1 元気に生きること
1-1 寿命について
厚生労働省は2018年7月23日に、日本人の平均寿命が男性は81.09歳、女性は87.26歳となり過去最高を更新したと発表しました。前年より男性が0.11歳、女性が0,13歳伸びています。諸外国との比較をみると、女性は昨年に引き続き世界2位。男性はワンランク下がり3位となっています。世界トップは男女とも香港です。
平均寿命が過去最高を更新するのは、男性が6年連続、女性が5年連続となります。厚労省は「健康意識の高まりが理由の1つ」と分析しています。がんや心疾患、脳血管疾患の死亡率が下がるなど、医療技術の進歩も影響しているようです。
また、3月9日に厚生労働省が発表した介護を受けたり寝たきりになったりせず日常生活を送れる期間を示す「健康寿命」は、直近の2016年で、男性が72.14歳、女性が74.79歳で、平均寿命との差は、男性が8.95歳、女性が12.47歳となっています。政府はこの差の縮小を目指して、生活習慣病の予防や介護予防に一段と力を入れていく方針です
平均寿命は「命の長さ」を示すのに対し、健康寿命は「健康上の理由で日常生活が制限されることなく過ごせる期間」をあらわします。日本は世界有数の長寿国ですが、平均寿命に比べて健康寿命が短く、「寝たきりの期間」が長くなっているといわれています。
1-2 日本人の生活習慣意識
日本人の生活習慣意識は世界の中でかなり低いという調査結果があります。2011年に経済協力開発機構(OECD)が、世界23カ国28千人を対象にした『健康維持のための生活習慣意識調査』を行いました。
十分な睡眠、健康的な食生活、定期的な運動を意識しているかどうかを尋ねると、日本人で十分な睡眠が取れている人は54%でワースト3位、健康的な食生活をしている人は29%で最下位、定期的な運動をしている人も39%で最下位でした。
1日の平均睡眠時間が6時間未満の割合は、男女ともに40歳代で最も高く、それぞれ48.5%、52.4%でした。睡眠で休養が十分にとれていない人の割合は20.2%であり、平成21年からの推移でみると増加し、年齢階級別にみると40歳代で最も高く30.9%にもなっています。
厚生労働省の「国民健康・栄養調査(平成26年)」によると、肥満者の割合は男性は50歳代が34.4%と、他の年齢階級に比べて最も高くなっています。女性は年齢と共に肥満者の割合が高くなる傾向にあり、50歳代以上では20%以上ですが、低体重(やせ)の人の割合は20歳代が17.4%で最も高くなっています。
運動習慣のある人の割合は、20歳以上全体では女性で25.1%、男性で31.2%と平成25年に比べてやや低下しています。年代では65歳以上で女性で35.7%、男性で42,4%といずれも3割以上となっていますが、20~64歳では女性17.5%男性20.9%と低くなっています。
定期的な運動をしていない人の割合が約半数に上ります。特に、働き盛りの20~40歳代の男女で運動習慣のある人(1回30分以上の運動を週2回以上、1年以上継続している人)の割合は2割程度で、未だ8割が運動不足であると警鐘を鳴らしています。
日本人は国民皆保険制度に甘えて自らは健康管理を怠り、「世界一医療に依存している国民」ではないかと厳しい指摘をする専門家もいます。日本人の平均寿命と平均健康寿命の差は男性9年、女性12年ですから、かなり長い年月を健康ではない状態つまり介護や何らかの支援を必要とする状態で過ごす日本人がたくさんいるということです。
睡眠や食事や運動といった、基本的な生活習慣のことを全く意識していない人が約半数というのが日本人の実情です。先の調査で気になる項目は「適度な休養」についてです。心身ともに健康であるためには、定期的に疲れをリセットし翌日の充実のために程よくからだを活性化させることが大切です。
日本人はこの「リセット」と「活性化」のバランスを保つのがへたです。日本人の余暇の使い方、いわゆる遊びがうまくないことに関連するとも考えられます。健康管理は何もしていないという人が、実に46%もいるという事実があります。これからは、医療制度をあてにするばかりではなく、自分自身ができることはしなければなりません。
