2 認知症施策推進総合戦略
厚生労働省の認知症施策推進総合戦略 ~認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて~(新オレンジプラン)では、認知症の人が住み慣れた地域の良い環境で自分らしく暮らし続けるために必要としていることに的確に応えていくことを旨としつつ、以下の7つの柱に沿って、施策を総合的に推進していくこととしています。
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1-1 認知症への理解を深めるための
普及・啓発の推進
社会全体で認知症の人を支える基盤として、認知症の人の視点に立って認知症への社会の理解を深めるキャンペーンや認知症サポーターの養成、学校教育における認知症の人を含む高齢者への理解の推進など、認知症への理解を深めるための普及・啓発の推進を図ります。
認知症について正しく理解し、認知症の人や家族を温かく見守り支援する応援者です。市町村や職場などで実施されている認知症サポーター養成講座を受講した人が認知症サポーターとなります。
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1-2 認知症の容態に応じた
適時・適切な医療・介護等の提供
本人主体の医療・介護等を基本に据えて医療・介護等が有機的に連携し、認知症の容態の変化に応じて適時・適切に切れ目なく提供されることで、認知症の人が住み慣れた地域のよい環境で自分らしく暮らし続けることができるようにします。
このため、早期診断・早期対応を軸とし、行動・心理症状や身体合併症等が見られた場合にも、医療機関・介護施設等での対応が固定化されないように、退院・退所後もそのときの容態にもっともふさわしい場所で適切なサービスが提供される循環型の仕組みを構築します。
地域の中で認知症の人を支えていくには、何よりも身近なかかりつけ医が認知症に対する対応力を高め、必要に応じて適切な医療機関につなぐことが重要であり、かかりつけ医の認知症対応力を向上させるための研修を実施し、また、初期集中支援チームのバックアップや、かかりつけ医の認知症診断等に関する相談役等の役割を担う認知症サポート医の養成を進めています。
歯科医師等による口腔機能の管理や薬剤師による服薬指導等を通じてこれらの専門家が高齢者等と接する中で、認知症の疑いがある人に早期に気付き、かかりつけ医等と連携して対応するとともに、その後も認知症の人の状況に応じた口腔機能の管理や服薬指導等を適切に行うことを推進しています。
認知症疾患医療センターは、認知症の速やかな鑑別診断や、行動・心理症状と身体合併症に対する急性期医療、専門医療相談、関係機関との連携、研修会の開催等の役割を担います。
認知症初期集中支援チームは、医療・介護の専門職が家族の相談等により認知症が疑われる人や認知症の人及びその家族を訪問し、必要な医療や介護の導入・調整や、家族支援などの所為の支援を包括的、集中的に行い、自立生活のサポートを行うチームです。
身体合併症対応等を行う医療機関での認知症への対応力の向上を図る観点から、関係団体による研修も積極的に活用しながら、病院勤務の医療従事者に対する認知症対応力向上研修の受講を進め、また研修受講者が同じ医療機関等の看護職員に対して伝達することで医療機関内等での認知症ケアの適切な実施とマネジメント体制の構築を進めています。
認知症の人への介護等に当たっては、認知症のことをよく理解し、本人主体の介護を行うことで、できる限り認知症の進行を緩徐化させ、行動・心理症状を予防できるような形でサービスを提供することが求められています。このような良質な介護を担うことができる人材を質・量ともに確保していくための研修事業があります。
認知症ケアパスとは、地域ごとに、発症予防から人生の最終段階まで、生活機能障害の進行状況に合わせ、いつ、どこで、どのような医療・介護サービスを受ければよいのか、これらの流れをあらかじめ標準的に示したものです。
地域ごとに認知症ケアパスを確立し、認知症の人やその家族、医療・介護関係者等の間で共有され、サービスが切れ目なく提供されるようにその活用を推進しています。
認知症地域支援推進員は、医療・介護等の支援ネットワーク構築、認知症対応力向上のための支援、相談支援・支援体制の構築等を行います。
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1-3 若年性認知症施策の強化
若年性認知症の人については、就労や生活費、子どもの教育費等の経済的な問題が大きい、主介護者が配偶者となる場合が多く、時に本人や配偶者の親等の介護と重なって複数介護になる等の特徴があることから、居場所づくり、就労・社会参加支援等の様々な分野にわたる支援を総合的に講じていきます。
