1 長期修繕計画騒動
1-1 長期修繕計画の変遷
2003(平成15)年8月23日発行の理事会報題145号「修繕工事の日程表完成」の中で、これまでの長期修繕計画への対応をお知らせしました。
・ 13.01.28 北海道マンション管理組合連合会(以下「道管連」と略)
の相談窓口で長期修繕計画作成を依頼。
・ 13.02.25 道管連相談員の一級建築施工管理技士をお招きして長期
修繕計画勉強会でベランダの支柱が危険と指摘される。管
理用物品庫の棚上に書類が詰め込まれたダンボールを発見
し、内容を確認すると平成3年11月作成の長期修繕計画
(一部現状と不一致)を発見する。
・ 13.04.01 道管連一級建築施工管理技士より新長期修繕計画書を受
領。
・ 13.04.29 道管連一級建築施工管理技士をお招きして長期修繕計画
勉強会したが、数字の根拠が示されない(別途有料)ため
信頼性に乏しいと判断される。
・ 13.06.10 道管連一級建築施工管理技士が危険とされたベランダの
フェンス支柱を、マンション建築施工会社の一級建築士
5名が点検し危険性はないことを確認する。
・ 13.08.01 マンション管理センターへ「大規模修繕工事を成功させ
るためのポイント」の著作権使用を申請。
・ 13.08.06 村井忠夫研究員レポート「大規模修繕工事を成功させる
ためのポイント」の著作権使用許可をいただき、区分所有
者と賃貸契約者全員へ印刷配付。
・ 13.09.23 マンション管理センター発行の「計画修繕工事の進め方
(改訂版)」を購入して居住区分所有者へ配付。
・ 13.10.29 不動産販売札幌支店へ請求した「大規模修繕用書類(設
計変更図面を含む)」を受領。
・ 14.04.22 区分所有者にコンサルタントの推薦を募集。
・ 14.04.27 シルバー建物診断グループと建物診断建築設計協同組合
にコンサルタント費用見積もりを依頼。
・ 14.05.06 北海道マンション問題相互支援ネットワーク主宰者より
大規模修繕コンサルタントの業務内容について理事会で説
明をいただく。
・ 14.05.12 第一回マンションツアー(建物の現状把握)を開催。
・ 14.08.02 シルバー建物診断グループの建築診断コンサルティング
業務説明会を開催。
・ 14.08.10 建物診断建築設計協同組合の建築診断コンサルティング
業務説明会を開催。
・ 14.09.21 北海道マンション問題相互支援ネットワーク主宰者寺地
信義一級建築士をお招きして建築診断コンサルティング業
務説明会を開催。
・ 14.11.17 大規模修繕工事コンサルティング業務を、臨時総会で寺
地信義一級建築士と契約を承認。
・ 15.05.11 第二回マンションツアー(建物の現状把握)を開催。
・ 15.05.14 寺地信義一級建築士が、新長期修繕計画策定と必要費用
算定のための建物診断を実施。
・ 15.06.22 寺地信義一級建築士の建物診断結果と長期修繕計画説明
会を開催。
・ 15.08.01 新長期修繕計画表完成(但し、南面大規模改修工事完了
後に竣工検査結果を加えることを約束)。
1-2 理事会での検討内容
2004(平成16)年2月28日発行の理事会報題174号で「長期修繕計画に含める修繕箇所等を検討」をお知らせしました。
1-2-1 長期修繕計画に含める修繕箇所
ア. 受水槽室内配管と受水槽架台の塗装について
駐車場除排雪作業日に駐輪場扉の調整後、理事と共に受水槽室を点検すると、排水用水中ポンプを固定する三角形の支持金具の表面は真っ赤にサビ配水管接合部のネジ切り部分にもサビがみられました。また、平成13年10月15~16日にサビを落として塗装し直した架台と固定用ボルトに再びサビの兆候が見えます。
飲料水が通る配水管のサビ止め塗装は次年度の事業として総会に提案し受水槽架台の塗装は2~3年後でも間に合うと思われます。今回、架台の鉄骨部分は水滴が落ちて水溜りができ、次第に塗料を酸化させていく様子がはっきりと確認できましたので、受水槽清掃後は架台周囲の水を完全に拭き取るようにすべきです。
管理会社より、受水槽清掃後の架台周囲拭き取りを清掃業者に指導するとの回答がありました。
イ. 駐車場の一部陥没補修(建物南西側の角付近と建物北西側の水道メー
ター付近及び車止め基礎)について
毎年陥没状態が深くなっていくので、雪解けを待って陥没箇所を業者に見てもらい、危険性があるなら次年度の事業として総会の議題にしたいと思います。
ウ. 共用部の内部と鉄部塗装時期について
日本塗装の調査報告書で、共用部内壁と天井全般については「緊急な処置は必要としませんが美観上の低下を招いておりますので2~3年目を目処とした修繕計画」、鉄部全般の状態は「将来的な劣化を踏まえて5年程度を目処とした修繕計画」をお勧めするとあります。
簡易建物診断と南面改修工事の結果を加味した長期修繕計画案が月末に届く予定ですが、東西面と北面を含めた大規模修繕はほぼ5年後と推測され、それまでは待てると思われます。
エ. 長期修繕計画書の手直しについて
月末に届く予定の長期修繕計画案を元に、受水槽内の塗装や駐車場の陥没修理、共用部の鉄部と内壁等の塗装、インターロッキングの状況を判断し、補修周期などを組み入れる作業を行います。建物や施設設備の状態を知るため、役員は年に3~4回程度点検する必要があると思います。
1-2-2 南面改修工事の実施部分点検
ア. バルコニー帯部と、建物接続部上のシールについて
103号のバルコニー帯部と建物の接続部端のシールが縮んだ状態となっています。室番号末尾が「1と4」の戸室はご確認の上、理事長へお知らせください。
イ. トランクルームの扉(向かって右側)調整について
扉の上部が戸枠とこすれて一部塗装がはがれてきました。早急に調整すべきと考えます。
ウ. 六階屋上北側、東棟エレベータ棟西側のシール処置について
建築当時の手抜き工事と劣化により、雨水が入り込む状態となっている部分があります。南面改修工事のCD-ROM「16.シーリング不良箇所」と「24.不良箇所」に写真が記録されています。高所作業車がきていたときに気づいていればと残念でなりません。屋上出入口の扉枠外側の補修跡にも楔型のかなり深い亀裂が見えますので、雪解けを待って状態を確認しましょう。
1-3 長期修繕計画のデータを清書
南面の大規模改修工事を終えた寺地信義一級建築士より、メールに添付されてデータの入っていないエクセルの「長期修繕計画及び修繕積立金計画」作表が届きました。表の形式を検討していると、二箇所のマンションから大規模修繕コンサルタントの依頼を受けて忙しくなってきたとのお話があり、長期修繕計画に入力するデータをメールで送信いただければ清書して結果を確認いただくことにしました。
深夜に時々届く数字を入力していくと、一週間後に長期修繕計画及び修繕積立金計画の表ができました。これに理事会からの要望事項を加えメールに添付して内容の確認を受けると、平成16年3月7日に「長期修繕計画及び修繕積立金計画(修正案)」が届きました。
1-4 長期修繕計画を配付
2004(平成16)年3月28日発行の理事会報題178号で「最新の長期修繕計画を配付」をお知らせしました。
昨年秋に実施した改修工事で南面タイルの状態を打診調査しました。また、東面と西面の窓を中心とした縦長の一帯も調査しました。この結果、南面は9,896枚、東面は70枚、西面は181枚のタイルがひび割れや浮きで劣化していました。保管場所(受水槽下)があるので、景気が上向かないうちにタイルを発注すべきと考えています。
簡易建物診断や南面改修工事の際に掌握した建物の状態を考慮して、最新の「長期修繕計画」が平成16年3月7日に完成しました。長期修繕計画及び修繕積立金計画は修正案となっていますが、内容的に問題はないと理事会での検討が終わりましたので印刷配付します。
1-5 構造計算書を失う
2004(平成16)年6月6日の定期総会で「長期修繕計画及び修繕積立金計画(修正案)」を承認いただき、第23期役員はホットして退任しました。
2006(平成18)年6月に理事長より「大規模修繕の時期が近づいているので、理事会全員の推薦で新年度の役員をお願いしたいと決まりました。南面の大規模改修工事を経験した役員2名にも新年度役員の内諾を得ています。」とのお話があり、第15期の総会で承認されました。
更に、昨年の年度当初に管理会社の担当者より「長期修繕計画は最新のものとすべき」と提案があり、管理会社作成の「長期修繕計画」の承認を求められました。寺地一級建築士の「長期修繕計画及び修繕積立金計画(修正案)」と数字が異なっている部分があるので質問すると、これまで管理会社が大規模修繕を受注した時の数字で実績があると答えます。
なぜ長期修繕計画の見直しを寺地さんの一級建築設計事務所へ依頼しなかったのか尋ねると、電話したが誰も出ないので寺地一級建築士逝去に伴い建築設計事務所は閉鎖されたと事実と異なる回答をし、委任状多数で承認されました。寺地一級建築士の「長期修繕計画及び修繕積立金計画(修正案)」で大規模修繕は「平成19年度」とされ、「管理会社作成の長期修繕計画書」でも同様になっています。
2006(平成18)年7月4日発行の理事会報第199号で「財産と安全管理の原点へ戻ろう」でお知らせしました。
7月1日午後6時30分より、町内会館で新旧役員の引継ぎが行われました。業務を引き継ぐ前に、総会議案書の第五議案で何を提案しようとして何が決まったのか、総会議事録を読んでも不明確のため新役員はどのように対応すべきかを質問しました。管理会社の担当者が作成した議案書と議事録で、作成者は配置換えとなって欠席のため意図しているところが見えず、必要なら新理事会で見直せば良いという理事長のおはなしでした。
どちらの長期修繕計画書でも大規模修繕は平成19年度になっていますが、これまでどのような準備をされてきたのですかと質問すると、理事長は「何もしていません。」と胸を張っています。
急な出張で役員予定者は全員揃いませんが、欠席者の意向を伺うことができないまま管理規約の規定により役員を互選するよう求められました。欠席裁判となる心苦しさから出席者が重要役職を引き受けざるを得ないとし、新役員を次のように互選しました。(役員名は省略)
創立20周年記念「管理組合沿革史」に次の記録があります。
18.07.03 過去二年間理事会動向は未公表のため、平成17・18年度の理事会議事録を複写し全理事へ配付して議事内容を確認。「第14期定期総会議事録」に「構造計算書は組合が保管」と記録されているが、引き継ぎはないのでマンションの新築工事を施工した建築会社へ照会。会社更生法を受けることとなった平成17年12月末に、引き取り請求のなかったマンションの「構造計算書」は処分したと回答されました。
2 大規模修繕の延期
2-1 派生する要改善事項
2006(平成18)年6月6日の定期総会で第15期の役員になりましたが、前年度の理事会は平成19年度に予定されている大規模修繕の準備を何もしていません。どこから手を着けるべきか悩んでいると、年度当初から「電波障害の解消(第27章)」「ななかまどの処遇(第14章)」「凍上舗装とマンホールの補修(第21章)」「Bフレッツの導入(第27章)」などの対応に追われました。
さらに、平成19年2月に非常照明の改善指導を受けて「照明設備の大規模改修=省エネの実現(第32章)」が必要になり、2007(平成19)年3月20日に臨時総会を招集しました。3月17日に発行した理事会報第215号で「臨時総会の議題」をお知らせしました。
