6 中国で疫病はなぜ発生するか
私たちは良識あるジャーナリストが提供している情報を見つけるしかないのである。そこにはマスコミが報道しない中国の実態が語られている。中国で疫病はなぜ発生するかを考える上で、金文学氏は『中国人民に告ぐ』が引用した中国人類学の大家である費孝通(ひこうつう)の『郷土中国』の一文がヒントになっている。
たいていの人はゴミを家の前の通りに捨てて平気な顔をしている。蘇州には川が多く、そのあまりにも美しい街並みを文人たちが(中略)称えているが、わたしが見たところ、実際蘇州ほど水が汚いところはない。何でもかんでもこの川に投げ捨て、数多くの家庭は便所すら必要としない。あきらかにこの川で洗顔をして野菜を洗っていることを知りつつも、全く自制しようとはしない。なぜだろうか、この川そのものが公共物だからである。
さらには足を踏み入れるのも困難なのが便所だ。どこの家もこの『他人事』に関わろうとはしない。絶えて、我慢して、結局どうしても耐えられなくなったとき、誰かが手を付けざるを得なくなるのだが、それでも誰一人『ありがとう』の一言もない。
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6-1 過去に発生した疫病
中国広東省発のSARSは中国国内のみならず、南極を除いた五大陸すべてに拡散し世界を恐怖に陥れた。SARSの拡散は中国発の疫病の恐ろしさについてはじめて世界が認識したかのように見えるが、実は同じようなことは歴史上何度も繰り返されてきた。
疫病のウイルスについて分かってきたのは近代になってからであり、歴史をたどればその感染経路にも異論はあるが、中国から発生した疫病が世界各国へ蔓延し、多大な犠牲者を出すと言ったことは今始まったことではなかった。
中世ヨーロッパ人口の三分の一を死亡させたぺスト(黒死病)も、中国雲南省で発生した疫病がもとであった。1918年に起こったスペイン風邪も、もとをたどれば中国南方発の疫病だった。
1900年にアメリカを襲ったペストももとは中国広東省発であり、サンフランシスコのチャイナタウンを経由してアメリカ全土に広まった。1950年年代に流行したアジア風邪も、60年代の香港風邪ももとは中国だった。
日本で流行した梅毒、天然痘、コレラなど疫病のほとんどは唐船と共に日本に侵入し、列島全土に広がっていった。戦前の中国では風土病や疫病が猛威を振るっており、90年代に入ってからもその状況はあまり変わっていない。
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この状況を危ぶんだ台湾の衛生署(厚生省)は1995年に中国への旅行者に注意すべき病気リストを提示した。そこには、ぺスト、マラリア、コレラ、肝炎、チフス、パラチフス、ツツガムシ病、エイズ、サルモネラ菌、ビブリオ菌、ライム菌、包虫病、フィラリア、ハンタ病、ウェステルマン肝吸虫、トキソプラズマ症、デング熱、ハンセン病、狂犬病などとされている。
広東人は、足があるもので食べないものはテーブルだけ、飛ぶもので食べないものは飛行機だけ、といわれるほどゲテモノ喰いで有名だ。新型コロナウイルスは蝙蝠が宿主で、ウロコのある哺乳類センザンコウを介して人に感染したと推測されている。
中国ではセンザンコウのウロコは感染症から癌に至るまで、あらゆる病気の治療に効果があると科学的な根拠もなく信じられている。胎児を食べると精力がつくとも考えられている。タケネズミやアナグマといった野生動物がウイルスを媒介している可能性もある。
上海人が毎年食べる蛇は千トンで中国全土では6千トンも消費される。あまりにも消費量が多いため中国内の蛇は絶滅に瀕している。それでも食べるのを止めず、毎年100万匹の蛇を密輸入しているという。
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6-2 中国の実態
人民中国建国以来半世紀が過ぎたが、各地の生産ノルマは決められていても資金分配のルールは確立されていないため、資金争奪の政治闘争は際限なく広がっている。政争の結果如何で各地方政府の取り分が必然的に決まることになる。
