3 血圧の変化
3-1 狭心症が原因か
狭心症の発作を起こしてから血圧が高くなりました。70歳になる4日前まで献血を続けましたが、血液センターの医師に「うらやましいほど血圧は安定していますね」と言われ続けてきました。毎年受診していた人間ドックの記録も「116/63」という数値でした。
血管拡張薬を飲み始めた日から自宅の血圧計で測定すると168/94、翌朝は165/53、その翌朝は165/94という数値です。軽くても狭心症の発作は起きたのですから冠動脈のどこかに狭窄が大きくなりはじめ、心臓は血液を送り込むために無理を続けて若干疲れていると思われます。
狭窄を起こした冠動脈は70年以上働き続けているので、若干肥大化した心臓が圧力をかけると血管壁が破れるかもしれません。心臓内で血液が一部逆流していたので、老化以外に僧房弁の不具合も考えられます。医学バラエティ番組の見過ぎで起きた妄想は次第に膨らんできます。
血管拡張薬を飲んでいるとそのうち血圧は下がるだろうと思い直すと、4月24日以降は最高血圧は107で最低血圧が65に落ちました。狭心症の軽い発作と血圧の上昇は関連しているように思えますが、医師から改善させるための指示などはありません。
パークゴルフを楽しむ後輩が高血圧の薬を飲み続けているので、インターネットや医療関係書籍で血圧に関することを探していると驚いた情報を発見しました。
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3-2 健康診断の不思議
健康診断は、診察および各種の検査で健康状態を調べ、健康の維持や疾患の予防・早期発見に役立てるもので健診や健康診査とも呼ばれています。平成16年度に厚生労働省が「最近の科学的知見に基づいて保険事業に係る研究」を委託しました。インターネットで公表されている研究報告書には、対象とする検診項目と考察結果が次のように書かれています。
検査項目については問診・身体診察、心電図、胸部・肺、代謝系、免疫、脂質、肝機能、尿・腎機能、血液一般、歯周疾患、保健指導については肥満、遠洋、運動、新種、禁煙、防煙、栄養補助食品、高血圧、高脂血症、糖尿病、保健指導を取り上げた。
質の高いエビデンスが得られているものから、実際の健康診査・保険事業から得られたデータに基づかない専門家の意見によるもの、専門家の意見すら見いだされないものまで、エビデンスのレベルはさまざまであった。質の高いエビデンスが得られているものに裏打ちされているものは少なくないが、その多くは外国での研究によるものであった。
エビデンスというのは、「多くの患者を対象に調査研究した結果、必要だということが確かめられている」という意味です。研究報告の結論として次のように書かれています。
研究の結果を踏まえて、現在わが国で行われている健康診査・保険事業を見直すとともに、今後、わが国においても、健康診査・保険事業をより科学的厳密性の高い方法で継続的に評価する必要がある。
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この研究報告内容について中原英臣医学博士は、著作「テレビじゃ言えない健康話のウソ(株式会社文芸春秋)」で専門用語を使わず、わかりやすく説明されているので引用させていただきました。
研究班はそれぞれの検査項目が示している数値基準の根拠について、世界中の医学論文にあたって調べなおしました。その結果、十分な証拠があったとされるのは血圧の測定、飲酒と喫煙に関する問診だけでした。(中略)この調査の、それぞれの検査項目に対する評価について、ご紹介します。
・ 一般的な問診 明確な証拠はない
・ 視力検査、聴力検査 勧めるだけの証拠はない
・ 身体診察、聴診 明確な証拠はない
・ 腹部診察 ほとんど証拠がない
・ 心電図測定 虚血性心疾患の発見には無意味
・ 胸部X線 肺がん発見に有効との証拠はなし
・ コレステロール検査 コレステロール低下には役立つが心筋梗塞の予防には有効との証拠はなし
・ 肝機能検査(GOT・GPT・γGTP) 実施の意義を再検討すべし
・ 尿検査 糖尿病発見には不適切、腎不全を防ぐ証拠はない
・ 血球数など 有効性を示唆する十分な証拠はない(21~22ページ)
健康診断の代表的な検査24項目のうち16項目は、「病気の予防や死者の減少という視点では有効性を示す根拠が乏しい」との結論が出ています。健康診断の検査項目に医学的な根拠がないことが証明されましたが、健康診断や健康審査機関を廃止すると収入を絶たれる人々がいるので見直しは進んでいないようです。
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3-3 基準値もおかしい
中原英臣医学博士の著作「テレビじゃ言えない健康話のウソ(株式会社文芸春秋)」には、「若者と老人の正常値がなぜ同じ」という疑問も提起されています。
日本の人間ドックや健康診断で使われてきたこれまでの正常値は、驚くべきことに、男性と女性を区別してきませんでした。性別だけではありません。年齢も分けてきませんでした。そもそも二十歳の若者も八十歳の高齢者も、すべての正常値が同じであるというのは、どう考えてもおかしいと思いませんか?(61~62ページ)
1999年度から2013年度までに受けた人間ドックの「健康診断結果報告書」と、病院でいただいた数十枚の「生化学的検査結果表」を比較しました。検査機関により若干の特色が認められても、印刷された基準値の範囲は50歳のときも70歳のときも同じでした。
1999年度といえば今は亡き後輩と、居酒屋で一升ビンの日本酒をお互いに2時間で飲み干していました。2013年には日本酒を2時間で3合も飲めません。年齢と共に数値は変化するのが当然というのに、20歳から80歳までの基準値が同じというのはヘンです。