マンション管理組合の定期総会では、決算案とか予算案のように定型的な提案事項が議案となります。しかし、臨時総会では賛否が分かれがちな重要議題が提案されます。このため、提案する内容をあらかじめ周知してもらう必要性と多くの方々のご意見を伺う目的で、事前に説明会を開催することが推奨されています。やむを得ず委任状を出さざるを得なくなった場合でも、説明会に出席した方は提案される内容について把握しているのでその方の意見は委任される方に反映されているとみなすことができるとされています。
マニュアルどおりに説明会を開催しましたが「世界ノルデックスキー札幌大会」の時期と重なり多くの方々にご出席をいただけない状態でした。主催者側の不手際としか言いようが無く心からお詫び申し上げます。このため臨時総会ではみなさま方のご意見をお伺いした上で、次の事業についての賛否をお願いいたします。
第一号議案 照明の改善について
中規模修繕に匹敵する内容のため、議案書では項目別に提案趣旨を述べました。ご意見をいただいた上で、照明の改善についての議案賛否は一括とさせていただきます。
当初は、非常灯兼用照明器具のみの一括更新を考えて見積もりを取りました。設備を点検している過程で、玄関照明の改善もこのさい出来ないだろうかと見積もりを取りました。更に、屋内共用部照明の改善情報をいただき、費用の見積もりをお願いしました。三種類の工事を別々に見積もるとかなりの金額になります。二種をまとめた見積もりの説明時に、三種類をまとめて工事をすると無駄な費用が削減できると伺い一括で見積もりをお願いしました。更に、玄関の照度実験や新製品情報を加味して最終的な工事規模がまとまりました。このような過程を経て、200万円近い工事費は1,390,200円まで圧縮することが出来ました。任期が終わろうとしている時期にあたり次期役員に仕事を押し付けるのは失礼と考え、臨時総会で賛意を得られた場合は現役員が業務完了まで担当しようと考えました。
第二号議案 大規模修繕について
管理会社の建物点検報告書を見ながら建物と設備の状態などを点検していると、南面改修工事の事前に行った建物診断や診断説明会、工事完了後の長期修繕計画作成で受けた寺地一級建築士の説明が浮かんできます。この貴重な体験を基に点検結果を判断すると、指し当たって修繕を急がなければならない施設設備は見当たらず、理事会は大規模修繕の実施時期を「平成22年春」まで延期すべきとしました。
大規模修繕実施時期を延期することで実施時期までの準備計画を練る時間が生まれ、南面改修工事の寺地一級建築士に推薦いただいた「計画修繕工事のすすめ方」や「マンションの調査・診断(維持保全の秘訣)」などの書籍を参考に、延期した大規模修繕実施時期「平成22年春」までの計画を作成しました。
管理組合の運営はもちろん施設設備の状況、大規模修繕の準備状況や準備過程での問題点や解決方法などについては、理事会だけが知っていれば良いというものではなく、区分所有者全員にかかることなので情報公開の徹底は欠かせないと考えての提案です。
ア. 南面バルコニーを除く大規模修繕の実施時期を、平成22年春とす
る。
イ. 大規模修繕準備計画にそって理事会は準備を進め、必要となる作業
はその都度追加する。
ウ. 準備や作業の進行状況、その他修繕に関する情報公開を徹底する。
2-2 役員留任を提案
2007(平成19年)5月27日開催の定期総会で「平成19年度役員の選出について」提案して承認されました。
ア. 役員選出の基本的考え方について
平成22年度の春に実施する「大規模修繕」は、敷地内・建物外壁・屋上から地下ポンプ室と貯水槽室までの敷地と建物のすべてが対照となります。平成15年度に南面改修工事で処置した、南面の帯部・バルコニーのフェンス・床面ウレタン防水・雨水排出用側溝と配水管、天井塗装と窓枠などのコーキングを除き、本来の意味での大規模修繕となります。居住されている区分所有者全員とそのご家族はもちろん、賃貸居住者と不在区分所有者のご協力は欠かすことができません。
大規模修繕は南面改修工事以上に気苦労の多い事業となるため、意欲のある方に担当していただきたいと願っています。立候補者多数の場合又は立候補者がない場合は、管理規約第33条第2項の規定により総会で選任しますが、総会での役員選任に当たっては臨時総会での話題を参考にし、輪番制などでお願いすることは避けたいと考えます。
イ. 役員の任期について
役員の任期は、南面改修工事の当時と同様に大規模修繕が完了する平成22年度末までが望ましく、担当する方々も使命感を持って取り組むことができます。単年度ごとに役員が交代すると過去の検討内容や了解が得られている事項が忘れられ、措置が終わっている工事が追加され必要な工事が削除されるなどの支障がでてきます。区分所有者の財産保全を託すわけですから、役員の双肩にかかる重圧は言葉では表現しがたいものがありますが任期の継続は避けて通れないと考えます。
ウ. 総会議事録の記録
平成19年度から大規模修繕が完了する平成22年度末までの任期で現在の役員は全員留任が承認されました。
3 セミナーで学んだこと
3-1 建診協の勉強会参加報告
2007(平成19)年6月18日発行の理事会報第第222号で「大規模修繕の進め方と事例、建診協マンション勉強会参加報告1」をお知らせしました。
6月10日(日)午後1時から東札幌の札幌市産業振興センターで、建築診断設計事業協同組合(略称:建診協)北海道支部主催の全国通算第51回建診協マンション勉強会「大規模修繕の進め方と事例報告」が開催されました。また、隣の道立職業能力開発支援センターでは、メーカー14社による「マンション再生のための技術展示」が行われました。このマンション勉強会の概略を4回に分けてお知らせします。講師は、建築診断設計事業協同組合の山口実理事長です。
建診協北海道支部には南面改修工事の計画段階でお世話になりました。平成14年6月8日、建診協北海道支部の技術者3名に簡易建物診断をお願いし、8月10日開催の第2回大規模修繕研修会で診断結果の説明をいただき、この結果も参考にして南面改修工事の実施に踏み切った経緯があります。紙上を借りてお礼を申し上げます。
○ 大規模修繕の進め方 管理組合の選択
ア. 分譲マンションとは
マンションは複数の家庭や人々が「ひとつ屋根の下に暮らす共同生活」の場であり、専有部分のひとつを所有しながらその他の部分をマンションの区分所有者の共有財産とする特殊な建物です。共用部分というのは、本当は場所でなく所有権の話なのですが、日本人はこのパブリックなものを扱うのが苦手です。公=パブリック=共用部分というものを大切にしなければ、個人=専有部分の権利も守れないというのがなかなか理解されません。
マンションの価値を決定する要素は、専有部分の比率よりも共用部分の比率のほうが高いのです。自分のマンションの価値を維持し向上させたいなら、まずは共用部分の保全に興味を持ち前向きな管理や維持保全をすべきなのです。新築時に入居したマンションも、10年を過ぎる頃には多くの方が室内リフォームを検討します。売る時にはなるべく高く売りたいので綺麗な内装を施します。いくら専有部分を一生懸命リフォームしても、自分の部屋までの外壁や玄関、廊下などの共有部が汚かったら何にもなりません。この大きな勘違いにどれだけの人が気付くでしょうか。悲しいことに、ほとんどの人が共用部分の管理については無関心です。
新築マンションの販売ブームが続いていますが成約率は急激に落ちています。日本の住宅ストックは約5千万戸といわれ、これに対して世帯数は約4千4万戸ですから数の上では供給が需要を上回っています。大手のデベロッパーによって推し進められる大規模で超高層のマンション供給は、若年層をターゲットにしているため将来的に不良債権を増大させる危険をはらんでいますし、中古マンションの販売価格もまだまだ下落する方向にあります。ローンの残債がある方や退職金で完済した人には資産デフレですから深刻な問題です。
圧倒的大多数の居住者や所有者の無関心が「マンションのスラム化」を促進させています。「管理ですか、誰かがやるんでしょう。」「管理費を払っているから管理会社がやってくれます。」「仕事が忙しいので。」「近所づきあいをしたくないからマンションを買ったので、私の生活に干渉しないでください」。マンションに住むと、防犯、防災、経済性をはじめとして、かなりのメリットがあります。そのかわり共同住宅ですからそれなりのルールと他人に対する配慮も必要になります。例えば、配水管の詰まりは比較的低い階に現れますが、上の階の人たちは理解できにくいのが現状です。雨漏りは比較的上の階に多い現象で、下の階の人達は他人事になりがちです。しかも、漏水や雨漏りは即マイナスレッテルを貼られ資産の下落に直結する問題となります。
小規模マンションの管理は意識改革が出来ないと不利なことが多く発生します。第一の問題は戸数が少ないことです。管理費用も大規模修繕も戸数に関係なくどうしてもかかる基本的な費用があり、一棟は一棟ですから割高になるのは仕方がありません。第二に、全体的人数が少ないために人材も少ないといえます。マンションの管理はそもそも自らが管理することが理想で、人材や資金が豊富な大規模マンションでは理想的な自主管理が行われるケースが増えてきました。人材と資金が不足している小規模マンションでは、意見が違っても当たり前という概念を定着させることが必要です。お互いの利害を調整して共通する資産価値の向上へ向けて気楽に話し合えるように、集まりには率先して参加することが大切です。また、小規模マンションの自主管理で人材不足による情報不足を補うには、他のマンションを訪問して理事会の対応を尋ねたり、勉強会などで他のマンションの対応を学んだり率先して管理に関する最新情報に接することが大切です。できることはみんなでやるとの意識改革が図れれば、不利を有利に変えることも理想的な自主管理の形態を作ることも小規模マンションでは可能なのです。
イ. 大規模修繕を成功させるために
大規模修繕は管理組合の事業です。管理会社や一部の熱心な人達だけで行うものではありません。意思決定は区分所有者全員の合意で進めていくもので、意思決定の唯一の機関は管理組合の総会です。大規模修繕は管理組合の「合意形成に始まり、合意形成に終わる」事業であるといえ、大規模修繕を成功させるためには「公正」「公平」「公開」による健全な合意形成が必要です。どんなに急いでも事後承認は疑惑をもたれ、理事会などで決定したことを公表しなければ不信感をもたれます。残念ながら組織運営に疎い方がマンションには多いのです。
新築工事と異なり、住人が住みながら行う工事は条件が厳しく、技術的な限界があり創意工夫が求められます。このため、区分所有者と居住者の協力に加え、工事の進捗状態を知らせる広報は大規模修繕成功の必須条件とされます。さらに、区分所有者は「金を出すからお前らがやれ!」ではなく、管理組合(区分所有者)、居住者、監理者、施行会社、管理員等々、すべての関係者が協力して行うものであることを忘れてはなりません。
2007(平成19)年6月27日発行の理事会報第第223号で「大規模修繕の進め方と事例、建診協マンション勉強会参加報告2」をお知らせしました。
ウ. 大規模修繕の第一歩は
まず、施行会社の選び方、管理組合の体制、大まかなスケジュール、積立金の額と概算予算を考えることから始めます。次に、施行会社とも管理組合とも利害関係の無いパートナー(コンサルタント)を選択します。一般的に建築事務所をパートナーとした設計監理方式(施行以外の、診断・設計・監理を依頼)が無難といえます。工事監理は「設計図書どおりに実施されているかを確認すること(建築士法)」で、設計監理は「設計監理と施行を違う立場の人が行う方式」をいいます。
