答えます。

普段、道路を歩いているときは「AED設置施設」というオレンジ色のシールが貼られている施設を記憶しておくことも大事です。なぜなら、あなたやあなたのご家族がAEDを必要とするかもしれないからです。

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 1-6 傷病者の安全確保

傷病者が倒れているところが車道である場合や、斜面や凹凸がある場合は、傷病者と手当をする救助者の安全確保するために傷病者を移動します。集まった協力者が複数いる場合は「傷病者を移動するので手伝ってください」と手助けを要請します。

救助者は傷病者の上半身を起こして背後から脇の下を通して腕をいれ、自分の手首を握ります。協力者が一人の場合は両足を持ち上げてもらいます。協力者が二人の場合は、一人は足を持ち上げ、もう一人は腰の下に手を当てて持ち上げてもらいます。

周囲に協力者が見当たらない場合は、救助者は傷病者の上半身を起こして背後から脇の下を通して腕をいれ、自分の手首を握って後ずさりしながら傷病者の体を引きずるようにして移動します。救助者は移動するときに腰を低くすると、比較的楽に移動できます。

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 1-7 気道の異物除去

気道に異物が詰まると、突然もがき苦しみ声が出せなくなり、喉から異常音が聞こえ、激しい呼吸運動がみられても空気の出入りが少ないか止まっている、顔・首・手などにチアノーゼが出てくる、意識が次第に鈍るという症状が現れます。

気道に異物を詰まらせると、傷病者は首に両手を当てて突然もがき苦しみ声が出せなくなります。これに気づいたらすぐに強い咳をさせ、大声で協力者を求めて119番通報を依頼します。強い咳が出ない場合は「背部叩打法」や「腹部突き上げ法」を試みます。

背部叩打法は、傷病者の頭を下げさせてから傷病者の体を一方の手で支え、他方の手の手掌基部で傷病者の左右の肩貝殻骨の中間あたりを力強く5回連続して叩きます。傷病者が倒れて横になっていたら、傷病者の体に大腿部を添えて同じ方法で叩きます。

背部叩打法で呼吸が回復しなければ、腹部突き上げ法を5回連続して試します。腹部突き上げ法は、傷病者の背後から抱くような形で腹部に腕を回し、一方の手で握りこぶしを作り親指側を傷病者のみぞおちより下に当てます。もう一方の手で腹部に当てた握りこぶしを上から握り、上腹部を救助者の手前上方へ向かって瞬間的に突き上げます

腹部突き上げ法は、胸骨(あばら骨)の下から横隔膜を肺の方向へぶつけることにより、肺の中に溜まった空気を瞬間的に押し出す方法です。胸骨に触れると骨折する危険性があるので注意が必要です。効果がなければ背部叩打法、腹部突き上げ法の順に繰り返します。

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傷病者が倒れて横になっていたら、上半身を起こしてから傷病者の背後から抱くような形で腹部突き上げ法を行います。それでも呼吸が回復しなければ、背部叩打法と腹部突き上げ法を繰り返して行います。腹部突き上げ法

但し、妊婦や高度な肥満者、乳児には腹部突き上げ法は行いません。腹部突き上げ法は合併症として内臓を痛める可能性があるため、到着した救急隊にその旨を伝えます。気道の異物が除去できて呼吸が回復した場合でも、速やかに医師の診療を受けさせます。

小児の場合は、素早く抱きかかえるか大腿部で支え、頭を低くして手掌基部で背中を叩きます。抱きかかえられない場合は、大人と同じ方法で背部叩打法を行います。体が大人並に大きいな子どもには、大人と同様の腹部突き上げ法を行います。

乳児の場合は、手で乳児の頭部及び顎を固定し、前腕にまたがらせて頭の方を下げ、手掌基部で背中の真ん中を叩きます。乳児には腹部突き上げ法は行いません。

背部叩打法や腹部突き上げ法で遺物が出なかった場合でも、人口呼吸の胸骨圧迫で異物が口腔内に出てくる場合があります。異物が見えたら取り除きます。

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2 応急手当の実際

 2-1 傷病者を発見

傷病者を発見したときは、その場に立ち止まって自分自身の安全を確認します。左右から自動車や自転車、車椅子などがこないか、前後から自動車や自転車、車椅子人などがこないか、上からの落下物や足元の道路上に損傷がないかなどに注意します。

