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人々の役に立とうと夢をいだき、夢を追いかけてきた日々

第2章 地球はどこへ行く

地球は太陽系とともに銀河系の中を旅しています。銀河系はナニアケア超銀河団の中を旅してグレートアトラクターへ向かっています。そこは天国のようなところでしょうか、それともブラックホールのようなところでしょうか。

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1 地球の誕生

 1-1 1日は21時間だった

地球は私たちを乗せて宇宙を旅しています。地球は地軸を軸に自転しています。昼と夜があるのがその証拠です。自転しながら太陽をまわり、銀河系を絶叫マシン並みに疾走しています。銀河系も猛スピードで動いています。

2014年にアルマ電波望遠鏡が、小さなチリから惑星が作られていく現場をとらえました。おうし座の方向にある巨大なガスとチリの中にその天体はありました。おうし座HL星は生まれたばかりの太陽のような星です。写真はアルマ天文台よりお借りしました。

おうし座HL星

このオレンジにみえる円盤こそが、惑星を作り出すチリやガスです。円盤の内側に黒い溝なようなものが何本もあります。ここで惑星が誕生していると考えられます。水星・金星・地球・火星はチリが集まった岩石惑星で、木星や土星も中心部は岩石でしょう。

地球の生成時期に渦巻いているガスやチリの塊は、円盤の中で安定して回っていましたがガスが邪魔をしてスピードが落ちていきます。スピードが落ちると、太陽に近い地球のような場所にあるチリは太陽の強い重力によって引き寄せられ消滅してしまいます。

チリが大きくなり続けるには特別な何かが必要になります。宇宙空間ではダイナミックな現象が起きていることが分りました。生まれたばかりの太陽の周りでは、ガスやチリがまるで嵐のように激しく乱れていることを突き止めたのです。

これは乱流と呼ばれます。チリは積み重なって層を作ことはできませんが、円盤の中で均一に散らばっているわけでもありません。乱流によりチリの集まりに濃淡ができて次第に塊に成長していきました。

乱流によるチリの濃淡が地球になるための重要なポイントでした。直径数キロまで成長したチリの塊はガスの影響を受けずスピードも落ちません。そのため、中心の星の強い重力に逆らって回り続けることができたのです。

ガスがあるうち原始惑星はお互いに軌道をあまり乱しあわず、衝突もせずに太陽の周りをまわっています。ガスの半分ぐらいは1万年ぐらいの時間で無くなります。惑星たちの軌道が乱れることで再び合体が始まり、地球サイズの惑星が生まれます。

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 1-2 地球はシネスティアから

大体1億年ぐらいかかってお互いが衝突し合い、最終的に地球が出来上がりました。地球はおよそ10個の成長した惑星が合体してできたことが分りました。しかし、できたばかりの地球は現在の姿と似ても似つかない姿だったのです。

地球が冷えるにつれ表面は固まりました。初期の天体では衝突が絶えません。正面衝突はめったになく多くは斜めに衝突しました。斜めに衝突すればそのたびに地球の自転に勢いが加わります。旅を始めたころの地球は現在の12倍の速さで自転していました。

太陽を一周するのにかかる時間は数億年前も今も変わりません。46億年前にできたばかりの恒星の卵たちの衝突は日常茶飯事でした。地球と同程度の星との正面衝突で二つの星は高温ガス化して新しい説によればシネスティアという新しい天体が生まれました。

気化した岩石が高速で回転する天体です。シネスティアの状態は数百年続き、気化した岩の雲は冷えていきます。その過程で月が形成され、シネスティアの自転は早くなりました。ガスが冷えて中心の地球に降り注ぎ、岩が固まって回転はどんどん速くなります。

この自転速度は地球の気象にも大きな影響を及ぼします。1日の長さが短かったその当時多くの嵐が発生していたと思われます。地球の自転周期は24時間ではなく1日が21時間だったのです。太古の嵐を発生させたコリオリの力は今も地球上で働いています

地球の自転が引き起こすコリオリの力は、熱エネルギーと組み合わさって大気に渦巻きを作り嵐を引き起こします。嵐が特に発生しやすいのは熱帯地方で、上昇気流でできた雲がコリオリの力で渦を巻き始めます。