施行会社の選び方には、数社から見積書を集める「競争見積」方式と、工事会社を初めから一社に決めて進める「特命随意契約」方式があります。競争見積の場合は、調査診断報告書、工事仕様書、数量表、比較表、その他(応募要領、施行条件、支払条件など)の改修設計図書が必要となります。競争会社が多数の場合は段階的に行う必要があり、設計事務所を補助として管理組合が業者の選定を行います。この場合、単に金額だけで選ぶのは危険で、完成品を買う「売買契約」と異なり工事の契約は「請負契約」であるため、残念ながら「安かろう悪かろうが」あります。工事の途中で追加工事も発生しやすく、結果的に高い買い物になりやすいといわれます。
特命随意契約の場合は総会などで事前に合意を得ておくことが必要で、施工業者選定については明快な理由が必要になります。しかし、どのようにして信頼できる施行会社を見つけるのか、良い業者との噂を聞いても信頼できるかどうかの判断は素人にとっても難しい問題です。大規模修繕を行っている複数のマンションを見学に行き、修繕委員長や理事長から施行業者の評価を聞きながら仕事ぶりを観察して施行業者を選定すると間違いが少ないとされています。いずれの方式を採るにしても、大規模修繕は建築事務所と施行会社との共同作業ですから、調査診断、改修設計、工事監理のすべての段階で管理組合への報告と検討が含まれます。
エ. 大規模修繕は楽しくやる
5年前の工事のことが分からないのは分譲マンションの役員だけで、その無関心さ無責任さには驚かされます。記録を残し、記録を読むことも役員の義務とわきまえていないことが不思議です。管理会社にお金を払っているのだから自分は何もしなくても良いとか、名前だけを貸してやるからあとはお前が働けという態度を見てこの人は常識のある社会人なのかとしげしげと顔を眺めたこともあります。
大規模修繕施工中の留意点を挙げると、施行条件を出来るだけよくし、気持ちよく作業をしてもらえるように工夫することが大切です。また、施工ミスや伝達ミス、勘違い等々は日常的に発生するので早め早めに処理し、管理組合、施工業者、設計事務所が一体となって相互のコミュニケーションを大切にしながら進めます。国土交通省が平成13年に打ち出した施策で、「住宅は評価される時代になり、良質なリフォームをする」ことで資産価値を守る時代です。健全な管理や、計画修繕の準備や適切な対応をすることで資産を守れますが、それを怠っていると下落に歯止めがかからなくなる恐れがあります。
最後になりましたが、施工会社選定のルールを明確にし、管理組合運営の原則に従い、情報を公開して多数決原理に従い、議決して記録を残し、関係者のコミュニケーションを良くすることが大規模修繕成功への近道です。
2007(平成19)年6月18日発行の理事会報第第224号で「大規模修繕の進め方と事例、建診協マンション勉強会参加報告3」をお知らせしました。
マンション勉強会で説明された改良改善実例で、長期修繕計画ができた平成16年3月7日当時に原因も対策も分からなかったことが解決していました。私たちのマンションに当てはめてみます。
屋上防水工事は、不透水性の皮膜を形成することで防水する「メンブレン防水工事」が多く、アスファルト防水工事、塗膜防水工事、シート防水工事が含まれます。ウレタン、アクリル等による塗膜防水工事は、露出、軽量で補修工事などに適していますが傷みやすいという欠点があります。アスファルト防水工事は、アスファルトで防水層を形成しその上からコンクリートスラブで補強するのが一般的で、修繕までの寿命は約13~15年といわれます。お隣のマンション屋上はアスファルト三層防水のみで保障は10年でした。最も寿命が長いとされるのがシート防水で、塩ビ系のシートをかける露出タイプですが、一度工事をすると25年は持つそうです。
オ. 改良改善の実例(防水工事)
右側の写真は屋上北側です。左端の建物のふちは屋上の床より少々高くなっています。この部分を立ち上がりといい、天を向いている部分の笠木上で防水層をアルミアングルで押さえ、ずり落ちないようにネジで躯体に固定しています。これまでは、躯体コンクリートの上に防水層(幕)をかぶせ、断熱用のウレタンマットを敷き詰め、強風に耐えられるように固めた砂利で押さえていると推測していました。
長期修繕計画作成のために数回建物診断を実施しましたが、過去にお出でいただいた一級建築士はどなたも左下写真にある防水層立ち上がり部分の「ふくれ」の原因がわかりません。水が溜まっている、水蒸気で膨らんでいる、膨れている部分を切り開けば分かるが防水層を補修してもその部分は弱くなる、そっとしておこうが結論でした。
マンションは水溶きコンクリートで造られ、購入した年はエレベータ横の窓を開け放して蒸発を促しました。建築後1年目点検で各住戸にお邪魔したとき、お子様がいらっしゃるお宅などは洗濯物からの湿気が充満していました。コンクリート内部や各住戸の湿気は上昇し、出口を求めて五階と六階の天井に集まります。初夏を迎える頃になると、コンクリートは暖められて水蒸気を放出します。ところが、天井は塩ビ系の防水幕で密閉されている屋上の床です。
コンクリートに含まれる水分が暖められて水蒸気に変わると体積が約1,200倍に膨張します。この時に気圧差が生じて防水層を膨らませます。秋には水に戻り、冬は氷に変わり、再び暖かくなると水蒸気になります。「フクレ」の繰り返しにより防水層に伸び縮みが発生ししだいに劣化して亀裂(右側写真)が生じます。
カ. 防水層のふくれ
現在の新築マンションでの防水層ふくれ対策はコンクリートスラブ(屋上の床)が十分乾燥している条件下で行われます。通気テープを用いて水蒸気を誘導し、25平方m~100平方mごとに設けた脱気筒、脱気盤や立ち上がり部の脱気孔に導いて外部に水蒸気を放散させる方法が採られています。通気シートはポリエチレン発泡シートなどに特殊な溝をつけ、溝空間を利用して水蒸気を通気放散させるもので、入隅に穴あきパイプを設置して水蒸気を通過させる方法やコンクリートスラブ中に脱気装置を埋め込んでおく方法などもあります。
キ. 防水シートの劣化対策
私達のマンション屋上防水は「外断熱防水砂利押さえ工法」という、南面改修工事のコンサルタントであった故寺地一級建築士の表現を用いてきました。マンションの竣工図面には「断熱防水、豆砂利、カチトール、SF板(ア)50、アスファルト三層」。設計変更図面には「断熱防水、豆砂利コンクリート(ア)50,カチトール、SF板(ア)50、アスファルト三層」と説明があります。また、内覧会のときにもらったパンフレットには「陸屋根,アスファルト防水、カチトール砂利まき仕上げ」とあり、入居時にいただいた建築会社の「建物維持・管理の手引き1 マンション新築工事」には「屋上はアスファルト断熱防水砂利敷き」となっています。
アスファルトを三層にして防水層を形成し、その上からコンクリートスラブで補強するアスファルト防水は修繕までの寿命が約13~15年といわれます。塩ビ系のシートをかける露出タイプは、一度工事をすると25年は持つといわれます。しかし、同じ建築業者が施工した清田のマンションで図面上はアスファルト三層となっていても実際は一層しかなかったという例もあります。私たちのマンションはアスファルトを三層にした上に塩ビ系のシートをかけ、カチトール砂利まき仕上げになっています。アスファルト防水の状態を見ることは不可能ですが、シート防水はかなりの強度がありそうです。
左端は平成15年6月12日に撮影した防水層で、ニキビ状の斑点が無数に現れて全体がゴワゴワしています。入居当時は銀色に輝いていた塩ビ系のシートは直射日光にさらされて色あせ、11年間も放置されたままになっていました。管理会社は建物点検で気付いているはずですが、劣化が進んでいるとの報告も塗装提案もしてくれません。
なんとか長持ちさせようと臨時総会の承認を得て、平成16年6月にシルバートップコートによる塗装を行いました。右側の写真は平成16年6月27日に撮影したもので、防水層の表面色は入居時と同様の輝きになりましたが、水蒸気の影響による伸び縮み劣化は止めようがありません。入居してから5年毎にシルバートップコート塗装を行っていれば、直射日光にさらされる劣化をもう少し食い止めることができたでしょう。
ク. 屋上の砂利押さえ
屋上の砂利は接着剤が劣化してボロボロと剥がれ落ちます。カチトール砂利まき工法には散布工法と混合工法がありますが、左下の平成5年6月19日撮影の屋上写真を見ると散布工法と推測できるそうです。散布工法は砂利を30mmの厚さに敷き並べ、その上から硬化剤入りの特殊改質アスファルトエマルジョンを散布する工法です。
右下の写真は西棟五階屋上ですが、砂利の接着剤劣化は著しく、表面を触るだけで砂利がボロボロと剥がれ落ちます。大規模修繕デベロッパー前田建設の担当者も表面を触って危険と判断され、砂利全体にカチオン樹脂撒き工法を採ることを推薦さてれ見積もりを依頼しました。
ケ. 理事会による小破修繕
定期総会議案「平成19年度の事業計画」で理事会が実施する補修は完了しました。駐車場ラインの引き直しは、表面劣化が進行し過ぎているのでオーバーレイを検討してからになります。また、外注する小破修繕は見積もり依頼を完了しました。しかし、給水管の繰上げ更新や駐車場のオーバーレイなどが新たに出てきました。
平成22年春に予定している大規模修繕で屋上防水の更新が計画に含まれています。塩ビ系のシートを剥がしアスファルト防水を三層に重ねてコンクリート押さえにするか、アスファルト三層防水のうえに塩ビ系のシートをかぶせてアルミ笠木で覆うか、これから検討しなければならない課題です。塩ビ系のシートをかぶせると脱気装置が必要になりますが、カタログの説明のように機能していないという事例も聞いています。
2007(平成19)年7月15日発行の理事会報第第225号で「大規模修繕の進め方と事例、建診協マンション勉強会参加報告4」をお知らせしました。
年数を経て劣化した機能を初期状態へ戻すのが「修繕」で、最先端の機能水準に上げていくのが「改良・改善」とされています。新築マンションと競争力を持たない単なる中古ではなく、いつでも買い手がつくように資産価値を高める努力が求められる時期に入っています。
マンション勉強会と並列して開催されたメーカー14社による「マンション再生のための技術展示」で、実物を見ながら説明いただいた改良改善技術の中で、私たちのマンションに適切と思われるものを紹介します。
コ. 耐震性アルミ笠木
現在防水層を留めているアルミアングルとネジクギを覆ってしまえるアルミ製の笠木で、軽量で耐寒性と耐震性に優れています。雨風雪をさえぎるので、アルミアングルと防水層の隙間やネジをコーキングする作業は不要になります。現在の防水層の上に防水層を重ねる工法や、防水層を取り除いてアスファルト三層防水後に屋上ふちの立ち上がり部分を覆ってしまうこともできるそうです。(右は参考図)
サ. 丸型換気口下端水切り材
西棟外壁の換気口から流れ落ちた汚れが壁面を汚しています。換気管の内壁についた空気の汚れが水蒸気や雨に流され、壁面を流れ落ちるときに再び空気中の汚れを付着させます。最新の換気口は下に水切り用の金物がつき、汚れた水は風で飛ばされるようになっています。
シ. ライニング鋼管から架橋ポリ、ポリブデン
管、SUS管への更新