安全確認ができたら、傷病者の全身状態や生命の兆候を観察しながら近づき、傷病者の片側に膝をついて腰を下ろし、体をかがめるようにして耳元に口を近づけます

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 2-2 反応の確認

救助者は傷病者の肩を軽く叩きながら、「大丈夫ですか」「分かりますか」と徐々に大きな声をかけて反応があるかないかを確かめます。反応があれば傷病者の訴えを聞き、必要な応急手当をします。

呼びかけや刺激に対して目を開けるか、何らかの返答又は目的のあるしぐさがなければ「反応なし」と判断します。突然の心停止が起こった直後には、ひきつるような動き(けいれん)が起こることがあります。死線期呼吸や下顎呼吸も「反応なし」と判断します。

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 2-3 協力者を求める

反応なしと判断したら、直ちに大きな声で「誰か来てください、人が倒れています」と協力者を求めます。複数の協力者が現れた場合は、一人に「あなたは119番通報をお願いします」、もう一人に「あなたはAEDを探して持ってきてください」と依頼します

協力者が1人だった場合は、「119番通報をしてから、AEDを探して持ってきてください」と依頼します。協力者がいない場合は、救助者が119番通報をして指令員の指示を仰ぎます。近くにAEDのある場所を知っていれば救助者が取りに行きます。

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 2-4 傷病者の安全確保

傷病者が倒れているところが手当をするのに適さなければ、集まった協力者に「傷病者を移動するので手伝ってください」と手助けを要請します

周囲に協力者が見当たらない場合は、救助者は傷病者の上半身を起こして背後から脇の下を通して腕をいれ、自分の手首を握って後ずさりしながら傷病者の体を引きずるようにして移動します。救助者は移動するときに腰を低くすると、比較的楽に移動できます。

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 2-5 呼吸の確認

傷病者が心停止を起こしているかを判断するために呼吸を確認します。救助者は45度の角度で傷病者の胸部と腹部の動きに注目し、傷病者の胸や腹部の上がり下がりを見て呼吸の有無を判断します

普段通りの呼吸がない場合、またはその判断に自信がない場合は呼吸がないと判断します。この呼吸の確認には10秒以上かけないようにします。

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 2-6 気道の異物除去

首に両手を当てて突然もがき苦しむ人に気づいたら「喉が詰まったのですか」と質問します。うなずいたら、頭を下げさせてすぐに強い咳をさせます。強い咳が出ない場合は「背部叩打法」を試みます胸部露出

背部叩打をしながら大きな声で「誰か来てください、呼吸が止まっています」と協力者を求めます。最初に来た協力者に「あなたは119番通報をしてください」と依頼します。

「背部叩打法」で呼吸が回復しなければ「腹部突き上げ法」を行います。それでも呼吸が回復しなければ、背部叩打法と腹部突き上げ法を繰り返して行います。救急隊に背部叩打法と腹部突き上げ法を行ったことを報告し、速やかに医師の診療を受けさせます。

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3 心肺蘇生の予備知識

不整脈とは脈がゆっくり打つ、速く打つ、または不規則に打つ状態をさしますが、これらの不整脈が出るといろいろな症状が起こります。心肺蘇生法は、胸骨圧迫と人工呼吸がセットになっています。心肺蘇生法はAEDが到着しても続け、救助隊が到着して引き継ぐまでの間は休まずに続けます。

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 3-1 胸骨圧迫の方法

傷病者を可能な限り固い床面に仰向けに寝かせ、救助者は傷病者の片側胸のあたりに膝をつきます。圧迫する部位は、胸骨と両乳頭を結んだ線の交点で目安は胸の真ん中です。救助者は圧迫部位が自分の体の中心線上にあるように位置し、両肩が傷病者の胸骨の真上にくるようにします。胸骨圧迫位置

