1 腎臓病の進行を遅らせよう
この項は、レジメの項目に基づいてメモとネットで調べたことをまとめました。
1-1 血圧に注意しよう
血圧は130/80mmHg未満が目標になります。130mmHg以上になると高血圧、80mmHg以下になると低血圧と言います。
高血圧の治療薬を降圧剤と言いますが、「サイアザイド系利尿剤やループ利尿剤」などの利尿剤を服用すると、尿量が多くなるので水分が排出されて血液量が少なくなり、血管壁にかかる圧力を抑えます。これにより血圧は下がりますが、高尿酸血症を招き痛風を引き起こす可能性が出てきます。
一方で「ACE阻害薬とカルシウム拮抗薬」は尿代謝に悪影響を及ぼしません。「アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬」は尿酸値を上げることなく、逆に下げる作用を持つものもあります。処方箋をもらったら必ず確認してください。
現在の日本でもっとも使用されている高血圧の治療薬、「アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬」は肺がんの発生に関与しているのではないか、という研究が発表され専門家の間で物議をかもしました。明確な医学的根拠はありません。
1-2 塩分に注意しよう
塩分をたくさん取るとなぜ血圧が上昇するのでしょう。血圧の上昇要因には動脈硬化などで血管の抵抗が増す場合と、心臓から血管内に送り出される血液の量が多くなる場合のふたつが考えられます。
料理などで、青菜・魚・肉などに塩を振りかけると水分が出てきます。人間の体の中でも塩は水分を吸い寄せようとするので、塩分を多く摂れば摂るほど体内を循環する血液が増え、心臓から送り出される血液量が増加するので血圧が上がります。
1日の食塩摂取量を6グラム以下に抑えることが推奨されていますが、塩分をいくら減らしても血圧が下がらない人もいます。このような人は「食塩感受性が低い」と言われ、全高血圧患者の7割も占めています。
血圧の上昇と無関係に、食塩は心臓や血管胃悪影響を及ぼすことが分かってきました。高血圧・心筋梗塞・脳卒中など心臓や血管の病気が心配な人は、減塩を心掛けたほうが良いのです。
1-3 水分に注意しよう
人間は1日に2.5~3リットルの水分を必要としています。そのうち食事で1リットル程度の水分を摂取するので、残りの1.5~2リットルの水分をほかから補わなくてはなりません。
水分を必要とする理由は、安静にしていても呼吸のたびに水分は体外へ排出されています。じっとしていても体温調整のために汗を分泌しているのです。これを「不感蒸発」といい、1日に0.9リットルもの水分が失われます。
尿として1.4リットル、便に含まれる水分がおよそ0.2リットルですから、合計で2.5リットルになります。さらに、運動や仕事などで汗をかけば、さらに1リットル程度は汗で失われます。
アルコールはル尿作用が強いうえ、アルコールを分解する際に多量の水を必要とするため、飲んだ分以上の水分を失ってしまいます。同様に、利尿作用のあるカフェインを多く含む飲み物もあまりお勧めできません。
水分は摂れば摂るほど良いというものでもありません。必要以上の水分の摂り過ぎは腎臓に負担をかけるうえ、低ナトリウム血症(水中毒)につながることもあり、避けた方が無難です。
1-4 食事はしっかりとる
食事は1口30回かけてゆっくり噛んで食べます。歯ですりつぶして食べると、野菜や果物の細胞壁を壊すことができ、フィットケミカルなどの抗酸化物質を効果的に摂取できます。よく噛むことで分泌される唾液には、抗酸化作用のある酵素が含まれています。
よく噛みながらゆっくり食事をすると、脳の中の満腹中枢が刺激されて「もうお腹が一杯」という指令が出されることで食欲が抑えられ、腹八分目の状態になります。太った人はたいてい早食いで、満腹になるときは食べ過ぎています。
食事をすると体が熱くなりますが、1日の消費エネルギーのおよそ1割が食事で消費されると言います。よく噛むことでこの消費量が大きくなります。さらに、脂肪細胞が刺激されて脂肪の分解と燃焼が促進されます。
わたしたちの体のエネルギーは、「解糖エンジン」と「ミトコンドリアエンジン」という二種類のエンジンが連携して生み出しています。解糖エンジンは瞬発力があり、急にエネルギーが必要になったとき、血液中のブドウ糖を利用してエネルギーをつくります。
