はげちゃんの世界

人々の役に立とうと夢をいだき、夢を追いかけてきた日々

第67章 自律神経を正常に4

人間の体は、年齢を重ねるに従い心臓、肺、肝臓、腎臓など多くの臓器や組織の働きが低下する。なかでも注意したいのが腎機能と肝機能の低下で、薬は肝臓で分解されて腎臓で排出される。これらの機能が低下すると薬の代謝と排出が遅くなり、薬の効果が強く出過ぎて副作用が現れやすくなる可能性があるからだ。

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1 自己催眠術

 1-1 予備知識

平井富雄博士が推奨される自己催眠術は、シュルツ博士の自律訓練法が土台としているが、だれにでも手軽に実行できるよう、平井富雄博士が工夫改良を加えたものである。自己催眠術の訓練は六段階に従って進める。

第一段階 ウデガオモイ(腕が重い) 完了

第二段階 ウデガアタタカイ(腕が温かい) 完了

第三段階 シンゾウガシズカニウッテイル(心臓が静かに打っている) 完了

第四段階 コキュウガラクダ(呼吸が楽だ)

第五段階 オナカガアタタカイ(お腹が暖かい)

第六段階 ヒタイガスズシイ(額が涼しい)

これらの六段階は一つ一つが独立したものではなく、一段階をマスターできれば次の段階への移行が容易になるというように、難易度や安全度を勘案したうえで合理的に配列されている。従って、第一段階からひとつずつ順を追って進んでいかなければならない。

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 1-2 練習場所

この自己催眠術では、他の場合ほど周りに静けさを要求されないから、部屋に他人がいてもかまわない。音楽などが少しくらい聞こえても差し支えないだろう。ただ、最初はなるべく静かな部屋で、一人きりになって練習するのが望ましい。

少し慣れてきたら、電車の中や公園のベンチなど、外的刺激の多いところでもできるようになる。ただし、どんな場所でも一定時間同じ姿勢でいられるところでなければならない。

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 1-3 姿勢

姿勢は「腰掛姿勢」である。まず、椅子に腰かけ、顔を正腰掛姿勢面に向けて背を伸ばす。手、足などについては、第1段階、第2段階と同じである。そして、緊張してはいないがだらけてもいない姿勢をとる。少し気持ちが落ち着いてきたところで、自己催眠に入ろう。

なお、原則として練習中は目を閉じる。肢体への注意集中はうまくいくが、雑念が起こりやすく眠り込んでしまうことがある。できれば、半分目を開けた状態の「半眼」をお勧めする。

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 1-4 練習中の心構え

くどいようだが、基本的な暗示を、たえず念頭に持ち続けることが大切で、「コキュウガラクダ」と思うとき、これを言葉だけで考えず実際にそう感じるようにいつもつとめることが重要である。別なことを考えても催眠にかかるだろうか、という試みは好ましくない結果を生むことがあるので決してしてはいけない。

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 1-5 練習回数と時間

第4段階では、1回の訓練に比較的長い時間をかけても害はない。1回の練習に1分から5分、各セッションも30分から2時間くらいを、休まずに続けても疲労感や不快感を生じることはないだろう。

この段階は、第3段階までをマスターしていれば、数度の練習でコツ飲み込めるが、完全にマスターするために、やはり、一週間ないし二週間くらい、毎日、あるいは一日おきの練習していただきたい。

1セッションは5分ないし2時間である。1日に3度、朝・昼・夜に行うのが理想的である。それが無理なら朝と夜の2セッション、あるいは朝か夜の1セッションでもよい。大切なことは1セッションでもよいから、毎日継続させることである。

初心者は1セッションで3回練習する。1回は30~90秒である。1回の練習が終わったら、催眠の自覚がなくてもきっぱり終了・覚醒し、直ちに第2回目に入る。そしてその終了・覚醒後、ただちに3回目にうつる。

1回の練習に連続して3回分の時間を費やすよりも、短く断続したほうが効果的である。もちろんこれは初心者の場合で、少し訓練に慣れてきたら各階に練習を長く続けたほうが効果的である。かつ、1セッションの練習回数も3回に限らず自由に増やしてよい。

なお、練習はいつ行ってもよいが、朝起きたときと就寝前が最も効果的である。要は練習するときを、食事前とか就寝前というように、きちんと決めておくことである。とくに、練習を始めたばかりのときは、なるべく一日でも中断しないほうが良い。

