2 心臓の病気で死なせない
2-1 動脈硬化による血管病変
2-1-1 血管の症状
動脈硬化により血管の病変で起きる症状は、胸部圧迫感が5~30分続いたり、放散痛という喉・歯・手・胃がしびれたり痛みを感じ、冷や汗が出ることがあります。また、軽い場合には症状がないことも多いという厄介なものです。
ゼロ歳の時点で主な動脈に「硬化」の初期病変がみられ、10歳前後から急に進んできます。30歳頃になると、これがそうだと云える「動脈硬化」が現れるようになります。生まれた時から一生つき合わねばならない血管の変化ですが、症状を進める「危険因子」を避けて食事や運動などに気をつけ、進行を食い止めることで予防しましょう。
生活習慣が欧米化したのに伴って、狭心症や心筋梗塞といった虚血性心臓病が年々増えてきました。こうした病気の原因の大部分は、動脈硬化が進むことによって起こるので、この変化を抑ていかに若々しい血管を保つかが大切なことです。
動脈も静脈も、基本的には「内膜」「中膜」「外膜」の3つの層からできています。血液と接しているのが「内膜」で、その表面は「内皮細胞」という細胞の層に覆われています。この細胞層は血液から必要な成分だけを取り込むフィルターの役目をしています。動脈硬化との関係で特に重要なのは「内膜」と「内皮細胞」です。
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内膜の外側の「中膜」には、血管としてのしなやかな弾力性を保つための成分(平滑筋細胞など)でできた層があります。動脈には心臓から血液が送り出されるときの圧力がかかるので、この層は厚くなっています。一方、静脈は圧力の低い血流なのでこの層は動脈ほど厚くありません。
中膜の外側を囲んでいるのが外膜という層で、ここには血管の外から細い血管を通じて栄養分などが運ばれてきます。
「動脈硬化」とは「動脈の壁が厚くなったり、硬くなったりして本来の構造が壊れ、働きがわるくなる病変」のことです。病理学で使う呼び方で病名ではありません。一般に動脈硬化といえば「粥状動脈硬化」を指す場合が多く、ここではそれを動脈硬化として説明します。
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「粥状」という表現は、「おかゆ」か「ヨーグルト」、もしくは「柔らかいチーズ」のような状態を指します。粥状動脈硬化は、内膜や中膜が比較的よく発育した動脈に起きやすいので、心臓を養う冠状動脈、大動脈、さらに脳、頚部、腎臓、内臓、手足の動脈などによく起こります。
内膜の中にコレステロールが蓄積し、次第に脂肪分が沈着して血管が狭くなり、血栓や潰瘍をつくる原因になります。これが原因になり、狭心症、不安定狭心症、心筋梗塞、脳梗塞、大動脈瘤、腎梗塞、手足の壊死などが起こります。
年齢が高くなるにつれ、内膜の中にたまったコレステロールを中心とした脂肪沈着は、やがて「脂肪斑」と呼ばれる状態になります。20~30歳ごろから「脂肪斑」などが大きくなって血管の内側に向かって盛り上がり、50~60歳になると血管自体は狭くなってしまいます。
その結果、流れている血流と内膜の間に摩擦が生じ、内膜を覆っている内皮細胞が壊れて血の塊(血栓)ができます。血の塊で血管が詰ると、急性心筋梗塞などの発作として症状が現れるようになります。ですから、症状が自覚できるようになった時は、すでに20~30年に及ぶ沈黙の「動脈硬化の進行」があったと考えなくてはなりません。動脈硬化は無症状のまま進行することをしっかり覚えておいてください。
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2-1-2 動脈硬化の症状
動脈硬化が原因で血管が詰まると、血管がつながっている臓器は壊死を起こし、心筋梗塞・脳梗塞・腎梗塞などの原因になります。血管の75%が閉塞すると臓器の血流不全が生じ、狭心症・意識消失などを発症します。
動脈硬化で狭心症を生じるためには75%以上の狭窄が必要です。動脈硬化で75%以下の細さであれば症状は出ず、一見健康そうに見えます。したがって、症状がないからと言って安心はできません。症状がなくても動脈硬化はあるのです。
