児童は第四学年の学習において太陽と月はともに丸い形をしており、絶えず動いていて一日の動きが似ていることを理解している。この経験を基にして星を明るさや色の違いでとらえ,その動きを方位と高さによる空間の広がりと時間の経過でとらえたり、星の動きの規則性を発見することに興味をもたせる。これらの過程を通して星の並び方が変わらないこと、太陽の通り道の近くに見える星と北極星を中心に回っているように見える星とはどちらも同じ方向に動いていて、一日たつとほぼ元の位置に見えることを理解させるのがこの単元のねらいである。
10-1-1 観察対象となる星
授業の進行状況を考えると、9月中旬から11月中旬の18時から21時までの間で観測の好対象となる星はつぎのものである。
こと座のヴェガ、わし座のアルタイル、白鳥座のデネブ、大熊座のゼーター星、やぎ座のアルファ星、ペルセウスのアルゴール、りゅう座のツバーン,金星
10-1-2 観察対象となる星座
星の観察により星の時間定位置が理解できる。そこで、星と星を結びつけて星座をとらえさせ、星座の形と動きを観察させる場合の対象は次のものである。
こと座、わし座、白鳥座、大熊座、やぎ座、ペルセウス座、りゅう座、カシオペア座
星座を的確におぼえることはなかなかむずかしい。観察した星を中心にして近くの星を結びつけて形づくり、ひとつひとつの星が星座のどの位置にあるかを理解させる。星座の絵をかかせ、大昔より続けられてきたように星座にまつわる神話を利用するほうが理解しやすく記憶を助けるだろう。
10-1-3 児童が発見するもの
観察対象としてあげた星の中には若干見えにくい四等星が含まれている。しかし、一週間から十日ぐらい継続観察を続けることにより視力は向上して、かならずなにかを発見することができるようになる。児童が肉眼観察で発見できるものは次のようなことがらである。
こと座のヴェガ
色は「青白色」で、夜見える星の中ではもっとも明るい織姫星。
わし座のアルタイル
色は「白色」で非常に明るい、彦星。
白鳥座のデネプ
色は「白色」で銀河の中にあり、星の十字架の頭部のように見える。
大熊座のゼータ星
色は「黄色か白色」に見え、注意してみると二つの星が並んでいる。
ペルセウス座のアルゴール
色は「血のよう赤色」で、三日ごとに光の強さが変る星。
りゅう座のツバーン
色は「白色」に見え、北極星とヴェガの中間に輝やいている。
金星
夕方に一番早く見える最も明るい星で、明け方から時には昼近くまでも見え夜間は見
えない。他の星と違うようだ。(児童には金星といわず、明けの明星とか宵の明星の観
察と言うほうが印象を深める効果を期待できる。)
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10-1-4 観察結果を観測で実証
児童が肉眼で継続観察したものは、その児童にはどのように見えたかで実証しなければ正しいかどうかはわからない。こと座のヴェガは青白く、わし座のアルタイルが白く見えるのは本当だろうか。大熊座のゼーター星とやぎ座のアルファ星は本当に二つの星が並んでいるのだろうか。明けの明星と宵の明星は同一の星だろうか。
これらの疑問も観測の結果がなければ、いかなる人も証明することはできない。昔からそう云われてきたとか、天文学者が観測した結果そうであったというのは児童の興味や意欲の芽をつみとることにほかならない。己の目で確かめるという行為によってこそ興味や意欲の芽をはぐくみ、事実を確認した喜びを味わえるのである。これがもっとも大切なことでないだろうか。
7月7日の七夕は、織姫星と彦星が1年に1度逢うことができる日と伝えられ、大多数の人々はこの日に二つの星が接近すると考えているようだ。本州では7月7日、本道では8月7日が七夕であることから、実際は年に二度逢うことができる恋人同士。ロマンチックであるが現実はそう甘くはない。