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3-4 血圧のとらえ方
世界保健デー2013年で、国立循環器病センター高血圧・腎臓化医長の岩島義雄医学博士は、「高血圧の予防と管理ーよりよい人生のためにー」で次のように述べられています。
家庭血圧での高血圧の基準値は135/85mm/Hgで、降圧目標値は、JSA2009では診察室血圧と家庭血圧での関係から得られた血圧値を暫定的に示していて、診察室血圧からそれぞれ5mm/Hgずつ引いた血圧値となっています。
高血圧の基準値は、病院などの診察室で測定した血圧が140/90mm/Hg以上の場合と、家庭で測定した血圧が135/85mm/Hg以上とされています。診察室で測定した血圧が最高最低とも5mm/Hg高くなっているのは、やさしい女性看護師やイケメンの男性看護師に心ときめくことや、馬に食わせるほど与えられる薬に対する不安などで、感情が高ぶることにより発生する誤差が見込まれているからでしょう。
WHO(世界保健機構)は最高血圧が160以上、最低血圧が95以上を高血圧としていたのを改め、1999年代に新しい分類法を発表しました。血圧の正常値を、最高血圧が140未満、最低血圧が90未満と大幅に変更し、最高血圧が140、最低血圧が90のいずれかを超えたときには「境界域高血圧」と呼ぶことにしました。
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分類 | 最高血圧mmHg | 最低血圧mmHg |
至適血圧 | <120 | <80 |
正常血圧 | <130 | <85 |
正常高値血圧 | 130~139 | 85~89 |
グレード1高血圧(軽症) | 140~159 | 90~99 |
サブグループ:境界域高血圧 | 140~149 | 90~94 |
グレード2高血圧(中等度) | 160~179 | 100~109 |
グレード3高血圧(重症) | ≧180 | ≧110 |
収縮期高血圧 | ≧140 | <90 |
サブグループ:境界域高血圧症 | 140~149 | <90 |
Minds(マインズ)ガイドラインセンターの「高血圧診療ガイドライン・レビュー」で慶応義塾大学内科腎臓内分泌代謝科猿田享男名誉教授は次のように説明されています。
世界一の長寿国であることから、高齢者高血圧の治療指針に関しては特に詳細に記載された。若年・中年者の降圧目標を130/85mmHg未満とし、高齢者は前期高齢者(65-75歳未満)と後期高齢者(75-85歳未満)とに分け、前期高齢者の降圧目標は140/90mmHg未満、後期高齢者で軽症高血圧の降圧目標は140/90mmHg未満でよいが、中等症・重症高血圧では150/90mmHgを暫定目標とし、それで問題がなければ最終的に140/90mmHg未満にするのがよいとした。(2006年9月作成)
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3-5 自らの体は自ら
特定非営利活動法人日本高血圧学会のウエブページからダウンロードした、一般向け資料「家庭で血圧を測定しましょう」には次のように書かれています。
家庭血圧が135/85mmHg以上であれば、脳卒中や心筋梗塞にかかる率を2~3倍にも増やす危険な高血圧です。
家庭血圧が高い?(上の血圧135以上又は下の血圧85以上)→「持続性高血圧又は仮面高血圧」で「すぐに治療又は治療の変更が必要です」。
間違いではありませんが、誇大広告という言葉を思い出します。中原英臣医学博士の著作「テレビじゃ言えない健康話のウソ(株式会社文芸春秋)」では、次のように述べています。
WHOは「血圧が140/90を超えたら毎日の生活に気をつけましょう」といっているのに、日本では血圧が「140/90」のいずれかが超えたら「血圧が高い」ことになりつつあります。
(中略)この「140/90」という数字が、医者が高血圧の病人を増やす免罪符にされています。この数字だけで、定期的に血圧を測定する必要があるということになってしまったのです。(39ページ)
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安保徹医学博士の著作「免疫力が上がる生活下がる生活(PHP文庫)」には、「薬はなるべく飲まない」との説明があります。その部分を引用させていただきました。
たとえば血圧が高いと、動脈硬化の危険性があるということで、すぐに血圧を下げる薬や血液が凝固しないようにする薬を処方されます。一度そのような薬を飲み始めると、医者には「ずっと飲み続けなければいけない」と言われます。(中略)薬で無理やりに血圧を下げ続けることになります。(67ページ)
薬を服用するだけでは、根本の病気は治りません。一時的に血圧を下げることはできても、薬に頼っていると体の維持に必要な血圧が得られなくなり、そのために体調がすぐれず、いずれ破たんをきたすことにもなりかねないのです。問題の根源は、それに至った生活にあるのです。
まず、それまでの生活を見直して変えることです。(68ページ)
中原英臣医学博士が述べているWHO(世界保健機構)の考え方や、猿田享男名誉教授が「高血圧診療ガイドライン・レビュー」述べている説は信頼できそうです。そして、安保徹医学博士のおっしゃるとおり「それまでの生活を見直して変えること」で乗り切ることが最善と思われます。
家庭で測定した血圧が135/85mmHg以上になったら、「食事療法」と「運動療法」を続けることで改善させましょう。いつやるの!答えは知っていますね。
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