若年性認知症の方やその家族に対する相談支援、医療・介護、労働等の関係者による支援体制の構築、企業や関係者等の若年性認知症に対する理解を促進するための普及・啓発等の支援を行うため、各都道府県、指定都市に若年性認知症コーディネーターの配置を進めています。
若年性認知症の総合相談窓口として、全国若年性認知症コールセンターが設置されています。
若年性認知症ハンドブックは、若年性認知症の人が発症初期の段階からその状態に応じた適切なサービスが利用できるよう、若年性認知症と診断された本人と家族が知っておきたいことをまとめたものです。
若年性認知症ガイドブックは、若年性認知症の相談業務の担当者等が、本人や家族から相談を受けて対応したり、支援する際に、きめ細かく対応するためのものです。
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1-4 認知症の人の介護者への支援
高齢化の進展に伴って認知症の人が増えていくことが見込まれる中、認知症の人の介護者への支援を行うことが認知症の人の生活の質の改善にも繋がるとの観点に立って、介護者の精神的身体的負担を軽減する観点からの支援や介護者の生活と介護の両立を支援する取組を推進します。
認知症の人やその家族が、地域の人や専門家と相互に情報を共有しお互いを理解し合う認知症カフェ等の設置を推進しています。地域の状況に応じて、様々な共有主体により実施されています。
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1-5 認知症の人を含む高齢者に
やさしい地域づくりの推進
65歳以上高齢者の約4人に1 人が認知症の人又はその予備群と言われる中、高齢者全体にとって暮らしやすい環境を整備することが、認知症の人が暮らしやすい地域づくりに繋がると考えられ、生活支援(ソフト面)、生活しやすい環境の整備(ハード面)、就労・社会参加支援及び安全確保の観点から、認知症の人を含む高齢者にやさしい地域づくりの推進に取り組んでいます。
認知症の人やその家族が、地域の人や専門家と相互に情報を共有しお互いを理解し合う認知症カフェ等の設置を推進しています。地域の状況に応じて、様々な共有主体により実施されています。
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1-6 認知症の予防法、診断法、治療法、リ
ハビリテーションモデル、介護モデル等
の研究開発及びその成果の普及の推進
認知症をきたす疾患それぞれの病態解明や行動・心理症状を起こすメカニズムの解明を通じて、認知症の予防法、診断法、治療法、リハビリテーションモデル、介護モデル等の研究開発の推進を図ります。
また、研究開発により効果が確認されたものについては、速やかに普及に向けた取組を行います。なお、認知症に係る研究開発及びその成果の普及の推進に当たっては、健康・医療戦略及び医療分野研究開発推進計画に基づき取り組んでいます。
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1-7 認知症の人やその家族の視点の重視
これまでの認知症施策は、ともすれば、認知症の人を支える側の視点に偏りがちであったとの観点から、認知症の人の視点に立って認知症への社会の理解を深めるキャンペーンのほか、初期段階の認知症の人のニーズ把握や生きがい支援、認知症施策の企画・立案や評価への認知症の人やその家族の参画など、認知症の人やその家族の視点を重視した取組を進めていきます。
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◎ 終わりに
認知症施策推進総合戦略は1~7の柱を踏まえ、こうした締めくくりを行っています。
◎ 認知症高齢者等にやさしい地域の実現には、国を挙げた取組みが必要。
関係省庁の連携はもとより、行政だけでなく民間セクターや地域住民自らなど、
様々な主体がそれぞれの役割を果たしていくことが求められる。
◎ 認知症への対応に当たっては、常に一歩先んじて何らかの手を打つという意識を、
社会全体で共有していかなければならない。
◎ 認知症高齢者等にやさしい地域は決して認知症の人だけにやさしい地域ではない。
コミュニティの繋がりこそがその基盤。認知症高齢者等にやさしい地域づくりを
通じ地域を再生するという視点も重要。
◎ 認知症への対応は今や世界共通の課題。
認知症ケアや予防に向けた取組についての好事例の国際発信や国際連携を進める
ことで、認知症高齢者等にやさしい地域づくりを世界的に推進。
◎ 本戦略の進捗状況は、認知症の人やその家族の意見を聞きながら随時点検。
◎ 医療・介護サービス等の提供に関し、個々の資源の整備に係る数値目標だけでなく
これらの施策のアウトカム指標の在り方についても検討し、できる限りの定量的評価
を目指す。
これらの点検・評価を踏まえ、本戦略の不断の見直しを実施。
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