1 地球の誕生
1-1 1日は21時間だった
地球は私たちを乗せて宇宙を旅しています。地球は地軸を軸に自転しています。昼と夜があるのがその証拠です。自転しながら太陽をまわり、銀河系を絶叫マシン並みに疾走しています。銀河系も猛スピードで動いています。
2014年にアルマ電波望遠鏡が、小さなチリから惑星が作られていく現場をとらえました。おうし座の方向にある巨大なガスとチリの中にその天体はありました。おうし座HL星は生まれたばかりの太陽のような星です。写真はアルマ天文台よりお借りしました。
このオレンジにみえる円盤こそが、惑星を作り出すチリやガスです。円盤の内側に黒い溝なようなものが何本もあります。ここで惑星が誕生していると考えられます。水星・金星・地球・火星はチリが集まった岩石惑星で、木星や土星も中心部は岩石でしょう。
地球の生成時期に渦巻いているガスやチリの塊は、円盤の中で安定して回っていましたがガスが邪魔をしてスピードが落ちていきます。スピードが落ちると、太陽に近い地球のような場所にあるチリは太陽の強い重力によって引き寄せられ消滅してしまいます。
チリが大きくなり続けるには特別な何かが必要になります。宇宙空間ではダイナミックな現象が起きていることが分りました。生まれたばかりの太陽の周りでは、ガスやチリがまるで嵐のように激しく乱れていることを突き止めたのです。
これは乱流と呼ばれます。チリは積み重なって層を作ことはできませんが、円盤の中で均一に散らばっているわけでもありません。乱流によりチリの集まりに濃淡ができて次第に塊に成長していきました。
乱流によるチリの濃淡が地球になるための重要なポイントでした。直径数キロまで成長したチリの塊はガスの影響を受けずスピードも落ちません。そのため、中心の星の強い重力に逆らって回り続けることができたのです。
ガスがあるうち原始惑星はお互いに軌道をあまり乱しあわず、衝突もせずに太陽の周りをまわっています。ガスの半分ぐらいは1万年ぐらいの時間で無くなります。惑星たちの軌道が乱れることで再び合体が始まり、地球サイズの惑星が生まれます。
1-2 地球はシネスティアから
大体1億年ぐらいかかってお互いが衝突し合い、最終的に地球が出来上がりました。地球はおよそ10個の成長した惑星が合体してできたことが分りました。しかし、できたばかりの地球は現在の姿と似ても似つかない姿だったのです。
地球が冷えるにつれ表面は固まりました。初期の天体では衝突が絶えません。正面衝突はめったになく多くは斜めに衝突しました。斜めに衝突すればそのたびに地球の自転に勢いが加わります。旅を始めたころの地球は現在の12倍の速さで自転していました。
太陽を一周するのにかかる時間は数億年前も今も変わりません。46億年前にできたばかりの恒星の卵たちの衝突は日常茶飯事でした。地球と同程度の星との正面衝突で二つの星は高温ガス化して新しい説によればシネスティアという新しい天体が生まれました。
気化した岩石が高速で回転する天体です。シネスティアの状態は数百年続き、気化した岩の雲は冷えていきます。その過程で月が形成され、シネスティアの自転は早くなりました。ガスが冷えて中心の地球に降り注ぎ、岩が固まって回転はどんどん速くなります。
この自転速度は地球の気象にも大きな影響を及ぼします。1日の長さが短かったその当時多くの嵐が発生していたと思われます。地球の自転周期は24時間ではなく1日が21時間だったのです。太古の嵐を発生させたコリオリの力は今も地球上で働いています
地球の自転が引き起こすコリオリの力は、熱エネルギーと組み合わさって大気に渦巻きを作り嵐を引き起こします。嵐が特に発生しやすいのは熱帯地方で、上昇気流でできた雲がコリオリの力で渦を巻き始めます。
コリオリとは、地球の自転によって発生する力で、北半球では進行方向に対して直角右向きに、南半球では直角左向きになります。遠心力とは逆で、北極で右向きの力が最大、南極で左向きの力が最大、赤道上では0になります。