計算によれば、織姫星は26光年の彼方で、彦星は17光年の彼方にある。9光年という距離があるものが、接近することは不可能である。しかし、悲恋物語を永遠に残すにはどうしてもヴェガとアルタイルの出演が必要なのである。
科学を知って神話を理解するのは楽しい。科学の限界を越えて夢を見るのもさらに楽しい。科学的な知識を持ってこそ夢見ることの許される世界もある。余談はさておき、児童が肉眼で観察したことは正しいのかを実証してやらなければなんにもならない
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10-2 星の観察
赤道儀は簡便法で据え付け、低倍率のアイピースを使用する。
こと座のヴェガ
こと座の主星で青白く輝やく、織姫星とか北天のダイヤモンドと呼ばれる0等星。距
離26光年、太陽のほぼ三倍の大きさで約50倍の輝きである。
わし座のアルタイル
わし座の主星で白色に輝やく、距離17光年の彦星。太陽より二倍重く10倍の明る
さで輝いている。
白鳥座のデネブ
白鳥座の主星で白色に輝く1.3等星。距離1,500光年。太陽の50倍の大きさ
で、二万倍の明るさで輝いている。
大熊座のゼータ星
北斗七星の柄の先端から二番目の星。ザールとアルコアが仲のよい兄弟のように寄り
添っている二重星。目だめしの星と呼ばれ、注意すれば肉眼で見ることができる。
やぎ座のアルファ星
やぎ座の主星で三等星四等星が並んでいる二重星。よほど目の良い人でなくては見分
けられない。もし見えたら、つぎはこと座の主星ヴェガのそばにあるイプシロン星でた
めす。二つの五等星がやぎ座のアルファ星よりさらにくっついている。たいていの人に
は見えない。
ペルセウス座のアルゴ-ル
ベルセウス座で二番目に明るいベーター星。不気味な赤い色をしている食変光星。二
つの恒星がお互いの引力で共通の重心のまわりを公転しているため、約三日を周期とし
て食現象を起こす。このため大昔から不気味な星と恐れられた。アルゴールは悪魔とい
う意味である。
りゅう座のツバーン
りゅう座の主星ツバーンは二等星で、ピラミッドが作られた時代の北極星である。西
暦14,000年には、こと座のヴェガが北極星と呼ばれるようになる。現在の北極星
は二等星と九等星の二重星であるが、口径12cm以上の望遠鏡でないと見ることはで
きない。
金星
地球の内側を回っているため、太陽に対して地球の反対側に見えることはない。公転
周期が早いので地球から見ると太陽の左側に見えたり右側に見えたりというように、太
陽を中心にして左右に往復するように見える。惑星という名称は、天動説で説明できな
い動きをする星に対して、星空の中をさまよい歩くという意味で命名された。
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10-3 星座にまつわる神話
星座を覚えるためには、星座早見盤で形を調べて星の配置図をかかせる。星と星とを線で結び、その星座の絵をかかせると更によい。真っ赤な星アンタレスを心臓にもつ巨大なサソリの姿、銀河の岸辺をかけゆく天馬ペガサスや天使のような翼を持った乙女の姿をかかせる。ひとつひとつの星が星座のどの部分を形づくっているかを確認させる。次に、その星座にまつわる神話や伝説を調べさせたり話して聞かせるのもようだろう。なぜそのような形をしているのか、どうしてそのような名前がついたのかを児童は理解し、星座の記憶をより確実なものにするだろう。この結果、夜空をゆびさしながら話し合う親子の姿が再び見られるかもしれない。その姿を見たとき、教育者にのみ許される感動と満足感を味わうことができるだろう。
こと座
ギリシャの楽人オルフェスの竪琴。ヘルメース神が波うちぎわで拾った亀の甲に、七すじの糸を張って音楽の神アポローンに贈った。アポローンはのちにこれを音楽の九女神の一人、カリオーペとの間に生まれたオルフェウスに授け、オルフェウスはそのことによって稀なる音楽の名手となった。彼が琴をかき鳴らすと野獣も荒々しさをやめ、木々は枝をさしのべて川は流れを止めて聞きほれた。
