1 帯状疱疹とは
1) 帯状疱疹の原因
帯状疱疹を発症させる原因は「水痘・帯状疱疹ウイルス」です。はじめてこのウイルスに感染したときは水ぼうそうとして発症します。水ぼうそうが治った後もウイルスは体内に長い間潜んでおり、普段は免疫力によって活動が抑えられています。
加齢やストレスなどで免疫力が低下するとウイルスが目覚め、神経にそって移動を開始して皮膚に到達すると帯状発疹を発症します。日本人の成人のおよそ9割がウイルスを体内に持っているそうですから、だれもが帯状発疹を発症する可能性があります。
90歳以上になられた人の半分は帯状疱疹を発症すると考えられています。統計的にみると20歳代と50歳代にピークがみられ、季節的には決算期、連休後、お盆後、12月の暮れなど疲労が重なる時に多くみられます。
2) 帯状疱疹の症状
帯状疱疹の症状は千差万別です。共通していることは、水膨れを伴う赤い発疹が体の左右どちらかに帯状となって現れます。強い痛みを伴うことが多く、症状は3~4週間ほど続きます。
多くは腕や背中に症状が出ますが、顔や首に現れることもあります。帯状疱疹による痛みにより、日常生活が制限されてしまうことがあります。痛みがひどく体を動かせない、痛くて家事や仕事が出来ない、痛みがひどくて眠れないこともあります。
片側の神経分布領域に一致して神経痛様疼痛、知覚異常あるいは痒みが数日から1週間続き、やがて虫さされのような浮腫性の紅斑が出現します。この時期に軽度の発熱やリンパ節腫脹、頭痛などの全身症状がみられることもあります。
間もなく紅斑上に小水疱(みずぶくれ)が多発し、水疱は中央にくぼみがあります。内容は初め透明ですが、黄色い膿疱となり、6~8日で破れてびらん(ただれ)または潰瘍になります。
皮疹の出現後1週間までは紅斑や水疱が新生し皮疹部の拡大がみられますが、以後治癒に向い約2週間でかさぶたとなり、約3週間でかさぶたは脱落して治癒します。帯状疱疹が顔や首に現れると、見た目が悪いので気になり外出ができなくなる場合もあります。
年齢が若いから軽症ですむとはかぎらず、その患者の抵抗力により重症度が決定されます。初期に軽症であっても、無理をすることでいくらでも重症化する疾患です。帯状疱疹は抗ウイルス薬の全身投与を出来るだけ早期に開始することが大切です。
重症なものは、入院して抗ウイルス薬の点滴静注が必要です。局所は、初期では非ステロイド抗炎症薬、水疱期以降では細菌二次感染を防ぐために化膿疾患外用薬、潰瘍形成したものでは潰瘍治療薬を貼布します。
3) 帯状疱疹の発症部位
帯状疱疹は、一般的に身体の左右どちらか一方の神経にそって帯状に現れるのが特徴です。胸から背中にかけて最も多くみられ、全身の半数以上が上半身に発症します。また、顔面、特に眼の周囲も発症しやすい部位です。
上肢から胸背部へかけて発症が31.2%、腹背部発症が19.6%、頭部から顔面へかけて発症が17,6%、腰臀部から下肢へかけて発症が17.1%、頚部から上肢へかけて発症が14.5%となっています。
4) 帯状疱疹の発症年齢
60歳代を中心に50歳代から70歳代に多く見られる病気ですが、過労やストレスが引き金となり若い人に発生することも珍しくありません。通常は生涯に1度しか発生せず免疫が低下している患者を除くと再発することは稀と言われています。
帯状疱疹を発生した1、065人に調査すると、10歳までの発症者は26名、11~20歳までの発症者は76名、21~30歳までの発症者は83名、31~40歳までの発症者は70名、41~50歳までの発症者は110名。
51~60歳までの発症者は210名、61~70歳までの発症者は238名。この調査結果から、高齢になると発症者が大幅に増加する事が分かります。
5) 帯状疱疹の症状経過
赤い斑点が現れる数日~1週間ほど前から、皮膚の違和感やピリピリ感などの神経痛を伴うことがあります。その後、強い痛みを伴い、身体の片側の神経にそって帯状にやや盛り上がった赤い斑点があらわれます。軽度の発熱やリンパ節の腫れなどがみられることもあります。
続いて、赤い斑点上に水ぶくれがあらわれます。水ぶくれは破れてただれた状態となりかさぶたへと変わります。皮膚症状が治った後も、後遺症として帯状疱疹後神経痛が残ることがあります。
神経にそって帯状にやや盛り上がった赤い斑点があらわれ、その後、水ぶくれができます。水ぶくれの大きさは粟粒大で、ウイルスが原因となる水ぶくれの特徴として中央部にくぼみがみられます。
皮膚と神経の両方でウイルスア増殖して炎症が起こっているため、皮膚症状だけでなく強い痛みが生じます。
6) 帯状疱疹の合併症
一般的な合併症として、発熱や頭痛がみられることがあります。また、顔面の帯状疱疹では、角膜炎や結膜炎などを起こすことがあります。その他の合併症として、まれに耳鳴りや難聴、顔面神経麻痺などが生じることがあります。これをラムゼイ・ハント症候群を呼びます。
通常、皮膚症状が治ると痛みも消えますが、その後もピリピリするような痛みが持続することがあります。これを帯状疱疹後神経痛といいます。これは急性期の炎症によって神経に強い損傷が生じたことによって起こります。帯状疱疹後神経痛という後遺症です。
急性期痛は皮膚や神経の炎症によるものですが、帯状疱疹後神経痛は神経の損傷によるものです。帯状疱疹後神経痛が残った場合は、ペインクリニックなどでの専門的な治療が必要となる場合があります。
皮膚症状が重症な場合や夜も眠れないほど強いウ痛みがある場合や60歳以上の高齢者は、帯状疱疹後神経痛が残る可能性が高いため注意が必要です。
7) 帯状疱疹の治療
帯状疱疹の治療は、抗ヘルペスウイルス薬を中心に行われます。抗ヘルペスウイルス薬はウイルスの増殖を抑えることにより、急性期の皮膚症状や痛みなどをやわらげ、治るまでの期間を短縮します。さらに、合併症や後遺症を抑えることも期待されます。
抗ヘルペスウイルス薬の飲み薬は、効果があらわれるまでに2日程度かかります。服用してすぐ効果が表れないからといって、服用量を増やし途中でやめたりしないで、指示通りに服用してください。
抗ヘルペスウイルス薬は発病早期に服用を開始するほど治療効果が期待できます。帯状疱疹の特徴的な症状を自覚したらできる限り早く医師にご相談ください。必要に応じて消炎鎮痛剤が使われ、痛みに対して神経ブロックという治療が行われることがあります。
8) 帯状疱疹発症時の注意
・ 帯状疱疹は疲労やストレスが原因となり、免疫力が低下したときに発症します。十
分に睡眠と栄養を取り、精神的・肉体的な安静を心掛けることが回復への近道です。
・ 患部が冷えると痛みがひどくなります。患部が冷やさずに、できるだけ温めて血行
を良くしましょう。、
・ 水ぶくれは破れると、最近五よる感染がおこりやすくなります。細菌による可能を
防ぐためにも、患部は触らないようにしましょう。
・ 帯状疱疹が他の人にうつることはありませんが、水ぼうそうにかかったことのない
乳幼児には水ぼうそうを発症させる可能性があります。