太古の嵐を発生させた力は今も地球上で働いています。地球の自転が引き起こすコリオリは、熱エネルギーと組み合わさり大気に渦巻きを作り嵐を引き起こします。嵐が特に発生しやすいのは熱帯地方で、上昇気流でできた雲がコリオリの力で渦を巻き始めます。
1-3 海の誕生
太陽系第三惑星の地球は、水星や金星のような岩石惑星と明らかに違う特徴を持っています。宇宙から地球を見たときまず目に入るのは白い雲と茶色の陸地、そして息を飲む美しさの青い海です。海は水蒸気が大量に含まれた大気から誕生しました。
惑星は太陽からの距離がある範囲を外れると安定して海が存在できません。太陽に近すぎると海は蒸発し、離れすぎると凍結します。地球が誕生した太陽から1億5千万キロの軌道は、たまたま海が存在できる場所でした。この範囲をバビタブルゾーンと言います。
地球の距離だからこそ水は液体として存在できるのです。地球の大きさも重要です。もし地球が今より小さかったら、重力が弱くなり表面に水がとどまることはできません。直径が地球の半分ぐらいしかない火星に水はとどまることができなかったのです。
地球は太陽からの距離と大きさ、バビタブルゾーンにあったという絶妙な位置のため海が存在できるのです。ではどのようにして海ができたのでしょうか。46億年前、原始の地球には宇宙のチリから生まれた小惑星が大量に降り注いでいました。
海の元となったのはこの小惑星に含まれる水でした。この水が地球上でやがて蒸発し雨になって降り注ぎ海になりました。地球には旅の道連れとなる月がいました。地球と月は重力で結ばれ、地球の自転は遅くなっていきます。
月は地球の海に潮汐、潮の満ち干を起こします。地球の地表から加熱されなくなり、冷えてくると水蒸気の大気は安定していないから雨になって降ってきます。ものすごい雨が降り続くことで海ができます。
チリには炭素や水素が含まれています。チリをある条件下においたときに、ある程度大きな隕石母体の中で圧力条件を再現すると、条件次第で水ができることが実験で分かりました。これにより地球に降り注いだ隕石から水が生成されたのは明らかとされました。
1-4 母なるバクテリア
火星と木星の間からやってきて、メキシコに落ちた隕石分析すると水を多く含んでいることも分りました。初期の地球に火星ほどもある惑星が衝突しました。衝突したときの破片は宇宙空間に飛び散りました。もし海ができていても消滅したでしょう。
しかし、この衝突のスピードは時速3キロで、4キロ程度までは海水が失われないことが分かったのです。海は衝突によって水蒸気となり地球の重力に捉えられていました。やがて地表へ向けて降り続け、千年ほどかけて海となりました。
地球の大気中に酸素の占める割合は21%、25億年前には大気中に酸素は含まれていなかったのです。しかし、24億年前から急激に酸素が増え始め、その後、低酸素時代が8億年ほど続き、8億年前から急激に増加しやがて現在の酸素濃度になりました。
地上に植物が存在しない時代、水中の単純な生き物シアノバクテリアが酸素を生み出したと考えられています。このシアノバクテリアの遺伝子を調べると、34億年前から29億年前までに光合成の能力を獲得したが分かりました。
2021年8月に硫黄をエネルギー減とするシアノバクテリアが色素を持つようになると、酸素を生成し始めることが分りました。シアノバクテリアが酸素を生成すると、酸素の泡でシアノバクテリアの塊が岩から剥がれ落ちて流され移動します。
シアノバクテリアの塊はシアノバクテリア・マットと呼ばれる大きく広いものとなりました。月ができたころから地球の自転は遅くなり、24億年前から地球の自転は1日が21時間となりました。そこから8億年にわたって一定のままの速度になりました。
大気と海への月の重力の影響が丁度打ち消し合っていたからです。そして、7億年ほど前から1日の長さが再び伸び始め1日が24時間となりました。これは酸素濃度の変化と比べると驚くほど似た特徴を示していたのです。
月と地球の重力がシアノバクテリアの酸素生成に影響を与え、大気中の酸素濃度の変化と地球の自転速度が一致したのです。シアノバクテリアの遺伝子は地球の酸素が二段階で増加したことを示し、それが物理的に説明できたのです。