コリオリとは、地球の自転によって発生する力で、北半球では進行方向に対して直角右向きに、南半球では直角左向きになります。遠心力とは逆で、北極で右向きの力が最大、南極で左向きの力が最大、赤道上では0になります。

太古の嵐を発生させた力は今も地球上で働いています。地球の自転が引き起こすコリオリは、熱エネルギーと組み合わさり大気に渦巻きを作り嵐を引き起こします。嵐が特に発生しやすいのは熱帯地方で、上昇気流でできた雲がコリオリの力で渦を巻き始めます。

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 1-3 海の誕生

太陽系第三惑星の地球は、水星や金星のような岩石惑星と明らかに違う特徴を持っています。宇宙から地球を見たときまず目に入るのは白い雲と茶色の陸地、そして息を飲む美しさの青い海です。海は水蒸気が大量に含まれた大気から誕生しました。

惑星は太陽からの距離がある範囲を外れると安定して海が存在できません。太陽に近すぎると海は蒸発し、離れすぎると凍結します。地球が誕生した太陽から1億5千万キロの軌道は、たまたま海が存在できる場所でした。この範囲をバビタブルゾーンと言います。

地球の距離だからこそ水は液体として存在できるのです。地球の大きさも重要です。もし地球が今より小さかったら、重力が弱くなり表面に水がとどまることはできません。直径が地球の半分ぐらいしかない火星に水はとどまることができなかったのです。

地球は太陽からの距離と大きさ、バビタブルゾーンにあったという絶妙な位置のため海が存在できるのです。ではどのようにして海ができたのでしょうか。46億年前、原始の地球には宇宙のチリから生まれた小惑星が大量に降り注いでいました。

海の元となったのはこの小惑星に含まれる水でした。この水が地球上でやがて蒸発し雨になって降り注ぎ海になりました。地球には旅の道連れとなる月がいました。地球と月は重力で結ばれ、地球の自転は遅くなっていきます。

月は地球の海に潮汐、潮の満ち干を起こします。地球の地表から加熱されなくなり、冷えてくると水蒸気の大気は安定していないから雨になって降ってきます。ものすごい雨が降り続くことで海ができます。

チリには炭素や水素が含まれています。チリをある条件下においたときに、ある程度大きな隕石母体の中で圧力条件を再現すると、条件次第で水ができることが実験で分かりました。これにより地球に降り注いだ隕石から水が生成されたのは明らかとされました。

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 1-4 母なるバクテリア

火星と木星の間からやってきて、メキシコに落ちた隕石分析すると水を多く含んでいることも分りました。初期の地球に火星ほどもある惑星が衝突しました。衝突したときの破片は宇宙空間に飛び散りました。もし海ができていても消滅したでしょう。

しかし、この衝突のスピードは時速3キロで、4キロ程度までは海水が失われないことが分かったのです。海は衝突によって水蒸気となり地球の重力に捉えられていました。やがて地表へ向けて降り続け、千年ほどかけて海となりました。

地球の大気中に酸素の占める割合は21%、25億年前には大気中に酸素は含まれていなかったのです。しかし、24億年前から急激に酸素が増え始め、その後、低酸素時代が8億年ほど続き、8億年前から急激に増加しやがて現在の酸素濃度になりました。

地上に植物が存在しない時代、水中の単純な生き物シアノバクテリアが酸素を生み出したと考えられています。このシアノバクテリアの遺伝子を調べると、34億年前から29億年前までに光合成の能力を獲得したが分かりました。

2021年8月に硫黄をエネルギー減とするシアノバクテリアが色素を持つようになると、酸素を生成し始めることが分りました。シアノバクテリアが酸素を生成すると、酸素の泡でシアノバクテリアの塊が岩から剥がれ落ちて流され移動します。

シアノバクテリアの塊はシアノバクテリア・マットと呼ばれる大きく広いものとなりました。月ができたころから地球の自転は遅くなり、24億年前から地球の自転は1日が21時間となりました。そこから8億年にわたって一定のままの速度になりました。

