はげちゃんの世界

人々の役に立とうと夢をいだき、夢を追いかけてきた日々

第7章 白内障への対応

テレビのCM画面で商品名を表示する色文字が浮き上がって見えます。薄いモヤがかかり、セピア色に濁ってきた視界はピントがボケてきました。交通信号機のどの色が点灯しているのか分らなくなりました。もう一度、もう一度真っ青な空が見たいと思いました。

1 不可思議な現象

眼鏡を外しても新聞や書籍を読むことはできますが、遠くの風景はぼやけて見えるので近眼ですね。2008年に眼科医の処方箋で製作いただいた眼鏡を使用していましたが、2009年の11月ころから少々ぼやけて見えるようになってきました。眼鏡のせいで目が悪くなることはありえず、高齢者になると老眼の進行が止まると聞いていたので気のせいかもしれないと思いました。パソコンに向かっている時間が長すぎるからと妻は云います。

12月に入って、テレビのCM画面を見ていると不思議な現象に気付きました。コマーシャルの商品名を表示する色文字が浮き上がって見えます。日を重ねると黒文字がもっとも奥に表示され、黒の手前は青文字、青の手前は黄文字、赤文字が最前列に見えます。文字の大きさは同じでも、色によって文字が手前や後方に見えるのです。

12月の中旬になると、テレビのCM画面に表示される色文字がまぶしいと感じるほど色が鮮明になってきました。大晦日が近づくにつれて色文字の左下側に赤黄青の光が現れるようになり、強烈な明るさで瞬くため目がチカチカします。このあり得ない状態が一ヶ月ほど続くと、遠くの風景が見えずらくなってきました。

1月に入ると視界が白味を帯びているように感じられ、薄いモヤがかかった中にいるような状態になりました。遠くの山々がいつも霞んで見え、10ポイントの印刷文字はレンズが必要になりました。雲間から出てきた太陽が雪道を照らすと反射光で視界がまっ白くなり、50m先の信号器の表示が見えなくなって運転に支障が現われました。テレビに表示される画面文字は色によって遠近感が強くなり、鈍感でも何か変だぞと思いました。

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2 眼科専門医の診断

2月10日に札幌市内では手術件数1位と言われる眼科医院を探し当てました。待合室へ入ると椅子が40席以上、受付カウンターは6m以上もあり、午前8時から診察が開始されました。呼ばれて診察室へ入ると視力表照明装置が5台もあり、診察スペースで5人の医師が患者を診察しています。

眼球の内部を診た院長先生が「老人性ではないですね」とおっしゃいました。水晶体レンズの裏側、網膜へ光を通す部分に濁りがあるので、白内障の進行を抑える目薬を1日3回差してください。病状は進行するため眼鏡はすぐに合わなくなります。処方箋で安物を購入されることをお勧めします。

生活が不自由になるほど見えずらくなったら手術をします。現在の眼鏡を購入したのはいつですか。えっ、2年前。生活がガラリと変わるような変化がなにかありましたか。答えられるのは、「ええ、お酒の飲む量を極端に減らしました」だけです。2月15日の眼鏡検査で眼鏡の処方箋を受領しました。

好天の日は強い光の当った部分の囲りが白くぼやけ、晴天のときはまぶしさで時々目を閉じなければならなりません。眼鏡の処方箋を受領してメガネ店を訪ね、別売のサングラスも購入しました。この時の視力は右目が1.0で左が0.7。新しい眼鏡をかけてしばらくは安心できると思いました。

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3 急速に悪化する症状

3月になると視界は白みを帯び、常に薄い霧の中にいるような感じになってきました。上目づかいをしないと信号の色が見づらくなりました。何を見ても昔のピンボケ写真を見ているような感じです。新しいメガネは裸眼の見え方と同じになり、4月に入ると視界全体が薄いセピア色に着色されて見えるようになりました。

白内障の進行防止薬受領に出かけた4月21日、検査で右目が1.0から0.2に、左目は0.7から0.1へ視力が落ちていました。「眼を壁にぶつけるとか、眼にボールが当たったとか、海外旅行をしていませんか。初めて食べたものはないですか。急激に症状が進んでいるのですぐ手術が必要です、6月15日に入院してください」と院長先生は驚きました。

新聞の文字が読めずレンズが必要になりました。セピア色に濁ってきた視界は、益々ピンボケが強くなってきました。パソコンを使う時はポインターを拡大し、ディスプレイの解像度を1920×1080にしてワードの文章を画面全体に広げ、10cmまで近寄るとやっと見える程度です。

写真の画質修正は不可能になりました。交通信号機のどの色が点灯しているのか分らなくなりました。ただし、左右とも耳側の端から見ると、点灯しているのは青信号か赤信号かどうにか確認することができます。

毎朝目覚めると、昨日より視力が薄れているのではと恐怖感に襲われます。風景を眺めると、数日前には見えていたものが確認できなくなってきました。指の指紋は見えなくなり、手相の線も4本しかみえません。定規の目盛りも時計の秒針も見えません。晴天の空を見上げると薄いセピア色が広がっています。もう一度、もう一度、あの澄み渡った青空が見たいと思いました。