陝西、四川、青島などの中西部は政治力が弱いためはスズメの涙ほどの開発資金しか与えられない。一方、北京と上海は国家資金の独占により肥え太っている。それぞれの地域が潤うことで利益を得るのは国家権力者や党高級幹部である。
改革開放後の中国は、高度経済成長に成功した国のように報道されているが、医療衛生と教育という国家にとって不可欠なものが置き去りにされてきた。中国社会で疫病が発生するのは、貪欲な食欲と不潔極まりない医療衛生が原因である。
中国では現在も肺結核に悩まされる人が多く、その感染者は数億人にも上ると推測されている。エイズの拡大も中国では肺結核と並んで深刻な被害をもたらしている。広東省、雲南省、江西自治区の三省だけでも850万人以上ものエイズ患者がおり、毎年30%もの割合で患者が増加しているとの報告がある。
2003年3月には開かれた全人代と政協で、農村部では二億余人の人口が経済的理由で入院することができず、都市部でも3千万人が同様の理由で医療ケアが受けられなかったと報告されている。
現在の中国の医療問題は原始時代から一歩も進歩していない。毎年500万人余りの貧困層は治療を放棄され死に至っているという。医療を受けられない貧困層は死を待つしかないので現実である。
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チャイニーズドラゴン新聞主幹の孔健は『中国人にはご用心』で次のように述べている。
いまの時代、中国では自ら進んで意欲的に物事に取り組む気概のある人は少ない。活動が消極的になっている。なぜか!理由は党幹部をはじめとした公務員の腐敗だ。幹部の腐敗による事件は年間3万件にもおよび、いくら新しい事業、新しい工事、新しい試みを行っても役人の許可を受けるところで壁にぶち当ってしまう。袖の下という「必要経費」は、すでに中国の商習慣になっているほどだ。
町の人々は「人民日報」は一週間読んでも何もわからんということで、これまで権威の象徴的メディアだった「人民日報」よりツイッターに書かれたほうを信じてウップンを晴らしている。約七億人といわれる携帯電話人口と四億人がツイッターを使用しているというからすざましいことになる。
井沢元彦は『逆説中国国定教科書』で、通語句が自国の歴史教科書において、いかにインチキ・デタラメを教えているかを、中国で実際にこうした教育を受けてきた金文学氏とともに、克明に分析したのがこの本ですとして、次のように述べている。
中国の文化大革命という共産党が行った大虐殺における死者は最低2千万人といわれています。これは、日本の中でも最も「親中派」であり「中国の代弁者」と言っても過言でない、朝日新聞社発行の現代用語辞典「知恵蔵」にすら載せられている数字(実際には7千万人殺されてと言う説もある)です。
ところが、中国の教科書には「70万人が迫害を受けた」としか書いてありません。迫害とは言うまでもなく「苦しめること」であって「殺すこと」ではありません。実際には最低でも2千万人を殺したのに、教科書では「一人も殺していない」とウソをついているわけです。中国の歴史教科書というのは、一事が万事この調子なのです。
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6-3 荒廃した国土
評論家の黄文雄は『中国が死んでも日本に勝てない7つの理由』で次のようにの述べている。
中華人民共和国が成立した1949年まで、中国にダムが24余座しかなかった。それらの多くは日中戦争中に日本人が建設したものである。その後、中国は約8万余座のダムを建設した。
全国各地につくられたこれらのダムは、膨大な自然破壊という犠牲のもとに建設されたものであった。できあがったダムは数千年来の水の災害を克服するどころか、ダムとしての機能に関しても疑問の多い出来損ないであった。
中国では1954~2001年の間に3,459座のダムが崩壊している。港南省には13,049座のダムがあるが、そのうちの154座のダムが2002年に崩壊し、危険と指定されたダムは3400座である。豆腐漬工程と指摘された手抜きの欠陥工事の結果である。