20エネルギー系は代までの若者は解糖エンジンによるエネルギーが必要になります。体の中で分裂が盛んな、皮膚、筋肉、骨髄細胞、精子などは解糖エンジンによるエネルギーを必要としています。
地球上に生命が誕生したころ、生物は「解糖」という化学反応でエネルギーを生み出していました。地球の大気中に酸素が増加すると、生物はミトコンドリアと言う好気的な細菌を取り込んで、「ミトコンドリアエンジン」を備えることで進化しました。
25歳を超えたころから解糖エンジンはミトコンドリアエンジンに切り替わっていきます。50歳代になると、長時間継続してエネルギーをつくり出すことができるミトコンドリアエンジンがメインになります。ミトコンドリアエンジンは糖質をとり過ぎると働きが悪くなります。
腸の活動はミトコンドリアエンジンのエネルギーに支えられているので、腸の調子を整え上でも糖質を控えることは重要になってきます。50歳を超えたら、ご飯やパン、麺類などの炭水化物や砂糖をたっぷり含んだ甘いお菓子を食べ過ぎないようにしましょう。
1-5 高カリウムは危険
カリウムは成人の体内に約200g含まれています。大部分は細胞内に存在し、細胞外液に多いナトリウムと相互に作用しながら、細胞の浸透圧を維持したり水分を保持したりするのに重要な役割を果たしています。
摂取されたカリウムは、小腸で吸収された後全身の組織に運ばれ大部分が腎臓により排泄されます。カリウム量は、腎臓での再吸収の調節によって維持され、血中のカリウム濃度は3.6~5.0mEq/Lに保たれています。
カリウムは動物性食品や植物性食品に豊富に含まれているので、通常の食事ではほとんど欠乏症はみられません。しかし、激しい嘔吐や下痢の場合や、利尿降圧剤の長期使用の場合などでは、カリウムの排泄量が増し欠乏することがあります。
過剰症も通常の食事では心配ないと思われますが、腎臓の機能が低下している場合は注意が必要です。カリウムは大部分が尿中に排泄されますが、腎不全などで腎機能が低下するとカリウムがうまく排泄されなくなり高カリウム血症になります。
腎機能は加齢により衰えてくるため、腎臓疾患は高齢者に多く見られます。腎機能の低下により人工透析を受けている人の割合は60~74歳までが全体の透析患者の39%、75歳以上が40%近くを占めています。腎臓に障害がある場合は、医師からカリウムの摂取量を制限される場合があります。
1-6 極端な低タンパク
忙しさやダイエット、さまざまな要因で食生活がおろそかになると、私たちの体に必要不可欠なタンパク質も不足します。以下に一つでも思い当たることがあったら、あなたもタンパク質が不足しているかもしれません。
ダイエット中は食事は常に低カロリーを意識している、忙しいので簡単に食事を済ませてしまう、運動しても体力がつかない、髪にコシがなくなってきた、肌にハリやツヤがなくなってきたと感じている、なんだか集中力がなくなってきた気がする。
人間の体は約10万種類のタンパク質から構成されています。そしてこのタンパク質はわずか20種類のアミノ酸が数十~数百個以上の鎖状につながってできています。20種類のアミノ酸のうち9種類は体の中で作り出すことができないため、食物から摂ることが必要です。
低カロリーの食事ばかりをしていると体に必要なエネルギーを確保しづらくなります。体内に入ってくるエネルギーが減少すると体は危険を察知して、筋肉を分解することで生きていくために必要なエネルギーを作り出します。必要なエネルギーを補給しないまま生活していると、エネルギー源を筋肉に頼らざるを得なくなり筋肉量が減ってしまう可能性があります。
やる気を出してくれるドーパミンや気持ちをリラックスさせるセロトニンなどの神経伝達物質は、アミノ酸(タンパク質を作る最小成分)からできています。そのためタンパク質が不足すると、神経伝達物質が脳内で普段のように作られず働きも鈍くなってしまいます。
厚生労働省「日本人の食事摂取基準2015」によれば、私たちの生活において一日あたりに必要とされるタンパク質量は成人男性で50g、成人女性で40gと定義されています。可能であれば成人男性は60g、成人女性は50g摂ることが推奨されています。
1-7 運動の奨励
以前は、慢性腎臓病(CKD)の患者が運動すると蛋白尿が増えて腎障害が悪化するといわれ、なるべく安静を保つことが原則でした。腎臓病の患者に運動は無縁のものと考えられていました。