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4 右目の手術

20100年6月15日朝、入院しました。眼圧・眼底・屈折検査、水晶体膜・散瞳・角膜・視力・乱視・細胞数・エコー検査、細隙灯顕微鏡検査と続き、目薬は二種類を4回も点眼すると目玉が水に浮かんでいるような錯覚を起こします。抗生物質の注射と薬を服用して右目からの手術が決定しました。

札幌祭りの本祭りに当たる6月16日の16時、10人中9番目に呼ばれて手術室への廊下を案内され、局所麻酔の目薬を差して手術台で仰向けになりました。右腕に点滴、左腕に自動血圧計、胸には心電図の端子、右目のまぶたは器具で強制的に開かれ固定されます。

ノズルから吹き出した水で眼球を洗う様子がはっきり見え、眼科医が消毒液を付けた脱脂綿で眼球をふきとります。強烈な顕微鏡の明かりから逃げようとする右の目玉を、手術中は一点に集中させ続けます。目を動かせば眼球膜が裂ける恐れがあると言われました。

上瞼に隠れている黒目と白目の境界にメスが入り、約5mmの穴から超音波銃を差し込んで水晶体核が砕かれ、吸引器が差し込まれて核と皮質の残骸が吸い出されました。水晶体の前の膜と中身を取り出し終わると、後ろの膜とそれを支えるチン小帯部分に樹脂製の眼球レンズが挿入されました。

手術中はノズルから吹き出した水が時々眼球の出血を流します。医師が器具を指示する声と心電図検査の電子音以外は聞こえず、ときおり自動血圧計が左腕を締め付けます。傷口を縫うこともなく、手術は20分で完了しました。痛みはなにも感じません。

手術室から出て30分後に水を飲み、18時に夕食を食べ終わると20時に院長先生が手術を受けた患者の様子を見にに来られました。金曜日に退院して来週22日に再入院して左目の手術が行われることになりました。

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5 手術を終えて

映画で見たような医師と向き合う光景を思い出していると、翌朝の6時にきた看護師が無造作に眼帯を外しました。遠くの山々や建物、テレビ画面や印刷された文字が見え、これほど美しかったのかと感動が走ります。六人部屋でもっともひどい症状だったと分かりました。

眼帯なしで退院が許可された18日朝、手術を受けた患者はだれもが言葉にならない感動に包まれていました。手術前には見えなかった建物の窓や屋上のアンテナが見え、50m先を歩いている人の性別が分かります。新聞の文字も眼鏡なしで読めました。

手術前の左目と、手術後の右目で見える風景の違いを記録に残そうと、窓から見える風景写真を加工しました。再入院時に院長先生へ贈呈すると、「医師には白内障の患者さんの見え方が理解できません。

これほど明確に手術前と手術後で違いが分かる写真は、不安をいだいている患者さんへ説明するさいに利用できます。ありがとうございます」と喜んでいただけました。

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右目の見え方

左目の見え方

翌週の22日に再入院して翌日左目を手術し、眼帯を外した25日の朝、新たな感動が走りました。若干ピンボケしていた建物の窓枠がはっきり見え、樹脂製レンズでも遠近感もわかりすべてがくっきりと見えます。この世が如何に美しいもので溢れているかを実感し、持ち切れないほどの感謝の気持ちを胸に退院しました。

7月4日まで禁酒し、運動は8月へ入ると可能となりました。5千件以上の手術で無事故は看護師の気配りと感染症予防の徹底のおかげと思えます。入院中は摂取カロリーが抑えられ2キロも減量していました。

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6 見えずらくなる前に

2010年6月、両眼の視力が回復した効果はすぐにありました。退院してマンションのエレベーターを降りると、廊下の樹脂タイルが傷だらけであることに気付きました。管理員が業務用掃除機のブラシを出さずに共用部廊下を清掃していた結果であることを確かめ、管理会社に張り替え費用1,176,0001円を賠償いただきました。

2012年4月の人間ドックで両眼とも動脈硬化症の疑いありとされ、翌年5月の人間ドックで両眼とも細動脈硬化の疑いありと判定されました。気味が悪くなり、2014年5月に白内障の手術を受けた眼科専門医で網膜細動脈硬化の検査を受けると問題なしと診断されました。

平成16年度に厚生労働省が「最近の科学的知見に基づいて保険事業に係る研究」という「健康診断の検診項目に対する科学的根拠」の調査を委託した研究報告書で、視力検査は勧めるだけの証拠はないとされています。「十分な証拠があったとされるのは、血圧の測定、飲酒と喫煙に関する問診だけ」という結果なので、コンピュータの判断結果を信じるべきではなかったようです。

高齢者になると老眼の進行が止まると聞きましたが、乱視は悪化することがわかり新しい眼鏡を製作していただきました。見え方など目に不安があれば、眼科の専門病院で検査をされるようお勧めします。それも、早いうちに。

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