はげちゃんの世界

人々の役に立とうと夢をいだき、夢を追いかけてきた日々

第66章 自律神経を正常に3

人口の年齢層は、14歳以下を年少人口、15~64歳までを生産年齢人口(現役世代)、65歳以上を高齢人口という。高齢者の割合が全人口の7%以上を高齢化社会、高齢者の割合が14%以上を高齢社会、21%以上を超高齢化社会、28%以上を超高齢社会という。

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1 自己催眠術

 1-1 予備知識

平井富雄博士が推奨される自己催眠術は、シュルツ博士の自律訓練法が土台としているが、だれにでも手軽に実行できるよう、平井富雄博士が工夫改良を加えたものである。自己催眠術の訓練は六段階に従って進める。

第一段階 ウデガオモイ(腕が重い) 完了

第二段階 ウデガアタタカイ(腕が温かい) 完了

第三段階 シンゾウガシズカニウッテイル(心臓が静かに打っている)

第四段階 コキュウガラクダ(呼吸が楽だ)

第五段階 オナカガアタタカイ(お腹が暖かい)

第六段階 ヒタイガスズシイ(額が涼しい)

これらの六段階は一つ一つが独立したものではなく、一段階をマスターできれば次の段階への移行が容易になるというように、難易度や安全度を勘案したうえで合理的に配列されている。従って、第一段階からひとつずつ順を追って進んでいかなければならない。

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 1-2 練習場所

繰り返しになるが、最初は外的な影響を受けやすいので、自分の部屋など静かで落ち着けるところが良い。自分の部屋に閉じこもるのが理想的で、明るすぎないこと、熱くも寒くもないこと、通風状態が良いこと、などの条件を考慮できれば一層よい。

少し慣れてきたら、電車の中や公園のベンチなど、外的刺激の多いところでもできるようになる。ただし、どんな場所でも一定時間同じ姿勢でいられるところでなければならない。

なお、外的な刺激をなるべく少なくするために、練習中はメガネ、ベルト、ネクタイ、腕時計、靴下止めなど、身に着けているもので窮屈なものはすべてゆるめるか、取り外すことが望ましい。

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 1-3 姿勢

この訓練は「仰向け姿勢」が最も効果的だが、慣れてきたら「もたれ姿勢」でもよい。まず、ベッド、布団、またはたたみ、ソファなどの上に、頭に枕を当てて仰向けにねる。両足を適当に緩め、体全体の無駄な力を抜く。この場合も、前の2つの段階と同様にリラックスしすぎて、ぐったりした感じになってはいけない。腰掛姿勢


 足のつま先はV字に外側を向く。腕は力を抜いて少し曲げ、胴のわきに手のひらを下にして置く。指は自然に、幾分曲がっている状態である。胴にふれてはいけない。

体の一部が寝台の部品や畳の縁などに触れて気が散ることがある。このような細かい刺激も、中々馬鹿にならないので、練習の初めによく周囲の状況を整えておくように注意しよう。

このような姿勢が取れたら、右腕をそっと上げ、手のひらを左胸のちょうど心臓の真上当たりに置く。この場合、右ひじの下に座布団か枕を当てて支えにするとよい。左手はそのままである。

準備ができたら、静かに目を閉じる。あなたの右手の下で、あなたの心臓が規則正しく打っている。そのかすかな鼓動にすべてに意識を集中しよう。そして、頭の中に、脈打っている心臓の様子を思い浮かべよう。それは、あなたの生命の母体だ。

なお、原則として練習中は目を閉じる。肢体への注意集中はうまくいくが、雑念が起こりやすく眠り込んでしまうことがある。できれば、半分目を開けた状態の「半眼」をお勧めする。

この段階の訓練は「もたれ姿勢」で行ってもよい。もたれ姿勢とは、下半身は仰向け姿勢と同じ型をとり、状態を柱や壁にもたせ掛ける姿勢である。腕や手、頭などについての注意は腰掛け姿勢の場合と同様である。

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 1-4 練習中の心構え

くどいようだが、基本的な暗示をたえず念頭に持ち続けることが大切で、「シンゾウガシズカニウッテイル」と思うとき、これを言葉だけで考えず実際にそう感じるように、いつもつとめることが重要である。別なことを考えても催眠にかかるだろうか、という試みは好ましくない結果を生むことがあるので決してしてはいけない。

