1 危険からお子様を守るために
インターネット接続機器の普及により、子どもたちは自分のスマートフォンや携帯電話でメールやゲームなどを利用することが多くなりました。その一方で、有害情報サイトなどにアクセスし、犯罪やトラブルに巻き込まれるケースも絶えません。
インターネット上には子どもたちに役立つ情報がある一方で、暴力的な表現やアダルト画像なども数多く存在します。また、メールやインターネット掲示板、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)などのコミュニティサイトも、利用方法を誤ると気付かないうちに個人情報を知られてしまうなど、様々なトラブルが生じる危険があります。
子どもたちがトラブルに巻き込まれないようインターネット接続機器を取り上げるのではなく、安全・安心してスマホや携帯電話でインターネット利用するために、保護者がインターネットの特徴や様々なリスクについて子どもと一緒に学ぶことが重要です。
何よりも重要なのは、困ったらすぐに「警察」へ知らせることです。一分一秒を争う時間との勝負ですが、専門家が早期に手を打てば解決できることが多いのです。
2 子どもたちのネット参入
最近は、子供たちも自分のスマートフォンや携帯電話を持ち、メールや調べ物、ゲームなどを利用することも多くなりました。進学や進級をきっかけに、子供に携帯電話を持たせることを検討しているご家庭は多いのではないでしょうか。
SNAを利用し、自殺願望を投稿するなどした高校生等の心の叫びに付け込んで、言葉巧みに誘い出し殺害するという極めて卑劣な事件が発生しました。
内閣府が行った「平成28年度 青少年のインターネット利用環境実態調査」によればスマートフォン(以下「スマホ」)や携帯電話を利用している割合は、小学生で約5割、中学生でも約6割、高校生では9割以上に達しています。
調査対象は満10歳から満17歳までの青少年(5千人)および前記青少年の同居の保護者(5千人)です。
平成21年度~平成24年度に引き続き「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」(いわゆる「青少年インターネット環境整備法」。平成21年4月1日施行。)の施行状況のフォローアップのための基礎データを得ることを目的として実施された実態調査の速報値が発表されました。
インターネット接続機器の使い方についての家庭のルールに関しては、青少年の実態と保護者の認識との間にギャップが見られます。青少年のインターネット接続機器の使い方について、何らかのルールを決めているとの回答は、いずれの学校種でも保護者の回答が青少年の回答を上回っていました。
平成25年度 青少年のインターネット利用環境実態調査結果(内閣府)
3 子どもたちのネットトラブル
子どもたちは、インターネット上の情報の真偽を見分ける力や、インターネット上の行動に対する責任や判断力が不十分です。ネットいじめ、高額請求、児童ポルノ、個人情報流出など、子どもたちが巻き込まれるインターネットトラブルはさまざまですが、インターネットトラブルが複雑化、深刻化しやすい理由として以下のことが挙げられます。
○ インターネットは情報伝播力が強い。
○ 相手の顔が見えないため、行動がエスカレートしやすい。
○ 親や教師が見えない場所でトラブルに発展するので、気づきにくい。
子どもの未熟さとインターネットの特性を理解したうえで、きちんとペアレンタルコントロールを行わないと、いつなんどき、取り返しの付かないトラブルに巻き込まれるかわかりません。子どもたちのインターネット利用には、大きなリスクがともなうことを忘れてはならないのです。
総務省はインターネットトラブル事例集(平成29年度版)(総務省総合通信基盤局消費者行政第一課青少年担当)でその予防法と対処法を紹介して注意を促しています。
平成29年に入ってからSNSを利用し、自殺願望を投稿した高校生等の心の叫びに付け込んで、言葉巧みに誘い出し殺害するという極めて卑劣な事件が発生しました。総務省は、SNS等を利用したネットによる誘い出しとそれに伴う犯罪被害の防止のため、新たなトラブル事例やSNSを利用する際の注意点を追記した『追補版』を作成しました。
インターネットトラブル事例集(平成29年度版)追補版(総務省総合通信基盤局消費者行政第一課青少年担当)