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 1-6 終了と覚醒

一定の練習が終わったら自分で覚醒する。目を開けて、まず両腕、次に両足を2回強く屈伸し、次に頭を2回左右に傾けてから深呼吸を2回行う。この順序は各段階とも共通である。終了・覚醒の順序を狂わせると、めまいなど好ましくない結果が出ることがあるので、めんどくさがらずにきちんと守ってほしい。

練習を進めていくと、同じ催眠に入るまでに要する時間は次第に短くなり、外的刺激にあまり影響されずに効果的に暗示を受け入れるようになる。そして、ある段階の自己催眠術をマスターすると、その催眠効果は以後の段階にうつっても持続する。

つまり、第3段階までマスターしたときには、同時に第1段階と第2段階の催眠も起こっているのである。第6段階の暗示が短時間で実現されるようになれば、自己催眠はいちおうマスターしたことになる。

6段階の基本催眠は、毎日効率よく練習していけば約四週間でマスターすることができる。練習の継続性や個人差によって、四週間より長くかかることもあるが、練習回数を増やしたり、練習中の条件の改善に留意すれば、案ずるほど長くはかからないものである。

第1段階と第2段階をマスターすれば、あとの段階は比較的容易に習得することができる。第1段階の訓練で、最初に本格的な自己催眠の状態を経験できるまではちょっとした忍耐が必要である。

練習中に眠り込んでしまったら、目覚めた後に必ず最初からやり直すことである。とくに、練習終了・覚醒の手続きを完全に行うこと。四股の屈伸は怠ってはいけない。

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2 第四段階

 2-1 自己催眠に入る準備

第4段階は呼吸の調節することにより、体全体と精神の緊張を解く自己催眠術である。この第4段階は、6段階のうちでもっとも体得しやすい自己催眠術である。

第1段階、あるいは第2段階の訓練中に、すでに「呼吸がらくになっている」ことに気づいた人もいるだろう。第4段階はその感じをさらに発展させ、方法論的に組織化したものである。「呼吸が楽になった」感じを思い出しながら練習してほしい。

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 2-2 コキュウガラクダ

しばらく気持ちが落ち着いてきたところで、静かに目を閉じ、自己催眠に入ろう。

「ウデガオモタイ…ウデガアタタカイ…、シンゾウガシズカニウッテイル…、ウデガオモタイ…ウデガアタタカイ…、シンゾウガシズカニウッテイル…、(つづけて)コキュウガラクダ…、コキュウガラクダ…」と、頭の中で幾度も繰り返す。

重い暖かい感じが全身に広がり、心臓がゆったりと打っている自覚がでてくるにつれ、しだいに呼吸がゆっくりになってくるのがわかるだろう。だんだん呼吸が深くなっている。まるで、体全体で呼吸しているようだ。深い楽な呼吸である。

「コキュウガラクダ…コキュウガラクダ…コキュウガラクダ…」

あなたは何の障害もなく、思い切り息を吸い、吐き出している。呼吸がこんなに気持ちが良いものだととはいままで知らなかった。あなたの体が波に浮いている。そして、静かに静かに、前後左右に揺れている。

これらの感じが実感としてつかめたら第4段階の自己催眠術は完成である。

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 2-3 催眠を解く

一定の練習が終わったら自分で覚醒する。目を開けて、まず両腕、次に両足を2回強く屈伸し、次に頭を2回左右に傾けてから深呼吸を2回行う。この順序は各段階とも共通である。

終了・覚醒の順序を狂わせると、めまいなど好ましくない結果が出ることがあるので、めんどくさがらずにきちんと守ってほしい。ゆっくり立ち上がったあなたは、心身ともに平常な状態に戻っているだろう。

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 2-4 練習中の注意

この訓練中、呼吸を深くするといっても、体操のように思い切り息を吸い込み、どっと吐き出してはいけない。静かに、無理ない程度に深く息を吸い込み、それをゆっくりと吐き出すのである。

その人にとって一番らくな呼吸法が、ここでいう「楽な呼吸」なのだから、故意に呼吸を変化させてはいけない。ひたすら楽に息をしようと心がけていれば、自分にもっともふさわしい息の深さ、長さは自然に体得できる。呼吸は胸式でも腹式でもよい。

楽に呼吸している感じがわからない人は、次のような試みをしてみるとよい。訓練開始と同時に、数を1から10までゆっくり頭の中で数え、それに呼吸を合わせていく。10までかぞえたら、また1から数えなおす。そして、また呼吸をそれに合わせていく。これを繰り返していくうちに、自然、呼吸に身を任すような心構えができるだろう。

第4段階は、1回の練習に比較的長い時間をかけても害はない。1回の練習に1分から5分、各くセッションも30分から2時間ぐらいを休まずに続けても、疲労感や不快感が生じることはないだろう。