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 1-5 練習回数と時間

自己催眠開始から終了・覚醒にいたる一回の練習時間は極めて短く、普通30秒から90秒(慣れてきたら、さらに1分、3分とふえる)くらいである。この短い練習を、何回か間を置かずに集中的に繰り返すのである。このように短時間の練習を何回か繰り返すことを1セッションという。

1セッションは5分ないし2時間である。1日に3度、朝・昼・夜に行うのが理想的である。それが無理なら朝と夜の2セッション、あるいは朝か夜の1セッションでもよい。大切なことは1セッションでもよいから、毎日継続させることである。とくに、練習を始めたばかりのときは、なるべく一日でも中断しないほうが良い。

初心者は1セッションで3回練習する。1回は30~90秒である。1回の練習が終わったら、催眠の自覚がなくてもきっぱり終了・覚醒し、直ちに第2回目に入る。そしてその終了・覚醒後、ただちに3回目にうつる。

1回の練習に連続して3回分の時間を費やすよりも、短く断続したほうが効果的である。もちろんこれは初心者の場合で、少し訓練に慣れてきたら各階に練習を長く続けたほうが効果的である。かつ、1セッションの練習回数も3回に限らず自由に増やしてよい。

なお、練習はいつ行ってもよいが、朝起きたときと就寝前が最も効果的である。要は練習するときを、食事前とか就寝前というように、きちんと決めておくことである。

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 1-6 終了と覚醒

一定の練習が終わったら自分で覚醒する。目を開けて、まず両腕、次に両足を2回強く屈伸し、次に頭を2回左右に傾けてから深呼吸を2回行う。この順序は各段階とも共通である。終了・覚醒の順序を狂わせると、めまいなど好ましくない結果が出ることがあるので、めんどくさがらずにきちんと守ってほしい。

練習を進めていくと、同じ催眠に入るまでに要する時間は次第に短くなり、外的刺激にあまり影響されずに効果的に暗示を受け入れるようになる。そして、ある段階の自己催眠術をマスターすると、その催眠効果は以後の段階にうつっても持続する。

つまり、第三段階までマスターしたときには、同時に第一段階と第二段階の催眠も起こっているのである。第六段階の暗示が短時間で実現されるようになれば、自己催眠はいちおうマスターしたことになる。

六段階の基本催眠は、毎日効率よく練習していけば、約四週間でマスターすることができる。練習の継続性や個人差によって、四週間より長くかかることもあるが、練習回数を増やしたり、練習中の条件の改善に留意すれば、案ずるほど長くはかからないものです。

練習者は、まず、最初の一段階を完全にマスターすることに努力してほしい。というのは、第一段階「ウデガオモタイ」と第二段階「ウデガアタタカイ」の二段階をマスターして強化訓練を続行するだけでも、自己催眠によってもたらされる、ほとんどすべての効果を享受することができるからである。

練習中に眠り込んでしまったら、目覚めた後に必ず最初からやり直すことである。とくに、練習終了・覚醒の手続きを完全に行うこと。四股の屈伸は怠ってはいけない。

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2 第三段階

 2-1 自己催眠に入る準備

第三段階は心臓の動きを整えることにより、精神の緊張をとく自己催眠術である。この訓練は、前の2つの段階より少し難しい。しかし、前の二段階の訓練を確実にマスターしてきた人ならば、その要領をつかむのに多くの時間を必要としないだろう。

しばらく手を当てていると、鼓動はしだいにその強さを増してくる。そのドッキドッキという音があなたの右手のひらに伝わって、静かに全身に伝わっていくだろう。あなたはすっかり落ち着いた気分になってくる。

あなたの心臓、体の中心はこんなにもたくましく拍動しているのだ。そのダイナミックな鼓動で、あなたの右手は飛び上がらんばかりだ。さあ、自己催眠に入ろう。

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 2-2 シンゾウガシズカニウッテイル

頭の中で「ウデガオモタイ…ウデガオモタイ…ウデガオモタイ…」と三度つぶやこう。次に、「ウデガアタタカイ…ウデガアタタカイ…ウデガアタタカイ…」と三度つぶやく。すぐに、腕から両足、さらに体全体に重くあたたかい感じが広がってくる。

心臓の鼓動がうそのように静かになったり、強くなったり、ちょうど波が寄せては返すように変化し始める。心臓の鼓動と自分の気持ちが一体になりつつある。やさしくゆったりと鼓動する心臓を、もう一度しっかり脳裏に刻み込もう。そして、繰り返そう。