症状のあるなしにかかわらず、動脈硬化が破裂すると血管は詰まります。大切なことは予防をしっかりして病気にならなければ、病院も医者もいりません。予防しても病気になるので、医者が必要になるのです。循環器の治療後でも、同様に病気が進行するかもしれないと思ってください。
動脈硬化の原因は一つではありません。動脈硬化を起こしたり進めたりする条件を「危険因子」と呼んでいますが、その中には「男性であること・齢をとること」のように自分ではどうにもならないものから、「高血圧・高脂血症・喫煙・肥満・糖尿病・ストレス」などのように、自分の意志次第でコントロールできるものもあります。
こうした危険因子を多く持つ人ほど、動脈硬化が加速度的に速まることがわかっています。危険因子の中でも「高血圧」「高脂血症」「喫煙」は特に重要で、3大危険因子と呼ばれています。
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2-1-3 脳梗塞の症状
脳梗塞の治療は時間がすべてと言われます。下記のような脳梗塞の前触れにいち早く気づくことで、重症化を未然に防ぐことが可能です。
① 口の動きの異変・ろれつが回らなくなる(構音障害)
② 言葉が出なくなる(失語症)
③ 口をうまく閉められなくなる
④ 顔に歪みが出る(片側顔面まひ)
⑤ 片方の手足に力が入らない・痺れが起こる(片まひ)
⑥ 片方の目に膜がかかったように見えなくなる(一過性黒内障)
⑦ 視野が狭くなる
⑧ 目の焦点が合わなくなる
⑨ 物が二重・三重になって見える
⑩ 人の言うことがうまく理解できない
⑪ 思ったように文字が書けない
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これらの症状は一過性脳虚血発作といい、脳の血液の流れが一時的に悪くなり血栓が詰まってしまっている状態です。ただ、血栓はすぐに溶けて血流が正常に戻るため、通常は2~30分、遅くても24時間以内には症状が消えてしまいます。
症状が消えたからとそのまま放置しておくと、15~20%の人が3ヵ月以内に脳梗塞を発症し、そのうちの半数は数日以内(48時間以内)に脳梗塞を発症すると言われています。
とくに、身体の半分に起こる異常(麻痺・しびれ・歪みなど)は脳梗塞に発展する可能性が非常に高いと考えられています。本人・家族が知識をしっかりと持ち、一刻も早く医療機関を受診するようにしましょう。
この一過性脳虚血発作のチェック方法に「FAST」があります。「FAST」とはFace(顔)Arm(腕)Speech(言葉)Time(時間)の頭文字を取ったものです。FASTチェックで、どれか1つでも当てはまるものがあればすぐに(Time)救急車を呼ぶことが推奨されています。
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FASTチェック
・ Face(顔)は顔の麻痺のチェックです。
満面の笑みを作るように「いー!」と声に出しながら、口角をしっかり上げます。片方の口角が上がっていなければ、一過性脳虚血発作の疑いがあります。
・ Arm(腕)は腕の麻痺やしびれのチェックです。。
腕をまっすぐ伸ばし、手のひらを上にして両腕を肩の高さまで上げます。そのまま目をつぶり数十秒間、両腕を上げた体勢を保てるかを確認してください。片腕が下がりはじめたら一過性脳虚血発作の可能性があります。
・ Speech(言葉)=言葉の異常をチェックする。
短い文章を声に出して話すチェック方法です。「太郎が花子にりんごをあげた」という文章が例文として挙げられていますが、特に内容は問いません。短い文章なのに言葉に詰まる、内容がおかしくなっている、ろれつが回っていないなどの状態は、一過性脳虚血発作の可能性があります。
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・ Time(時間)=すぐに救急車を呼ぶ。
脳梗塞の治療は時間との勝負です。救急車を呼ぶのを迷いがちですが、FASTチェックでどれか1つでも当てはまるものがあれば、迷わず救急車を読んでください。
