はげちゃんの世界

人々の役に立とうと夢をいだき、夢を追いかけてきた日々

第3章 カラス騒動

ごみ置き場に捨てられる生ごみはカラスを呼び寄せ、巣立ち時期になると頻繁に通行人が襲われました。やむを得ず子ガラスの保護と巣の撤去や忌避液を使用した対策を続け、ネットサークルを導入することで町内会員から喜びの声が聞かれるようになりました。

1 序章

町内五箇所のごみ置き場にネットを備え付け、ごみが散乱しないようにおおえる工夫がされていました。時の流れは持ち家を減少させて賃貸マンションの増加を招き、しだいに増え始めたごみの量に対処するため、2000年の2月に5m×5mのネットへ更新がおこなわれました。更新された大型のネット

ななかまどの赤い実が綿帽子をかぶるころ、ごみを覆うネットは降り積もる雪に埋もれることもありました。暖気と寒気の繰り返しはネットの端を凍りつかせ、容易に広げることが難しいときもあります。

ネットの上へ、食べかけや食べ残しがあると一目で分かるレジ袋が積み重なり、持ち手部分を結ばない袋が転げ落ちると残飯類が散乱しはじめました。

カラス達はこの様子を眺めています。パンやラーメン、フライドチキンに焼き魚、揚げかまぼこや菓子類が毎日のように運び込まれ、五箇所のごみ置き場は食糧の山と化していたのです。

カラスたちにとっては、額に汗することなく、偏食を咎めるものもなく、好きなときに好きなだけ食べることのできる食卓でした。先祖代々のカラス族も目にしたことがない美食や珍味がならび、かの藤原道長も驚嘆するであろう満ち足りる暮らしが目の前に用意されていたのです。

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2 新年会の話題

2007年1月13日(日)の18時から町内会館ホールを貸し切って行われた恒例の新年会で、新春を寿ぐ挨拶に続く話題は今年も「ごみの散乱」と「カラスの被害」でした。この日の午後、宴会用のオードブルを車に積んで公園横を通りかかりました。公園内には11~12羽のカラスが広がり、第三ごみ置き場からくわえ出したポリ袋を奪い合う姿はまるでサッカーの試合を楽しんでいるようでした。

「先週の火曜日のお昼前に、地下鉄の駅へ行くので公園横を通ったんですけど、第三ごみ置き場から道路へごみが散乱していました。ネットから引き出されて道路に散乱するごみカラスが生ごみをつついて奪い合ったようです」。

「第二ごみ置き場もひどいですよ。月曜の朝見るともうだしてあるんだ。きちんとネットをかけないから、捨てた袋が破られてそこらじゅにごみが散乱していた」。

「去年の暮れだけど、ごみの収集後に第二ごみ置き場のネットをたたんで電柱にぶら下げておいたら、夕方そばを通ると出したごみにきちんとかけてあるのさ。きちんとしてほしいのは、曜日を守って出すことなんだけどな~」。

「燃えないごみも生ごみも一緒だし、ネットでおおってくれれば良いほうだよ。むかし電線にとまっている12羽のカラスはごみを散らかすカラスを見かけなかった気がするけど、この頃は10羽以上もきているよ。ひどいねえ」。

「そういえば、カラスの数は確かに増えているよ。2~3年前はこんなにいなかった~」 。

「いまのカラスは生意気でないかい。ごみを出しに行っても逃げずに見ているのさ。こらって言っても身構えているだけで逃げないよ」。

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3 六羽を捕獲

町内で見かけるカラスはハシブトガラスで、ごみ袋を破いて散乱させる行儀の悪さが特色です。テレビのアンテナに群がっているカラスカラスは賢いうえに学習能力があり、しかも「鳥獣保護及び狩猟ニ関スル法律」で守られているので、人は害を加えることができないと知っているようです。ごみを捨てに近寄っても、一定の距離があると人が去るまでじっと待っています。

「去年、カラスに襲われた人がいたと聞きましたがなにかあったんですか」「なにかどころか大騒ぎさ。公園の周りや建設会社の駐車場横の道路で、通行人が何人も襲われたんだよ」。

「公園のところで捕まえたのは二羽だったかい」「いや。後から一羽見つけたし、あの前に三羽捕まえているから全部で六羽さ」「殺したんですか」「まさか。業者は海辺の山へ放すと言ってたよ」。公園の遊具の下で遊ぶカラス

