1 胆石とは
1-1 胆嚢と胆汁
胆嚢(たんのう)は、みぞおちと右のわき腹を結んだ線の真ん中あたりの奥のほうにあり、一部は肝臓にくっついて固定されています。大きさは握りこぶしぐらい(長さ約8cm)のナスのような形をした袋状で、肝臓で生成された胆汁を一時貯蔵します。
肝臓では、脂肪やたんぱく質などの消化を促す「胆汁たんじゅう」という消化液がつくられています。胆汁は肝臓から送り出されて、胆管という管を通り、胆のうにいったん蓄えられて濃縮されます。
肝臓でつくられる胆汁は、一日に600~1000mlでアルカリ性の液体です。食事を摂ると胆嚢が収縮して胆汁を胆管から十二指腸に送り出します。胆汁には胆汁酸と胆汁色素を含み、十二指腸から小腸で食事と混ざることで脂質やビタミンの吸収を助けます。
胆汁酸は界面活性剤として食物中の脂肪を乳化して細かい泡にし、リパーゼと反応しやすくして小腸の消化酵素の働きを助けます。小腸内に分泌された胆汁酸の殆どは小腸で吸収されて肝臓に戻されます(腸肝循環)。
胆汁色素は、小腸内で腸内細菌によりウロビリノーゲンに還元され、その一部が体内に再度吸収されます。ウロビリノーゲンは抗酸化作用があり、体内で酸化を受けると黄色のウロビリンに変化し、尿が黄色味を帯びているのはこのためです。また、腸内に残ったウロビリノーゲンが腸内細菌により還元されると茶色のステルコビリンに変化します。これが大便の茶色のもととなります。
1-2 胆石とは
胆汁の成分が、胆汁が通る道(胆のうと胆管)で何らかの原因で固まってしまったものが胆石です。近年は胆石症の患者が増え、日本人の成人の約8%が胆石をもっているといわれています。
胆石(たんせき)は、肝臓や胆嚢(たんのう)、胆管にできる結石(石)です。結石がある場所により、「肝内結石」、「胆嚢結石」、「胆管結石(総胆管結石)」という名称がつけられ、それぞれ症状も違います。
胆石をもっている人は中年以降に多く、女性は男性より2倍多いといわれています。胆石症は40歳代の肥満の女性に多くみられ、肥満や過食、不規則な食生活、ストレスなどの生活習慣が影響しているといわれています。
胆石ができる原因については、今のところはっきりとわかっていません。脂質の多い食生活は、胆汁中のコレステロールの割合が増加し、胆汁中で溶けきれないコレステロールは析出し、胆石の原因になると考えられています。
最も多い胆嚢結石(胆石)はコレステロール結石です。肝臓の働きのひとつにコレステロールの代謝(排出)があります。コレステロールは水に溶けないので一部は胆汁の中に溶け込ませて肝臓外に排出します。胆汁の中のコレステロールと胆汁酸のバランスが崩れると、コレステロールが結晶化して胆石のもとになります。
1-3 胆石の症状
胆嚢結石(胆石)があるからといって、必ずしも症状があるわけではありません。症状には自分でわかる「自覚症状」と、検査などで分かる「他覚症状」があります。胆嚢結石をもっている人の23%は無症状といわれていますが、もっと多いかもしれません。
胆嚢結石症(胆石)の自覚症状の最多は、「右季肋部痛(みぎきろくぶつう)」です。右の肋骨の下あたり(右肋弓下)に差し込むような痛みを感じ、人により背中に抜けるような痛み(放散痛)を伴うこともあります。
胆石の痛みは決まったところだけが痛むのではなく、みぞおち(心窩部痛)、おへその上のほう、右の肩甲骨(けんこうこつ)の下の方、腰のあたり・・・といろいろな場所に痛みの症状がでます。「右肩こり」と表現する人もいます。
痛みの種類も鋭く差し込むような痛み(疝痛、せんつう)や鈍い重苦しい痛み、肩こりのように張った感じなど様々です。痛みのほかに「発熱」もしばしば認められます。これは胆石により胆嚢内の胆汁がとどこおり細菌感染をおこすことによっておきる症状です。
痛みがはっきりせずに熱だけがでるような場合は、胆嚢結石(胆石)による発熱を風邪と考えて症状が悪化することもあります。右の肋骨の下の方のおなかを触ると他の部分よりおなかが硬く感じたり、押すことによって痛く感じたり(圧痛)することで診断される事もありますが、自覚症状の腹痛がないとなかなか的確な診断は難しいようです。
さらに、胆石が胆道にはまり込んだり、胆嚢が炎症を起こして腫れあがったりすると、胆汁の流れが悪くなり「黄疸(おうだん)」や「肝機能異常」などの症状を起こすことがあります。肝機能異常は採血して肝逸脱酵素を測定すればわかります。
黄疸は胆汁の色素であるビリルビンによってひき起こされる症状です。採血でビリルビンを測定すれば分かりますが、黄疸が進行すれば眼球結膜(白眼、しろめ)や皮膚が黄色くなるなどの症状がでるので、自分でも分かります。(みかんの食べすぎによる症状は黄疸ではありません)。
胆嚢に結石を持っている人が、発熱やお腹の痛みなどの症状を感じたら「胆石のせいかも?」と、担当の医師にお話したほうがよろしいでしょう。「おなかのかぜ」と胆嚢炎の区別は往々にして難しく、おなかに痛みの症状が出てきた場合は、早めの治療や手術をおすすめします。
症状 | 胆嚢結石 | 総胆管結石 |
腹痛・背部痛 | 57.1% | 63.9% |
発熱 | 9.5% | 24.3% |
悪心・嘔吐 | 7.5% | 10.4% |
黄疸 | 3.3% | 16.7% |
症状なし | 34.9% | 24.3% |