1-3 都道府県別の健康寿命
厚労省の研究班が、3年に1度の国民生活基礎調査(大規模調査)を使って、熊本地震の影響で調査できなかった熊本を除く46都道府県のデータを使用して推計しました。
研究班の代表を務める辻一郎・東北大教授(公衆衛生学)は「要介護の大きな原因となる脳血管疾患の患者が、生活習慣の改善で減っている」と指摘しています。「高齢者の社会参加の場が広がっていることも健康寿命の延びにつながっている」とみていました。
健康寿命を都道府県別でみると、男性の1位は山梨県の73.21歳。2位以下は埼玉県の73,10歳、愛知県の73.06歳、岐阜県の72,89歳、石川県の72.67歳。1位と46位を比べると2.00年の差がありました。
女性の1位は愛知県の76.32歳。2位以下は、三重県の76.32歳、山梨県の76.22歳、富山県の75.77歳となっています。1位と46位を比べると女性2.70年の差がありました。
男性の都道府県別健康寿命で北海道は25位、46位は漬物などで塩分摂取量が多いとされる秋田県となっています。一方、女性の都道府県別健康寿命で北海道は45位、46位は広島県でした。
1-4 適切な自己管理
敬老の日は、国民の祝日に関する法律(祝日法)で定められた国民の祝日のひとつで、9月の第三月曜日です。老人の日は、老人福祉法によって定められた記念日で9月15日です。老人福祉法では9月15日から21日までの一週間を老人週間としています。
敬老の日の趣旨は、多年にわたり社会に尽くしてきた老人を敬愛し、長寿を祝うことです。老人の日の趣旨は、老人福祉法で「国民の間に広く老人の福祉についての関心と理解を深めるとともに、老人に対し自らの生活の向上に努める意欲を促す」と定めています。
言われなくても、健康増進や生活習慣病予防のために自ら健康管理を行うことが重要であることは知っています。でも、長年の生活習慣を変えるのは難しく、「わかっちゃいるけど」と言うのが本音でしたが、努力の成果が見えるようになりました。
喫煙率の推移を平成15年から26年にかけて男女別に見ると、男性は46.8%から32.2%まで低下しました。女性は11.3%から8.5%まで低下し,22年以降は1割を下回っています。
同期間における飲酒率の推移については、男性は42.9%から34.6%まで8%ポイント以上低下していますが、女性はほぼ横ばいとなっています。
しかし、平成17年から25年にかけての妊娠中の女性の喫煙率及び飲酒率の推移を見ると、喫煙率は7.8%から3.8%へと低下し、飲酒率は16.1%から4.3%へと顕著に低下しています。
2018年9月15日の「老人の日」に合わせた厚生労働省の調査で、全国で百歳以上の高齢者数は69,785人となりました。道内は昨年より188人多い3,126人となりました。
国内で最高齢の男性は112歳の野中正造さん(足寄町)、女性は福岡市で暮らす田中カ子(かね)さんで115歳で。道内で最高齢の女性は111歳の青山きくさん(旭川市)でした。
1-5 死因別死亡率
厚労省から発表された「2018(平成29)年人口動態統計(確定数)」によると、死亡者数は1,340,397人でした。死因別にみると、悪性新生物<腫瘍>の死亡者数は373,334人(死亡総数に占める割合は27,9%)で前年に引き続き死亡順位の第一位となりました。第二位は心疾患、第三位は脳血管疾患でした。
1-5-1 死因別死亡率(平成27年)
平成27年のデータをグラフで見ると、三位は肺炎で四位が脳血管疾患でしたが、平成29年の三位は脳血管疾患で四位が肺炎と逆転しました。
1-5-2 主な死因別にみた死亡率
(人口10万対)の年次推移
平成6・7年の心疾患の低下は、死亡診断書(死体検案書)に心疾患と呼吸不全を記入しないように指示したため。平成7年の脳血管疾患の上昇要因は原死因選択ルールの明確化によるそうです。
1-5-3 悪性新生物の主な部位別死亡率
(人口10万対)の年次推移
なお、平成29年の交通事故発生件数は472,069件で、負傷者数は579千人を超え、死者数は3,694人です。