・ かくれ脳梗塞とは、非常に小さな脳梗塞のことです。MRI検査などで発見されることが多く、40代では3人に1人、50代では2人に1人の割合でこの症状が認められるようです。
かくれ脳梗塞を持っている人は「5年以内に約3割の人に大きな発作が起こる」と警告されているため、軽視するのは命を粗末にしているようなものです。かくれ脳梗塞は生活習慣病のひとつですから、普段から脳梗塞の予防に努めることが大切です。
脳梗塞を防ぐために、日頃の運動や食生活の見直しなど日々の生活習慣を見直しましょう。また、血液がドロドロになると脳梗塞や心筋梗塞につながります。日頃からこまめに水分を摂取することで、血液の粘りを防げるよう心掛けましょう。
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2-1-4 狭心症状の症状
心臓の栄養血管である冠動脈が何かの原因で狭くなると、心筋に送り込まれる血液が不足して心筋が酸素不足に陥り、そのために生ずる胸の痛みが「狭心症の痛み」です。多くの場合、冠動脈の動脈硬化によって生じた冠動脈の狭窄が血流を障害することが原因となりますが、たいした動脈硬化がないにもかかわらず、冠動脈が痙攣性に収縮を起こして縮んでしまう(攣縮)するタイプもあります。
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・ 労作性狭心症
「階段をあがると胸が締め付けられるように痛くなる」「重いものを持上げたり坂道をあるくと胸が苦しく痛むが、静かにしていると楽になる」というときには、労作性狭心症を疑います。
痛みは、圧迫感、絞扼感(こうやくかん=しめつけられる感じ)、灼熱感などと表現されます。痛む部位は前胸部、みぞおち、肩、頸などです。歯や喉が痛むこともあります。痛みの続く時間は短く、多くは数分間です。
階段をあがったり、力仕事をしたりするとき(労作)には、心臓から体内に血液をたくさん送り出す必要があり、心筋の働きも増加します。このときに冠動脈に狭窄があると心筋への充分な血液の供給ができなくなります(心筋虚血状態)。こうして起こるのが労作性狭心症です。
胸痛を治めるには、まずは安静にします。座って、シャツのボタンをゆるめて、呼吸を楽にします。病院でニトロ製剤(舌下錠)を処方されている場合には、ニトロを口に含み舌の下へ入れます。
ニトロには冠動脈を広げて心臓の負荷を減らし、心筋虚血を改善する作用があります。ただし、ニトロは血圧も下げるので、倒れても差し支えないように座った状態で口に含みます。そうすれば数秒のうちに楽になるはずです。
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・ 安静時狭心症、冠攣縮性狭心症
「夜、就眠中、ことに明け方、胸が苦しく押さえつけられたようになる」という発作があります。安静にしていて起こるので安静時狭心症といいます。痛みの性質や部位などは労作性狭心症の場合と同じです。
多くの場合、冠動脈が一過性に痙攣(けいれん)を起こして収縮し、血流を一時的に途絶えさせるために起こる狭心症ですから攣縮性狭心症ともいいます。この場合も、ニトロ製剤は冠動脈の攣縮(れんしゅく=突発的に起こる不随意な筋収縮)をほどいて広げるのでよく効きます。
・ 不安定狭心症
「狭心症発作が次第に頻回(ひんかい=回数が多い)に起こるようになり、労作時ばかりでなく安静にしていても起こる」というようなときには、不安定狭心症といいます。急性冠症候群ともいい、心筋梗塞の前触れです。
発作が繰り返し起こっている間に、大きな発作にいたらない前に心筋梗塞ができ上がってしまう(心筋が壊死してしまう)こともあります。ニトロ製剤が効かないようなら救急車が必要です。
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・ 微小血管狭心症
「狭心症発作が起こっているのに冠動脈狭窄はなく、誘発試験をしても冠動脈攣縮は起らない」という場合に、疑ってみるのが微小血管狭心症です。冠動脈には異常がないのに心筋の小さな細い血管が狭窄して血流配分に支障をきたしているのではないか、と考えられるために微小血管狭心症といわれます。