毒蛇にかまれて死んだ愛妻エウリディケを慕って冥府へ下り、冥府の王妃ペルセポネと約束した「陽の光を見るまで振り向かない」の誓いを守れず、オルフェウスは妻を再び地の底へつれもどされ、悲しみのあまり気がふれて野山をさまよい歩く。バッカスの祭りに酔ったトラキアの女たちに琴を引くように強いられ、断ったオルフェウスは石で打ち殺されてブルース川へ投げ込まれた。その死を惜しんだ神々が川を流れていた琴を星々の間にかけたという。
わし座
大神ゼウスの雷鳴を持っているわしで、ゼウスが巨神族と戦ったときに手柄をたてたといわれ、古い製図には矢を爪でつかんでいる大わしが表されている。しかし、普通はゼウスに衆道趣味があり、自ら大わしに身を変えてトロイの美少年ガニメーデをさらってきたときの姿であると伝えられている。
白鳥座
大神ゼウスは嫉妬ぶかい妻へラの目を忍び、白鳥の姿となってスパルタの王妃レーダのもとへ通った。レーダはのちにカストルとボルックスという双子兄弟(双子座)やトロイ戦争の起こりとなった美女ヘレーネを生んだ。
大熊座
月と狩猟の女神ダイアナは乙女であり、連れている精女たちはみな乙女であった。その中に、アルカディヤ王リカオンの娘でカリストという美しい精女がいたが、いつのまにかゼウスの子を身ごもっていた。これに気づいたダイアナはカリストを大きな熊に変えて追い払った。カリストの生んだ子はアルカスと言い、15歳のときに森の中で一頭の大熊に出会った。それが母カリストで、我が子と知って懐かしげに走りよるのをアルカスは弓に矢をつがえてあわやその胸を射ようとした。これを見たゼウスは不憫に思い、つむじ風を吹き起こして天へまきあげ、アルカスも小熊の姿に変えてともに星座として北の空にすえた。
ゼウスの妻ヘラはひどくねたみ深く、憎んでいた母子が星になったのを見て我慢がならず、ほかの星たちのように日に一度海に入って休むことができないように、たえず北の空を廻らせるようにさせた。このため、大熊座も小熊座も永久に休むことができない運命となってしまったという。
やぎ座
森の神パンはやぎの角とひげをはやし、山のほら穴に住んで音楽を好んだ。ある日神々がナイル河で酒盛りを開いたとき、あし笛シュリンクスを吹きながら踊って神々を喜ばせていると怪物ティフォンが襲ってきた。神々は思い思いの姿になって逃げたが、森の神パンはあわてて川に落ち魚に化けそこなった。このため水にひたった部分に尾が生えて魚となり、水から出ている部分はやぎというおかしな姿になってしまった。
ペルセウス座
かって琥珀色の髪の毛をした美しい乙女メドウサは、女神アテーナのねたみを受けて大ゾウのような体にシンチュウの爪、体中に金のうろこをはやして髪の毛はヘビにされてしまった。さらに口からは火炎を吐き、ひと目でもその顔を見たものはたちまち石に化するという魔女になったため、英雄ペルセウスに首をはねられてしまう。神話の王子ペルセウスがメドウサ(額に当たるところが変光星アルゴール)の首をさげ、右手に大剣をふるあげて巨鯨に向かっている姿。銀河はマントのようにひるがえり、彼に救われた美姫アンドロメダとその父ケフエウス、母カシオペアを天上に並ばせた空想は雄大である。
りゅう座
西の果てにあるヘスぺりデース園の金のりんごを守っていた龍。これを取りにきたヘラクレスに殺されたがその武功によって星座に加えられたという。
カシオペア座
カシオペアは古代エチオピア王ケフエウスの妻で、アンドロメダという美しい王女がいた。母はそれを自慢するあまり海の精女をさげすんだ報いを受け、娘アンドロメダは海魔の人身御供となり、自分は椅子に腰掛けて両手を高く上げたまま、一日に一回空を回る運命になったという。ペルセウス座、アンドロメダ座、カシオペア座、ケフエウス座の一群を、エチオピア家の星座という。
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