傷病者の胸の真ん中に、どちらか一方の手の付け根を置きます。もう一方の手を重ねて両手の指を組み合わせます。両手の指を組むことでより力が集中します。

肘はまっすぐに伸ばして手の付け根部分に体重をかけ、傷病者の胸が少なくとも5センチ沈むほど強く圧迫します。圧迫を緩める時は、手を胸から放さずに胸がしっかり戻るま胸骨圧迫で緩めてから再び圧迫を繰り返します。

1分間に100回~120回の早いリズムで連続して絶え間なく圧迫します。小児の場合は、両手又は片手で胸の厚さの約三分の一が沈むほど強く圧迫します。乳児の場合は、両乳頭を結ぶ線の少し足側を目安とする胸骨の下半分に指二本を置き圧迫します。

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 3-2 胸骨圧迫の交代

胸骨圧迫は、AEDや救急車が到着するまで休まずに続けます。胸骨圧迫は大変な作業でかなり疲れるので、見学している人に協力を求めます

救助者の横に救助者と同様の姿勢で膝をついてもらい、左右の手を組み合わせて救助者の速度に合わせて腕を動かします。救助者の「交代してください」の指示で入れ替わって胸骨圧迫を続けます。1~2分経過したら「交代してください」と交代を要請します。

救助者や協力者は姿勢が崩れない程度に傷病者の顔を見ながら胸骨圧迫を行い、傷病者が嫌がって体を動かす、うめき声を出す、見るからに普段通りの呼吸が現れるなど、回復を示す変化がないか観察します胸骨圧迫位置

胸骨圧迫はADEが届いても、救急車が来るまで続けなければなりません。胸骨圧迫は心臓に圧力を加えて、血液を強制的に脳や身体中へ循環させているので、中断しないことが重要です。

人工呼吸用の感染防止具である一方向弁付感染防止用シートや一方向弁付感染防止用マスクなどを持っていない場合は、AEDや救急車が到着するまで胸骨圧迫を続けます。

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 3-3 人工呼吸の方法

人工呼吸が必要な傷病者は気道が塞がっている可能性があります。気道を確保することで、喉の奥を広げて肺へ空気を通りやすくします。また、傷病者の口への直接接触を避けることと、傷病者からの呼気などを逆流させないないことが重要となります。

人工呼吸をするには事前の準備が必要です。人工呼吸用感染防止具である、一方向弁付き感染防止用シートや一方向弁付き感染防止用マスクなどを用意します。防災協会や赤十字の救急救命講習を受けるともらえますが、購入しても一個500円程度です。

傷病者の顔面や口から出血している場合や、口体口で人工呼吸を行うことがためらわれる場合は、人工呼吸を省略して胸部圧迫のみにします。また、人工呼吸用の感染防止具を持っていないときも、人工呼吸をせずに胸骨圧迫のみにします

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  3-3-1 気道の確保

救助者は、傷病者の顔側に位置して救助者の手を傷病者の額に当て、他方の手の人差し指と中指を傷病者の顎の先の骨の部分に当てます。下あごを引き上げるようにして、額に置いた手で頭部を後方へ傾け(のけぞらせ)気道確保ます

傷病者の顎の先の骨の部分を引き上げるときは、あごの先の柔らかい部分である口腔底を圧迫しないように注意します。また、乳児や小児の首は非常に柔らかいので、無理に頭部を後屈するとかえって気道を閉塞させたり痛めます。

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  3-3-2 感染防止対策

人工呼吸用の感染防止具は、マウスピースに内蔵された逆流防止構造(一方向弁)により、傷病者の呼気の逆流を防止することで安心して人工呼吸が行えます。シート上に救助者の口のあて方が表示され、とっさの時でも間違わないようになっています。

一方向弁付き感染防止用シートを印刷されている指示にしたがい傷病者の口にかぶせます。一方向弁付き感染防止用マスクは、プラスチック製の空気の出口が突出している部分を傷病者の口に押し入れます気道確保

気道を確保した状態で、額に当てた方の手の親指と人差し指で鼻をつまんで空気の出入りを阻止します。シートやマスクに印刷されている口の形に合わせて、救助者は口を大きく開いて傷病者の口全体をふさぐように密着させます。

空気が漏れないようにして、息を約1秒かけて吹き込みながら傷病者の胸が微かに持ち上がるのを確認します。息を吹き込み終わったら、傷病者の息を自然排出させるためいったん口と鼻をつまんだ指を離します。