「シンゾウガシズカニウッテイル…シンゾウガシズカニウッテイル…シンゾウガシズカニウッテイル…」

だんだん呼吸が深くなり、その回数が減ってくるのがわかる。鼓動もゆっくりになる。あなたは鼓動のリズムに引き込まれていく。ここまでくると、鼓動を全く感じない瞬間があるかもしれない。それはあなたが鼓動と一体になってしまったからだ。

鼓動が聞こえなくても少しの不安はない。また静かに、ゆったりと鼓動は帰ってくる。波間に漂う小舟のように、快い律動の中で、あなたの心はゆったりと揺らいでいる。はじめて、あなたはあなたの心の中に、溶け込むことができたのだ。

こんな安らかな気分はいまだかって味わったことがあるだろうか。「ああ、いい気持だ」と実感できた時、第三段階は完成である。

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 2-3 催眠を解く

一定の練習が終わったら自分で覚醒する。目を開けて、まず両腕、次に両足を2回強く屈伸し、次に頭を2回左右に傾けてから深呼吸を2回行う。両手に力を入れて状態を緩やかに起こそう。そしてそ~っと立ち上がる。順序を誤らないようにしてほしい。

あなたは、気持ちよく、いつのまにか平常の状態に戻っているだろう。催眠が成功したからと言って、あわてて目を開け、飛び起きたりするのは禁物である。催眠中にあるいは終了後に、胸苦しを感じることがあったらいったん中止し、すぐに初めからやり直す。

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 2-4 練習中の注意

1セッションの練習に20分、30分と時間をかけても催眠状態に入らないようなら、そのときはさっさと切り上げ半日から1日の間を開けて再開する。第三段階の補助暗示としては、右下の視覚的イメージが効果的である。

視覚的イメージ

練習開始直前に、これをじっと見つめ脳裏にきざみこむ。絵の感じが頭に入ってから絵を思い浮かべつつ「シンゾウガシズカニウッテイル」を繰り返すとよい。このような絵が催眠効果を促進するとは信じられないだろうが、暗示強化作用は臨床的に実証されている。

第3段階は、1セッションを長くとも10分ぐらいに留める。毎日あるいは1日おきに規則的に練習すれば、ほぼ10日で自由に催眠状態に入れるようになるだろう。なお、この段階の訓練は「仰向け姿勢」が最適だが、「もたれ姿勢」で行ってもよい。この姿勢は和室で行うのに最適である。

第3段階は1セッションを、長くとも10分ぐらいにとどめておいたほうが良い。毎日あるいは1日おきに規則的に練習すればほぼ10日で、自由に催眠状態に入れるようになるだろう。

ふだんから動悸や息切れが激しく、脈拍が時々不規則になるのは、期外収縮、頻脈と呼ばれる病気の症状とみられる。第3段階の訓練は、これらの症状が軽い場合にはがいして効果的な治療法となるが、症状が激しい場合はかえって逆効果となることもある。

だから、病気とまではいかなくとも、いつも同様、息切れなどに悩まされているような人は、第3段階の練習は避けるほうが無難だろう。心筋症、狭心症のようなはっきりした心臓の病気を持っている人、現在、心臓の専門医にかかっている人も、この段階の訓練を省力して、第4段階へ進んでいただきたい。

また、催眠中、あるいは終了直後に、いつもイライラや胸苦しさを感じるような人も、この段階は省略してもよい。

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 2-5 強化訓練

ふつう、心臓の動きを意識することはあまりないだろう。というのは、心臓は他の内臓諸器官と同様に自律神経という自由意志ではどうにもならない神経の「自立機能」によって働いているからだ。この自立神経は、交感神経と副交感神経からなっている。

交感神経が興奮すれば、心臓の鼓動は増しかつ強くなる。逆に、副交感神経が興奮すると拍動数は減り、心臓の活動は低下する。心臓の働きは、おもにこの副交感神経によってコントロールされている。

この訓練が心臓と同時に、胃や腸などを自然に休ませ、それらの働きを整える役に立っている場合が多い。また、この段階では、前の第1段階と第2段階と同様の生理的変化、筋肉と脳の緊張弛緩、血管の拡張なども同時に起こっていたことはいうまでもない。

心臓の安らかな休息は、そのまま精神の緊張弛緩につながる。精神、特に感情をつかさどる脳の中枢と、心臓の働きを調節する自律神経中枢は、表裏一体をなしているからである。

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参考資料:新・自己催眠法(長尾盛之助、鶴書房)、自己催眠術(平井富雄、光文社)、公益財団法人長寿科学振興財団ホームページなど。