大気と海への月の重力の影響が丁度打ち消し合っていたからです。そして、7億年ほど前から1日の長さが再び伸び始め1日が24時間となりました。これは酸素濃度の変化と比べると驚くほど似た特徴を示していたのです。

月と地球の重力がシアノバクテリアの酸素生成に影響を与え、大気中の酸素濃度の変化と地球の自転速度が一致したのです。シアノバクテリアの遺伝子は地球の酸素が二段階で増加したことを示し、それが物理的に説明できたのです。

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 1-5 リンの増加がカギ

酸素が増えたり減ったりすることは生物の進化に重要な影響を与えます。酸素が増えると代謝が進みますが、逆に酸素が減ったときに生物は絶滅しないために新たな対策を産んで環境に対応していき、さらなる進化を促進したのです。

もう一つ多細胞化にはコラーゲンという物質が必要で、コラーゲンがあることによって細胞がくっつくけれどこれも酸素がないと合成できません。さらに生命進化のもう一つの超重要物質が影響しています。それの物質はリンです。

リンは生物のDNA、細胞膜、ATP(エネルギー通貨)などに使えある地球生命の必須物資です。リンはすべての生物の根幹をなしている物質です。8億年前から7.5億年前までにリンは10倍から100倍に増加していたのです。

この時期、月へ隕石が集中して落ちていたことを突き止めました。8億年をピークに多量の隕石が月にクレーターを残したことがわかりました。8億年前と言えば、地球上にこのリンが急増した時期と重なります。多量のリンは宇宙からもたらされたのです。

それを突き止めたのは日本の月周回衛星かぐやがもたらした超精細画像でした。月にできたクレーターの形状から新旧の年代を判断すると、クレーターは8億年前に集中して増えていることが分ったのです。

かぐやの観測結果で、コペルニクスクレーターのような巨大なクレータ59個のうち、17個が8億年前にできたことが分りました。このような短期間に隕石が集中することありえないのです。原因は小惑星帯で小惑星同士の衝突でした。

月周回衛星かぐやの観測結果から、地球に起きていたであろう大事件が分りました。直径100キロの小惑星が8億年前の衝突で木っ端微塵となり、小惑星の破片は地球と月の軌道へ到達し、8億年前に月と地球へ雨あられと降り注ぎました。

1億年もの間、直径1キロもある破片が地球と月へシャワーのように降り注いでいたのです。8億年前の隕石によってもたらされた、リンの増加がきっかけで地球は複雑な生命の星になりました。

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 1-6 生命を育む進化

大気の組成では二酸化炭素の少なさが際立ちます。火星と金星では大気の95%以上を占める一方、地球では窒素が78%を占め二酸化炭素はわずか0.04%です。地球は海水や大陸の岩石などが二酸化炭素を蓄えているため現在の大気が作られたのです。

このような大気が安定して存在できるのは地球が磁場を持ち、地球周辺に磁気圏が形成されているからです。もし磁気圏がなければ、太陽から噴き出すプラズマが直接地球に当たり大気をはぎ取ってしまうでしょう。

地球の大気にはさらに太陽系のほかの惑星にない特徴があります。驚くことに20%もの酸素が存在していることです。これほどの大量の酸素が惑星の大気に作り出される方法は一つしか知られていません。

地球の酸素は、39数億年前に誕生した光合成をおこなう生物によって作り出されました。さらに、地球上空ではこの酸素から作られたオゾンが太陽から届く有害な紫外線を和らげています。広大な海、海とともに大気中の二酸化炭素を減少させた大陸の誕生。

24時間で1日という周期をもたらすのが自転です。地球上の生物はみなこの1日という周期に適応しています。生命は地球の自転に歩調を会わせて進化してきました。この自転の周期を記憶している生物がいます。

木は年輪を残しますが、サンゴには日々の成長を残すものがあります。化石化した数億年前のサンゴの化石を調べると1年は365日ではありません。当時の1年は420日だったのです。