安全・防犯のプロ"であるセコムが運営するサイト「子どもの安全ブログ(ウチの子は大丈夫?実録!子どものインターネットトラブルと対処法)」には、「個人情報流出・ウイルス感染」「長時間利用による日常生活への影響」「高額請求」「SNSやプロフの書き込みによるトラブル」「児童ポルノ・強制わいせつなどの被害」について、トラブルの原因と対処法が説明されています。ぜひご覧ください。
4 人生台無しの危険
1) 高校は退学、就職内定は破棄
2016年1月18日午後9時ごろ、北海道登別市の登別温泉にある登別グランドホテルの3階食器洗い場の流し台に湯を入れて、アルバイトの男子高校生1人が裸で入浴しました。
その様子を別のアルバイトの男子高校生が撮影してツイッターに投稿し、「バイト探している人グランドホテルの洗い場に来ない?」「洗い場だったらほぼ学生だけでこんな感じでほぼ毎日楽しーよ」「拡散よろしく」などと投稿しました。
2人は食器洗いの業務を委託している会社のアルバイトで、当時、現場には2人を含むアルバイトの高校生4人だけでした。委託会社の社長が21日夕にこの写真が投稿されているのを知人から知らされて発覚しました。
登別グランドホテルは1月22日、業務委託先アルバイト職員の不適切な行為についてお詫びとお知らせで「当社の業務委託先アルバイト職員(未成年)が、食器洗浄の準備の為にお湯を張り洗剤を入れていたシンクの中に入るという不適切な行為を行いました。アルバイト職員の同僚(未成年)がWeb上へ写真掲載し、その写真を見た方からの通報、また、本人たちからの申告により判明いたしました。お客様、また、当社に係るすべての関係者の皆様には大変ご不安、不愉快な思いをさせてしまいましたことを心からお詫び申し上げます。」とこの騒動を陳謝しし、警察の現場検証後に当該シンクを撤去して新品に交換しました。
当然ホテルへの風評被害は起きるでしょう。ホテルから契約を解除された委託業者は、高校生の親に損害の賠償を請求しました。シンクで入浴した高校生は3月の卒業を目前に退学処分となり、就職内定も取り消されました。写真を写してツイッターに投稿した高校生は学校名も学年も姓名も特定されています。
それだけで済まないのが、インターネットの恐ろしさです。いったん公表された情報は消えずに拡散され、世界中の人々が何時でも見ることができるのです。進学にも就職にも結婚にも影響を与え、この負の遺産は一生付きまとうのです。
2) 冷蔵庫へ入りレストラン閉店
2013年8月5日、ステーキレストラン・ブロンコビリー足立梅島店(東京都)」に勤務するアルバイト従業員が、店舗内のキッチンにある大型冷凍庫に入りこみ、別のアルバイト店員(18)が写真を撮ってツイッターに掲載しました。
レストランは翌日より休業して当該アルバイト従業員を解雇し、また徹底した店舗清掃と消毒を行い従業員の再教育をして再開のための準備をしていました。
しかしながら、会社は企業理念にある「おいしい料理と気持ちよいサービス、清潔で楽しい店づくりを通じて心地よいひとときを提供する」使命と、お取引先様等のご支援をいただきながらこの使命の実現に取り組み続けている全社・全従業員の努力に反した責任は重く、当該店舗がこのまま営業再開することは許されないと判断し、退店を決定いたしました。」
「この度の事態が発生いたしましたことをこの一店舗の事象と捉えず、全社の問題として厳粛に受け止めて、教育及び指導を徹底し、全従業員一丸となって信頼回復に努めて参ります。なお、不適切な行為を行ったアルバイト従業員に対し、本件に関する損害賠償の請求についても検討しております。」
自分がクビになっただけではなく、店まで閉店に追い込み、損害賠償請求まで検討されています。ネット上には、自分の顔や実名、住所、学校名まで公表されています。問題を起こした彼は家に閉じこもるようになり、専門学校の同級生は次のように話しています。
「すれ違う人全員から“あの騒動を起こしたヤツだ”って見られてるみたいに感じてしまうようで、怖くて外を出歩けなくなったみたい。親しい友達とも距離を置いているようですし・・・、彼は学校側から呼び出されて事情を聞かれたんですが、そのとき泣いていたみたいです。同級生のなかには彼が学校にいるのが迷惑だし、就職に響くんじゃないかって思っている人もいて・・・、本人も、今後、どうしたらいいか悩んでいます。」
私たちの年代が「いまの若いものは」と黙認していた年代が親になると、子どもたちに社会生活に適応するため望ましい生活習慣を身につけさせることができなかったのでしょう。人間社会や集団での規範、規律や礼儀作法など慣習に合った立ち振る舞いができない子どもが増えているようです。
