はげちゃんの世界

人々の役に立とうと夢をいだき、夢を追いかけてきた日々

第68章 自律神経を正常に5

高齢者が注意を要する感染症は、新型コロナウイルス、インフルエンザウイルス、肺炎球菌の肺炎、結核菌の感染、レジオネラ肺炎、ノロウイルス感染症、尿路感染症、帯状疱疹、腸管出血性大腸菌感染症、肝炎などで、接触感染・飛沫感染・空気感染に注意しよう。

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1 自己催眠術

 1-1 予備知識

平井富雄博士が推奨される自己催眠術は、シュルツ博士の自律訓練法が土台としているが、だれにでも手軽に実行できるよう、平井富雄博士が工夫改良を加えたものである。自己催眠術の訓練は六段階に従って進める。

第一段階 ウデガオモイ(腕が重い) 完了

第二段階 ウデガアタタカイ(腕が温かい) 完了

第三段階 シンゾウガシズカニウッテイル(心臓が静かに打っている) 完了

第四段階 コキュウガラクダ(呼吸が楽だ) 完了

第五段階 オナカガアタタカイ(お腹が暖かい)

第六段階 ヒタイガスズシイ(額が涼しい)

これらの六段階は一つ一つが独立したものではなく、一段階をマスターできれば次の段階への移行が容易になるというように、難易度や安全度を勘案したうえで合理的に配列されている。従って、第一段階からひとつずつ順を追って進んでいかなければならない。

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 1-2 練習場所

繰り返しになるが、最初は外的な影響を受けやすいので、自分の部屋など静かで落ち着けるところが良い。自分の部屋に閉じこもるのが理想的で、明るすぎないこと、熱くも寒くもないこと、通風状態が良いこと、などの条件を考慮できれば一層よい。

少し慣れてきたら、電車の中や公園のベンチなど、外的刺激の多いところでもできるようになる。ただし、どんな場所でも一定時間同じ姿勢でいられるところでなければならない。

なお、外的な刺激をなるべく少なくするために、練習中はメガネ、ベルト、ネクタイ、腕時計、靴下止めなど、身に着けているもので窮屈なものはすべてゆるめるか、取り外すことが望ましい。

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 1-3 姿勢

練習を進めていくには姿勢がひじょうに大切である。少なくとも、最初のうちは指示通り正しい姿勢で練習してほしい。姿勢が悪いと、どんなに練習しても催眠状態に入ることができないし、練習中や練習後に、不快感や凝りに悩まされることがある。

もちろん、少し練習が進んでくると、姿勢にあまりこだわらなくても、らくに催眠状態に入れるようになる。基本訓練が一通り終わってその強化の段階に入ってからは、なるべく所定の姿勢から離れどんな姿勢でも目的通りの暗示内容が実現できるようにしていく。

基本姿勢として、第五段階では「腰掛姿勢」が最も入りやすい。なお、原則として練習中は目を閉じる。肢体への注意集中はうまくいくが、雑念が起こりやすく眠り込んでしまうことがある。できれば、半分目を開けた状態の「半眼」をお勧めする。

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 1-4 練習中の心構え

くどいようだが、基本的な暗示を、たえず念頭に持ち続けることが大切で、「オナカガアタタカイ」と思うとき、これを言葉だけで考えず実際にそう感じるようにいつもつとめることが重要である。別なことを考えても催眠にかかるだろうか、という試みは好ましくない結果を生むことがあるので決してしてはいけない。

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 1-5 練習回数と時間

自己催眠開始から終了・覚醒にいたる一回の練習時間は極めて短く、普通30秒から90秒(慣れてきたら、さらに1分、3分とふえる)くらいである。この短い練習を、何回か間を置かずに集中的に繰り返すのである。このように短時間の練習を何回か繰り返すことを1セッションという。

1セッションは5分ないし2時間である。1日に3度、朝・昼・夜に行うのが理想的である。それが無理なら朝と夜の二セッション、あるいは朝か夜の1セッションでもよい。大切なことは1セッションでもよいから、毎日継続させることである。とくに、練習を始めたばかりのときは、なるべく一日でも中断しないほうが良い。

初心者は1セッションで3回練習する。1回は30~90秒である。1回の練習が終わったら、催眠の自覚がなくてもきっぱり終了・覚醒し、直ちに第2回目に入る。そしてその終了・覚醒後、ただちに3回目にうつる。

1回の練習に連続して3回分の時間を費やすよりも、短く断続したほうが効果的である。もちろんこれは初心者の場合で、少し訓練に慣れてきたら各階に練習を長く続けたほうが効果的である。かつ、1セッションの練習回数も3回に限らず自由に増やしてよい。

なお、練習はいつ行ってもよいが、朝起きたときと就寝前が最も効果的である。要は練習するときを、食事前とか就寝前というように、きちんと決めておくことである。

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 1-6 終了と覚醒

一定の練習が終わったら自分で覚醒する。目を開けて、まず両腕、次に両足を2回強く屈伸し、次に頭を2回左右に傾けてから深呼吸を2回行う。この順序は各段階とも共通である。終了・覚醒の順序を狂わせると、めまいなど好ましくない結果が出ることがあるので、めんどくさがらずにきちんと守ってほしい。