「今年も襲われることがなければいいが」「公園は幼児や小学生が遊んでいるので、定年退職されたマンションの方々が見守りを手伝ってくれれば助かるんだけどなぁ」。

「なんとかしなけりゃ、また通行人がカラスに襲われたり、ごみが風に飛ばされて家の周囲が汚れるよ」。

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4 襲われた若者

高圧線鉄塔の三段目に当たる配線支えにカラスが巣を造り始めていました。超高層マンションのような位置へ、二羽のカラスが建築資材をくわえて運んでいます。幼鳥を襲う外敵も人も近寄れず、安心して子育てが出来る場所を選んだ賢さに感心しました。

親鳥が巣の中にいる日が続き、やがて三羽の幼鳥の頭が見えるようになりました。頻繁鉄塔上のカラスの親子にエサを運ぶ親鳥の姿を何度も見かけ、やがて家族全員が姿をあらわしました。子供が大きくなるとエサを運ぶ回数が減り、町内の建物にとまっているカラスの夫婦を見かけることが多くなりました。

ふれあいの並木道を彩るレンギョと桜の満開が過ぎ、白樺並木が若葉色に包まれました。町内の家々の庭にチューリップの花が咲き、残雪をいただいている遠くの山々がくっきりと見えはじめたころ、ついにその日がきてしまいました。

紙袋を手にさげた若者が町内の中通りをこちらへ歩いてきます。突然、二羽のカラスが舞い上がりました。何かの気配を感じて立ち止まった若者の後頭部を、一羽のカラスが足の甲をかすめていきました。若者は右手で頭を押え、腰をかがめて上空を見ました。カラスが旋回して再び襲いかかります。

襲ってくるカラスを確認した若者  庭のカラスにに追われて逃げる若者

左手に持っていた紙袋を盾にしながら立ち上がると、若者は後ろから迫る新たな気配を感じて腰をかがめました。飛び去った羽音をたどり、カラスが二羽いることを確認しました。飛んでいる姿を目で捉えながら歩きだすと、二羽は行く手を阻むかのように正面へ旋回して若者目がけ襲いかかります。若者は後ろを向いて駆け出しました。カラス夫婦はそのあとを追いかけていきました。

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5 凶暴さがあらわに

巣立つ練習を始めた子ガラスの安全を気遣うように、親ガラスは大部分の時間を同じ建物の屋根に止まり、通行人がくると老若男女の別なく襲い始めました。通行人が身構えても逃げようとはせず、正面から攻撃するようなしぐさを見かけることもあります。威嚇は日に日に激しくなってきました。

後ろから襲い掛かるカラスに気付いた歩行者  襲ってくるカラスをにらみつける歩行者

この日も通りかかった人の背後から襲いかかり、前後と左右から夫婦で攻撃を繰り返すためなかなか通り過ぎることができません。

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6 鉄塔の巣を撤去

怪我人がでそうな状況に高圧線鉄塔上にある巣の撤去を電力会社へ要請しました。この旨を町内会長へ報告をすると、公園周囲でも頻繁に通行人を襲うカラスがいるので会計部長も区役所に現地調査を要請していました。

翌日の午前5時に電力会社の作業員が高圧線鉄塔下にみえ、送電停止を確認して鉄塔を昇り始めると二羽のカラスは前後左右から襲いかかりました。一羽の幼鳥が幹線通り沿いにある靴屋さんの駐車場方向へ向かって滑空しました。幼鳥が滑空するとカラスの夫婦の鳴き声が変わり、どこからともなく14~5羽のカラスが現れました。

高圧線鉄塔を上る作業員  高圧線鉄塔のカラスの巣を撤去している作業員

カラス達は交差点を東へ渡り終えた通行人に襲いかかりました。10羽ほどが頭上を取り囲むようすに、鉄塔下で待機していた電力会社の作業員が車の流れを遮断して救援に走りました。30分ほどで巣と幼鳥二羽を撤去し、靴屋さんの建物の影に隠れていた子ガラスも保護されました

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7 樹木の巣を撤去

午前10時ころにみえた区役所公園課職員は、公園の樹木の下で何かを探しています。公園東側にある掲示板のそば、落葉松の下に糞の痕跡を発見しました。さまざまな角度から見ると、見事にカモフラージュされた巣の一部が見え松の木上部にあったカラスの巣ます。

