1 はじめに
1-1 自覚症状と診察
命が危ない(=緊急性のある)心臓の病気って聞くと、どんな病気を思い浮かべますか。どんな症状があると、心臓がやばいんじゃないかと意識すると思いますか。
例えば、胸と背中が痛いという患者さんが受診した場合に、お医者さんが考える病気は・・・。
・ 循環器・・・急性冠症候群(心臓炎、心筋炎、心タンポナーゼ、肥大型心筋症、弁
膜症、不整脈、心不全、高血圧など)。
・ 大血管・・・急性大動脈解離、大動脈瘤切迫破裂など。
・ 呼吸器・・・肺塞栓症、気胸、肺炎、胸膜炎、縦隔炎など。
・ 消化器・・・食道破裂、胆嚢症、十二指腸潰瘍穿孔、胆嚢炎、急
性膵炎など。
・ 泌尿器・・・尿路結石症、腎梗塞など。
・ 筋骨格・皮膚・・・肋間神経痛、帯状疱疹、乳腺疾患、骨折、筋肉痛、炎症など。
・ 心因性・・・不安神経症、過換気症候群など。
・ 原因不明・・・
下線のある病気は特に緊急性があります。
1-2 心臓について
心臓は全身に血液を送るポンプの働きをしています。そのポンプを動かしているのは筋肉であり、心臓の筋肉で心筋といいます。心筋が動くための燃料となっているのは酸素で、酸素は血液によって運ばれています。心筋に血液を送るためには血管と言うパイプが必要ですから、心筋の表面に冠動脈という血管があります。
冠動脈は3本あり、右冠動脈は心臓の下部に栄養と酸素を届けます。左大冠動脈は根元が1本で、前下行枝と回旋枝の二手に分かれます。前下行枝は心臓の前側に栄養と酸素を届け、回旋枝は心臓の後ろ側に栄養と酸素を届けます。
1-3 緊急性が高い疾患
命が危うい循環器(呼吸器)疾患で、特に緊急性が高い疾患は次の通りです。
急性冠症候群・急性大動脈解離・急性肺血栓塞栓症・緊張性気胸・心タンポナーゼ。