1 医学界の常識
ロコモティブの正式名称はロコモティブシンドロームといい、一般に骨や関節、筋肉など運動器の衰えが原因で、歩行や立ち座りなどの日常生活に障害を来たしている状態をいうそうです。
たしかに、歩行や立ち座りなどの日常生活に障害があれば、うつ病や認知症や寝たきりの原因になりそうなので、厚労省も近年の超高齢社会を見越してロコモティブシンドローム対策に力を入れているようです。
ロコモティブシンドロームに含まれる症状といわれるものは、立ったまま靴下を履けない、何もないところでつまずくことがある、15分以上続けて歩けくのがツライ、前より階段の手すりを使うことが増えた、などの症状を指すそうです。
足に関した症状に注目した医師たちは、筋肉は少し心掛けるだけでも鍛えることができることに飛びつきました。今から無理なく足を鍛えれば、ロコモティブシンドロームは予防可能と考えたのです。
1) 日本整形外科学会
日本整形外科学会のWebページで、ロコモはロコモティブシンドローム(運動器症候群)の略称と分かります。日本整形外科学会は、どのような考え方をされているのかWebページで調べてみました
運動器症候群は、骨や関節や筋肉などの運動器の衰えが原因で、立つ・歩くといった移動運動などの機能が低下している状態のことをいいます。エレベーターや車を使う便利な現代社会において、人類は足腰を使う機会が少なくなっています。
私たちは運動器の働きにより、普段何気なく体を動かしています。運動器は骨や筋肉や関節のほか、脊髄や神経が連携して身体を動かす仕組みのことです。文明人は鉄道や自動車を作ったが、自分の足を使うことを失ったから運動器が衰えるのです。
そこで日本整形外科学会は、運動習慣をつけることが運動器の健康の維持につながり、健康寿命の延伸も期待できると考えました。運動器は若い頃から適度に運動する習慣をつけて大事に使い続けることが必要というわけです。
筋肉、骨、軟骨や椎間板は運動やふだんの生活で身体を動かして負荷をかけることで維持されますが、過度な運動や体重超過により負担をかけすぎるのも怪我や故障の原因になります。適度な運動と適切な食生活で肥満ややせすぎにならないようにしましょう。
健康寿命は健康で日常生活を送れる期間のことで、平均寿命と健康寿命の間には男性で約9年、女性では約12年の差があります。これは健康上の問題で日常の生活が制限される期間が約9~12年あることを意味しています。
日本整形外科学会は、要支援、要介護になる原因のトップは、転倒、骨折や関節の病気など運動器の故障であるとしています。ロコモが進むと日常の生活が制限され、さらに悪化すると、支援や介護が必要になる可能性が高くなります。ロコモか調べてみましょう。
立ち上がりテスト
両脚の場合、40cmの台に両腕を組んで腰かけます。このとき両脚は肩幅くらいに広げ、床に対して脛(すね)がおよそ70度になるようにします、反動をつけずに立ち上がり、そのまま3秒間保持します。
片脚の場合、40cmの台に両腕を組んで腰かけます。左右どちらかの脚を上げ、上げた方の脚の膝は軽く曲げます。反動をつけずに立ち上がり、そのまま3秒間保持してください。
両脚と左右の足で立ち上がり3秒間保持できなければあなたはロコモです。移動機能が低下しているので、運動をして改善に努めましょう。また、定期的にロコモ度テストをおこない、移動機能の状態をチェックしましょう。
他に、ステップテストもありますが、詳しくは日本整形外科学会のWebページ:「ロコモを知ろう」をご覧ください。
2) 日本臨床整形外科学会
メタボリックシンドロームは、心臓や脳血管などの内臓の病気で健康寿命が短くなったり要介護状態になるのに対し、ロコモ:ロコモティブシンドロームでは運動器の障害が原因でおこります。
日本臨床整形外科学会は、ロコモの原因となる運動器の障害原因は、大きく分けて運動器自体の疾患と加齢による運動器機能不全であるとしています。
運動器自体の疾患は、変形性関節症、骨粗鬆症に伴う円背、易骨折性、変形性脊椎症、脊柱管狭窄症など、関節リウマチでは痛み、関節可動域制限、筋力低下、麻痺、骨折、痙性によるバランス能力、体力、移動能力の低下をきたします。
加齢による運動器機能不全で身体機能は衰え、筋力低下、持久力低下、反応時間延長、運動速度低下、不器用、深部感覚低下、バランス能力の低下などがおこり、運動不足になり、筋力やバランス能力の低下などと、運動機能の低下で容易に転倒しやすくなります。
ロコモは、メタボや認知症と並び、健康寿命の短縮、ねたきりや要介護状態の3大要因のひとつになっています。加齢や運動不足に伴う身体機能の低下や運動器疾患による痛みや、軽微な外傷による骨折などにより、いわば負の連鎖が起こりやすくなります。
バランス能力や体力、移動能力の低下をきたして立って歩くことや衣服の着脱、トイレなど、最低限の日常生活動さえも自立して行えなくなり、健康寿命の短縮、閉じこもり、廃用症群や、寝たきりなどの要介護状態になっていきます。
ロコモとメタボや認知症を合併する方も多いという報告もあります。年を取って、寝たきりや、痴呆になって、要介護となることはできるだけ避けたいものです。これらの健康寿命の延伸、生活機能低下の防止には、予防、早期発見・早期治療が重要です。