応援の職員に守られながら、落葉松に登り始めると一羽が飛び去りました。巣のそばまで近づくと更に一羽が飛び立ちます。二羽は脱出しましたが、逃げ遅れた幼鳥一羽は職員に保護されました。

公園課職員は、カラスの巣を見つけるときは樹木を見上げながら探すのではなく、樹木の下に落ちている糞の痕跡を調べるほうが効率的と教えてくださいました。飛び去った二羽の子ガラスは近くに見当たらず、不思議なことに親鳥が現れません。

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8 無事二羽を保護

午後1時半に町内の安全安心パトロールをしていると、公園南側で作業服姿の通行人とすれ違いました。その直後、けたたましいカラスの鳴き声に振り返ると、作業員の頭上へ二羽のカラスが襲い掛かっています。「戻れ!」と叫びながら、道端に落ちている小石をカラスへ投げつけました。

作業員は事なきを得ましたが、カラスは電柱と電線にとまって威嚇の声を上げます。襲うのはなぜだろうと辺りを見回すと、作業員が近所の庭の松の木上にとまっているカラスを発見しました。イチイの上に泊まっている子ガラス

2mほどに整形されたイチイの上に子ガラスが一羽とまっています。胸を張って羽ばたきはもちろんまばたきもしません。近所の方よりダンボールの空き箱と竹製の熊手をお借りし、親ガラスに襲われた作業員の協力を得て保護しようと近づきました。

子ガラスの目は大きく見開かれ、じっと恐怖に堪えているようでした。動かなければ見つからない、親が助けてくれると信じているようです。

カラスの顔の前にダンボールの空き箱を持ち上げた作業員の後頭部へ、親ガラスの一羽が飛びかかってきました。大きな羽音に作業員はダンボール箱をかぶりました。わたしが振り上げた熊手がもう一羽のカラスの羽根をかすめ、親ガラスは左右へ分かれて電柱にとまりました。

子ガラスをダンボール箱の中へ熊手で押し入れようとしました。「ギャー」と悲鳴を上げて熊手を羽根で押し戻そうとし、親ガラスが悲鳴を上げながら襲ってきました。作業員がダンボール箱をカラスにぶつけました。木の枝にとまって威嚇するカラスの夫婦

カラス達は電柱のはるか上まで飛び上がったすきに、子ガラスを熊手でダンボール箱へ押し込み、いただいた粘着テープでふたを閉じました。親ガラスは少しはなれた公園の樹木から見ています。

町内会長さんが電話で区役所をとおしてお願いした処理業者が引き取りにきました。「区役所職員の手から逃れた二羽のうちの一羽で、あと一羽もこの近くに隠れていると思われます。少し離れたお宅に頼まれたカラスを保護したら、もう一度きてみます」。処理業者は説明しながらダンボール箱を車に積み込んだ時に、親ガラスの姿は見当たりません。

おやつどきに再び同じ場所で通行人が襲われ、ようすをみに戻った処理業者が薬屋さんの空調機の下に潜む子ガラスを保護しました。保護した子カラスは殺さずに海辺の山へ放し、生存可否は自然の手にゆだねるそうです。

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9 衣食足りて

巣は撤去されて子ガラスは保護されているのに、カラスは知り合いのカラスをユートピアへといざなっていました。公園に集うカラスは16~7羽を数えるまでに増え、かぶせてあるネットの隅から器用にごみ袋を引きずりだして穴を開けると、来客を接待できる量の生ごみに7~8羽が群がり食事を楽しんでいました。食事に飽きると、発泡スチロールのトレーをくわえて道路を引きずり回すカラスもでてきました。

ネットから引き出されたごみが散乱  ネットから引き出されて道路へ散乱するごみ

ごみ袋をくわえて公園内でサッカーに興じ、疲れると電線にとまって雑談する日々が続いていました。人間の天気予報はなぜ当たらないかとの議論は早朝から熱を帯び、つかれきった人々の眠りを妨げます。カラスの鳴き声を聞かない日は一日たりともなく、建物の屋根や駐車している車は白い糞で汚れ、マンションの外壁にも流れ落ちた糞の痕跡がついていました。