中国の森林面積は14%と政府が公表しているが、アメリカの人工衛星観測ではわずか8%となっている。戦後の中国の人口は4億人だったが現在は12~13億人といわれ、自然環境が許容できる適正人口をはるかにオーバーしている。
人口過密となれば過剰開発で自然環境が必要以上に破壊されてしまう。自然環境破壊が極限に達すると今度は自然からの逆襲が待っている。長い間の過剰開発は水害や干ばつ、イナゴの被害などという現象になって人々に降りかかる。
中国の砂漠化現象は深刻である。砂漠化する面積は毎年広がっており、1年に日本の都府県の一つが消え続けているようだ。2002年までに砂漠化した土地は267.4万平方キロメートルであり、中国の土地面積の27.9%にあたる。
中国最大の河川である長江には、毎日5000万余トンの排水が流れ込んでいる。毎年200億トンの工場排水、70万余トンの農薬を含む農業用水、大量の個体廃棄物資、都市生活の汚水、さらに処理されない糞尿が流れ込む中国最大の排水溝となっている。
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東京の4倍以上もの人口が密集している上海は、毎日7300トンの糞便と500余トンの汚水を直接排出している黄浦江と、大きな排水溝である蘇州河に囲まれている。世界で最も不潔な環境で悪臭と唾痰にまみれているのが上海である。
サンゴ礁汚染が進み、沿海地域の70%は水質汚染に犯されている。渤海はすでに死の海になっている水は。太湖の水はすでに飲用できなくなってる。
毎年、灌漑用水の300億立方メートルが不足し、都市部では60億立方メートルが水不足に悩んでいる。水不足を補うために地下水をくみ上げ過ぎて、河北省では3.3平方キロメートルの土地が陥没した。ちょうど日本の四国の広さである。
中国最大の河川である長江には、毎日5000万余トンの排水が流れ込んでいる。毎年200億トンの工場排水、70万余トンの農薬を含む農業用水、大量の個体廃棄物資、都市生活の汚水、さらに処理されない糞尿が流れ込む中国最大の排水溝となっている。
東京の4倍以上もの人口が密集している上海は、毎日7300トンの糞便と500余トンの汚水を直接排出している黄浦江と、大きな排水溝である蘇州河に囲まれている。世界で最も不潔な環境で悪臭と唾痰にまみれているのが上海である。
サンゴ礁汚染が進み、沿海地域の70%は水質汚染に犯されている。渤海はすでに死の海になっている水は。太湖の水はすでに飲用できなくなってる。
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6-4 農薬の複合汚染
1998年にWHOが世界54ヶ国の272都市で行った大気汚染調査により、中国は最厳重汚染国家であることが証明された。さらに、世界十大汚染都市のうち、二位のミラノ、五位のメキシコ、十位のテヘランを除いた七都市はすべて中国の都市だった。
1999年に行われた環境保護関係機構の測定で、広州市で肺ガンによる死亡率が20年前の50倍にも増加し、毎日3~4人が肺ガンにより死亡している(北京晩報1997年7月21日付)。
2000年の春に発生した砂嵐は特にひどく、北京、華北を襲った後、南京、上海など20近くの大都市に振り注ぎ、韓国のソウルや日本、台湾にまで被害を及ぼした。黄砂と共に運ばれるのは、硫黄やヒ素などに汚染された大気である。
中国の有毒野菜問題はすべて地方政府が管理し中央政府は関知しない。大量中毒が起こり死者が多数出た場合のみ、中央政府は問題解決のために重い腰を上げるというあり得ない有様である。
農民からすれば農薬を多く使用しなければ野菜の収穫量が減る。日本ではまだ中国野菜による死者は出ていないが、中国では毒野菜による中毒など日常的なことで騒ぐほどの事でもない。2000年には広東で売られている約67%の野菜が農薬基準をオーバーしていることが判明した。
中国青年報(2001年12月7日付)によれば年間10万人以上が毒野菜中毒になっていると言う。無知な農民は国際的に禁止されている猛毒有機リン系殺虫剤、メタミドスなど千種類以上の農薬を平気で使ってしまう。