X線血管造影検査では写ってこないような細い血管の病変を想定するので、診断は多くの場合、推定になります。このタイプの狭心症は自覚症状から判断することはできませんが、重症となることはないといわれています。
・ 狭心症に共通すること。
発作の感じかたは人によって違います。軽い息がつまる感じから、胸が焼けつくような激しい痛みまであり、痛みの強さと病気の重さは必ずしも一致しません。痛みが少ないからといっても安心はできません。発作を引き起こすようなことを避けることです。
暴飲暴食、無理な運動、急に走るなどを避け、発作が起こったら安静にすることです。禁煙、肥満の解消、過度な飲酒を避けることも大切です。動物性脂肪や塩分のとりすぎにも注意しましょう。
高血圧、糖尿病のある人はきちんと治療することも大切です。
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2-1-5 腎動脈狭窄の症状
腎動脈はお腹を通る腹部大動脈から枝分かれして、左右に一つずつある腎臓に血液を供給している血管ですが、加齢と動脈硬化症により狭くなりやすい血管の一つです。腎動脈が狭くなった場合、初期のうちは全く症状がありませんが、狭窄率が約70%をこえると血圧が上昇する(高血圧)などの症状が出ることがあります。血管がさらに狭くなると腎臓にいく血流が不足して腎機能が悪化し、最終的には血液透析が必要となることもあります。
腎動脈の狭窄の頻度は軽症なものも含めると意外に多く、高齢者を無作為に血管エコーでスクリーニングすると6%前後に狭窄を持つ人がいるといわれています。55歳以上の亡くなった方を解剖した研究では、15%に腎動脈に狭窄があったと報告されています。
腎動脈が細くなる原因の90%以上は加齢に伴う動脈硬化です。残りの10%弱は比較的若年者に見られる、動脈硬化によらない腎動脈狭窄症で、細くなった場所の顕微鏡による観察から線維筋性異形成症と呼ばれています。その他、まれなものとして、大動脈炎症候群、大動脈解離、血栓症、腹部大動脈瘤などが報告されています。
腎動脈が細くなっても、腎臓への血流量や腎臓への血圧が低下しなければ腎臓の働きに障害は起きません。一般的には70~80%以上細くなって、はじめて障害が起きるといわれています。高度の狭窄の結果、腎血管性高血圧、腎機能障害、心不全の急激な悪化などが起きる可能性があります。
中ぐらいまでの腎動脈狭窄症は、別の目的で検査を行ったときに偶然見つかることが多く、体に悪い影響は与えませんので治療の必要はなく、定期的なフォローで構いません。腎動脈がさらに細くなって体に悪い影響を与えている可能性を疑うのは、55歳未満で高血圧が発症した人、急に高血圧になった人、これまで血圧が安定していたのに急に血圧のコントロールが悪くなった人などです。
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また、腎機能が急に悪くなった人、血圧の治療、特にACE阻害剤やARBといった種類の降圧剤を服用すると、急激に腎機能が悪化した人も腎動脈の狭窄が腎機能障害に関係しているかもしれません。
まれに、急性心不全を繰り返す人の中にも腎動脈狭窄症が悪影響を与えている可能性があるといわれています。また、腹部や背部の聴診器による診察で狭窄部に血管雑音が聞こえることがあり、腎動脈狭窄症発見の糸口となった方もいます。
腎動脈は加齢と動脈硬化症により狭くなりやすい血管の一つです。腎動脈が狭くなった場合、高血圧症の原因になったり、狭心症、心不全といった重篤な病気の引き金になることもあります。
血管がさらに狭くなると腎臓にいく血流が不足して腎機能が悪化し、最終的には血液透析が必要となることもあります。何種類もの降圧剤を内服しても血圧のコントロールが不良な場合は、この病気を疑うことが必要です。
また、55歳以上で高血圧を発症したり、原因不明の心不全、不安定狭心症、腎機能障害の原因になったりもします。超音波検査で左右の腎臓の大きさが異なっていることで、発見される場合もあります。
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2-1-6 下肢動脈狭窄の症状