電球交換をすぐそばで見ているカラスごみを覆うネットを雪の中から引き出していると、近くの木の枝にとまって観察しているカラスがいます。ごみを拾い集めていると後をついてくるカラスがいます。町内の防犯灯を交換しているとすぐそばへきて覗き込むカラスもいます。向学心の旺盛さから、人に取って代わる時代が来るのを予感させました。

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10 協力体制は不備

カラスの数が増えるにつれて散乱するごみの量も増え始めました。ごみを出す時間は8時までと決められていますが、収集車が回収にくるのは毎回午後1時を回ってからです。この5時間はじっくり好物を選択できるゆとりの時間となりました。

まれに午前10時前後に収集車が来ると、その後に出されたごみは次の収集日まで放置されます。常に飢えることがないカラスのための仕組みができあがっていました。

ネットから引き出された生ごみ  道路に産卵しているごみ

カラス対策とごみ対策案はなかなか浮かびません。インターネットで「カラス」を検索していると「PEカラネット」を発見し、製造販売元を訪ねて現物を見せていただきました。

「PEカラネット」は巻取り式のネットサークルです。ごみの収集日にサークル状に広げて、現在使用しているネットを上からかぶせます。ごみの回収が終わると丸めて収納容器で保管します。持ち上げてみると確かに軽く、高齢者でも簡単に扱うことが可能です。

カラネットの使用箇所カラネットの製品見回すとかなりの箇所に設置され、町内にカラスの姿は見かけません。製造販売元が属す400戸加入の町内会は、全戸単独持ち家の会員が交代でお世話をされていました。この地域に賃貸マンションやアパートなどはなく、分譲マンションは専用のゴミ置き場を保有しています。

役員会へ報告すると、ワンルームを含めて217世帯が生活可能でも町内会加入は67世帯、単独持ち家は16軒(半数は80歳以上)という状態では、「PEカラネット」のお世話まで手が回らないと判断されました。班長すら引き受けてもらえず、一部の方に何年間も引き続きお願いせざるを得ない状態では夢のようなはなしです。

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11 カラス対策用忌避液

不思議なものをインターネットで探し当てました。カラス対策用忌避液です。「忌避液をカラスが認識すると、その場所に近寄らなくなることが実験から証明されました。ただし化学的な裏づけは一切ありません。」と紹介されています。

人や動物にも優しく環境や自然への影響はまったくないとされても、自然界には毒性のあるものが多数存在し、天然成分であるから安全とは言えません。毒性についての分析結果が公表されていないので、児童公園のある地域で使用するには向かないようにも思えます。とは言え、効果があるならすばらしい大発見ではとの思いも捨て切れませカラス忌避液ん。

「カラス忌避液って、効果をどこで試してみたのさ。50ccで2,400円もするのに分からないってか」「液肥って液体肥料だろう。カラスに肥料をやるのい」「ごみに万遍なく吹きつけるのは、一回では効かないってことでしょう。大量にかけなければダメなんでし」「大量に吹き付けたごみの袋が収集されたら、そのあとはどうなるの」「人や動物にも優しいって証明できるものはないの。最近いい加減なものが多いけど大丈夫か」「子ども達がふれるところでは使えないな~。業者が責任を取るはずはないし」。

「眉唾のような感じがしないわけではないけど。発見者や研究者が考えたような、営業知識の少ない素人のような感じもするのさ。詐欺ならもっとうまく考えるでしょう。ごみ置き場の看板とごみネット、ネットを縛り付けている電柱に限定して使ってみてはと思うんだ」「散らかったごみを毎晩みんなで集めるのも大変だし、子ども達がふれる場所以外なら大丈夫だろう。試してみるか」。

町内会はカラス公害をこれ以上黙認できず、毒性があるものとして取り扱いに慎重を期し、効果の上がる使い方をみつける実験も含めて平成19年2月19日に50ccを1本購入しました。

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カラス忌避剤の試験

1) 実験期間と実験方法
  ① 実験期間   平成19年2月20日~3月13日 22日間10回。
  ② 実験方法   ゴミネット、ネット固定用電柱、ごみ収集曜日表示看板へ噴霧。

