5 出会えた名医の考え
5-1 黄色靭帯がこっている
妻が肩こりで悩んでいた時に、背後から両肩の僧帽筋をもみほぐしていました。僧帽筋は頭と首の結合部分から腰の少し上にまで広範囲にわたる大きな筋肉です。僧帽筋の主な働きは、肩甲骨を安定させることと、ものを持ち上げるときに使う三角筋の動作を助けることです。
僧帽筋は上部線維・中部線維・下部線維に分類されます。肩甲骨を内側に引き寄せ、上部線維は肩甲骨を引き上げ、中部繊維は肩甲骨を引き寄せ、下部線維は肩甲骨を下ろす役割があります。肩や首のこりは上部線維が緊張してしまうことが主な原因と言われています。
頭が前に垂れた猫背の姿勢、肩関節を使うスポーツ動作、重いバックを肩にかける日常的な動作、精神的に緊張状態などにより、僧帽筋は硬くこわばる傾向にあるそうです。
僧帽筋が弱るのは、加齢による老化・猫背・運動不足・リン酸のとり過ぎなどが挙げられます。加工食品やファストフード、清涼飲料、インスタント食品にはリン酸が多く含まれ、筋肉にリン酸が過剰に溜まるとカルシウム不足が生じ、筋肉のポンプのはたらきが低下します。
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筋肉は酸素によって血液の中のブドウ糖を燃焼して活動しています。酸素が足りないと疲労物質の「乳酸」が筋肉内に蓄積して硬くなり、神経線維がしめつけられて肩がこります。
悪い姿勢を続けると筋肉が緊張し、毛細血管の中の血液の流れが悪くなって酸素不足になります。筋肉がリラックスすると血流がよくなって新鮮な酸素が送り込まれ、溜まっていた乳酸も流され筋肉の疲労も取れて肩こりが治ります。
これらのことから、脊柱管狭窄症では黄色靭帯が僧帽筋上部線維のように硬くこわばって、「こり」のために膨れ上がって太くなっていると推測しました。こっている黄色靭帯をもみほぐす方法はないのでしょうか。
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5-2 重要な運動療法
インターネットで脊柱管狭窄症の治療方法を検索していると、埼玉県さいたま市の清水整形外科クリニックの清水伸一院長の「脊柱管狭窄症ひろば」を発見しました。
脊柱管狭窄症が克服できない患者さんには、最も重要な治療が抜け落ちていることが多いのです。その治療とは「運動療法」です。運動療法は、自分の意志で手軽に取り組めるのはもちろん、体のメンテナンス(手入れ)ができ、心身の機能を維持する大変有力な治療法です。
専門医がおすすめする「脊柱管狭窄症の運動療法」の中から、私の足のしびれ解消に効果があった「体幹のバランス強化体操」「腸腰筋ほぐし体操」「仙腸関節体操」をご紹介します。体操と表現していますが簡単な動作です。
体操を行うための基本姿勢は、両足を広げてまっすぐに立ち顔は正面を向きます。爪先をやや外側に広げて立つと安定感が増します。全身の力を抜いてリラックスします。
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5-2-1 体幹のバランス強化体操
体幹を支える深層筋(インナーマッスル)を鍛えれば、背骨という柱をしっかりと支えて土台を安定させる効果が得られ、病状の悪化防止や改善につながるそうす。
清水伸一院長は「8の字スクリューで深層筋(インナーマッスル)を鍛え体幹バランス強化」と説明されています。背骨本来のS字カーブにできるだけ近づけ、狭窄部位にかかる負担を腰椎全体にうまく分散させることが必要とおっしゃいます。
体幹のバランス強化体操は、まず基本姿勢をとります。前かがみ姿勢がクセになって背骨本来のS字カーブが失われた人は、上体をそれ以上に反らすと症状が現れるまで起こします。
両手は軽く腰に当てて、輪を回す要領で数字の8を描くように腰を動かします。ゆっくりと水平に大きく8の字を描くのがコツです。右回りで8の字を5回描いたら、腰を左回りに5回動かして1セットとします。朝・昼・晩の1日3回、1セットずつ行ってください。
体操を行う前には、固まった腰の筋肉を手でもんでほぐしてから行うと効果が高まります。ただし、1度に20回以上行うと腰の痛みが増す場合があるのでさけてください。もし、体操を続けて痛みが強まったり症状が悪化したた場合は、すぐに中止して専門医に相談してください。
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5-2-2 腸腰筋ほぐし体操
立った状態で左右片足ずつ、ゆっくり太ももを上げてみてください。太ももがスムーズに上がらなかったり痛みが現れたりする場合は、腸腰筋が拘縮している疑いが濃厚です。