最近になって、適度な運動は腎機能の低下を防ぎ、透析など腎代替療法への移行を遅らせること、そして死亡率も下げることがわかってきました。こうしたことから、現在は慢性腎臓病の患者にも適度な運動が勧められています。
運動のしすぎは病気を悪化させるおそれがあります。健康な人でも、過激な運動によって急性腎不全を起こすことがあるくらいですから、腎臓病の人はとくに注意しなければなりません。しかし、極端に運動を制限するとかえって体力を低下させてしまいます。
運動の強さの感じ方は、人によって違います。目安としては、誰もが楽しくて気持ちよい、むしろ物足りないと不満が残る程度の運動がおすすめ。最初はラジオ体操程度から。長くても往復30分程度のウォーキングなどが適当でしょう。
慢性腎臓病の患者さんに勧められる運動の種類は、有酸素運動(ウオーキング・サイクリング・水泳など)、レジスタンス運動(ダンベルを使った運動・ゴムチューブを「使った運動・スクワットなど)、またはそれらを組み合わせたプログラムになります。
運動を無理なく続ける工夫とコツは、最初から長時間がんばるのではなく、1日に10分だけよけいに歩くなど運動を少しずつ生活に取り入れます。遠回りして歩く、エレベータやエスカレータをなるべく使わない、バス停や駅は1つ手前で降りて歩く、仕事中はなるべく階段を使うなどを取り入れます。
歩数計を付けて歩くのはお勧めですが、音楽やラジオを聞きながらは、交通事故に遭遇することが多いのでやめましょう。他人と話しながら続けられる強さの運動で、運動中や後に息苦しさや痛みを感じないようにしましょう。翌日に疲労が残るような激しいスポーツは避けます。
1-8 サルコペニアの予防
サルコペニアとは筋量と筋力の進行性かつ全身性の減少に特徴づけられる症候群で、身体機能障害、生活の質の低下、死のリスクを伴うものと定義されています。その中でも、失われた筋肉が脂肪に置き換わった状態をサルコペニア肥満と言われています。
1-9-1 指輪っかテスト
特別な機器を使用しないサルコペニアを発見方法は、親指と人差し指で輪っかを作り、ふくらはぎの一番太い部分にはめてみます。指がしっかりと重なってしまったりふくらはぎと指で作った輪っかの間に隙間ができてしまったりする場合は、ふくらはぎがかなり細く、サルコペニアの疑いがあります。
1-9-2 片足立ちテスト
片足立ちの状態で、靴下をはくことができるかを確認してみましょう。バランスを崩して足をついたりしてしまう方は要注意です。また、腕組みをした状態で椅子に座り、片足で立ちあがってみましょう。左右どちらでも立ち上がることができない方は要注意です。
1-9-3 横断歩道で確認
横断歩道を渡るときに、青信号で渡り切れるかを確認してみましょう。横断歩道が渡り切る前に信号が赤に変わってしまうと、歩くスピードが落ちている、つまり下肢の筋力が低下している可能性があります。信号の長さや交通量にもよりますが、今までは青信号で渡り切れていた横断歩道でで渡り切れなくなっている場合は特に要注意です。
1-9-4 サルコペニアの予防法
サルコペニアの予防には、筋肉を減らさないような適度な運動と栄養摂取の2つが有効です。運動は筋力トレーニングを中心に行うようにしましょう。サルコペニアでは主に下肢の筋肉が減少していきます。
下肢の筋肉はスクワットやもも上げ、つま先立ちなどにより鍛えることができます。週に3~5日程度を目安に無理のない範囲で行ってみましょう。また、ウォーキングを行う場合も、歩く速さを早める、ウォーキングコースに坂を加える、など少しの工夫で、筋肉量のアップにつながります。
栄養摂取は、特に筋肉のもととなるたんぱく質の摂取が大切で、たんぱく質が多く含まれる食材は、肉や魚、大豆、卵などです。必要なたんぱく質の量も目安は「手のひら1枚分」と言われています。
高齢になると、お肉や魚などたんぱく質をはじめ、食事全体の量が減り低栄養状態になる方も少なくありません。たんぱく質はもちろん、野菜やごはんなどもきちんとバランスよく食べるようにしましょう。
サルコペニアの予防方法は特別難しいことはありません。「適度に動き、バランスよく食べること」が大切です。加齢に伴い運動量が減った、食事量が減ったという方は、今一度普段の生活を見直してみましょう。