練習を進めていくと、同じ催眠に入るまでに要する時間は次第に短くなり、外的刺激にあまり影響されずに効果的に暗示を受け入れるようになる。そして、ある段階の自己催眠術をマスターすると、その催眠効果は以後の段階にうつっても持続する。

つまり、第4段階までマスターしたときには、同時に第1段階と第2段階と第3段階の催眠も起こっているのである。第6段階の暗示が短時間で実現されるようになれば、自己催眠はいちおうマスターしたことになる。

6段階の基本催眠は、毎日効率よく練習していけば、約四週間でマスターすることができる。練習の継続性や個人差によって、四週間より長くかかることもあるが、練習回数を増やしたり、練習中の条件の改善に留意すれば、案ずるほど長くはかからない。

練習者は、まず、最初の第1段階を完全にマスターすることに努力してほしい。というのは、第1段階「ウデガオモタイ」と第2段階「ウデガアタタカイ」の2段階をマスターして強化訓練を続行するだけでも、自己催眠によってもたらされる、ほとんどすべての効果を享受することができるからである。

練習中に眠り込んでしまったら、目覚めた後に必ず最初からやり直すことである。とくに、練習終了・覚醒の手続きを完全に行うこと。四股の屈伸は怠ってはいけない。

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2 第五段階

 2-1 自己催眠に入る準備

第5段階は腹部にある太陽神経叢という神経線維の集まりを温めることにより、内臓諸器官の働きを調整し、精神の安定を保つ自己催眠である。交感神経、副交感神経は体中をくまなく走っているが、ちょうどコロナを吹き出す太陽のような形になっている。

この太陽の本体に当たる部分を太陽神経節といい、その周りのコロナを含めてこれを「太陽神経叢」と言っている。人間の腹部には、太陽があるという故地からきた名前である。太陽神経叢は、胃、腸、肝臓、腎臓などの活動を正常に保つうえで重要な働きをする。

第5段階の自己催眠術は、まず自分の太陽神経叢がどこにあるかを知ることから始めよう。椅子に深く腰掛け、背をまっすぐ伸ばし、顔は正面を向く。両足を適当に緩め、左手を膝に添えよう。目は開けたままでよい。

つぎに、右手を胸骨(胸の中心に縦に走っている骨)の臍へその中間あたりにもっていき、手のひらを腹部のほうに向け、体から3センチほど離れたところで止める。

服の上から腹部を押さえるようにしてはいけない。手のひらはあくまでも体から少し離れている。この姿勢が完全に取れたら、手のひらから暖かい光線が出て、次第に腹部を温めていると想像してみよう。

目を閉じて「手のひらから出る熱線が沁みとおっていく。おなかの底まで沁みとおっていく。熱は、服も皮膚も通り越して深く深くしみこんでいく」とつぶやいてみる。姿勢を崩さずにこのまま暗示を5分ほど続ける。

するとかすかではあるが、手のひらに対面する腹部の一か所に、熱いような重いような感じが湧き上がってくるだろう。その部分があなたの太陽神経叢である。しかし、1回や2回で太陽神経叢の正確な位置をつかむのはちょと難しいかもしれない。

これは、ただ暗示の効果を強めるために太陽神経叢の位置を感じてもらったに過ぎない。太陽神経叢は、なんとなくそこにあるという感じはつかめても、その実際の位置を正確に知ることはできるようなものではないのだ。

太陽神経叢のイメージがうまくつかめない人、その位置が良くわからないという人は、そこで、催眠を容易にするための補助手段をお勧めしよう。 「タイヨウシンケイソウガアタタカイ」という代わりに、「お腹が温かい」あるいは「胃が温かい」という暗示を用いると効果的である。

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 2-2 オナカガアタタカイ

椅子に深く腰かけて、右手を胸骨(胸の中心に縦に走っている骨)の下端と臍の中間あたりにもっていき、手のひらを腹部のほうに向け、体から約3センチほど離れたところで止める。目は開けたままでいつものリラックス気味の姿勢をとる。

腰掛姿勢初めのうちは太陽神経叢の位置が良く定まらないこともあるから、手のひらを腹部に添えたままの姿勢でもよい。さあ、自己催眠に入ろう、あなたの太陽神経叢(=お腹)にすべての意識を集中してほしい。そして心の中でつぶやこう。

「ウデガオモタイ…ウデガアタタカイ…シンゾウガシズカニウッテイル…コキュウガラクダ」と二度繰り返そう。次に、「オナカガアタタカイ…オナカガアタタカイ…」と三度つぶやく。すぐに、腕から両足、さらに体全体に重くあたたかい感じが広がってくる。

しばらくすると、腹の中から余分な空気が抜けたような、なんとなくスーッとっした、快い気分にばるだろう。お腹の皮がちょいとひりひりするかもしれない。さあ、あなたのお腹が静かに脈打ってくる。ちょっと空腹感を覚えるかもしれない。もう、一息である。繰り返そう。