 2) 実施日と実験効果
  ① 2月20日 午前5時 第一ごみ置き場から第五ごみ置き場。
   ・ ゴミネット  ゴミネットを折畳んで上下から噴霧5回、計10回×5箇所。
   ・ 電柱根元   ゴミネット側、地表から1mの高さまで3回噴霧×電柱4本。
   ・ 表示看板   表面に3回噴霧×5箇所。
   ・ 状態と効果  午前7時、第二から第四までネットからごみがはみ出す状態。
            公園内で遊んでいるカラス2~3羽のみ。
            午前10時及び午後1時の二度確認、荒らされた形跡なし。

  ② 2月23日 午前5時 第一ごみ置き場から第五ごみ置き場。
   ・ ゴミネット  ゴミネットを折畳んで上下から噴霧5回、計10回×5箇所。
   ・ 電柱根元   ゴミネット側、地表から1mの高さまで3回噴霧×電柱4本。
   ・ 表示看板   表面に3回噴霧×5箇所。
   ・ 状態と効果  午前7時、第二から第四までネットからごみがはみ出す状態。
            午前10時前にごみ回収済みで判定不能。

  ③ 2月27日 第一ごみ置き場から第五ごみ置き場。
   ・ ゴミネット  ゴミネットを折畳んで上下から噴霧5回、計10回×5箇所。
   ・ 電柱根元   ゴミネット側、地表から1mの高さまで3回噴霧×電柱4本。
   ・ 状態と効果  午前7時、ごみの量は少ない。
            午前10時、第三以外はごみの散乱なし。

  ④ 3月1日 午後5時。
   ・ 表示看板  カラスが止まっている第二と第三の看板上に×噴霧10回。
   ・ 公園樹木  万一の影響を考慮し、樹木の頻繁に止まる枝への噴霧をて中止。

  ⑤ 3月2日 午前5時。
   ・ ゴミネット  ゴミネット上から噴霧10回×5箇所。
   ・ 表示看板   表面に噴霧2~3回×5箇所。
   ・ 状態と効果  午前7時、第二第三のごみ袋上から噴霧5回。
           午前10時、第二はごみの散乱少ないが第三は道路上に散乱。

  ⑥ 3月3日 午前7時
   ・ ゴミネット  第二~第四で未分別生ゴミが広範囲に引き出された痕跡あり。
           生ゴミが入っている袋を外側に配置して忌避液を噴霧。
           午前8時、第三に多数のカラスが集っている。
           近づくと飛び立って電線上に12羽止まり、5羽が頭上を旋回。

  ⑦ 3月4日 午前10時。
   ・ 公園内    カラスは雨の中を元気に飛び回り、数が増えている感じ。
   ・ 役員会    三月中に効果があれば、500ccを購入しての実験継続が承認。

  ⑧ 3月6日 午前5時。
   ・ ゴミネット  ゴミネットを折りたたんで上から噴霧10回×5箇所。
   ・ 表示看板   表面に噴霧5回×5箇所。
   ・ 状態と効果  午前8時、第一から第五までごみ袋上から噴霧。
            午前9時、第二と第三は3月2日よりひどい惨状。
            早朝に噴霧した収集日表示看板上にカラスが止まっている。

  ⑨ 3月9日 午前5時  第一ごみ置き場から第五ごみ置き場。
   ・ ゴミネット  ゴミネットを折りたたんで上から10回噴霧×5箇所。
   ・ 電柱根元   ゴミネット側、地表から1mの高さまで3回噴霧×電柱4本。
   ・ 表示看板   ごみ収集日表示看板の表面に3回噴霧×5箇所。
   ・ 状態と効果  午前7時、第四のごみは道路上まで散乱。
            公園内に7~8羽のカラスがいる。

  ⑩ 3月13日 午前7時  第一ごみ置き場から第五ごみ置き場。
   ・ ゴミネット  五箇所のゴミネット上からごみ袋へ忌避液の残量を噴霧。
   ・ 状態と効果  午前12時、第二の生ゴミが道路上広範囲に散乱。
            第三も荒らされた痕跡あり。

