はげちゃんの世界

人々の役に立とうと夢をいだき、夢を追いかけてきた日々

第13章 肌は内臓の鏡

2015(平成27)年1月24日午後1時30分より札幌市医師会館で開催された札幌市医師会主催第259回家庭医学講座で、三浦俊祐・貴子皮膚科の三浦俊祐院長の講演「肌は内臓の鏡~このサインを見逃すな!皮膚病と内臓疾患~」の要約です。

1 このサインを見逃すな

皮膚に生じる様々な異常を取り上げ、それらが内臓の病気とどう関わっているか、あるいはまったく皮膚だけのものであるかを知ることが大切です。

 1-1 皮膚が紫色になる

皮膚が紫色になるのは「紫斑」と呼ばれ、皮膚や皮下の血管から血液が漏れ出したために起こる症状です。重大な内科の病気が潜んでいることもありますので注意が必要です。

① 大きな紫斑
   斑状出血と呼ばれ、ケガ・老化・血液が止まりにくい状態
  (血友病・抗凝固剤など)によっておきます。

② 天井の紫斑
   点状出血と呼ばれ、血管の炎症(アレルギー・免疫異常)、
  血小板の現象などによっておきます。

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 1-2 点状出血と内臓の病気

点状出血を起こす病気と関係のある内臓の病気は、血小板減少性紫斑病とアナフィラクトイド紫斑が考えられます。

① 血小板減少性紫斑病
  ・ 血小板数が1立方ミリメートル当たり10万個以下で出現し、打撲で斑状出血も
   起こします。
  ・ 鼻血・月経過多・歯ぐきからも出血します。
  ・ 何らかの免疫の以上によると考えられますが、原因は不明です。ピロリ菌や白血
   病も原因になることがあります。

② アナフィラクトイド紫斑
  ・ 上気道感染や扁桃腺炎の際に細菌アレルギーで起こります。
  ・ 小児に多いのですが、成人では重症化しやすい症状です。
  ・ 腎臓、胃腸、関節にも病変を起こすことがあります。

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2 体がとても痒くなる

 2-1 蕁麻疹(じんましん)

・ 痒い紅斑(こうはん)や膨疹(ぼうしん)が出没します。皮膚を軽くこすると出現
  しやすくなります。

・ 一つひとつの皮疹(ひしん)は24時間以内に消えます。写真を撮影して経過を見
  るとよいでしょう。

・ 塗り薬は効かないので、内服薬で治療します。

・ アレルギーや感染症、薬屋ストレス、温度変化などが原因になります。

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 2-2 色素系痒疹

・ 糖尿病患者、甘いドリンクの多量摂取、ダイエットなどにより生じます。

・ 背中やうなじのとても痒い紅斑が現われ、網目状に色素が沈着します。

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 2-3 皮膚掻痒症

・ 強い痒みを訴えますが、掻き傷と色素沈着しかない状態です。

・ 乾燥を伴うことが多いようです。

・ 原因は乾燥肌、内臓の病気、薬剤などの影響が考えられます。

・ 熱いお風呂でゴシゴシこすることは、症状の悪化のほかにヒートショックを起こす
  危険性があります。「長生きしたけりゃぬるめの湯」をお忘れなく。

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3 水ぶくれや膿ができる

 3-1 自己免疫性水泡性疾患
          (天疱瘡、類天疱瘡)

・ 自分の免疫細胞や免疫物質が自分の皮膚を攻撃するものです。

・ 癌や神経性の病気、薬の副作用からくる場合もあります。

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 3-2 帯状疱疹(たいじょうほうしん)

・ 水疱(水ぼうそう)を起こしたウイルスが念を経て神経に沿って出現したもです。

・ 早期の治療が大切なので、すぐに医療機関を受診することが大切です。

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 3-3 掌蹠膿泡症
       (しょうせきのうほうしょう)

・ 手のひらや足の裏に膿がたくさんできます。

・ 喫煙、慢性の扁桃腺炎、虫歯、金属アレルギーが原因の場合があります。

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4 髪の毛が抜ける

 4-1 円形脱毛症

頭髪が全部抜けると「全頭脱毛症」と呼びます。

・ 内臓の病気とは関係ありません。ストレスが原因ではなく、悪化要因と思われま
  す。

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 4-2 びまん性脱毛症

原因として、性ホルモンの異常(更年期、多嚢胞卵巣など)、内科疾患(膠原病、甲状腺疾患など)、栄養バランス(鉄や亜鉛不足、ダイエット)、感染症(カビ、梅毒など)、薬剤症(抜毛癖などが原因となります。)

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 4-3 男性型脱毛症

・ 男女とも髪が柔らかく、細くなって抜けます。

・ 女性では更年期以降か、男性ホルモンの増加する疾患で出現します。 

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5 皮膚に潰瘍、傷が治らない

様々な原因があり、糖尿病や褥疱(じょくそう)では複数の原因が合わさっている場合があります。いずれも治りにくい症状で、原因疾患の治療をしなければ完治は困難です。特に、糖尿病性の皮膚潰瘍、褥疱は以下の症状がすべて関係しており、年間3千人が足の切除に至っています。

① 血行が悪い:動脈硬化、静脈瘤。

② 血管炎:免疫性、アレルギー性。

③ 知覚障害:神経疾患(外相を受けても気づか
  ない)。

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6 内臓の悪性腫瘍と皮膚

癌細胞が皮膚に転移した場合と、癌の病変部から分泌される様々な物質に皮膚が反応して生じる場合があります。

 5-1 転移性皮膚癌

・ 血行性の癌細胞が皮膚に転移した場合と、乳がんでは皮膚に直接浸潤します。

・ 突然、皮膚に腫瘍ができて、急激に大きくなる場合が多いようです。

・ 約1%の内臓の癌は、皮膚に転移してから気付かれます。

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 5-2 癌に対する反応性の皮膚症状

・ レーザー・トレラ症候群
   体に「脂漏性角化症(癌ではなく慮性腫瘍)」が強い痒みを伴って、短期間(半年
  以内)に多数出現します。胃癌などで起こる症状です。

・ 黒色皮膚症
   腋の下、区部、ソケイ部の皮膚が厚くビロード状になります。胃癌などで生じます
  が、肥満した糖尿病患者にも発症することがあります。

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7 まとめ

 6-1 発見

急にに皮膚症状が出現したり、拡大したり、皮膚以外の症状を伴う場合、また標準的な治療に全く反応しない場合は、皮膚以外の病気の合併も考えます。重大な病気が発見されることがありますので、他の科との連携で診断、治療を進めていきます。

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 6-2 納得

内臓などの病気、特に糖尿病、肝臓病、慢性扁桃腺炎、癌などでは皮膚に様々な症状が生じます。関連した症状だと納得できれば、不安も軽くなります。前向きに治療に「励み、皮膚もよくしていきましょう。

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 6-3 安心

蕁麻疹、皮膚掻痒症、円形脱毛症などでは、皮膚の悩み以上に「内臓が悪い」ことを心配しすぎですがその可能性は低く、適切な検査で確認できます。安心して皮膚病の治療に専念して下さい。

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