閉塞性動脈硬化症とは、動脈硬化により手や足の血管の狭窄(血管が狭くなる)や閉塞(血管が詰まる)を起こして血液の流れが悪くなり、手先や足先へ栄養や酸素を十分に送り届けることができなくなる病気です。手足にさまざまな障害が現れますが、初期症状は「冷感」や「しびれ感」であるため見逃したり、軽く考えて放置してしまいがちです。
閉塞性動脈硬化症になっている患者は、心臓病(40~56%)や脳血管障害(19~33%)を高い頻度で合併するため生存年数が短くなるといわれています。閉塞性動脈硬化症になりやすいのは、特に50~60歳以上の男性や血糖値の高い患者です。
・ 冷運動療法
閉塞性動脈硬化症の運動療法とは主に「歩く」ことです。太い血管が狭窄(血管が狭くなる)や閉塞(血管が詰まる)を起こすと血液の流れが悪くなり、歩行時に筋肉(ふくらはぎが多い)が痛くなるので歩行に支障を来します。
しかし、無理のない距離を「歩く」ことで周囲の細い血管(側副血行路というバイパスとなる血管)が発達し、血液の流れが改善するので長い距離を歩くことができるようになります。
運動療法には、医療機関で行う監視下運動療法と、医師の指導のもとに自宅で行う在宅運動療法があります。監視下運動療法を行った患者の場合、1ヵ月で歩行距離は約2倍、3ヵ月では約3倍に増加することがあります。その後も在宅運動療法を続けることにより治療効果を維持し、場合によってはさらに増加させることも期待できます。
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2-2 心筋梗塞
心臓に栄養を送る血管に冠動脈があり、それが詰まるもしくは細くなる病気です。突然襲う病気であり、ついさっきまで健康な方が死に至ることもあります。心筋梗塞の治療にカテーテル治療があり、早期であればあるほど効果が高いので、昼夜を問わずに札幌ハートセンターのような専門病院を受診してください。
心血管疾患はがんと同様に自覚症状がないまま症状が進行し、症状が現れたときは重症となっており、時には死に至る危険性の高い「サイレントキラー」です。心筋梗塞にならないようにするには予防も重要ですが、冠動脈が詰まっていないか検査を受けると安心ですのでぜひ相談してください。
最近では、生活習慣病やガンを検出する人間ドックをはじめとして、病気を早期に発見して発病を未然に防ぐための様々な専門ドックが各医療機関で実施されています。狭心症や心筋梗塞の原因となる血管の、動脈硬化の早期発見を目的とした検診には「心血管ドック」などがあります。
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以前は入院を伴うカテーテル検査以外に心血管の正確な診断はできませんでしたが、放射線機器CTの最新モデル「256列マルチスライスCT」の登場により、もっと身近に心血管の検診ができるようになりました。
この装置は検査時間10分で終了し、入院する必要はありません。また、コンピュータ処理によりリアルな三次元画像を得ることができますので、あらゆる方向から血管の動脈硬化や石灰化を検出することができます。
通常の心電図や採血などの健康診断では、心筋梗塞を早期発見することができませんので心配な方は受けられることをお勧めします。心筋梗塞になる方は、多くの方が無症状から突然起きますので、症状が出てからでは手遅れだえるということを理解して、早めの受診をお勧めします。
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2-3 大動脈弁狭窄症
大動脈弁狭窄症は、心臓の左心室と大動脈を隔てている弁の動きが悪くなり、全身に血液を送り出しにくくなる状態になる疾患です。大動脈弁狭窄症になる原因はいくつか考えられますが、近年は加齢や動脈硬化が原因である割合が増えてきています。
心臓は全身に血液を繰り出すポンプの役割を担っています。心臓には右心房・右心室、左心房・左心室という4つの部屋があり、それぞれの間には逆流防止便が存在します。左心室と大動脈の間にある逆流防止弁を大動脈弁と言い、通常3枚の扉(弁葉)からなっています。この大動脈弁が固くなり、開きにくくなると十分な血液が左心室から全身へ送り出されなくなる状態が大動脈弁狭窄症です。