腸腰筋の硬直や萎縮は脊柱管狭窄症のしびれや痛みを起こりやすくするので、腸腰筋をほぐすことで症状の緩和も期待できます。腸腰筋ほぐし体操は、感じる症状毎に三種類あります。
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a. 下腹の脱力体操
まず基本姿勢をとります。体幹のバランス強化体操と同様に、両足を広げてまっすぐに立ち顔は正面を向きます。爪先をやや外側に広げて立つと安定感が増します。腸腰筋をほぐすためには「リラックスして脱力する」ことが重要になります。
口から息を吸いながら、腹筋の力で下腹をへこませながら肛門を締めていき、息を吸い切ったところで一気に鼻から息を吐き出すと共に下腹の力と肛門、全身の力を抜いてリラックスします。脱力のさいには鼻からフッと勢いよく息を吐き出し、一気に脱力することが効果を高めます。
緊張と弛緩という大きな動きをくり返すことで、拘縮した腸腰筋がゆさぶられて血流が増大し、腸腰筋に酸素や栄養が行き渡るようになるので拘縮がほぐれます。体操を行っている間は呼吸を止めないことと、下を見ないようにすることです。
5回行うのを1セットとして、朝・昼・晩に1セットずつ実践するのを基本とします。症状が気になるときには積極的に行ってください。台所などで立って作業をするとき、掃除をする前など時間を決めて習慣にすると毎日続けられて効果も高まります。
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b. 腿下ゆすり体操
前傾姿勢になると腸腰筋は常に縮んだ状態になり、ほとんど使われなくなり硬直や萎縮してしまいます。腸腰筋が硬く縮んだままになると、拘縮した筋肉がその周囲を通る坐骨神経を圧迫して足腰の痛みやしびれを引き起こしやすくなります。
立った状態で足を片方ずつ、股関節を支点として5~6秒ブラブラゆする体操です。足をブラブラゆする運動は、腰部脊柱管狭窄症の症状の中でも、とりわけ坐骨神経痛によるお尻や足の痛み・しびれの改善に役立つ体操です。
転倒防止のため、イスの背もたれや壁などに手を添えてバランスをくずさないようにします。足のつけ根から爪先まで、まっすぐに伸ばして行います。前かがみになって目線が下がると腸腰筋が萎縮したままになり、体操の効果が薄れるのでまっすぐ正面を見ながら行ってください。
左右の足で5回ずつを目安に行います。これを1セットと数え、朝・昼・晩に1セットずつ、計3セット行うのを基本とします。なお、症状が気になるときに行うのもおすすめです。
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5-2-3 爪先起こし体操
爪先起こし運動は、ふくらはぎの腓腹筋やヒラメ筋を柔軟にして筋力を強める効果的があります。これらの筋肉が若返ると足腰の血流が促されるため、ふくらはぎの症状のほかに管狭窄症に伴う足腰の痛みやしびれの改善が期待できます。
爪先起こし運動は、床に座って行う運動、立ち姿勢で行う運動、イスに座って行う運動の3種類があり、どの姿勢でも爪先を起こしてふくらはぎを伸ばすのが基本動作になります。
a. 床に座って行う運動
リラックスした状態で床に腰を下ろし、両手を後ろについて体を支えます。かかとを前に押し出すようにして両足をまっすぐに伸ばします。
両足の爪先を時計回りにゆっくりと10回転させて、続いて反時計回りでも爪先を10回転させます。以上の動作を朝・昼・晩に行います。
b. 立ち姿勢で行う運動
痛みやしびれが強い人、また体力に自信のない人は控えましょう。
壁やイスの背につかまり、両足を肩幅に開きます。爪先で立って3~5秒数えたらゆっくりとかかとを下ろし、続いて爪先を上げて3~5秒数えたらゆっくりと爪先を下ろします。この動作を左右交互に5回ずつくり返します。
次に、壁に手をつき右足を1歩後ろに下げて、壁を押すようにしてふくらはぎを10秒伸ばします。左足でも同様に行います。この動作を左右交互に5回ずつくり返します。
c. イスに座って行う運動
イスに座って、症状が出ている側の足を前に伸ばします。床にかかとをつけたまま、症状が出ている側の足の爪先を天井に向けて起こし、ふくらはぎを10秒伸ばします。
右足伸ばします。床にかかとをつけたまま右斜め45度の方向に開き、ふくらはぎを10秒伸ばします。続いて左足も同様に行います。
体をイスの右側にずらして右足を後ろに下げます。床に爪先をつけて、アキレス腱を伸ばす要領でふくらはぎを10秒伸ばします。続いて左足も同様に行います。
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