「オナカガアタタカイ…オナカガアタタカイ…オナカガアタタカイ…」

練習開始の直前に、生命の源であるエネルギーを放射する太陽、太陽神経叢のイメージを記憶しよう。そして、催眠中は脳裏にこの図を思い浮かべながら、オナカガアタタカイ」を繰り返す。信じられないかもし視覚的イメージれないが、視覚的イメージは直接的だけに、言葉が持つ以上の暗示効力を発揮する。

暗示をかける部分は、お腹、胃、みぞおち、腸などどこでもよく、暗示によって腹部全体が温めれば太陽神経叢も必然的に温まり、この訓練の目的は達成される。ドイツの精神身体医学者シュトリイは、「みぞおちが温かくなる」という暗示を推薦している。


 また、「臍があたたかい」という暗示も有効である。無用の長物と思われがちな臍だが、精神の緊張と弛緩を如実に反映する敏感な場所である。しばらく自分おへそをじっと見つめよう。しばらくすると、なんとなくくすぐったいような感じがしてくる。

さらに見つめていると、臍が心臓の鼓動に合わせて脈打っているように見えてくる。ここで「ああ、臍が温かいな」と感じるようにつとめるのだ。あたたかみが臍の周りの皮膚から、次第に深く沁みとおってくるだろう。

太陽神経叢が温かいと感じるようになったら、さらに5日間ぐらい練習を繰り返す。第5段階の自己催眠は比較的感じがつかみにくいので、この追加訓練を怠らないようにしたい。いつどこでも、20秒から30秒で催眠自覚が起こるようにばれば第5段階は完成である。

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 2-3 催眠を解く

あなたの太陽神経叢(=お腹)がジーンと暖かくなり、胃の周りから下腹にかけてポカポカと熱くなってきたら催眠をとこう。目を開けて、まず両腕、次に両足を2回強く屈伸し、次に頭を2回左右に傾けてから深呼吸を2回行う。さあ、ゆっくり立ち上がろう。

あなたは、気持ちよく、いつのまにか平常の状態に戻っているだろう。催眠が成功したからと言って、慌てて目を開け、飛び起きたりするのは禁物である。催眠中にあるいは終了後に、胸苦しを感じることがあったらいったん中止し、すぐに初めからやり直す。

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 2-4 練習中の注意

腹部を温めることで、健康上どのようなプラスをもたらすのだろう。腹部には、胃、大腸、小腸をはじめ、肝臓、腎臓、それに膵臓と、摂取から排泄、解毒から調節の機能に関係するあらゆる器官が並んでいる。女性では子宮という生殖器が下腹部に秘蔵されている。

これらの器官をつなぐ血管網は太く、密に連絡しあっている。とくに肝臓、腎臓内部の血管の網、胃や子宮の壁を取り囲む血管の束は、自然の造形の妙を尽くしていると感嘆するほど精密ある。この血管の運動をつかさどるのが、腹部の交換・副交感神経で、その中心が太陽神経叢である。

太陽神経叢を温めると、胃は胃の、肝臓は肝臓の、腎臓は腎臓の働きを必要かつ十分い発揮することができるようになる。子宮についても同じである。腰の冷えは女性の体に悪影響を及ぼす。第5段階の自己催眠は、腹部器官の摂取・排泄、解毒・調節のスムーズな働きを極めて有効にする。

とくに女性の場合、訓練中に性感が異常なまでに高ぶってくるのを感じ戸惑う人が出てくるはずである。下腹部が温かくなる感じは、性的感覚に結び付きやすく、冷感症の女性でも訓練中に性的なイメージにあまりとらわれると、そのままオルガスムスと同じ状態に陥ってしまうことも少なくない。

ただし、この訓練で注意しなければならないことは、自己催眠中に性行為そのままのエクスタシーに陥ってしまわない。効果が減殺されてしまうからである。この自己催眠術をマスターした後であれば、冷感症、性欲減退などの治療に充てることはすこぶる有効である。

この訓練は、神経性胃弱、慢性下痢、肝臓機能低下、冷え性、体全体の老化、冷感症、精力低下などに悩む人にぜひ実行してもらいたい。特に冷感症に対しては思いがけない効果があるのでお勧めする。

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 2-5 強化訓練

第5段階は、毎日少なくとも1セッション、できれば2セッションは練習したい。1回の練習時間は1分から3分、1セッションは10分から20分くらいである。太陽神経叢が温かい感じはふつう7日から10日で体験できる。

第5段階の訓練で、消化器系の軽度の障害、消化不良、胃下垂、腹の冷え、胃アトニーなどにも効果を発揮するが、重症の場は特に、医師から胃潰瘍・十二指腸潰瘍・あるいは糖尿病の診断を出されている人は、この段階を飛ばして第6段階に入ってほしい。

第5段階完成後に冷感症、精力低下の治療を行う場合は、「オナカガアタタカイ」という暗示に並行して「キョクブガアタタカイ(局部が温かい)」という暗示を用いるのが効果的である。この暗示は、局部を性行為のときと同じ状態にするのである。

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参考資料:新・自己催眠法(長尾盛之助、鶴書房)、自己催眠術(平井富雄、光文社)、公益財団法人長寿科学振興財団ホームページなど。