この段階は、第3段階までをマスターしていれば数度の練習でコツをつかめるが、完全にマスターするためには、一週間から二週間くらい、毎日、あるいは1日おきに練習していただきたい。

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 2-5 強化訓練

第4段階では1回の訓練に、比較的長い時間をかけても害はない。1回の練習に、1分から5分、各セッションも30分から2時間くらいを休まずに続けても疲労感や不快感が生じることはないだろう。。

この第4段階をマスターしていれば数度の練習でコツを飲み込めるが、完全にマスターするたまには1週間から2週間くらい、毎日、あるいは1日おきに練習していただきたい。

信じられないような体験をお話ししよう。わたしは40代の後半チエーンスモーカーだった。短くなったタバコの火を消すと、すぐ新しいタバコをくわえて火をつける。タバコをはさむ指はヤニで山吹色に変色し、強烈なにおいを発していた。

なんと、私は1日にタバコを100本も吸っていたのである。禁煙するたびに本数が増え、気が付いた時には毎日20本入りのタバコを5箱も煙にしていた。タバコを鎖のように、切れ間なく連鎖的に吸い続ける人を「チェーンスモーカー」という。

似たような言葉に「ヘビースモーカー」があるが、限られた時間でたくさんのタバコを吸う人である。要するにニコチン依存に陥った状況で、喫煙しなければダメという認識を持つのがヘビースモーカーとなる。

男性が1日に吸う平均本数は約18.5本、女性の1日の平均喫煙本数は約14.7本である。平均喫煙本数を越えている人を指してヘビースモーカーと呼ぶが、タバコの消費量はチエーンスモーカーの足元にも及ばない。

家族が望まない受動喫煙になると知り、タバコをやめることにした。禁煙すると頭はボーとした感じで、他人が吸っているのを見るとイライラしてくる。これは禁断症状で、依存要求が突然断ち切られたために起こる心理的身体的な異常症状である。

この症状は、簡単に耐えられるほど楽なものではない。不安を伴い、きわめてつらいものである。耐えきれなくなって、禁煙は三日坊主で終わった。この禁煙を何度も繰り返すうちに喫煙本数が増え、人もあきれるチェーンスモーカーになってしまったのである。

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従来の催眠術は「ああ思え」「こう思え」という意志強化法でしかなかった。「たばこをやめられる」と自らの心に何度も言い聞かせるのである。これは頭から入っていく自己催眠だが、マークトゥエンはこう言っている「禁煙なんて簡単さ。私なんか、もうすでに何百回もやっている」。

禁煙や禁酒を試みたことのある人なら、単なる自己暗示がいかに無力かよくご存じだろう。人間は、頭の中で「ああしよう」と思い込むだけで、そうなれるほど器用につくられてはいないのだ。ここで紹介しているのは、体全体と心を自分で調節する技術である。

体からくる刺激は、心の働きに大きな影響を及ぼす。自分の心に直接暗示をかけるよりも、体に暗示をかけるほうがより確実で安全なのだ。暗示や呪文に強い理性的な人間も、体からくる刺激には実に素直に反応する。

3000万円の借金をして終の棲家であるマンションを購入する決断をした。新築マンションの室内でタバコを吸うと、壁紙にヤニやタールが染み付き、山吹色に変色して強烈なニコチン臭を発するそうだ。

タバコをやめられない男性は、ベランダへ出て喫煙するようすが報道されていた。マンション購入の抽選に当たったのをきっかけに、平井富雄博士の自己催眠術の訓練を再開すると、自己催眠術はタバコに対する執着心を楽に断ち切ってくれた。

1日に100本のタバコを煙にしていたチエーンスモーカーが、マンションへ入居した途端に見向きもしなくなり、タバコの煙が漂っていても吸いたいと思わなくなった。タバコを吸い始めて30年後に断煙し、それからもう31年が過ぎた。

第4段階の効用は、さらに広範囲へ及ぶ。たとえば、虚弱体質の克服である。断食療法などの無理な健康法を試みるより、はるかに効果的で確実な健康法である。虚弱な体質の人、線病室の人、いつも体の異常感に悩まされている人には是非お勧めしたい。

ただし、喘息賞の人、現在肺結核で要注意の人はこの段階を飛ばし、次の段階へ進んでほしい。これらの症状も軽症の場合は、この訓練によって治療効果が得られることが多いが、人によっては逆に症状を促進する場合があるからである。

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参考資料:新・自己催眠法(長尾盛之助、鶴書房)、自己催眠術(平井富雄、光文社)、公益財団法人長寿科学振興財団ホームページなど。