地球に届く適度な太陽エネルギーと光合成による酸素の供給、大気を守る磁気圏と生命に有害な紫外線から地球を保護するオゾン層。これらの様々な様相が関係し合う地球というシステムの上に、私たち生命はシステムの一部として現れたのです。

まるで生命を育むかのように進化してきた地球、40億年前に誕生した最初の生命は個の球体の中で多様な進化をとげ、ついに我々人間が現れたのです。人間は他の生物と同じように原始的な単細胞生物から進化した一つの種に過ぎません。

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2 生命の試行錯誤

 2-1 酸素の利用

生命が誕生したのはおよそ40億年前で、8~6億年前から多細胞生物への進化が始まりました。多細胞は体を大きくすることもでき、いろいろな機能を獲得することもできるようになり、高等生物が誕生する下地となります。

多細胞生物への大進化は生命進化の重要なイベントの一つで、多細胞動物の誕生は体に多くの機能を持つことができるようになり生命進化の大事件と言われます。地球が誕生した当時はほとんど酸素がない状態でした。

35億年前に光合成生物が誕生し22億年前までに酸素の量は一挙に増加しました。その後、地球は全球凍結しました。全球凍結は世界の大陸が一つにまとまっていた時代で、海嶺の火山活動による二酸化炭素(CO2 )の放出が減って起こったとされます。

注目するべき点は、それまで「ありえない」と考えられてきた「全球凍結」という壮絶な環境変動が実際に起こり、それが原因となって原生生物の大量絶滅とそれに続くカンブリア爆発と呼ばれる跳躍的な生物進化をもたらしました。

大陸が分かれると海嶺のCO2放出が増えて温暖化しました。すると氷が溶けて氷河が陸地を削り、大量の雨が降ったことで陸地の栄養が一気に海へ流れ込みました。これで光合成生物シアノバクテリアが大増殖し、地球の酸素の濃度を押し上げたといわれます。

このようなときに、私たちのご先祖様である単細胞生物に大事件が起きました。ご先祖様にとって酸素は有害でした。しかし、ある生物は酸素を利用する生物を体に取り込んで利用する仕組みを作り上げていました。

ご先祖様もこれにヒントを得て、酸素を使える生物を細胞内に取り込み体の一部にしてしまったのです。こうすれば取り込んだ生物が、有害な酸素を使って効率よくエネルギーを作り出してくれるので、生き延びることができるようになります。

これが細胞の中にミトコンドリアを持った真核生物でした。酸素急増で起きたのが21~19億年前の大事件でした。酸素を使った好気呼吸は酸素を使わない呼吸に比べて16倍も大量のエネルギーを作ることができるのでより活発に活動できるのです。

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 2-2 超大陸誕生の影響

さらに酸素が増えると地球環境にも大きな影響が出ます。全球凍結のきっかけも酸素の上昇が原因かもしれません。全球凍結の前に酸素発生型光合成生物と酸素諸費のメタン生成菌などが競合していたために、なかなか大気の酸素濃度が増えなかったのです。

このバランスが崩れて大気の酸素濃度が変動すると、大気中のメタンが減ってしまいます。メタンは温暖化ガスですから少なくなるとどんどん寒くなってしまいます。一気に全球凍結に陥ってしまいました。地球を凍らせたのも生物の仕業だったのです。

20億年前から9億年までの酸素濃度は研究されていないので不明でしたが、最近この期間の状態もわかるようになってきました。ロシア北部にあるオレガ湖の近くの地下約1900mから見つかった20億年前の岩塩から当時の大気の成分を取り出しました。

岩塩から取り出された大気から酸素の量が明らかになってきました。岩塩から得られたデーターと海底から得られたデータで18億年前から15億万年前まで酸素濃度が減少し、14億年ころに再びピークがあり10億年前まで大きく減少しています。

一体この時期に何がこの変化を起こしていたのか、有力な説が大陸移動説です。20億年前から16億年前までに、それまでばらばらだった大陸が合体して超大陸コロンビアが誕生しました。大陸が合体すると海岸線は短くなります。