再度、同じ要領でもう一度空気を吹き込みます。胸が上がらなくても吹き込みは2回までとし、すぐに胸骨圧迫を開始します。空気の吹き込み中は胸骨圧迫を中断しますが、その中断時間は10秒以上にならないように心がけます

空気の吹き込み量が多すぎたり、勢いよく吹き込みすぎると空気が胃に入り胃膨満をきたしやすくなります。胃膨満が過度になると、横隔膜が押し上げられて肺の容量を減少させ、胃の内容物を口腔内へ逆流させて気道閉塞や肺炎を引き起こす危険があります。

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  3-3-3 救命法の組み合わせ

救助者はまず胸骨圧迫を30回行い、次に気道を確保して人工呼吸を2回行います。心肺蘇生は胸骨圧迫を30回と人工呼吸2回の組み合わせで1サイクルとし、このサイクルを救急車が到着するまで繰り返します。

胸骨圧迫を繰り返すには体力が必要です。疲れてくると胸骨圧迫が弱く(浅く)なるので、協力者がいれば1~2分を目安に交代します。交代で引き継いだ協力者は胸骨圧迫から開始し、できるだけ胸骨圧迫の中断時間を最小にします。

心肺蘇生の途中で人工呼吸が不十分なときがあっても、胸骨圧迫が十分に行われていれば、心肺蘇生の効果への影響は少ないとされています。

窒息や溺水など呼吸器系の障害によって起きる心停止を呼吸器系心停止といい、この場合は人工呼吸がより重要となります。小児の心停止では、呼吸原性心停止の割合が多くなります。

傷病者が呼吸原性心停止かどうかを判断することは簡単ではありません。判断がつかないときは胸骨圧迫と人工呼吸のサイクルを続けます。呼吸原性心停止かどうかの判断に無駄な時間を費やしてはいけません。

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4 AEDの予備知識

心臓は筋肉だけでできた臓器で血液を全身に送り出すポンプの役割をしますが、心臓の洞結節という発電所から弱い電気が流れ、その刺激で心臓の筋肉が動く仕組みになっています。不整脈が起こると、心臓が小刻みに震えるように動くことがあります。

心室が1分間に300回以上不規則に震えるように痙攣(けいれん)する状態を心室細動といいます。これが起こるとたちまち死につながります。直ちに電気ショックで正常のリズムに戻してやらないと、そのまま死んでしまう最も危険な不整脈です。

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 4-1 AEDとは

AEDは自動体外式除細動器といい、心臓がけいれんして血液を流すポンプ機能を失った状態(心室細動)になった心臓に対して、電気ショックを与えて正常なリズムに戻すための医療機器です。AED

コンピュータによって自動的に心電図を解析して心室細動の有無を判断し、電気ショックの要否を音声で指示する機器ですから、AEDにさわったことのない一般市民でも使える機器です。

AEDを操作できる市民が増えることにより、心停止から電気ショックまでの時間が短縮され、心停止した傷病者の救命率の向上が期待されます。まず、救助者の指示に従います。

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 4-2 AEDの設置施設

AEDは、病院や診療所、救急車はもちろん、空港、駅、スポーツクラブ、学校、公共施設、企業等人が多く集まるところを中心に設置されています

最近は「官公庁や地下鉄駅、ドラッグストアやスーパーマーケット、コンビニ」などでも見かけます。普段「AED設置施設」というオレンジ色のシールが貼られている施設に注目しておくことも大切です

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 4-3 AEDの操作方法

AEDを使用するときは傷病者の頭部より少し離れた位置に起きます。AEDのカバーを開いて機器の全体が見えるようにします。救助者がいる場合は救助者の指示に従ってください。あなたしかいない場合はAEDの音声指示に従います。

さまざまな機種があってもどの機種も同じ手順で使えるようになっています。まず、AEDの電源スイッチを入れます。AEDカバーを開けると自動的に電源が入る機種もあります。

傷病者の衣服を取り除いて胸部を露出させます。ボタンやホックが外せない場合は、AEDのケースに入っているハサミで衣服を切り開きます。衣服を切ることに戸惑う暇はありません、命を賭けた戦いなのです。