純粋な硬質塩化ビニルでつくられた水道用高性能耐衝撃性硬質塩化ビニル管は、人体に無害で水に色や臭いがつきません。内面が平滑でサビコブ、スケール、沈殿物などの付着もなく、長年月にわたり安定した流量を保持し、水道水中の塩素による水泡発生と水泡剥離を防ぎます。管の外層はカーボンブラックを含有したポリエチレンで対候性に優れています。また、架橋ポリエチレン管は、ー70℃から95℃までの耐久性を持ち、環境省があげている67項目の環境ホルモン物質を含有せず、サビルことがないので赤水や青水が発生することもなく、腐食や電食による漏水トラブルもありません。
給水管を交換するときは断水時間が短いのが理想のため、ワンタッチ接合で工事に要する時間が大幅に短縮できるよう工夫されていました。
ス. 集合住宅向けゴンドラ足場システム
小規模マンションの修繕工事では、どうしてもかかる基本的な費用は大規模マンションと同じですから割高にならざるを得ません。近隣マンションでの大規模修繕を見に行くと、工事期間中は建物全体がネットや足場で覆われ、バルコニーで洗濯物が干せずうっとうしいイメージがついて回ります。作業員の往来や作業終了後の防犯にも気を配らなければならず、仮設足場の設置と解体には時間とコストがかかります。
南面改修工事のときはゴンドラ工法を採用し、当時のコンサルタントは将来大規模修繕を実施するときもゴンドラ工法で十分との判断をしていました。足場設置期間がないので工期も1/3以下に短縮され、そのぶん支出を抑えることができます。工事期間が仮設足場を組んだ場合と同様にかかったとしても費用は割安となります。
セ. 外壁タイルの環境対応型修復洗浄剤
右の写真で、四つ並んでいる換気口から流れ落ちた汚水でタイルが変色しています。従来はシンナーや塩素を薄めて洗浄していましたが、関西ペイントが外壁タイルと窓枠などのアルミ素材等に対しても非常に高い洗浄力を持つ専用洗浄剤を開発しました。環境対応型修復洗浄剤の試験施工も年内実施を検討しています。
4 大規模修繕の準備試案
2007(平成19)年10月30日発行の理事会報題234号「大規模修繕の準備試案1/4」で、「大規模修繕工事の修繕項目」をお知らせしました。
4-1 大規模修繕工事の試案作成
平成22年度春に予定している大規模修繕でどのような工事を行うか4回シリーズで考えていきます。これまで集めた多くの資料から最適なものを抽出し、試案を作成するために話し合いが必要な材料を投げかけます。疑問や改善策など前向きのご意見をご記入された用紙に、住戸番号を付して理事長のメールボックスへお願いします。
4-2 大規模修繕工事の修繕項目
ア. タイル補修工事
剥離したタイル落下による事故防止の目的もあり、平成16年度に実施した南面と東西面のタイル打診調査結果に基づいてタイル全体の2.0%程度を更新する必要があります。
イ. シーリング工事
外壁コンクリート打ち継ぎ部分の継ぎ目、窓枠などのサッシ建具とコンクリートとの隙間を埋めたシーリング材は経年劣化のためすべて取り除いての更新が必要です。
ウ. 屋上防水工事
バルコニーの防水工事は平成16年度に完了し、屋上の防水層補修工事は10月29日に手直し工事が完了しました。平成22年度の春には屋上の防水全面改修工事、アルミ製笠木の導入、東西棟五階屋上出入口水切り板下の防水層爆裂部分抜本的対策などが必要です。
エ. 金属・建具・雑金物類更新工事
東西棟エレベータ機械室の出入口、六階屋上の出入口、東西棟五階屋上の出入口、駐輪場の出入口、トランクルームの出入口の「扉と扉枠」は鉄製で4~5年に一度はサビを落として塗装しなおさなければなりません。コンサルタントをお願いした故寺地一級建築士は、維持費の面も考慮してサビにくいステンレス建具への更新を推奨されていました。また、六階屋上の出入口は冬季期間中もエレベータ点検者が出入りし、積雪で扉が開きにくいことから蹴飛ばすことで変形しています。へこんだ部分から雨や雪が吹き込むので、扉を小さくして床から30cm程度は嵩上げしなければなりません。
避雷針やテレビアンテナの更新はまだ先になりますが、避雷針の固定用鋼鉄ボルトをステンレスボルトへ交換します。屋上フェンスの支柱は、バルコニー支柱と同様に基部に穴を開けて樹脂を流し込み、防水することでコンクリートの基礎を保護する必要があります。外壁に取り付けられている通気金物は壁の汚れを防止できる通気金物への更新も必要です。
オ. 塗装工事
屋上の雨水排水管とドレン金物塗装、バルコニーのドレン金物・物干し金物・庭園縁石と北側の飾り枠の補修と塗装は4~5年に一度必要です。東西棟玄関屋根のボンデ鋼板の塗装、駐車場照明塔の塗装と基礎部分の補修などが考えられます。
また、平成15年12月に実施した、日本ペイント販売北海道株式会社リ・ウォールグループの共用部内壁調査報告書及び内壁塗装提案書と色彩提案書を基に、風除室、玄関ホール、廊下、階段室などの天井と壁面の塗装も検討し、関西ペイントの提案も依頼して検討すべきでしょう。
カ. 配管改修工事
給水管更新工事は本年度中に実施します。排水管延命協力は不可欠でガス管更新も調査が必要です。
キ. 照明器具更新工事
照明器具の更新は平成19年度春に実施済みです。水銀灯はハライドランプ等の更新見積もりが届きました。
ク. その他の工事
東側庭園内の建物名盤と一階玄関及び外壁コンクリート打ち継ぎ部分のエフエロレッセンス痕跡消去、風除室の床シート更新、雨水排水管の水受け改良、郵便受け箱の更新、駐車場のオーバーレイとライン引き、インターロッキングの補修、インターホンの更新などが対象です。
ケ. 改良改善工事
マンション出入口の扉(東棟は調整不能状態)更新、インターロッキングのバリアフリー化、北側外窓を複層ガラスへの更新、階段室と廊下の手摺り取付け、自転車置場へのサイクルスタンド導入、防犯カメラの設置など。
2007(平成19)年11月6日発行の理事会報題235号「大規模修繕の準備試案2/4」で、「タイル補修とシーリング打ち替え工事」についてをお知らせしました。
コ. タイルの補修工事
外壁、バルコニー部分の壁、玄関ホール床、外階段等はタイル張り仕上げが施されています。これらのタイルは15年を経過し、欠けやひび割れやコンクリートからの浮き、剥れ等が発生し始めました。雨水などの染み込みが始まるとされる幅0.4mm以上の亀裂のあるタイルにしるしをつけ、9月末に足場を組まなくても良い範囲の破損タイルを張り替えましたが屋上の角に貼られている直角形のタイルは手付かずのままです。また、双眼鏡で見ると各階の外壁に亀裂のあるタイルを見かけます。これらを放置しているとタイルが剥がれ落ち、通行人に当たることがあれば大変な事故となります。また、壁などのひび割れがコンクリートのひび割れが原因で起こったとすると、コンクリートの中性化が進行しています。これらのことから10~15年周期でチェックしてタイルの補修工事を行わなければなりません。
タイルの補修工事は、事前にタイルの欠け、ひび割れ、浮き、剥れ等の発生状況を調査します。原始的ですが確実な方法として調査員がテストハンマーを使ってタイル面を叩いてその音により浮き等を調べ、欠けタイルやひび割れのあるタイルや剥れたタイルの位置と数量をまとめます。南面改修工事のときの調査で、南面の浮きタイルは4,948ヶ所9,896枚、東壁の窓がある部分は5m幅で屋上から地上までの調査で70枚、西壁の同一部分は181枚が浮いていました。故寺地一級建築士はタイル全体の2%程度を更新する必要があるとしていました。
タイルの欠けた部分は欠けているタイルをコンクリートに接着させているモルタルごと剥がします。コンクリート部分のひび割れや鉄筋のサビ等があった場合は、それを補修して接着モルタルを塗り新しいタイルを張り付けます。タイルの浮きや剥れた部分がかなり広範囲に及んでいるときには、これらをすべて剥がし取って新しいタイルに張り替える場合もあります。
タイルの浮きに対しては20~25cm間隔でタイルの目地に電動ドリルで穴をあけます。圧縮空気等を使って穴の清掃をし、その穴にエポキシ樹脂を注入してアンカーピン(ステンレス製、口径4mmでねじ加工したもの)を入れ、エポキシ樹脂でコンクリートに固定させます。このようなピン併用樹脂注入工法で浮きタイルの剥がれを防ぎます。
コンクリートのひび割れによって生じたタイルのひび割れ(0.2mm程度以上)はひび割れ部のタイルを剥がします。周辺のごみやホコリなど取り除き、ポリマーセメントペーストといわれる樹脂が入ったセメントを水で泥状にして、へらや刷毛でひび割れに擦り込んでいきます。また、ひび割れが大きい場合は、コンクリートのひび割れ部を自動式低圧樹脂注入工法、またはUカット工法により補修しその後新しいタイルを張り付けます。
自動式低圧樹脂注入工法は、ひび割れの清掃後にエポキシ樹脂を器具で少しずつひび割れの中に浸透させる工法です。Uカット工法やVカット工法は、ひび割れに沿ってダイヤモンドカッターといわれる機器でUまたはV形状の溝を掘り、溝の清掃後に接着をよくするプライマーといわれる薬剤を塗って、その上に可とう性のあるエポキシ樹脂を充填していきます。
いくら表面をきれいに仕上げても下地補修をおろそかにするとひび割れなどがすぐ再発してしまいます。修繕工事においては目に付きにくい個所の補修が非常に大事といわれています。現在までの調査でコンクリートの表面に鉄筋が露出している個所がないのが救いです。
マンションに高級感を持たせるためタイル補修工事に合わせて薬剤を使ったタイル洗浄を行い、美観の維持を図るべきと考えています。
サ. シーリング打ち替え工事
外壁コンクリートを打ち込む際に、打ち継ぎ部分の継ぎ目やサッシ等の建具とコンクリートとの隙間から雨水等が入り込まないように柔軟性のあるシーリング材を詰め込みます。このシーリング材は経年劣化で硬化したり、亀裂が発生して剥れたりします。外壁の打ち継ぎ部分等は足場が必要なため、外壁のタイル補修工事を行うときに併せて施工します。小規模マンションでは足場を設置すると負担増を招き、他の修繕が費用の面で不可能になることから南面改修工事コンサルタントの故寺地一級建築士はゴンドラ工法を推薦されていました。
建物のシーリングは全面打ち替えが必要な状態です。南面以外の窓や一階の出入口周囲など、サッシの周囲もシーリングが必要です。窓下水切り板の左右に劣化箇所が散見され、一部は変形しているのでシーリングの前に溶接などで補修が必要でしょう。バルコニーの雨水排水管用ドレン周囲の防水更新、エレベータ機械室の換気扇窓と吸気ダンパーの周囲、あかり取りの窓もシーリングが必要な箇所です。
2007(平成19)年11月15日発行の理事会報題236号「大規模修繕の準備試案3/4」で、「屋上防水改修・建具・塗装工事」についてをお知らせしました。
シ. 屋上防水工事
防水層の寿命指針は、総合技術開発プロジェクト(通称:総プロ)が作成した「防水層の標準耐用年数」で、「アスファルト防水保護仕上げの場合は17年」と示されています。実際の耐用年数は建物の立地条件や防水仕様、工法、気象条件などの諸条件によって相違が出てくるので、一様に耐用年数を工法ごとに規定することは困難ですがおおむね17年が基準とされています。
防水されている箇所は八ヶ所で、東西棟エレベータ機械室屋根、六階屋上階段室塔屋、東西棟風除室屋根の五箇所は「防水露出仕上げ」、東西棟五階屋上と六階屋上の平面部は「アスファルト防水砂利撒き仕上げ」、立ち上がり部分は「防水露出仕上げ」になっています。