陸から海に供給されていた栄養が激減し、光合成生物シアノバクテリアなどが激減したので酸素が減ったのではないでしょうか。その後、超大陸コロンビアが分裂すると酸素濃度は増加しましたが、再び超大陸ロディニアが誕生すると酸素濃度は下がりました。

この仮説のほかに、例えば大陸が割れるときに地球内部から大規模な火山活動がおき、それが影響しているという説もあり定説はまだありません。多細胞動物の大進化が始まったのは超大陸誕生という地球の大異変が起きているころでした。

地球は火山活動や侵食で表面が入れ替わりますが、月には数十億年間の情報が保存されています。小惑星は小惑星帯の中で集団で行動しているものがあります。オイアリア族と言われる集団の半分が月と地球へ隕石として落ちてきたと推定されます。

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 2-3 サハラ砂漠は緑の大地

潮汐で動く海は表面の動きと海底の動きに摩擦が生じます。これが自転のブレーキとなりました。潮汐は自転を遅くしただけでなく、潮の満ち干は海水に陸地の栄養分を溶け込ませ有機物に富むスープのようにしたのです。

サハラ砂漠は乾ききった荒涼たる台地です。ところが砂漠の洞窟に残された壁画には緑豊かな楽園が描かれています。考古学者が発掘した洞窟には、湖で泳ぐ人間や動物が描かれていました。衛星画像では古代の谷川の跡がいくつも見つかっています。

月は地球の赤道面にあるのではなく、赤道面より少し上から重量を及ぼし地球の傾きを23.5度にしました。地球が23.5度傾いていなかったら季節は巡ってこなかったのです。季節があるおかげで豊かな恩恵にあずかることができたのです。

地球の地軸の延長上にあるのは北極星です。現在は大熊座のポラリスですが、5千年前の北極星はりゅう座のツバンでした。1万年後にはこと座のベガが北極星になります。北極星が変化するのは地球が揺れ動いている証拠で、独楽のような動きをしているのです。

これは太陽と月と地球の重力の相互作用です。地軸をつつく作用をしているのは太陽と月の重力です。それで独楽のような運動が起こるのです。向きはおよそ2万年の周期で変化しています。

独楽のような運動で気候は劇的に変わります。地球の北極が太陽の方向を向いているとき、北半球の夏は日射が多くなります。それがサハラに思いがけない影響を与えました。サハラでの日射が増え気温は高くなると、海からの湿った風が吹き込みやすくなります。

モンスーンです。このモンスーンが今は砂漠になっているサハラ地方に多くの雨をもたらしたのです。地質記録から2万年周期で乾燥期と湿潤期が交互に訪れていることが分りました。およそ1万年前、強いモンスーンを引き起こし砂漠を緑に変えました。

モンスーンはサハラを周期的に緑の大地に変えていったのです。人類は住みやすくなったサハラに移住し洞窟壁画を残しました。サハラが緑になることで人類がアフリカから出る道が開けたのです。

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 2-4 現地球の公転軌道は円

地球の環境は軌道の変化に敏感で、楕円が扁平になると氷期の引き金になります。地球の公転軌道の変化は気候の変動と密接に結びついています。喧騒に包まれる大都市ニューヨーク、そこにモレーン呼ばれる地形があります。

氷河が残した岩の土手です。1万8千年前には摩天楼より高い氷床がマンハッタンを覆っていました。地球では氷床が発達する氷期が周期的に訪れています。時には地球がスノーボールアースと呼ばれる全球凍結状態になりました。

この引き金になったのは地球の公転軌道の変化でした。地球は1日に10万キロ以上の早さで自転しながら、太陽の周りを1日260万キロも進むのです。この軌道は完全な円ではありません。太陽や月の重力の影響を受けて変化しています。

楕円が扁平になる時期もあれば、かなり円に近くなる時期もあります。現在の地球の公転軌道は最も円に近くなっています。こういう時期は夏も冬も比較的穏やかですが、もっと扁平だったころの地球の気候は劇的に違いました。

近日点が近くなる夏は酷暑に見舞われます。一方遠日点は遠くなるので極寒の冬を迎えます。地球の環境は軌道の変化に敏感です。扁平になると氷期の引き金になります。10万年周期で起こるこうした気候の変化がニューヨークにあの氷河地形を残したのです。