傷病者の胸部が露出したら、金属製の首飾りや湿布、濃い胸毛やかペースメーカーの埋め込み有無を確認します。金属製の首飾りや湿布などを剥がし取ります。電極パッドを貼る位置の濃い胸毛はケースに入っているカミソリで剃り落とします。電極パッドを貼る位置の皮膚に汗をかいていれば下着やハンカチなどで拭き取ります

金属製の首飾りに、高い電圧の電流が流れるとやけどをします。湿布は薬剤に水分が含まれ、汗は水分ですから電流が流れやすいので、心臓に電気ショックの効果が弱まり効果が減少します。濃い胸毛があると電極パッドが密着しないため効果が薄れます。

コネクタの付いている電極パッドを袋から取り出し、ペースメーカーを避けて電極パッドのイラストのように傷病者の部位へ電極パッドを手でこすりながらしっかり貼り付けます。パッドと肌の間に空気が入ったら貼り直すか、こすって空気を抜いてください。

傷病者が女性の場合は、協力者に女性をお願いすることも重要です。また、人が大勢集まっていたら傷病者に後ろ向きに立って壁を作ってもらいます。ブラジャーを外さずに電極パッドを貼り終えたら、タオルや上着をかけて胸が露出しないように配慮しましょう。

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AEDAED本体のランプの点滅しているソケットにコネクタを差し込むと、自動的に心電図の解析が始まります。「体に触れないでください」などの音声メッセージが流れたら、心肺蘇生を中断して傷病者から離れ、協力者も傷病者に触れないように離れます。

機種によっては、解析ボタンが別になっているものもあります。電極パッドは成人と小児の共用になっています。小児用キーをAED本体に差し込むタイプや、スイッチで小児用に切り替わるタイプもあります。小児パッドは小学校入学前児童用です。

心電図の解析が終了すると「ショックが必要です、充電中です」などの音声メッセージが流れ、自動的に充電が始まります。充電完了で「ショックを実行します、オレンジボタンを押してください」という音声メッセージで、救助者と協力者は周囲の人々に「離れてください」と注意を喚起します

傷病者に触れている者がいないことを確認してからショックボタン(オレンジボタン)AEDを押します。傷病者に強い電流が流れ、体が一瞬ビックと突っ張ります。電気ショックが終わったら、AEDの音声メッセージに従い直ちに胸骨圧迫と人工呼吸を再開します

AEDは二分おきに心電図を測定して解析を続け、二度三度とショックが必要になることもあります。「ショックは不要です」という音声メッセージが流れた場合でも、胸骨圧迫と人工呼吸を救急車が来るまで続けます。

傷病者が嫌がって動き出す、うめき声を出す、見るからに普段通りの呼吸が現れた場合を除き心肺蘇生を続けます。再び心停止もあり得るので、AEDの電源は切らず電極パッドも剥がさずにおきます。

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5 AED救命の実際

救助者の下へ協力者が「AEDを持ってきました」と到着しました。AEDを傷病者の頭の側に置いて、カバーを開き機器の全体が見えるようにしてもらいます。救助者は「AEDは誰でも使えるので安心してください」と声をかけます。

協力者が一人もいない場合もあります。協力者がいない場合は、救助者が119番通報をして指令員の指示を仰ぎます。近くにAEDのある場所を知っていれば救助者が取りに行きます。

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 5-1 AEDでの救命

救助者は、「では、AEDを出して電源を入れてください」と指示します。救助者と協力者は心肺蘇生を続けながら協力者の準備に注目します。カバーを開けてAEDが現れ電元が入ったら、「傷病者の胸部を露出させてください」と指示します。

ボタンやホックが外せないようなら、「ケースに入っているハサミで衣服を切り開きな胸部露出さい」と指示します。傷病者の衣服を取り除いて胸部が露出したら、「金属製の首飾りや湿布を剥がしてください」と指示します。指示された協力者は自分が決めたのではないと気が楽になります。

金属製の首飾りや湿布などを剥がし取り、胸毛が濃ければ「ケースに入っているカミソリで、電極パッドのイラストの位置の胸毛を剃って下さい」と指示します。皮膚に汗をかいていれば「電極パッドを貼る位置の汗を拭き取ってください」と指示します。