防水されている八ヶ所はすべて全面改修を行います。防水方法はもっとも信頼性の高い「アスファルト露出防水断熱仕様」とし、現在ある砂利と断熱材を取り除き、下の防水層を補修してから立ち上がり部分の防水層を切り取ります。長期間縦の荷重を受け水蒸気による膨れなどによる劣化部分を取り除き、切り口はバリテープやギャレットで抑えます。現在のポリスチレンフォームよりも高断熱効果のあるポリウレタン系の断熱材を敷き詰め、この上から新しい砂付ルーフィングで全体を覆います。これを「かぶせ工法」といいます。
アスファルト防水はアスファルトを表面にプレコートした下貼用ルーフィングを施工した後、表面のアスファルトを溶かしながら砂付ルーフィングを貼り付けていくもので次世代型アスファルト防水と呼ばれる工法です。下貼用ルーフィングには溝がつけられ、防水層のふくれ防止のために水蒸気や空気を逃す工夫がなされ脱気装置を付ければ更に効果が上がるといわれます。
現在の防水層はアルミアングルでパラペットに押さえつけているだけです。パラペット端末は水切りの形状ではなく、シーリングの劣化に伴い防水層の裏側に雨水が廻り込むとの指摘を受けています。防水層のかぶせ工法後はパラペット全体を軽量のアルミ笠木で覆います。これにより、アルミアングルと防水層の隙間をシーリングする作業は不要になります。東西棟風除室屋根はボンデ鋼板があるため笠木を設置できませんが、他の六ヶ所は笠木で覆うことで防水層の裏側に雨水が廻り込むのを防ぎます。
また、東西棟五階屋上出入口水切り板下の防水層爆裂部分は、応急処置でふさいだシーリング材と戸枠を外して金属部のケレンと一部交換などの抜本的対策を講じます。
ス. 金属・建具・雑金物類更新工事
鉄製の東西棟エレベータ機械室出入口、六階屋上階段室塔屋、東西棟五階屋上出入口、駐輪場出入口、トランクルーム出入口の「扉と扉枠」を維持費の面からもサビにくいステンレス建具へ更新します。六階屋上出入口は床からの出入口までを30cmほど上げて壁を作り、扉の高さは150cm程度に抑えます。扉の内部には階段の役割をする高さ15cmほどの台が必要になると思われます。
屋上フェンスの支柱はバルコニー支柱と同様に基部に穴を開けて樹脂を流し込み、下へ水が染み込まないようにすることでコンクリート製の基礎を保護します。コンクリート製基礎の側面と亀裂は防水モルタルで補修します。エレベータ機械室の吸気ダンパーは油を注して稼動するように調整し、避雷針の固定用鋼鉄ボルトをステンレスボルトへ交換します。外壁に取り付けられている通気金物は壁の汚れを防止できる形状の通気金物へ更新すべきでしょう。駐車場照明塔の基礎部分(駐車場表面に接している部分)は防水仕様での補修を行います。
セ. 塗装工事
上の雨水排水用樋とドレン金物塗装、東西棟エレベータ機械室出入口の庇と機械室吸気ダンパー塗装、バルコニーのドレン金物・物干し金物・雨水排水管の塗装,自転車置場室出入口の庇塗装、庭園縁石と北側の飾り枠の補修と塗装は手抜きができないでしょう。東西棟玄関屋根のボンデ鋼板の塗装、駐車場照明塔も全体を塗装します。また、バルコニーの隔て板の塗装は10年後でも問題はないような気がしています。
自転車置場出入口前とトランクルーム前のコンクリートたたき部分は、屋上のエレベータ機械室への階段と同様にポリマーセメント系塗膜防水材のAEコートによる防水塗装を行います。AEコートは密着性と耐久性にすぐれ、弾性と滑り止め効果により安全性にすぐれています。
また、平成15年12月に実施した日本ペイント販売北海道株式会社リ・ウォールグループの共用部内壁調査報告書及び内壁塗装提案書と色彩提案書を基に、風除室、玄関ホール、廊下、階段室などの天井と壁面の塗装も検討し、関西ペイントの提案も依頼して検討すべきでしょう。
2007(平成19)年11月15日発行の理事会報題237号「大規模修繕の準備試案4/4」で、「配管・照明・その他・改善改良工事」についてをお知らせしました。
ソ. 配管改修工事
マンションで配管と呼ばれるのは、給水管・雑排水管・汚水排水管、通気管、雨水排水管、ガス管、幹線(電気)配管を指します。給水管は水道加圧直結方式の導入に伴い更新が完了しました。
雑排水管はキッチン・手洗い・風呂の水などの生活排水専用で、汚水排水管はトイレ専用となっています。通気管は排水をスムーズにするための息抜き役です。雨水排水管は、エレベータ機械室外壁やバルコニーに設置されています。排水管と通気管の耐用年数は15年と云われ、長期間問題を生じさせずに利用するには注意が必要です。排水管の更新は給水管更新と同様の費用がかかるためご協力をお願いします。
a. 水洗トイレにはトイレットペーパー以外のものは
流さない。
水に溶けない紙(ティッシュペーパー等)、おむつ、生理用品、タバコやガム等などを流すと排水管がつまって逆流し汚水桝からあふれて付近の方々に迷惑をかけます。修理が困難で個人負担の修理費がかさみます。
b. 水洗トイレの流れる水の量を自分で調整しない。
水洗トイレで流れる水の量は汚物を流すために適量となっています。流れる水の量を少なくするとつまり悪臭発生の原因になるので自分で調整しないでください。
c. 台所では野菜くずや残飯などを流さない。
野菜くずやご飯の残りなどを流すと排水管がつまる原因になります。ディスポーザー(食品くず処理機)は効果がないので使用しないでください。
d. 天ぷら油やサラダ油などの廃油を流さない。
下水道管(排水設備)内で石鹸と油が化合して固まりつまる原因となります。紙に含ませるか凝固剤(油を固める製品)で固めて処理するようにしましょう。
e. 灯油,ガソリン、工業用アルコール等は流さない
ようにしましょう。
揮発性の高い危険物を流すと大爆発をおこす原因となりますし,処理場の機能を著しく低下させます。また、ガス管の耐用年数は20年、幹線配管の電気配線と分電盤の耐用年数は30年とされています。
タ. 照明器具更新工事
照明器具の更新は平成19年春に実施済みです。駐車場の水銀灯はハライドランプへ更新しました。
チ. その他の工事
東側庭園内の建物名盤と一階玄関及び外壁コンクリート打ち継ぎ部分のエフエロレッセンス痕跡消去は、タイル補修工事やシーリング工事と同時に実施します。風除室の床シート更新費用はわずかで、雨水排水管の水受け改良位置は一階バルコニー下の二箇所で地下浸透から排水口へ流れ込むようにします。屋上の三箇所は陶器製の鉢を水受けにすることで飛沫からシーリングを保護します。郵便受け箱の更新はもう少し待てそうですが、駐車場のオーバーレイとライン引きは必須と考えています。インターロッキングの補修は必要ですが改良改善工事と連携して考えるべきでしょう。インターホンの更新はかなりの費用が必要で頭を抱えます。
ツ. 改良改善工事
東棟のマンション出入口扉は調整不能状態で、管理員室の警報が鳴り続けていることから、東西棟のマンション出入口扉は取手の塗装も剥げているので更新時期と考えます。高齢化が進んでいることから、インターロッキングの補修をやめてバリアフリー化し、タイルをやめて滑りにくいポリマーセメント系塗膜防水工法が考えられます。北側外窓のみを複層ガラスへ更新することで、断熱効果が向上して結露を防止できると推定され防音効果も上がります。階段室と廊下の手摺り取付けも高齢化対策で災害時の非難には欠かすことができません。自転車台数の減少に伴い、自転車置場へサイクルスタンド導入して後々の管理の効率化を考慮すべきでしょう。防犯カメラは屋上からの駐車場監視用四台、北側道路監視用二台、風除室内監視用二台の八台を導入することで犯罪抑止効果が期待できます。ハードディスクへの重複録画方式ですと、千の風が吹くマンションの場合はそれほどの費用はかからなかったそうです。
改良改善工事は大規模修繕工事費に余裕があれば実施する事業です。
5 資金計画や必要工事を検討
5-1 修繕計画を修正へ
2008(平成20)年3月28日発行の理事会報題249号で「大規模修繕へ向けての資金計画や必要工事を検討して修繕計画を修正へ」をお知らせしました。
「大規模修繕」工事は平成22年春を予定し、必要な工事の概要については理事会報第234号~第237号でお知らせしました。これらの工事を一度に実施すべきと考えていましたが、様々な方よりゴンドラや足場などを必要とする大規模修繕で実施する工事とそれまでに処置しなければならない修繕工事や改修工事を分けて考えるべきとの助言をいただき、平成20年度定期総会へ向けて年度毎の工事計画を作成しています。また,現在の資金計画に問題がないか、建築資材の高騰が止まらないことから修繕費値上げの是非についても再検討することを薦められました。
資金の現状を考えてみましょう。修繕積立金口座の平成20年1月末預金残高は15,928,689円です。平成20年2月から平成22年3月末までの修繕積立金、月額316,084円×26ヶ月=8,218,184円を加算すると、平成22年4月当初には「24,146,873円」の資金を準備できます。一方、平成20年度の一般会計予算で委託管理費-163,512円、エレベータ保守費-142,800円、除雪費-52,500円の合計「358,812円」を節約できます。
この二年間で実施した大掛かりな工事は、建物内照明改修工事、駐車場照明改修工事、給水設備大規模改修工事の三種類で、経年劣化に伴う器具や設備の更新以外に「消費電力量と電気使用料」の削減目的もありました。北海道電力の「電気料金口座振替済みのお知らせ」から月別データを集計し、各年度の決算書で金額を照合して正確性を期しました。過去15年間の平均値を求め、過去3年間の照明用と動力用の消費電力量と電気使用料を平均値と比較したのが下表です。
照明用電力 | 動力用電力 | 合計金額 | 平均値と比較 | |
---|---|---|---|---|
平成17年度 | 17,855KW 434,121円 | 13,364KW 320,150円 | 754,271円 | - 34,304円 |
平成18年度 | 17,440KW 417,618円 | 12,697KW 323,153円 | 740,771円 | - 47,804円 |
平成19年度 | 12,279KW 291,543円 | 11,674KW 308,370円 | 599,913円 | -188,662円 |
平均値 | 16,383KW 443,646円 | 14,390KW 344,929円 | 788,575円 | ± 0円 |
平成19年度の共用部電気使用料は「188,662円」減少して効果は見えてきましたが、駐車場照明改修工事と給水設備大規模改修工事の効果が現われるのはこれからで、正確な削減効果を判定できるのは平成21年3月です。照明改善計画節電予定数値より低いのは、給水設備工事中の点灯と点灯時間幅を延長したなどが要因です。
大規模修繕の規模と費用について考えてみましょう。寺地一級建築士が平成18年度に予定した大規模修繕工事費は1,674万円で、前管理会社が平成19年度に予定した大規模修繕工事費は1,855万円でした。共通している工事内容は、仮設足場工事・外壁タイル工事・外壁シーリング工事・外部鉄部塗装工事のみで、前者は共通仮設費・内部塗装工事・照明器具改修工事・改良工事を、後者は屋上防水工事・外壁塗装工事・内部床工事・外溝施設工事・外溝舗床他工事・排水施設工事・電気設備工事を必要としています。工事の内容がこれほど違うと単純に金額を比較できず、前管理会社の計画には13年度の苦い経験が生かされないまま積算基礎資料もつけられていません。双方とも給水設備工事は予定外で、照明器具改修工事と電気設備工事の一部は完了しました。