しかも、教える人がいなかったのでしょう。子どもたちには迷惑行為の是非や情報モラルの知識などが浅く、適切にスマホを取り扱えるだけの十分な知識・経験・判断力などを持ち合わせていないようです。
わざわざ迷惑行為をSNSで拡散しようとする人が後を絶たないのでしょう。冷蔵庫内の食品はすべて廃棄され、消毒が終わるまで閉店を余儀なくされます。被害を被った店舗は賠償を求めます。顔写真も氏名もネットに出ているのですから請求先はすぐ分ります。
5 重要なフィルタリング
子どもたちが有害情報サイトなどにアクセスし、犯罪やトラブルに巻き込まれるケースも絶えません。特に低年齢の子供ほど、情報モラルの知識などが浅くトラブルに巻き込まれる可能性があります。
書き込みやメールで誹謗中傷やいじめ、SNSなどで人の悪口を書き込むなどインターネット上での人権侵害やいじめが発生し、被害に遭った子供が不登校となるなどの事例も発生しています。
SNSなどに一般人が個人情報や自分が特定される情報と写真などを掲載することは危険なのです。安易に個人情報を記載したために、写真や名前、メールアドレスが知らないところで勝手に使われ、嫌がらせを受ける被害が発生しています。
最近は出会い系サイトではなく、SNSやゲームサイトなどで知り合った人からの誘い出しを受けて、子供が性的被害を受けるケースが増えています。平成27年に出会い系サイトに起因して犯罪被害にあった子供の数は93人、コミュニティサイトに起因して犯罪被害にあった子供の数は1,652人となっています。
無料ゲームサイトでの意図しない有料サービスの利用、「無料」とうたっているオンラインゲームで遊んでいる間に、アイテムが有料であることに気づかず購入してしまったため、高額の料金を請求されてしまうトラブルが子供の間で多く発生しています。
このような事態を防止しなければなりません。子どもたちを危険から救うために親としてやらなければならないことがあります。
1) Webサイトのフィルタリング
携帯電話会社には、利用者が18歳未満の場合(保護者が解除を申し出ない限り)フィルタリングの提供が法律で義務付けられています。WiーFiでもフィルタリングを有効にするには、スマホなどの契約時に以下サービスを申し込むことになっていますが、利用中の機器がサービスを受けているかどうかあらためて確認しましょう。
2) アプリのフィルタリング
スマホのアプリは、Webサイトのフィルタリングでのコントロールはほとんどできないため、別途設定が必要です。設定方法はスマホのOS(基本ソフト)で異なるため、販売店に設定をお願いしたほうが場無難です。
6 スマホを持たせる前に
スマートフォンを使うようになれば、インターネットを通じて年齢・性別・場所を問わず多くの人とつながる可能性が生じます。そこで、保護者自身が意識して行動したいことを以下にまとめました。
① スマートフォンを操作できる(資料や情報などがあれば簡単な設定も自分でできる)
まずは自分で使って基本的な操作を把握しておきましょう。そして、子供が安全に
使える環境を整えてあげましょう。
② 情報モラルやフィルタリングについての基礎知識がある
情報モラルもフィルタリングも、子供をトラブルから守る大切な知識です。学校や
地域で開催する研修会、Webの情報、書籍、事例集などで積極的に学びましょう。
③ スマートフォンの正しい利用を態度で示すことができる
歩きスマホをしない、食事中や就寝前は使わないなど、保護者自身が見本となって
良いマナーを学ばせましょう。
④ スマートフォンの使用目的や使い方について、子供と話し合うことができる
なぜ必要なのか、どのようなことに使うのか、子供の気持ちを聞きましょう。目的
を確認した上で、使い方を一緒に考えましょう。
⑤ スマートフォンの利用ルールを子供と一緒に考えて決めることができる
大人が勝手に決め付けて押し付けてもダメ。子供の言い分にも耳を傾けながらじっ
くりと話し合い、ルールを決めましょう。
⑥ 家庭内で決めたルールを定期的に話し合い、適宜見直すことができる
利用範囲や時間、課金、各種制限など、発達・成長段階に合わせてルールを調整し
ましょう。子供と定期的に話し合うことは、保護者が新しい情報を得る機会にもなり
お互いの理解が高まるのでおすすめです。
※ 高校生になったら、18歳に向けて徐々に任せる方法も悪くはありませんが、保護
者の見守りは忘れずに。