電極パッドコネクタの付いている電極パッドを取り出して、傷病者のペースメーカーを避けて電極パッドのイラストの位置に電極パッドを手でこすりながらしっかり貼り付けます。「パッドと肌の間に空気が入っていませんか、空気を抜いてください」と指示します。

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傷病者が女性の場合は女性に協力をお願いします。人が大勢集まっていた場合は、傷病者に「後ろ向きに立って壁を作ってください」と指示します。ブラジャーを外さずに電極パッドを貼り終えたら、「タオルや上着を胸にかけてください」と指示します

AED本体のランプの点滅しているソケットにコネクタを差し込んでもらうと、心電図の解析が始まります。「体に触れないでください」などの音声メッセージが流れたら、救助者は心肺蘇生を中断して傷病者から離れ、協力者も傷病者に触れないように離れます。

心電図の解析が終了して「ショックが必要です」などの音声メッセージが流れ、充電完了で「ショックを実行します、オレンジボタンを押してください」という音声メッセージが流れたら、救助者と協力者は周囲の人々に「離れてください」と注意を喚起します。

傷病者に触れている者がいないことを確認してからショックボタン(オレンジボタン)を押します。傷病者に強い電流が流れ、体が一瞬ビックと突っ張ります。電気ショックが終わったら、AEDの音声メッセージに従い直ちに胸骨圧迫と人工呼吸を再開します。

胸骨圧迫は、AEDや救急車が到着するまで休まずに続けます。胸骨圧迫は大変な作業でかなり疲れるので、見学している人に協力を求めます。

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6 回復体位と観察

傷病者を確認して普段どおりの呼吸があったとき、または心肺蘇生により呼吸が回復したときは、窒息しないように気道を確保した体位(回復体位という)にして観察を続けます。

回復体位で、舌根沈下により気道が閉塞することや、嘔吐物が誤って肺に入るのを防ぐことができます。他の協力者に応援を求めるためにやむを得ず現場を離れるときも、気道を確保するために回復体位を保つことが重要です。

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 6-1 回復体位をとる

傷病者の片側に体をつけて膝をおろし、救助者側にある傷病者の腕を横に伸ばしておきます。救助者の片方の手を傷病者の肩に、他方の手を腰に当てて、傷病者が倒れないように静かに横向きに引き起こします回復体位

救助者の大腿部で傷病者の体を支えながら、傷病者の下顎を前に出して気道を確保します。傷病者の上側の腕を曲げて手の甲を顔の下へ入れます。その後、傷病者の上側の膝を引き寄せ、傷病者が後ろに倒れないように姿勢を整えます

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 6-2 生命の兆候の観察

傷病者が嫌がって動き出す、うめき声を出す、見るからに普段通りの呼吸が現れた場合でも、再び心停止もあり得るので、AEDの電源は切らず電極パッドも剥がさずにおきます。

救助隊が来るまで、救助者は生命の兆候の観察である「呼吸の観察、脈拍の観察、顔色と皮膚の観察、手足の状態の観察」を続けます。

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 6-3 救急隊への引き継ぎ

心肺蘇生は傷病者が普段通りに呼吸が回復するか、あるいは救急隊など救助者へ引き継ぐまで続けます。普段通りに呼吸が回復した後も、再び呼吸がなくなれば心肺蘇生を再開します

心肺蘇生を停止できるのは、傷病者が嫌がって動き出し、うめき声を出す、見るからに普通通りの呼吸が現れた場合です。また、消防車の救急隊に引き継ぐことができた場合と、医師や専門の救護者に引き継ぐことができたときです。

救助者に疲労や危険が迫り、心肺蘇生の継続が困難になった場合はやむを得ないと中止を選択します。あなたの命を大切にすることも重要なことです。

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謝辞:消防庁の一般市民向け応急手当WEB講習を中心に、日本赤十字社の救急法の基礎知識・知っていれば安心です・救急法基礎講習教本・赤十社救急法講習教本、赤十社救急法救急員等資格継続研修テキストを参考にしました。写真は消防庁の一般市民向け応急手当WEB講習より転載しました。ありがとうございます。