 3) 実験による問題点
  ・ 実験期間内のごみ排出量は、実験前とそれほど大きな変化は認められない。
  ・ 実験前後でカラスの数にも変化は見られなかった。
  ① 実験で問題が残る点
   ・ 積雪で忌避液を地表(ごみを置く範囲全体)へ噴霧することはできなかった。
   ・ 電柱や看板への噴霧量は少ないと思われる(メーカーは塗布を推奨)。
   ・ 一箇所に噴霧する量が不明で、ゴミ袋の量から噴霧量が少なすぎたかも。
   ・ 噴霧したゴミ袋の上にゴミ袋が捨てられ、カラスが認識可能か不明。
   ・ 噴霧する姿を見てもカラスが集まるのはなぜだろう。
  ② 噴霧する量について
    メーカーのWebページ説明にある一箇所三回程度では全体に吹き付け不可能。
   ・ まずはこの1本(50cc)をその場所に3回位に分けて吹き付けてください。
   ・ まずはこの1本(50cc)を3回位に分けて吹き付けてください。
  ③ 忌避液の効果について
    メーカーのWebページに次の説明がある。
   ・ カラスが忌避液を認識すると、その場所に近づかなくなる可能性がある。
   ・ 定期的に吹き付けることで万全な対策ができます。(※費用が問題)
   ・ 持続的に塗布、噴霧することで効果を発揮します。(※費用が問題)
   ・ ラベル「カラスの嫌いな成分混入で近寄らなくなる可能性があります」。
 (4) 今後の予定
  ① 再実験時は、最低でも業務用の500ccが必要で、雪が解けてからのほうが良い。
  ② 地表が乾いた状態の時に一箇所のごみ置き場地表に30cc程度を1度噴霧する。
  ③ 電柱と看板は、表面が濡れる程度に1度噴霧する。
  ④ 生ごみ回収日の午前6時頃、一箇所のごみ袋上に15cc程度を噴霧する。
   また、生ごみ回収日は連続して4回繰り返す。
  ⑤ 竹輪の穴内部へ忌避剤を噴霧しカラスに食べさせる実験は中止する。
   放置した竹輪をノラネコや飼い犬が食べることにより食害の懸念も捨てきれない。

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12 ビルの対策

メーカーのWebページに「2006年11月、札幌駅前に新しくできた「読売北海道ビル」新社屋の屋上でカラス対策として採用されました。」と使用場所が掲載されていました屋上のすりの工夫4月6日の午後、事情を説明して新社屋17階の屋上を見せていただくと膝が震えます。

屋上通路の手すりには20cm程の細い支柱が固定されていました。一方の支柱にテングス状の紐を結び、他の支柱につけられたスプリングに紐の端が結ばれています。紐を押すとスプリングが伸びて緩み、スプリングの力で紐は元へ戻ろうとします。カラスは体が押される感じが嫌いらしく、手すりに止まることはなくなったそうです。カラス忌避液を塗布した箇所

ビルの縁である笠木は金属板で覆われ、カラスは爪を立てて体を固定することができません。ビルの管理会社が屋上の糞公害対策でカラス忌避剤を塗布したそうですが、案内してくださった新聞社の職員は「雨で流れ落ちて効果は分からない」との説明でした。

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13 忌避液を継続使用

2007年度の町内会定期総会で、3月初めから「カラス忌避液」を使った実験結果を報告しました。ブランコの支柱にとまっているカラス総会参加者より「忌避液を使う前のカラスと現在いるカラスは違うようだ。前のカラスは集団で行動していたが最近のカラスは単独行動が多い」とのお話が寄せられました。

町内の児童公園に集うカラスは23羽を越えるまでに増えています。カラスを正確に見分けることは不可能ですが事実とすればカラス忌避液は効果があったことになります。忌避液500cc入ったカラス忌避液容器を500ccに増量して、営巣時期を迎える4~5月も実験を継続することが承認されました。

カラスが山の古巣へ帰るのは歓迎ですが、四六時中持ち込まれるごみ袋は町内の美観を損ね、ごみを出す人々の行儀の悪さが大きな問題でした。ネットを広げてごみを覆わないので、分別されていないペットボトルやトレーなどは風に飛ばされて町内を駆け巡っています。

道路には食べ残しの食品があちこちに散乱し、気温上昇に伴う腐敗で臭気が漂うとハエが集まり病原菌の温床となっていきます。他の町内会は組み立て式のごみステーションを利用して、朝の組み立てやごみ回収後の清掃と片付けは当番が交替で行っていました。

町内のごみ置き場を清掃しているのは昔からほぼ同じ人です。二ヶ所の分譲マンションに29世帯が住んでいても、清掃してくださるのはお二人だけです。5m×5mのネットでごみをおおう方法を考え直し、ごみを一箇所にまとめて散乱を防止する対策が必要とされ、新年度のメイン事業として「ごみとカラス対策」が提案されました。