日本全体の高齢化率は20%を超え、2025年には30%になると予想されています。私たちのマンションでは、今年居住者の30%が還暦を超えて区分所有者の三分の一が高齢者となります。この状態ではあっちも老人こっちも老人で、修繕工事の必要性を痛感していながら経済的や精神的にやるにやれなくなる事態も考えられます。気力が残っているうちに資金計画を見直して、平成20~21年度中に必要な修繕や改修工事を精査し、平成22年度春に実施しなければならない工事と先送りできる工事などの計画を立てて次世代へ引き継がなければなりません。
建物診断で寺地一級建築士は駐車場と屋上防水層の延命を考えていましたが、彼の遺志を引き継いだ建物点検で平成22~23年度に屋上防水層の更新は避けられないと考えています。建物点検結果を基に長期修繕計画の修正作業を始めましたので、お気づきの要修繕箇所などについてのご意見やご要望をお寄せいただければ幸いです。なお、管理組合宛にいただいた年賀状は資金源にならず、お年玉当選番号は七通とも外れていました。
5-2 アンケートのご意見
2008(平成20)年5月31日発行の理事会報題253号で「大規模修繕へ向けての資金計画や必要工事を検討して修繕計画を修正へ」をお知らせしました。
平成19年度は屋上防水層上の砂利固定とエレベータ機械室への階段防水、給水設備の大規模改修工事、ガス瞬間湯沸器の更新を含む管理員室リフォームなどを実施しました。定期総会では大規模修繕の工事箇所と修繕方針についてご検討いただきます。また、平成20年度の一般会計事業として8件、特別会計での事業として4件を提案します。平成20年度事業として洩れているものがないかを含め、ご意見ご要望を加味するためのアンケートを実施しました。
新年度事業に関するアンケートの中で、大規模修繕修繕の工事箇所と修繕方針についていただいたご意見をすべてご紹介します。アンケートには13住戸(内、不在区分所有者1、賃貸居住者1)のご協力をいただけました。ありがとうございます。
ア. 大規模修繕の工事箇所と修繕の基本
方針についてのご意見
a. 特に問題がなく快適になっています。
b. シーリングは西側和室窓付近は西日が当たるためか劣化が進んでい
る。
c. 屋上防水は予定通り22年に実施したほうがよいと思います。
イ. 計画修繕の工事箇所と修繕の基本
方針についてのご意見
a. 建物外観関係
・ 緊急性のあるもの、事故防止の観点から必要であれば避雷針固定ボル
トは更新したほうがよい。
・ 詳細は分かりませんが、役員の方が一生懸命に対応していただけるの
で安心です。お任せしますが、具体的になったときに考えるなどいまは
分からないのが実態です。
・ 危険なところは全部直したほうがよい。
b. 屋内関係
・ 災害時対策などパイプシャフト内のブロック固定が必要です。
・ パイプシャフト内のブロックは地震などで崩れる恐れがあるので固定
してほしい。
・ 東棟のマンション出入口と風除室出入口の扉は故障が多いので取り替
えたほうがよいと思う。西棟の扉は故障していないので取り替えなくて
もよいと思う。
・ 各戸の新聞受けを大型化し強固に取り付けることを提案します。
・ タイルカーペットとはどういうものですか、ワックスガケや拭いたり
できるものですか。
c. 屋外関係
ブロック塀のモルタル補修についてはすぐ必要。
・ 駐車場のオーバーレイは大規模修繕時に、それ以外は次年度がよいと
思う
ウ. 改良改善の工事箇所と修繕の基本方
針についてのご意見
a. 防犯防災対策
・ 防犯カメラ、インターホンは今後検討。
・ 防犯カメラは不要と考えます。大きな費用をかけてまでの防犯の必要
性を感じないため。
・ 防犯カメラを設置される場合どこに何台設置か知っておきたい。
・ 防犯カメラを設置する場合かなりの費用がかかると思いますが可能な
のですか。
・ 犯対策は必要なことですが、犯カメラを設置するまでには至らない。
むしろ、建物内外共に明るくして犯罪を発生させない環境にすることが
大事と考えます。
・ 建物内部の死角に特別の対策は必要ない。ドアアイから凸面鏡で人影
を確認できますか。
・ インターホンは壊れているのでしょうか。
・ インターホンの具合がおかしく下に通じないことが何度かあった。
・ 町内会の防災用具を保管する場合出入りなどで区分所有者以外の方が
保管場所について発言力をもつ可能性が出てくる。また、優先使用は町
内会の趣旨には反すると思う。
b. 弱者対策
今後必要性があれば検討。
・ これから住人の高齢化に伴い対策を考える必要がありますね。特に、
このマンションの階段は各段との幅が狭く、やや急なので手摺があると
望ましいと思います。
・ 弱者対策としてインターロッキングのスロープ化はよいですが同時に
出入口ドアを自動扉とすることで対策はよりよくなる。
・ 今後高齢化が進むと思うので必要。
c. その他の改良
・ 動力への電子ブレーカーの導入は基本料金削減にも必要である。
・ 動力電子ブレーカーは、長い目で見て節約になるなら進めたほうがよ
い。
・ 駐輪場は狭いので,サイクルスタンドでうまく整理されるとよいと思
う。
・ サイクルスタンドの導入は不要。利用者が整理整頓すればよい。
・ サイクルスタンドは台数によるので様子を見てから。
・ サイクルスタンドは不要と考えます。台数も減ってきており導入の必
要性は感じないため。個人的には他のマンションよりは整理されている
と思う。(それぞれの人の感じ方だと思います。)
・ 駐輪場について、私の自転車もありますが二年位は使用不可でした。
そこで始末するか迷っています。このように使わない人がただ置いてい
るということもあるかもしれません。サイクルスタンドを入れるほどに
必要かどうか、もう一度考えてはどうかと思います。
・ サイクルスタンドと動力用電子ブレーカーは必要であれば設置。
・ 郵便受けとサイクルスタンドは今後検討が必要。
・ 郵便受け箱はいまのままで大丈夫だと思う。
・ 郵便受け箱は劣化による表面汚染が著しくなったら更新。
・ 郵便受けの鍵がすでに壊れていますので、急ぎませんがいずれ更新し
てもらいたいです。
・ 受水槽室の他への利用で出入口を大型にすると自転車の保管はさらに
制限しなければならなくなると思います。
・ 受水槽室の他に利用する場合の利用度、コスト対効果、安全性、消防
法等のクリアなど検討する必要があります。
d. 受水槽室の活用について、有効な利用方
法を○で囲ってください。
・ 集会室などとしての活用が望ましい 5票
・ タイヤ置場としての活用が望ましい 5票
・ 居住者用有料貸倉庫が望ましい 2票
※ ご意見
・ 管理の問題があるので理事会の集会に限定して利用してはどうでしょ
う。
・ 集会室に賛同しましたが管理の面で結構大変かもしれません。
・ 集会室としての利用の場合火の元だけは気をつけてほしいです。
・ 集会室か防災用具の保管がよいと思う。
・ どんな状況にあるのか受水槽室を見たことがないので今のところなん
とも言えません。私もタイヤを預けてあり年齢的にもって歩くのが大変
な面もあります。
・ タイヤ置場としての活用を希望します。
・ 住者用倉庫、防災用具、共用物倉庫などに利用。
以上のご意見が寄せられました。ご協力ありがとうございました。
注1.インターホンが故障しているかどうかは、個々の機器を調査しなければなりません。理事会で近日中にアイホンへ調査を依頼します。なお、住宅用個器の修理費は専用使用者の負担になります。
注2.郵便受けの錠の修理については、平成18年7月4日発行の理事会報第199号の記事を再掲します。『メールボックスについている「ダイヤル錠」の修理費についてお知らせします。平成12年11月に、管理会社が「共用部に設置されているメールボックスは子供の悪戯、チラシを入れる者が壊す、年数の経過による不都合などが考えられるのでダイヤル錠の修理費を管理組合費用から支出したい」と連絡があったとき、理事会は平成12年11月19日付文書で管理会社へ回答しました。このときの判断をお知らせします。
『メールボックスの「ダイヤル錠」は管理組合の管理範囲に該当するかについて、理事会はマンション管理規約第8条並びに別表第2の規定に基づいて検討し次の結論に達した。 共用部に設置されている「メールボックス全体にかかわる場合は管理組合の管理範囲」と考えられるが、個々のメールボックスは利用者の専用使用部分であることから管理組合が修理すべきものと判断するには無理がある』。以上の理由で「メールボックスのダイヤル錠の修理については、区分所有者(中略)が修理すべき」と理事会は決定しました。ダイヤル錠の修理は「自費で同等品と交換」してください』とお知らせしています。参考までに、複数業者による鍵と錠の修理見積比較により過去の理事会は「札幌キーセンター」へ依頼していました。
注3.大規模修繕の工事箇所については、すべての状態を観察して優先順位を考えなければなりません。平成20年度もマンションツアーを実施しますので、アンケートに回答された方々と問題意識をお持ちの方はぜひご自分の目で現状をご確認いただき、どのようにすれば最善であるかの検討に参加をお願いします。
6 大規模修繕コンサルタント
6-1 管理会社の変更
2007(平成19)年9月29日開催の臨時総会で管理会社の変更が承認されました。
平成19年7月1日の第3回理事会で、管理会社の営業所長と前営業所長より協議期間に入ったと一方的に通知されました。2ヶ月を経過しても協議するという連絡がなく、改善をお願いした事項についても改善が図られません。管理組合は平成19年9月9日の第5回理事会でこれ以上待っても、管理委託契約にある善管義務と誠実義務の履行はないと断定しました。根拠となった資料は次の書籍です。
以下の文章は「すぐ役に立つマンション管理ガイド(入門編)」日経BP社発行「管理会社に何を委託するのか」より引用しました。
契約書に調印する前に管理組合の役員として必ずすべきことがある。それは、自分たちの管理組合は管理会社に何を委託するのかを明らかにすることだ。そのためには、管理組合自身でできる業務と、できない業務を洗い出す作業から入る。もし管理組合として行わなければならない業務が分からなければ、管理規約を見てみよう。
そこにでている業務を一つひとつ「これはできる。これはできない」と項目別に書き出す。すべての業務が自分たちでできるなら、管理会社に委託する必要はない。しかし、たとえばエレベータの保守点検までできるか?そんな管理組合は皆無だ。だから、何らかの業務を委託しなければならない。
この洗い出しをすることで、管理会社にどの業務を委託し、管理組合自身でできる業務は何か、管理会社を通さなくても管理組合自身で発注できる仕事はあるのかどうか、はっきりとわかる。たとえ管理会社との関係がうまくいっている場合でも、一度チェックして見ると良い。無駄な委託費を支払っている可能性が十分ある。自分たちでできる業務を管理会社に費用を払ってまで委嘱する必要はない。建物の保守維持費用に充てたほうが有効だ。
前管理会社には支払った分の仕事をやってほしい、処理していない業務の管理委託費用を値引きしてほしいと話し合いを求め、値引きはできないとの回答を得ました。みなさま方のお金を無駄にすることはできず、理由を提示してみなさまのご理解をいただいた上で管理委託契約を解除しました。管理組合ができることは自ら処理し、すべてについてオンブにダッコではないことを新しい管理会社は十分に理解されています。
6-2 コンサルタントの委嘱
2008(平成20)年6月15日開催の定期総会で大規模修繕コンサルタントの委嘱が承認されました。