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2-3-1 大動脈弁狭窄症の治療
大動脈弁狭窄症は自覚症状に乏しく、心雑音などをきっかけに診断されることが多い疾患です。進行すると、息切れ・動悸、倦怠感・易疲労感、胸痛・胸苦、失神などの症状が現れ、突然死に至ることもあります。
大動脈弁狭窄が起きやすい方は、80歳以上の高齢の方、過去に冠動脈バイパスグラフトなどの開胸手術を受けた方、肺気腫など呼吸器系疾患を合併している方、肝硬変などの肝疾患を合併している方、頸動脈狭窄を合併している方、胸部に放射線治療歴のある方、1年以上の予後が期待できる悪性腫瘍など悪性疾患合併がある方々です。
一般的に大動脈弁狭窄症の症状に狭心症が現れると余命は5年、失神が現れると余命は3年、心不全が現れると余命は2年と言われる恐ろしいものです。2013年に保険適用され、2016年3月までに3千例を超える患者がこの治療で救われています。
経カテーテル大動脈弁留置術(略称「TAVI」)は、重症大動脈弁狭窄症に対する最新のカテーテル治療です。この治療は、外科手術が困難とされていた患者に対する新しい治療法ですが、他の治療法と同様にリスクもあります。
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2-3-2 大動脈弁狭窄症の治療
無症状で軽度の場合、高血圧やその他の疾患(糖尿病・高脂血症・肥満)の治療により大動脈弁狭窄症の進行を防ぐ方針となることがあります。この場合でも、定期的な外来通院と状況に応じて入院が必要となります。
心不全を発症した場合は心不全の治療を優先することが一般的であり、利尿剤や心保護作用を有する薬を用いて治療しますが、その後手術療法の可能性について精査をすることとなります。
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・ 内科的治療(薬またはバルーン拡張術)
心臓弁膜症の症状はゆっくりと進行することが多く、心臓に負担がかかっていても、心臓本来の働きを補おうとします(代償機能)。そのため、患者さん自身が自覚症状をあまり感じていないということがよくあります。しかし、早期に手術を受けるほうが術後の経過や心臓の機能回復がよいため、手術のタイミングを適切に判断することが重要となります。
治療方法は二通りあり、薬による治療と経皮的大動脈バルーン形成術という方法です。悪くなった弁は薬で元通りに治すことはできません。有益な点は身体への負担が少なく、開胸手術のできない患者さんでも治療可能です。
不利益な点は、根本的治療ではないため効果および効果の持続期間が限定的で、効果の持続期間が短く、姑息的手段であり予後を改善しないことです。
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・ 外科的大動脈弁置換術
弁を根本的に治療するには弁の取り換えが必要で、外科的治療(弁置換術)はゴールドスタンダードとなっています。症状を伴う場合、多くは「大動脈弁置換術」という手術が基本的な治療となります。
重症あるいは症状のある大動脈弁狭窄症は手術の適応となります。機械弁あるいは生体弁を用いた「大動脈弁置換術」を行います。大動脈弁狭窄症の程度や他の心疾患の有無、そして全身状態や他の病気を持っていないかなどをチェックするために入院していただき検査をします。
手術が有益な点は根治的治療方法であり、直視下に病変を見て十分に石灰化を取り除くことができることです。
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・ 経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)
有益な点は、開胸手術のできない方でも治療を受けることができる根治的治療法です。不利益な点は、留置がうまく出来ない場合があり、TAVI特有の合併症と合併症が起きた時は救命目的に開胸手術が必要となることがあります。
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