周期的に訪れる氷期は人類史に影響を与えました。1万5千年前の氷期だった地球は多くの水が氷に閉じ込められ、海水面が低下してべーリン海峡は陸続きになっていました。すでにアジアまで進出していた人類はここを歩き通してアメリカ大陸へ到達したのです。

2018年5月、さらにダイナミックな周期が確認されました。40万5千年ごとに太陽を回る地球の軌道は最も扁平になります。太陽系最大の惑星である木星は太陽系の力学に大きな影響を与えます。木星の重力は地球の軌道を引っ張っています。

地球の気候変動の一因は木星にありました。金星は地球とほぼ同じサイズですぐそばを回っています。木星と金星の重力の影響で地球の軌道はさらに扁平状態になります。40万年5千年の周期で最も扁平状態になったときに、気候の変動も最も極端になるのです。

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 2-3 平坦でない道筋

木星と金星が手を組んで働きかけると、地球の公転軌道は最も扁平になります。こうなると地球の気候は暑いときはものすごく暑く、寒い時期はより寒くなります。現在地球の気候は穏やかな時期に当たりますが、6万年後にはまた氷期が訪れると予測されます。

地球上に生命が誕生して以来大量絶滅は何度も起こってきました。その結果、95%の種が絶滅したと見られています。その原因の一つは地球の旅かもしれません。太陽を回る旅ではなく、天の川銀河も呼ばれる私たちの銀河系を回る旅です。

太陽系は時速86万キロで疾走しています。銀河系の中心の周りを公転しているのです。太陽系は銀河系の中心から2万5千光年離れています。一回りしてくるまで2億3千万年もかかります。地球も太陽系と同じように銀河系をまわっています。

時速8万キロという猛スピードにもかかわらず、太陽系はこれまでに銀河系を20周ほどしただけです。この銀河系の旅の道すじは思いのほか複雑なようです。地球が太陽の周りを回る軌道は楕円ですが、同じ平面状をまわっています。

一方で太陽系が銀河系を回る軌道はそれほど単純ではありません。太陽系の質量は圧倒的に太陽に集中しているので、惑星の軌道は同一平面に落ち着いています。ところが銀河系では質量が不均等に広がっています。

そのため複雑に働く重力が太陽系の公転に影響を与えることになります。平面上を回るのではなく、上下運動が加わるのです。太陽と一緒に銀河系をまわる地球は円を描きながら上下にアップダウンするのです。こうした動きが私たちを危険地帯に誘い込むのです。

この上下運動のために、地球はいわゆる銀河面を数千万年ごとに通過することになります。危険地帯は銀画面ばかりじゃありません。現在地球は銀河系のおだやかな地帯を旅していますが、地球は太陽と一緒に周期的に危険地帯を通らなければなりません。

銀河系には非常に活発な領域があります。星が生まれているような場所です。そういうようなところでは死んでいく星も多く、危険に満ちています。最悪の危険地帯はおそらく渦巻き状の腕でしょう。ガスに満ちた渦巻き腕はゆっくりと公転しています。

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 2-4 危険過ぎる行程

地球はおよそ1億5千万年ごとに渦巻き腕を通ることになります。渦巻き腕にはガスの雲が豊富にあり新しい恒星が形成されます。その多くは寿命の短い青い星で超新星爆発を起こして一生を終えます。渦巻き腕は超新星爆発に遭遇するかもしれない危険地帯です。

実際、過去に遭遇していたかもしれません。死に行く星は超新星爆発で自らの外装を吹き飛ばし、同時に秒速4万キロで広がる衝撃波が粒子を加速します。それが有害な放射線である宇宙線で、宇宙線は宇宙の弾丸となり銀河系をほぼ光の速さでつき進みます。

この宇宙線に一定以上被爆すると健康被害が出ます。宇宙線は細胞を貫きDNAを傷つけて深刻な影響を及ぼします。地球の磁場は空から降って来る宇宙線を遮ってくれます。しかし、近年の研究で過去に地球の磁場が宇宙線を防ぎきれなかった時期がありました。