1-5 リンの増加がカギ
酸素が増えたり減ったりすることは生物の進化に重要な影響を与えます。酸素が増えると代謝が進みますが、逆に酸素が減ったときに生物は絶滅しないために新たな対策を産んで環境に対応していき、さらなる進化を促進したのです。
もう一つ多細胞化にはコラーゲンという物質が必要で、コラーゲンがあることによって細胞がくっつくけれどこれも酸素がないと合成できません。さらに生命進化のもう一つの超重要物質が影響しています。それの物質はリンです。
リンは生物のDNA、細胞膜、ATP(エネルギー通貨)などに使えある地球生命の必須物資です。リンはすべての生物の根幹をなしている物質です。8億年前から7.5億年前までにリンは10倍から100倍に増加していたのです。
この時期、月へ隕石が集中して落ちていたことを突き止めました。8億年をピークに多量の隕石が月にクレーターを残したことがわかりました。8億年前と言えば、地球上にこのリンが急増した時期と重なります。多量のリンは宇宙からもたらされたのです。
それを突き止めたのは日本の月周回衛星かぐやがもたらした超精細画像でした。月にできたクレーターの形状から新旧の年代を判断すると、クレーターは8億年前に集中して増えていることが分ったのです。
かぐやの観測結果で、コペルニクスクレーターのような巨大なクレータ59個のうち、17個が8億年前にできたことが分りました。このような短期間に隕石が集中することありえないのです。原因は小惑星帯で小惑星同士の衝突でした。
月周回衛星かぐやの観測結果から、地球に起きていたであろう大事件が分りました。直径100キロの小惑星が8億年前の衝突で木っ端微塵となり、小惑星の破片は地球と月の軌道へ到達し、8億年前に月と地球へ雨あられと降り注ぎました。
1億年もの間、直径1キロもある破片が地球と月へシャワーのように降り注いでいたのです。8億年前の隕石によってもたらされた、リンの増加がきっかけで地球は複雑な生命の星になりました。
1-6 生命を育む進化
大気の組成では二酸化炭素の少なさが際立ちます。火星と金星では大気の95%以上を占める一方、地球では窒素が78%を占め二酸化炭素はわずか0.04%です。地球は海水や大陸の岩石などが二酸化炭素を蓄えているため現在の大気が作られたのです。
このような大気が安定して存在できるのは地球が磁場を持ち、地球周辺に磁気圏が形成されているからです。もし磁気圏がなければ、太陽から噴き出すプラズマが直接地球に当たり大気をはぎ取ってしまうでしょう。
地球の大気にはさらに太陽系のほかの惑星にない特徴があります。驚くことに20%もの酸素が存在していることです。これほどの大量の酸素が惑星の大気に作り出される方法は一つしか知られていません。
地球の酸素は、39数億年前に誕生した光合成をおこなう生物によって作り出されました。さらに、地球上空ではこの酸素から作られたオゾンが太陽から届く有害な紫外線を和らげています。広大な海、海とともに大気中の二酸化炭素を減少させた大陸の誕生。
24時間で1日という周期をもたらすのが自転です。地球上の生物はみなこの1日という周期に適応しています。生命は地球の自転に歩調を会わせて進化してきました。この自転の周期を記憶している生物がいます。
木は年輪を残しますが、サンゴには日々の成長を残すものがあります。化石化した数億年前のサンゴの化石を調べると1年は365日ではありません。当時の1年は420日だったのです。
地球に届く適度な太陽エネルギーと光合成による酸素の供給、大気を守る磁気圏と生命に有害な紫外線から地球を保護するオゾン層。これらの様々な様相が関係し合う地球というシステムの上に、私たち生命はシステムの一部として現れたのです。
まるで生命を育むかのように進化してきた地球、40億年前に誕生した最初の生命は個の球体の中で多様な進化をとげ、ついに我々人間が現れたのです。人間は他の生物と同じように原始的な単細胞生物から進化した一つの種に過ぎません。