逝去された寺地一級建築士をご存知の一級建築士に大規模修繕の相談にのっていただけると云われ、理事会で大規模修繕コンサルタントをお願いしてはとの機運が高まりました。大規模修繕の着工まで1年10ヶ月となっていることから「長期修繕資金計画並びに長期修繕計画(案)」及び「大規模修繕の工事箇所と修繕方針」に基づいた事前協議で、大規模修繕コンサルタント委嘱費用を打診すると、見積額は178万5千円でした。
大規模修繕コンサルタントの業務期間は平成20年10月1日から平成22年9月30日までの2年間とし、建築調査診断業務、改修設計業務、施工者選定補助業務、工事監理業務、長期修繕計画見直し業務をまとめて委嘱します。平成20・21年度は各50万円、平成22年度に78万5千円を分割払いします。
総会でコンサルタント委嘱が承認されたことをお伝えすると、正式な見積書と契約書を作成してお届けしますと云われ、遅くても1年半前にはとセミナーで説明された大規模修繕の準備が開始されると安心しました。
6-3 不安不安、そして不安
2008(平成20)年6月15日開催の定期総会で大規模修繕コンサルタントの委嘱が承認され、快諾を頂いて見積書を届けると言われたのちは何ら連絡がありません。寺地一級建築士の場合は理事会開催日においでになり、私たちは区分所有者からの質問や理事会が点検した結果をお伝えし、いただいたアドバイスを理事会報で区分所有者へお届けするというキャッチボールを繰り返していました。
マンション管理セミナーへ参加すると大規模修繕は最低でも1年半前から、できるだけ2年前から準備を始めるのが最善と説明されていました。寺地一級建築士も同様の考えでしたが、今回は(着工予定の)1年10ヶ月前にコンサルタントをお願いして費用の見積書をお届けいただく約束をしたままです。不安になって年明けにメールで問い合わせると、大規模修繕の準備期間は1年もあれば十分という答えが帰ってきました。
理事会を開くたびに「どうなっているんだろう、やる気があるんだろうか。」と不安が不安を呼び込みます。工事開始予定まで1年2ヶ月しかないので、1月下旬に大規模修繕工事のスケジュール表をいただけないかとお願いしました。すると、2月の理事会開催日にスケジュール表を持参して説明するとの連絡を受けてひとまずホットしました。
2009(平成21)年3月1日発行の理事会報題272号で、「大規模修繕工事スケジュール案届く」をお知らせしました。
大規模修繕コンサルタントが作成された「2010大規模修繕工事スケジュール(案)」が届き、2月28日の理事会でスケジュールの内容を説明いただきました。土壇場になってのやっつけ仕事は避けたいと、昨年度の定期総会後はゆとりを持てるよう配慮していましたが打ち合わせはこれが第一回目です。
添付しました「2010大規模修繕工事スケジュール(案)」をご覧ください。
2009(平成21)年3月13日発行の理事会報第273号で、「大規模修繕工事スケジュールを検討」をお知らせしました。
2月28日開催の理事会ヘコンサルタントの一級建築士をお招きし、大規模修繕スケジュール案の説明をいただきながら初めての話し合いを行いましたので概略をお知らせします。
ア. 大規模修繕工事の進め方 北海道が主催した大規模修繕セミナーの
テキストで示された準備の流れに沿う。
イ. 工事実施までのスケジュール
スケジュール案の概略説明後、できるだけ前倒しで作業を進めること
にする。建物診断結果を説明して区分所有者より修繕に対する意見を聞
くため、定期総会時の6月~7月に診断報告会を開催する。その際、コ
ンサルタントより「大規模修繕工事の進め方」についても説明する。
ウ. 大規模修繕工事の内容
今後は、区分所有者の意見も聞きながら調査診断・設計と併行して詰
めていく。
a. 屋上 アスファルト防水の改修仕様は、押え砂利撤去、既存防
水補修、絶縁工法防水新設の方向で検討。
b. 外壁 仮設工法はゴンドラ、足場の得失、施工者からの提案も
含め検討していく。
c. バルコニー 今回の工事でウレタン防水トップコート塗替の必
要性等も検討する。エアコン室外機設置は使用細則で禁止されてい
る。ケーブルテレビ導入が否決された場合の費用も念頭に置く。
d. 共用内部 共用玄関・廊下・階段等の塗装替え、パイプスペー
ス内のブロック壁のひび割れ調査、階段手摺新設などを検討。
e. 外構 アスファルト舗装が沈下し水たまりが生じている個所の
検討。
f. その他 網戸は専有部分で工事対象外、アルミサッシガラス止
めビード改修を検討。
エ. 長期修繕計画
長期修繕計画見直し時期は修繕工事完了後とし、一般会計から修繕会
計への繰り入れは経常的に見込めない。
オ. その他
a. 施工者選定 選定方法は「見積合せ方式」として見積依頼業者リ
ストアップ。区分所有者からの推薦と他のマンションからの情報を参
考にする。施工者決定の前に施工事例の見学を実施する。
2) 設計監理契約 コンサルタントの2008年5月26日付見積
書と仕様書に基づき業務内容を説明。次回理事会に契約書(案)を提
出。
理事会終了時にコンサルタントより、マンション修繕記録などの資料をまとめて近日中に届けるよう指示されました。管理人室で保存している図面を除いて資料を精査するとA4で58ページになりました。昨年中に指示してくれればゆとりをもって調査することができましたが、短期間で資料を求める高圧的な指示の仕方に違和感を感じます。
6-4 コンサルタント契約
2009(平成21)年4月19日発行の理事会報第275号で、「2月28日に設計監理契約を締結」をお知らせしました。
第16期定期総会第四号議案で大規模修繕コンサルタント委嘱の承認をいただき、業務のスケジュールなどを協議して平成21年2月28日付で「マンション2010大規模修繕工事コンサルタント業務委託契約」を締結しました。契約書の全文は次のとおりですが、問題があれば契約内容は変更可能です。
業務委託金額(のみを掲載します)
ア. 建築調査診断業務 262,500円
イ. 改修設計業務 472,500円
ウ. 施工者選定補助業務 210,000円
エ. 工事監理業務 735,000円
オ. 長期修繕計画見直し業務 105,000円
合計 1,785,000円
6-5 マンションツアーを実施
2008(平成20)年7月13日発行の理事会報題257号で「アンケートへの質問などの現場を巡る」をお知らせしました。
7月6日(日)午前10時、管理業務主任を加えた7名で平成20年度のマンションツアーを実施しました。事前配付資料を下に現場を見ながら補足説明し、遅れて参加された方には屋上防水層の状態などを十分に見ていただいたうえで11時47分に解散しました。不在区分所有者へのお知らせを兼ねていることから、マンションツアーの案内文と一部重複しますが補足説明内容なども含めてお知らせします。
ア. 大規模修繕の工事箇所と修繕の基本
方針についてのご意見
○ シーリングは西側和室窓付近は、西日が当たるためか劣化が進んでい
る。
・ 7月1日の南面改修工事5年目点検時(以下「5年目点検」という。)
に、西棟五階屋上で六階西側外壁のシーリングの劣化状態も点検してい
ただきました。お二人の一級建築士はシーリングとタイルの状態を触っ
て調べながら、平成4年に建てられたとは信じがたいほど劣化は進んで
いないと驚いていました。
・ 平成8年に打診検査法を学んだときと同じ位置のタイルは浮いていま
すがタイル周囲の目地に損傷はなく剥がれ落ちることもないようです。
手の届く範囲の打診検査では新たに浮いたタイルを発見できません。
・ 東棟玄関周辺のシーリングは痩せていますが硬化やボロボロと崩れ落
ちることはなく、弾力性は損なわれていないことを指で押して実感いた
だきました。劣化は進んでいますが緊急性は少ないようです。
○ 屋上防水は予定通り22年に実施したほうがよいと思います。
・ 5年目点検時にエレベータ機械室への階段を見ていただくと、防水層
の立ち上がり部分が砂利に埋まって見えないことが問題とされました。
西棟五階屋上出入口のシーリング爆裂部分から建物内部への雨水大量侵
入は避けられず、504号住戸の小洋室天井にできたシミ跡は雨水によ
るものと判断しました。シミ跡からコンクリート内部の鉄骨がさびてい
ると推測でき、屋上防水層の更新時に広範囲の調査と補修が必要です。
・ 共用部の電力をまかなうために屋上での太陽光発電や風力発電、ヒー
トアイランド現象緩和の屋上緑化などについてのアイデアが参加女性か
ら寄せられました。このような意見を交換できる場として集会室が必要
と考えていたことを補足説明しました。
イ. 建物外観関係
○ 事故防止の観点から必要であれば避雷針固定ボルトは更新したほうが
よい。
○ 詳細は分かりませんが、役員の方が一生懸命に対応していただけるの
で安心です。お任せしますが、具体的になったときに考えるなどいまは
分からないのが実態です。
・ 避雷針固定ボルトのサビをご確認いただき、大規模修繕時に交換すべ
きで意見が一致しました。
・ 理事になったときは責任感から注意しますが理事を離れると忘れてし
まうものです。年に一度のマンションツアーでみんなの財産状態をみん
なで確認することが必要です。災害は忘れた頃にやってくると云われま
す。理事会報の説明を見てその位置の情景が浮かんでくれば理解が深ま
ります。
ウ. 屋内関係
○ 災害時対策など、パイプシャフト内のブロック固定が必要です。
○ パイプシャフト内のブロックは地震などで崩れる恐れがあるので固定
してほしい。
・ パイプシャフト内のブロックは鉄筋固
定か、モルタル固定のみかは壊してみな
いと分かりません。パイプシャフトの扉
がある面は、すべてブロックを積み上げ
てあります。ブロックが鉄筋で固定され
て(いると思いたい)いなければ、東西棟12箇所のパイプシャフト
側壁をすべて取り除いての大工事となります。
○ 東棟のマンション出入口と風除室出入口の扉は故障が多いので取り替
えたほうがよいと思う。西棟の扉は故障していないので取り替えなくて
もよいと思う。
・ 東棟エレベータ横窓上のがらりから風が吹き込み、東棟の玄関出入口
の扉に内部から風圧がかかります。このときに出入りすると扉は風除室
内へ少し押しだされた位置で止まるため、オートロックは作動しても施
錠できない状態となります。西棟は風除室に入る西風の風圧でバランス
がとれ扉はきちんと閉まります。
・ 東棟風除室の外扉は傾き、大きく開閉する部分の底辺ですれる音がし
ています。傾きを直す調整をしましたが、ネジが締まらず効果はありま
せん。扉を支える軸も曲がっているような気がします。同じ扉はもうな
いので東棟のみを取り替えると東西のバランスが崩れるのが気がかりで
す。
・ 東西棟ともオートロック制御用のタイマーが劣化し2ヶ月で1時間ほ
どの遅れを修正しています。時には2日間で1時間以上も遅れたことが
あり、午前5時に連絡を受けて調整したことも何度かあります。オート
ロックが作動しなければ新聞は住居まで届かず二つのタイマーを近日中
に更新しなければなりません。
○ 各戸の新聞受けを大型化し、強固に取り付けることを提案します。
・ 平成17年11月18日付け北海道新聞に、マンションの建築会社が
民事再生手続きを札幌地裁に申請した記事が流
れました。民事再生手続きが終わると、再出発
の準備で倉庫に保管されている過去の書類は処
分されます。平成18年に引継ぎを受けてから
建築会社へ大規模修繕時にはお貸ししますと言
われた構造計算書の存在を照会すると、昨年末
までに請求のあった管理組合には構造計算書な
どすべての重要書類をお渡していますとの回答
でした。倉庫に保管されていないか探してもらいましたが処分されたあ