200万年ほど前の海底の堆積物に鉄60が含まれていたのです。鉄60というのは鉄の放射性の同位体、それは超新星爆発で生成されるものです。およそ280万年前、地球から150億年のところで超新星爆発が起こりました。

その数百年後、宇宙線の嵐が降り注ぎ地球の磁場を突き破ったようです。もしかしたらこの宇宙線が、当時起こった海洋生物の大量絶滅の原因だったかもしれません。超新星爆発が銀河の腕で起こるとは限りませんが、私達にとっては遭遇したくない現象です。

旅の行く手に待ち受ける脅威は超新星爆発だけではありません。6千6百年前、重さ1兆トンを超える小惑星が時速7万キロ以上のスピードで地球に衝突し、大量の残骸を大気圏外まで吹き飛ばしました。これが恐竜の絶滅を招きました。

これだけではありません。恐竜の絶滅のような大量絶滅は過去に何度も起きていたのです。大量絶滅はおよそ2千6百万年という周期で起きています。その原因は天の川銀河を回る太陽系の軌道にあるとみる科学者もいます。

太陽系は周期的にも恒星の密集する銀河面を通過します。すると周囲にある多くの星が重力バランスを乱すというのです。太陽系のもっとも外側を包む無数の氷の天体、ホールドの雲もかく乱されます。

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3 地球の行き先

 5-1 銀河系のスピード

それとたくさんの彗星が太陽系の内側に入ってきて、衝突の可能性が増すかもしれません。地球上の生物の70%が失われた6千6百万年前の大量絶滅も、銀河面の通過と関係があったのかもしれません。大量絶滅が起こると生物が入れ替わります。

恐竜に変わって哺乳類が台頭し、やがては人類が栄えることになりました。宇宙を駆け抜ける地球の旅には、まだ謎が残されています。地球は独楽のように回転しながら太陽の周りを公転し、この太陽は銀河系を公転しています。

天の川銀河は私たちを乗せて猛スピードで突き進んでいます。問題は行き先が見えないことです。しかも、いずれは別な銀河と衝突することになるでしょう。私たちの天の川銀河は桁違いな旅をしているのです。1977年その壮大な旅の調査が行われました。

銀河系が宇宙を移動する速度を調べたのです。手がかりとなったのは宇宙誕生のなごりである宇宙マイクロ波背景放射でした。宇宙マイクロ波背景放射はビッグバンの残光と言われる電磁波で、この特徴はあらゆる方向から一様に飛来していることです。

ですから、私たちが宇宙空間をどれくらいの速度で移動しているかも、宇宙マイクロ波背景放射をもとにして測れるのです。この背景放射の方向による違いを調べれば、銀河系の動きが割り出せます。しかし、1977年には適切な観測機器がなかったのです。

観測には高高度偵察機U2が使われることになりました。高高度偵察機U2は宇宙マイクロ波背景放射を詳細に観測しました。その結果、銀河系は秒速600キロで宇宙を駆け抜けていることが分りました。時速200万キロ以上です。

数千億もの恒星の集団が時速200万キロで疾走しているのです。恐ろしいのはスピードだけではありません。地球から私たちの銀河系がどこへ向かっているのか見えないのです。行き先不明の旅です。視界が銀河系そのものに遮られているからです。

銀河系の銀河面にはチリやガスが密集していて、横から見るとその向こうが見通せません。まるでカーテンに視界を遮られているかのようです。銀河面にはたくさんの恒星もあるため異常に明るいのです。

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 3-2 現れたグレートアトラクター

銀画面にそった帯状の部分は向こうに何があるかほとんど見えません。天の川銀河の性で観測不能な領域、謎の領域ができてしまうのです。可視光線では観測できない領域があるため銀河系がどこへ向かっているかは謎でした。

突破口が現れました。強力な電波望遠鏡が未知の領域の観測を可能にしたのです。電波望遠鏡の素晴らしいところは、ガスや恒星に阻まれて観測できない領域でも見通すことができることです。おかげで天の川に向こうになにがあるかわかるようになったのです。