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広東では毎年千人を超える中毒者が出ている。中国の農薬中毒者は年平均10万人以上にのぼり、死者は1~8万人以上いる。中国の脳や牛要領は年間80~100万トンで世界でもトップである。
中国衛生部の調査では、フッ素汚染地域が全国の三十の行政区にわたり、約1億400万人がフッ素中毒になってると言う。
エイズは欧米の病気で中国とは関係ないと中国政府は感染を否定したが、中国科学院の研究報告では中国内にすでに1000万人のエイズ患者がいるとしている。さらに、毎年30%の割合で患者が増加している。エイズの感染源は麻薬の静脈注射と言われている。
農村部では二億余人の人々が経済的理由で入院することができず、都市部でも3000万人が同様の理由で医療ケアを受けられない。毎年500万余人の貧困層は治療を放棄されて死に至っている。
食用肉として売られているのは、毒殺されたか病死した豚や牛で、重さを水増しするために動物の肉などに汚水を注入したものである。消費期限を過ぎた肉を使うなどの不正を行なっていたことが判明した。
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6-5 農民からの搾取と略奪
農民は社会主義革命後に解放され、改革開放後から1994年までの15年間に農村の収入は倍増している。しかし、それ以降の農村経済は悪化の一途をたどり、農民の収入が減る一方物価は高騰して農民は飢えに苦しんでいる。
中国政府はこの事態を改善するためそれまで200種類もあった農村の税金のうち50種類を取り消した。都市住民の平均所得税は37元(555円)なのに対し、農民の所得税は平均90元(1,350円)である。税金は農民に重くのしかかっている。
しかも、農村幹部による不正、汚職、搾取は強化され、農村の幹部の数は改革開放前よりも数倍に増え、だれもが農民を搾取して甘い汁を吸おうとしている。農民は国家に見捨てられた人々だとしか思えない状態である。
都市部と農村部の経済格差はそのまま収入の格差に直結している。中国最大の国有企業である中国電力公司の幹部は年収30満~100万元(450万~1500万円)だが、年収500元(7500円)という農民は1億人も存在している。
国務院弁公室の報告によれば、2002年の年末奨励金の乱発は、電力、石油化学、エネルギー関係の国有企業に集中していたという。重役クラスは300万元、社長クラスは500万元もプラスされ、別荘付きの奨励金もあった。農民の年収の1万年に相当する。
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中国の農村は、交通、物流、情報が未発達であり、草地、草原の砂漠化、農薬による環境汚染など、居住環境は悪化の一途をたどっている。また、水害や間伐が頻繁に襲ってくるのに加え、党幹部の食い物にされている。農民はこれら私腹を肥やすだけの党幹部を陰でイナゴと呼んでいる。
中国科学院の農村工作レポートでは、今なお1億人の農民の年収が500元(7500円)程であった。8億の農民が適切な医療を受けられずに早死にしており、農民の死亡率は都市部の150倍以上であるとの報告がなされている。(動向2002年11月号)
農民を苦しめるのは、党の支配と政府組織による搾取と略奪の構造である。村役場に多量に有り余る党の余剰人を農民が養わなければならない。そのために、農民は都市住民以上に重い税を課せられる。党幹部は農民を人間として扱うことはない。
人民公社時代の中国は、農村と都市の二つの世界にはっきり分けられていた。都市戸籍を持たない農民は、子々孫々とも永久に都市市民になることはできなかった。
改革開放後は、農民の移動や移住の自由がいくらか与えられたものの、解禁されたというほどではなかった。農民に与えられたのは都市へ移動する自由であり、都市に移住する権利も自由もいまだ与えられていない。
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