とでした。
・ 各階の新聞受けの穴を広げて大型化することは、躯体に与える影響を
計算する構造計算書がないため断念するしかありません。新聞受けを固
定していないのは振動ではずれ落ちることで、コンクリートを保護する
地震対策(正確かどうかは不明)と前管理会社の一級建築士から聞いて
います。共用部月末点検時に気付いたところは押し込んでいますが、飛
び出してきたらあまり力を入れず上下交互に押し込むようご配慮くださ
い。
○ タイルカーペットとはどういうものですか、ワックスガケや拭いたり
できるものですか。
・ 50cm×50cmのタイルカーペットは厚手の樹脂製で弾力性と吸
音効果があります。階段を駆け下りる子供たちの足音や、ヒールや体を
支える杖などの補助具が床に当たる音を吸音し滑りを防ぐ効果は絶大で
す。ワックスは不要で洗剤を使った器械洗浄となります。
エ. 屋外関係
○ ブロック塀のモルタル補修についてはすぐ必要。
・ トステムビバとホーマックに写真を持参するとブロックの隙間に入っ
たゴミをスズランテープでしごいて取り去り家庭用セメントで補修する
よう勧められました。西から2・3・4番目と、東から4番目の飾りブ
ロック両端の隙間にコンクリートを詰め、7月9日午後補修を完了しま
した。
○ 駐車場のオーバーレイは大規模修繕時に、それ以外は次年度がよいと
思う。
・ 大規模修繕完了時期に駐車場の凹んでいるところを埋めて照明塔の基
礎部を保護してから、表面をオーバーレイして車止めの範囲を示すライ
ンを引いてもらうことを検討しています。これらの工事を部分ごとに行
うと工事費は割高となります。照明塔の基礎部分がさびていることをご
覧いただきました。
オ. 防犯防災対策についてのご意見
○ 防犯対策は必要なことですが、防犯カメラを設置するまでには至らな
い。むしろ、建物内外共に明るくして犯罪を発生させない環境にするこ
とが大事と考えます。
・ 平成20年5月末の白石区内犯罪発生件数は1,320件」。侵入窃
盗153件、侵入強盗2件、自動車盗難18件、車上ねらい207件、
部品ねらい40件、万引き95件、自転車盗難183件、オートバイ盗
難23件などとなっています。この数字には、町内で発生した「侵入窃
盗、車上ねらい、部品ねらい、自転車盗難」などの犯罪も含まれていま
す。町内会は安全確保の観点からマンションが建つ前に、町内の各ご家
庭から寄付金を集めて街路灯を13箇所設置しその恩恵を私たちは享受
しています。
・ 白石区内のすべての町内会は自主的な防犯パトロールを実施して地域
における犯罪の予防に取り組み、白石地区ネットワーク会議の青少年女
性部会を中心に児童の通学路パトロールで危険箇所の把握や犯罪被害防
止に取り組んでいます。また、車両に青色回転灯とパトロール用マグ
ネットを装着した車両での広域的なパトロール活動を実施し、白石警察
署は白石郵便局や札幌白石地区トラック協会等と地域の安全に関する協
定・ネットワークを結ぶなど、さまざまな人々がボランティアで安全・
安心なまちづくりに取り組んでいます。犯罪を発生させない環境にする
ためには防犯への協力や活動への参加が大切です。
○ 建物内部の死角に特別の対策は必要ない。ドアアイから凸面鏡で人影
を確認できますか。
・ 兵庫県警が2月21日までにまとめた2007年の性犯罪報告による
と、マンションでの性犯罪認知は456件でした。子供達を狙った犯人
がマンション前で待ち伏せし、共用部で発生した強姦や強制わいせつ、
わいせつを目的とする略取などは階段や踊り場で犯行に及ぶケースが目
立つとの報告です。被害者は一生消えない苦悩に苛まれます。
・ 警察や防犯協会、マンション管理研究団体などは犯罪防止のために死
角をなくすことが最も重要と指導しています。犯罪に遭わないようにす
るには加害者に対策を講じていることを知らしめることが重要で、どこ
からかだれかに見られている可能性のあるところでは抑止力が働き、罪
の発生は激減しています。この意味でも、センサー付の照明は防犯上か
なりの効果があると考えられます。
・ 強姦や強制わいせつなどの性犯罪は2000年以降急増し、昨年1万
1千360件と年間5千件前後だった1990年代前半の2倍になって
います。しかし、被害に合うのは女性であることから男性は無関心にな
りがちというのも悲しい現実です。一生消え去らない苦悩を避けるため
の方策を講じるのが男性の義務です。
・ 安全性は居住しているすべての人を対象に考えなければなりません。
男性は襲われなくても子供たちや力の弱い女性は身を守ることが難しい
のです。マンションは共同住宅ですから、居住者は家族のようなもので
す。どんなことがあっても身内から被害者を出さない、というのが現在
の理事会の願いです。
○ 町内会の防災用具を保管する場合、出入りなどで区分所有者以外の方
が保管場所について発言力をもつ可能性が出てくる。また、優先使用は
町内会の趣旨には反すると思う。
・ マンションの自衛消防隊は町内会防災組織との連携が義務付けられて
います。マンションで防災用具を保管することになれば、自衛消防隊の
管理権限者に管理権が帰属し、町内会役員や区分所有者であっても町内
全体を考慮しない保管場所変更は、町内会担当の防災リーダーが禁じま
す。災害発生時は、防災用具の保管場所に最も近い位置での利用が優先
され、町内会長や副会長を救出してから順番にということはありませ
ん。
・ 防災用具を扱うときは札幌市認定の防災研修を受けた防災リーダーの
指示に、救急救命用具を扱うときは公的機関の技能訓練を受けた有資格
者の指示に従います。当て推量や憶測の提案ではなく、町内会役員とし
て防災リーダー資格を取得し、札幌市消防局の上級救命講習と赤十字救
急法基礎講習、さらに赤十字救急法救急員養成講習を修了し、救急救命
検定に合格した者の提案を理事会で検討してからお知らせしています。
カ. 弱者対策
○ 今後必要性があれば検討。
○ これから住人の高齢化に伴い対策を考える必要がありますね。特に、
このマンションの階段は各段との幅が狭くやや急なので手摺があると望
ましいと思います。
○ 弱者対策としてインターロッキングのスロープ化はよいですが、同時
に出入口ドアを自動扉とすることで対策はよりよくなる。
○ 今後高齢化が進むと思うので必要。
・ 外階段をバリシャフリー化するには厚生省の定めた傾斜角度でスロー
プを設置するため、庭園の一部を狭めて敷地の確保が必要になります。
・ 若いときは自分のことで頭がいっぱいになり、老人や障害者などの弱
者に目が行き届かぬものです。だれもが通る道でしょうが、老化するに
つれていままでは気付かなかった必要性を感じるようになるものです。
6-6 苦渋の決断
2009(平成21)年4月29日発行の理事会報第276号で「大規模修繕を一年延期して再出発」をお知らせしました。
平成20年度第17期定期総会は5月17日の午後6時15分より町内会館で開催します。平成20年度事業報告と会計決算報告に引き続き、理事会が勝手に決めているとお叱りを受けることは覚悟のうえで2010年度に実施を予定していた大規模修繕を一年延期して計画段階からの再出発を提案します。
総会議案で詳しく説明しますが、第14期定期総会で選出された現在の役員はマンションツアーや月末点検でマンションの状態をチェックし、アンケートなどを通して皆様方のご意見を伺いながら理事会としてできる範囲の準備を進めてきました。昨年の第16期定期総会でコンサルタントの委嘱を承認いただき、設計事務所の仕事の都合を考慮に入れても1年半前から専門家のご指導で準備ができると考えていました。しかし、北海道が主催した大規模修繕セミナーでいただいた準備の流れに沿うとの約束は無視され、コンサルタントは一方的に「準備は1年前からで十分」として連絡のない状態が続きました。
平成21年2月6日に、設計事務所の代表取締役とコンサルタント宛に次のメールを送信しました。「貴社益々のご繁栄をお喜び申し上げます。様々な資料やセミナーで2年前からの準備を推薦されていますが、大規模修繕実施までに1年2ヶ月しか時間がなくなりました。平成22年春に予定している大規模修繕を、貴社はどのように考えていらっしゃるのでしょう。
大規模修繕は土壇場になってやっつけ仕事になるのは避けたいと考え、昨年は求めに応じて資料類をお届けいたしました。しかし、コンサルタントより資料を受領したとの連絡もおよその準備日程や段階を経た計画の全容など、これまでにお示しいただいたものはなにもありません。
故寺地一級建築士と理事会は度重なる話し合いを経て、マンションの将来を任せようとの信頼関係ができていました。当時は寺地さんよりいただいたお話や資料を基に広報活動を2年間続け、やるぞとの機運を盛り上げてきました。理事会報で経過をお知らせしていても、理解をいただけずに不満を述べる方もいらっしゃいました。
これ以上漫然として時を費やせば様々な弊害が出てきます。理事長は推薦した責任があることから、今月中旬の理事会で貴社と信頼関係を結べるかどうかの決断が必要になりました。ご多忙中恐縮ですが、大規模修繕をどのようにお考えか12日までにお知らせください。」
「メールありがとうございました。返信が遅くなりました。丁度、来年予定の大規模修繕工事の進め方について打合せを始める時期だと考えていたところでした。昨年6月の定期総会で議論していただきましたが、工事前年の今年、調査・診断、設計と施工者選定を行うということで来年度に予算を計上することになっていたと記憶しています。
概略の予定では6~8月に調査・診断を実施しながら改修内容を詰め、9~10月で改修設計、11~12月で施工者選定を行うと考えております。工事までのスケジュール表を作成して12日までにお送りしますのでご検討下さい」。
3月1日発行の理事会報第272号に添付したスケジュール(案)はかなり込み入り、スケジュール通り順調に進むことは難しいと理事会は考えました。日程を少しでも繰り上げるために、管理会社の管理業務主任にご協力を願い、定期総会を早めに開催できるように多大のご努力いただきました。しかし、時間的に心配ないとするコンサルタントの調査業務に協力しているうちに、わいてくる疑問は次第に不信感へと変わり始めました。
4月26日開催の第10回理事会で、コンサルタントより「原案は読んだが、忙しいから訂正する暇がなかった」との回答を伺い、仕事に対する姿勢に失望しました。理事会は信頼関係を結ぶことは不可能と決断、契約解除による損害賠償を負っても再出発すべきと決断しメールで業務停止と設計監理契約の解除を通知しました。
責任を取ってやめるのではなく、責任をもって再出発するための定期総会へ多数のご参集をお願いいたします。
2009(平成21)年5月24日発行の理事会報第278号で「定期総会の全議案承認される」をお知らせしました。
設計監理契約の解除に伴う損害賠償金については、設計事務所の代表取締役さまより平成21年5月10日付で「今回の契約解除に関しまして違約金の請求などは考えておりません。」との文書を受領しましたが、原案通り建物調査診断業務の契約金額の10%を上限とした違約金(損害賠償金)を請求に応じて支払うことを承認いただきました。
5月17日の定期総会で「第三号議案の大規模修繕の出直しと延期」が承認されました。二度と後戻りをしないために、詳しいことは分からないから専門家に任せようではなく、自分達のマンションは自分達で守るとの自覚を持って大規模修繕に立ち向かいます。
大規模修繕への道(5-1) →「 大規模修繕への道(5-2) 」