はげちゃんの世界

人々の役に立とうと夢をいだき、夢を追いかけてきた日々

第12章 個人情報の保護と管理

2011(平成23)年1月27日に、白石区民センターで開催された社会福祉法人の活動研修会で拝聴した、札幌総合法律事務所の野崎弁護士の講演「個人情報に対する正しい理解と取扱いについて」より「要援護者支援と個人情報」の要約です。

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1 過剰反応という現状

1-1 議論のきっかけ

個人情報についての議論は、平成19年7月16日発生の新潟県中越沖地震がきっかけとなり、不正確な知識で過剰反応している人が多いことが明確になったのです

阪神淡路大震災は、神戸市で要救助者の85%が地域住民によって救出されています。新潟県中越沖地震で柏崎市の倒壊家屋などから地域住民の力で救出された人は三分の一でした。一人暮らしの高齢者など約9千人の安否確認に柏崎市は6日かかりました。

柏崎市の防災課は、災害時要援護者リストを作成して厳重に保管していただけでした。他機関や地域を含めて、情報を共有しなかったことが救助の手を遅らせた原因でした。個人情報保護法に過剰反応していたことが判明したのです

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1-2 国の動き

H19.08.10
 災害時などに避難支援が必要な要援護者の名簿を自主防災組織と共有できるような体制作りを全国の自治体に求める通知(厚生労働省)。

H19.12.18
 災害時要援護者の避難支援対策の推進について(内閣府、消防長、厚生労働省、国土交通省)地方公共団体に対し、平成21年までに避難支援プランの策定を要求。

H20.02.19
 内閣府が避難支援プランのモデルを公表。

H20.04.25
 個人情報の保護に関する基本方針に「いわゆる「過剰反応」が生じている」という文言を加えることを閣議決定。

緊急時における充実した要援護者のために、行政機関と自主防災組織との間の情報の共有が必要かつ不可欠であることは国も認めている。では、具体的にどうすれば良いいのだろう

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2 情報の流れと法規制

2-1 情報の流れ

問題となる局面は「取得・利用・管理・提供」の段階のいずれかで、A(本人)から提供された個人情報は、B(事業者)が取得して管理しますが、Cへ提供されることもあります。

個人情報保護法が適用されるのは5千人以上の個人情報を有する事業に限られているので、個人情報保護法は通常適用されることはありません。

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2-2 法規制

提供の局面

検査年月日第三者提供委託
Aの同意の要否必要(但し、例外あり)不要
情報をCが独自に利用することの可否できるできない
BのCに対する監督の要否不要必要

  A        →      B      →    C
   住民             町内会         警察官
                   ↓           ↓
                 町内会活動         捜査

  A        →      B      →    C
   帳簿に載っている人たち     企業          税理士
                   ↓           ↓
                  会計処理        会計処理

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2-3 第三者提供の例外

ア. 法令の定め

イ. 国・自治体からの照会に対する回答

ウ. 故人の生命・身体または財産を保護す、及び、緊急かつやむを得ない場合。

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2-4 慰謝料

ア. 単価(一般論)

 a. 民法に慰謝料の額は書かれていない。

 b. 裁判官は先例主義(相場主義)

 c. 情報漏えい事件では、相場が形成されていない。

 d. 宇治市の例 1万5千円(実質1万円)

イ. 単価(高額)

 a. センシティブか否か(センシティブ=感覚が敏感、感じやすい、鋭敏、微妙で慎
   重を要する。)

 b. 二次被害の有無(センシティブとの関連)

ウ. 漏えい事故の傾向

2005年2月1日から2006年1月11日までの間。但し、発生した事故をすべて網羅したわけではありません。

 a. 紛失・誤廃棄  46.9%

 b. 盗難      27.1%

 c. 誤送信     13.6%

 d. 意図しない漏洩  6.2%

 e. その他       2.8%

 f. 6位以下      3.4%

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3 解決策

個人情報法誤報等関係法令の正確な理解と趣旨に則った運用が重要

3-1 情報共有の方法(情報移動の場面)

  A        →      B      →    C
   住民             自治体         町内会
                   ↓           ↓
                 要援護者対策      要援護者対策

委任化?  第三者提供か?

ア. 委任

 a. 同意不要

 b. 自治体の町内会への監督必要

どのような監督?

イ. 第三者提供

 a. 同意は不要ではないか
  ・ 個人の生命・身体の保護
  ・ 緊急かつやむを得ないか

 b. 監督不要
  ・ それで済むことか

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3-2 リスクとその対策

ア. 管理の徹底(研修、マニュサル)

イ. 責任の分担 → ルールづくり

ウ. 保険

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4 町内会に適用されるか

個人保護法が適用されるのは「五千人以上の個人情報を有する事業者」に限られることから、通常の場合は個人保護法が町内会に適用されることがありません

ただし、町内会でも個人情報の管理が重要であることには違いがありません。住民情報の「取得」「利用」「管理」「提供」について、個人保護法を参考にした運用をする必要があります。

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5 町内会が管理する情報

5-1 最低限必要な情報

町内会が町内会員を特定するために不可欠な情報と、町内会が町内会員と連絡を取るうえで通常必要と考えられる情報は、「世帯主の氏名、住所、電話番号」です

この3点は、町内会活動に必須な情報であり、かつ、後記のセンシティブ情報に該当しないので町内会の管理体制を厳格に要求すべきではないからです

町内会が「性別、生年月日、緊急連絡先」などの情報を取得する場合は、町内会がどのように「利用」するのか、「管理」はどのようになっているのかを、町内会員に周知することが必要です。

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○ センシティブ情報

センシティブ情報とは、通常の個人情報以外に他人には知られたくない情報です。身体の状況がこれに該当します。

信仰している宗教や支持政党などの情報も、社会的差別の原因になりうるので町内会が情報を求めることはできません。また、本籍地も取得を禁止される情報で、町内会活動との関連性のない限り、本人同意の有無とは無関係に取得することは許されません

センシティブ情報は、町内会がどのような利用を想定するのか、慎重に検討する必要があります。例えば、被災時の災害弱者の援助のために利用するという「合理的で明確な理由」があれば、名簿管理体制を整えて情報を取得することができます

大きな震災などが発生した場合に、消防や自衛隊の救助活動が行われますが、これには多大な時間を要します。すぐに救助してくれるのは、やはりご近所の方々なのです。しかし、援助を要するご高齢の方や身体に障がいをお持ちの方がどの家にいるのか、分からなければ援助や救助ができません。このような場合に役立てるのであれば「合理的で明確な理由」と言えます

センシティブ情報に関しては、情報の「管理」が重要です。町内会のだれが(どのような範囲の人が)、どのような情報を、どのような管理方法で保有しているかが重要になります。町内会は町内会員にこれを明確に周知しなければなりません。

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