1 卵子と精子の誕生
1) 女性の生殖器官
卵巣は卵子の成熟にかかわる性腺で子宮の両側に位置している。卵巣は親指大の臓器で長さ3~4cm、幅は1~2cm、重さ5~6gのアーモンド状の器官で、卵胞という袋に詰まった一生分の卵子が用意されている。
月に一度左右の卵胞へ性ホルモンが届くと、数万から数百万の原始卵胞の中で黄体期=高温期に、次の周期に排卵する「候補」が20~30個決められる。排卵できるまでに最も優れた卵胞に育った、主席卵胞卵子と呼ばれる卵子が卵管へ出ていくのが排卵である。
左右の卵巣から交互に排卵されたり同じ側の卵巣から排卵されることもあり、卵子の選ばれ方は規則的に定まっているわけではない。個人差はあるが平均的な周期は25~38日で、その周期の中間くらいで排卵が行われる。
排卵が起きると卵子は卵管の先端にある卵管采から取り込まれ、卵管内で精子と出会うために待機する。妊娠しないと排卵後およそ10日で黄体が変性し始め、子宮内膜を維持してきたホルモンが減少し、排卵後約2週間で内膜がはがれて「月経」となる。
女性膣内はデーデルライン桿菌によって乳酸が産生され、pHは酸性(4~5)に保たれ腟自浄作用が働いている。女性の膣壁から内臓である膣を保護するために、分泌される無色透明又は白濁した粘性のある液体を膣分泌液という。
膣分泌液は乾けばカサカサになる。性交時には腟内を保護する潤滑剤の役割も担っている。分泌が不十分なまま、または体質に起因して分泌量が少ないまま性交すると挿入が困難になったり、不快感や痛みを伴う場合がある。
平常時でも膣分泌液は一定量は分泌され、膣の粘膜を湿潤に保ち膣の自浄作用を担っている。前戯不足や望まぬ性交(レイプなど)の際にも、繊細な内臓である膣を摩擦や傷害から守るために自動防御として分泌される。
2) 男性の生殖器官
男性の生殖器は、精巣(睾丸)、精巣上体(副睾丸)、精管、精嚢、前立腺、尿道球腺、陰茎、陰嚢などで構成される。精巣は陰嚢中に左右1対あり、線維性の白膜に包まれ多数の小葉に分けられる。各小葉には数条の曲精細管がありその中で精子が作られる。
精巣(せいそう)は精子を作る生殖腺であり、アンドロゲン(男性ホルモン)を分泌する内分泌器官でもある。精子は、精細管壁の精上皮から精祖細胞が生じ、精母細胞、精娘細胞と分化して精子細胞となる。精子細胞は成熟し形を変えて精子となる。
精巣からは精路が伸び、副睾丸で精子に運動能力と受精能力が与えられる。精管は前立腺を貫き、精嚢の導管と合流して射精管となり尿道に開いている。精嚢からアルカリ性の分泌物が出され、射精時に前立腺の分泌物とともに精液として排出される。
陰茎は尿路と交接器を兼ねる器官で、背側の陰茎海綿体、腹側の尿道海綿体、その先端の亀頭で構成される。尿道海綿体のほぼ中央を尿道が通り、亀頭の先端に外尿道口として開いている。陰茎海綿体は血管に富み、多量の血液が注がれて勃起の主役となる。
陰茎(いんけい)は尿道を含む外生殖器で、尿道は海綿体というスポンジのような組織で取り囲まれている。性的興奮によって海綿体に血液が流れ込むと、陰茎が勃起(ぼっき)して腟への挿入と射精を可能にする。
尿道は泌尿器系と生殖器系の両方に属しているが、尿と精子が一緒に通過することはない。精子が尿道の前立腺部に入ると膀胱の括約筋が収縮し、尿が尿道内に漏れ出ないように遮断している。
1回の射精で射出される精液の量は個人差が大きく、数ミリリットル程度が一般的である。短時間のうちに3~4回射精すると一時的に精嚢がほぼ空になることはあるが3日間で満たされる。精子は常に作り続けられ、古い精子は分解され体内に吸収される。