1 日本人の死亡原因
少し前の統計ですが、日本人の死亡原因の第一位はがん、第二位は心疾患、第三位は脳血管疾患です。癌の死亡原因は30.4%、心疾患の死亡原因は15.8%、脳血管の死亡原因は11・5%となっています。第二位と第三位の遠因は動脈硬化です。動脈硬化でなくなる方はがんに匹敵します。
動脈硬化はどうしてなるのでしょうか。生活習慣を改めると動脈硬化にならないでしょうか。病院へ通ったり薬を飲めば動脈硬化にならないでしょか。いいえ、動脈硬化にならない人はいないのです。
長く生きていると、血管内壁にゴミのようなものが貯まってきます。次第に油も溜まってきて血管を狭くします。動脈が様々な原因で硬くもろくなり、その結果血管が狭くなったり、詰まってしまう状態を動脈硬化と言います。
動脈硬化が起きるのは、糖尿病、脂質異常症、高血圧、高齢化、喫煙、肥満などが原因になっています。高齢化は病気ではありませんが、誰もが老化するのは自然の成り行きですから血管は内側から老いて行きます。
血管は内膜・中膜・外膜の三層に分かれています。最も内側に内皮細胞があります。これは血管のバリアーみたいなもので、血液の中に良いものも悪いものもあるのでそれを体の中に入れないようにするための働きと、大事なものを血管の中に取り入れる働きをしています。
この内皮細胞が、糖尿病、脂質異常症、高血圧、喫煙などの有害物質でやられてしまうと、ここから油が染み込んできます。油というのはコレステロールです。健康な内皮細胞はコレステロールの入ってくるのをブロックしますが、内皮細胞が傷つくと血液中を流れているコレステロールが血管の壁の中に入ってきます。
血管が硬くなって内腔が狭くなると、血管壁は血圧の圧力を受けて加齢と共に厚く硬くなります。さらに、血管の内側にコレステロールなどの脂肪が沈着すると、その部分が隆起して血管内腔が狭くなります。このままではさほど問題はありません。
悪玉コレステロールが血管壁の隆起した部分に取り込まれて粥腫を形成します。粥腫が大きくなって更に内腔を狭くします。このような粥状動脈硬化になると、深刻な問題になります。
ある日突然粥腫が破れるという事故が発生します。粥腫ができているのにほおっておくと、突然粥腫を覆っている膜が破れ、瞬時に血栓ができて血管内が塞がれてしまいます。その結果、血流が遮断され組織の一部が死んでしまいます。
血管壁に粥腫ができて血流が少なくなると、血管は太くなって必要な血液量を流そうとします。この状態は無症状であるため発見が遅れてしまいます。このような無理をしていると、やがて粥腫の幕が破れてコレステロールがドロッと血管内へ出てきます。
この瞬間に血栓ができ、動脈梗塞になります。閉じ込められているコレステロールが血液中に入ると、そのとたんに血栓ができるのです。それであっと言う間に血管が詰まってしまいます。その瞬間まで、まったく症状は表れません。
冠動脈が血栓で詰まると、大切な血液が筋肉に届かなくなるのでやがて心筋は腐ってしまいます。これを心筋壊死と言います。血液の量が少なくなるので、病名は虚血性心疾患と言います。