ガスの雲の向こうをのぞくと新たな発見がありました。天の川銀河は思いもよらないほど巨大な銀河集団の一員だと分りました。壮大な旅には多くの道連れがいたのです。わたしたちはとてつもなく大きな銀河集団に属していたのです。

ナニアケア超銀河団と呼ばれる集団です。この超巨大構造は10万個ほどの銀河を含んでいると思われます。広大集団が重力に導かれて流れる川のように移動しているのです。地球もこの重力に支配された長さ数億年の川の流れに沿って旅を続けています。

川が流れていく先は、巨大な重力の源グレートアトラクターです。グレートアトラクターとは、ナニアケア超銀河団の中にある巨大な超高蜜領域です。グレートアトラクターはうみへび座とケンタウルス座超銀河団の範囲内に位置しています。

グレートアトラクターは銀河系の数万倍の質量集中を持つと考えられています。重力が集中しているためどの銀河もそこへ向かって流れています。グレートアトラクターには膨大な量の物質が集まっています。引き寄せられたガスや銀河が密集しているのです。

さらに多くの銀河がその重力に引き寄せられ、グレートアトラクターに加わることになるでしょう。グレート・アトラクターが数億光年に渡る宇宙の領域内にある銀河と、それが属する銀河団の運動に及ぼす影響の観測から推定されたものです。

グレート・アトラクターの位置は、地球から2億2千万光年離れたじょうぎ座銀河団に一致し、天の川銀河はその方向に向かう銀河集団の流れに確かに乗っています。シャプレー超銀河団はラニアケア超銀河団の範囲内にはなく、隣接する大規模構造です。

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 3-3 アンドロメダとの衝突

宇宙を駆け抜ける地球の壮大な旅は46億年続いてきました。私たちが知りたいのはこの旅は最終的にどうなるかです。カギを握っているのは、天の川銀河の旅の道連れのアンドロメダ銀河です。1兆億個の恒星からなるこの銀河は次第に私たちに近づいてきます。

アンドロメダ銀河も天の川銀河も渦巻き銀河で、お互いに接近しつつあります。アンドロメダ銀河と天の川銀河はおよそ250万光年離れています。ところが時速40万キロでお互いが接近しているのです。衝突は避けられません。

銀河同士が衝突するのはまるでSF見たいですが、アンドロメダ銀河と天の川銀河が衝突するときはとんでもない光のショーになるでしょう。星同士は衝突しませんが、ガスの雲がぶつかり合い一斉に星の形成が始まります。

天の川銀河とアンドロメダ銀河が合体したら、突然恒星の数が何倍にもなるのですからそれまでの秩序は崩れ去ります。確かなのは宇宙規模の花火大会になることです。この史上最大級の光のショ―を経てまったく新しい銀河が誕生します。

2つの渦巻き銀河は一つの巨大な銀河になります。ミルコメダ-などと呼ばれていますが、それはもう天の川銀河のような渦巻き銀河ではないでしょう。二つの銀河は巨大な楕円形銀河に生まれ変わると予想されます。

しかし、地球はそこにいないかもしれません。何千億という星が猛スピードで天の川銀河に入ってくれば、地球も影響を受けるでしょう。太陽もろとも銀河の外へはじき出されるかもしれません。銀河同士が衝突すれば恒星やチリやガスが入り乱れます。

重力の相互作用で太陽系は新しい銀河からはじき出されるかもしれません。でも地球は太陽のまわりを公転していると思われます。ただ夜空の光景は今とは全く違うものになるでしょう。

地球は太陽とともに新しい銀河ミルコメダから弾き飛ばされ、銀河間の旅をすることになるかもしれません。地球の壮大な旅がどこへ向かうのか確かな答えはなさそうです。それにしても、なんという刺激的な旅なのでしょう。

将来の分まで入れると太陽の周りを百億回も公転し、その365倍も自転しながら宇宙を駆け抜けていく。これほどしびれる旅はほかにはないでしょう。

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参考資料:BS11ディスカバリー傑作選・解明宇宙の仕組み「地球の行方」など。