1 認知症を予防するために
1-1 もの忘れの違い
加齢に伴う物忘れと認知症の物忘れは、明確に違いがみられます。
加齢に伴う物忘れ | 認知症の物忘れ |
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体験の一部分を忘れる | 体験全体を忘れる |
記憶障害のみがみられる | 記憶障害に加えて、判断の障害や実行機能 障害がある |
もの忘れを自覚している | もの忘れの自覚に乏しい |
探し物も努力して見つけようとする | 探し物も誰かが盗ったということがある |
見当識障害はみられない | 見当識障害がみられる |
取り繕いはみられない | しばしば取り繕いがみられる |
日常生活に支障はない | 日常生活に支障をきたす |
きわめて徐々にしか進行しない | 進行性である |
事項機能障害=系統的・総合的に物事が考えられなくなります。(例:味噌汁がつくれない、リモコンが使えないなど)
見当識障害=時間・空間・人物が分からなくなります。
1-2 劣化の状態
脳の一部の細胞が壊れ、その働きを失うと新しく経験したことを覚えられない、すぐ忘れるといった記憶障害が起こります。
人間には五感(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚)で感じた情報を「一時的にとらえておく器官(触覚)」と、重要な情報を保存する「記憶の壺」が脳の中にあります。いったん「記憶の壺」に入れば必要な時に情報を取り出すことができます。
しかし、歳を取ると力が衰えて一度にたくさんの情報を捕まえておくことができなくなり、捕まえても壺の出し入れに手間取るようになります。歳を取って覚えが悪くなった、ど忘れが増えるのはこのためです。
認知症になると、病的に衰えてしまうため「記憶の壺」に治めることができなくなります。新しいことを記憶できずに、さきほど聞いたことさえ思い出せないのです。さらに病気が進行すれば「記憶の壺」が溶け始め、覚えていたはずの記憶も失われていきます。
1-3 認知症の予防
認知症の予防は、認知症の発症リスクを少なくすることです。
生活習慣の見直し
1) 食事習慣の見直し
肥満・高血圧・高脂血症に気を付ける ⇒ 2つに該当すれば脳血管認知症のリスクが2倍、3つに該当すれば6.2倍になります。
・ 野菜と果物類、ビタミンC・E、β―カロチンの摂取を忘れないように。
・ 魚類からDHA・EPAを摂取します。
・ 赤ワイン・コーヒー等からポリフェノールを摂取します。
1) 運動習慣の見直し
週に2~3回ウオーキング等の有酸素運動を実施 ⇒ 脳の活性化(記憶力がアップ)
・ 速く走れば糖質の消費が、歩いたりゆっくり走ると脂肪の燃焼が優先されます。
・ 筋肉を動かして脂肪を分解ホルモンを出しておけば、より脂肪は燃焼されます。
・ また、体を動かすことで脳に刺激が伝わり、脳が活性化します。
1-4 認知症の判断
認知症かどうかを判断するには、簡単な質問が適しています。
質問 最近のニュースはどんなことがありました?
あまり古いニュースを答えたり、思い出せずに話題を変える場合には要注意です。