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14 ごみステーション構想

東芝半導体サービス&サポート株式会社の技術者で、退職後は横浜市にお住まいのメル友からの紹介として、インターネットで検索した「カラスいけいけ」の導入が総務部長より提案されました。箱型の辺はアルミパイプ製で周囲にネットを張り、ふたがついた折畳み式ネットサークルです。

横浜市にある町内会での成功例や秋田県の連合町内会一括購入、札幌少年鑑別所の購入実績などがあり、苦情が寄せられていないことで実験的に一台購入することにしました。本来は使用後に折り畳みますが、常時組み立てたままで使用します。強度に問題が無く効果が期待できるようなら、五ヶ所のごみ置き場へ導入すべく15万円の予算が承認されました。

平行して町内全世帯へ札幌市発行の印刷中のプリンタ「ごみの分け方・出し方」のパンフレットを配付します。町内会へ加入しない賃貸マンションの持ち主と管理会社宛に「ごみ対策の要請文」を配付し、「カラスいけいけ」の設置が終わってから賃貸マンション居住者へ協力依頼文の配付も合せて承認されました。札幌市発行の「ごみの分け方出し方」パンフレットを清掃事務所に240枚お願いし、分別収集する曜日はプリンターで印刷しました。

第二ごみ置き場は、六階建てマンション建築主と町内会の話し合いで雨水枡の上が指定されていました。凍上で道路のアスフアルトが盛り上がり、雨水や雪解け水は雨水枡へ流れ込まずに水溜りをつくり始めていたので、雨水枡の改修を要請しました。

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15 ごみステーション

4月上旬に届いた「カラスいけいけ」を、第二ごみ置き場に設置してごみステーションとしました。盗難防止も考慮して底に重いコンパネを八番線で縛りつけ、コンパネにはわずかに残っていたカラス忌避液を浸み込ませました。撮影用のカメラを持って戻ると、すでにごみが捨てられていました。設置したカラスいけいけ

翌日の朝、集まったカラスがごみをつつこうとしてもくちばしが届きません。ふたの上にとまり、周囲を右往左往し、小首をかしげている様は滑稽でした。

カラス忌避液を公園で使うことについて、メーカーから財団法人北海道環境科学技術センターの重金属分析結果をお知らせいただきました。分析結果を水道水水質基準値と比較すると、一時的に誤飲しても健康に問題が生じない数値であり、カラス忌避液を噴霧した滑り台に触れた指を口へ入れても、なんら問題のないことがわかりました。

役員会で「カラスいけいけ」の四台追加と、500cc入り「カラス忌避液」の発注が承認されました。第一、第三~第五に設置した四ヶ所のごみステーションに忌避液を噴霧し、公園照明の子どもが届かない支柱の上部にも忌避液を噴霧しました。

町内でカラスが増えるのを抑制するため、公園の樹木にできたカラスの巣は卵が孵化する前に毎年撤去することにしました。親鳥が近くにいない時をねらって樹木へ上ると、針金で作られた衣紋掛けを巧みに折り曲げて枝を組み合わせた頑丈なつくりです。多い時は公園の周囲に三ヶ所も作られていました。

ナナカマドのカラスの巣 ヒバのカラスの巣 イチイのカラスの巣

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16 カラスは去った

公園の東側入口の落葉松にカラスの古巣がありました。撤去する時期が早すぎると他の樹木に再び巣を作り始めるので静観していました。このようすを「カラス忌避液」の開発者にお話しすると視察に見えられ、抱卵が近い巣のそばにある広域避難場所の標識にカラス忌避液を噴射しました。町内会は費用の面で二の足を踏むタップリの量でした。

翌朝は雨が降りそうな雲行きです。公園側の電線にとまった一羽のカラスが落葉松の巣を眺めていました。電線上から巣を見ているカラス父親のカラスでしょうか、母ガラスは卵を抱えているのでしょうか。昨日巣を撤去していれば、しまったとの思いでカラスをみていました。

カラスはじっと巣を見つめています。あたりを気にするようすもありません。巣の上に動くものは見えません。巣の中から何も出てきません。カラスは巣を見つめています。数分後にカラスは一声上げて飛び去りました。甲高い声でも、野太い声でもなく、喉からしぼり出すようなかすれ声でした。

公園からカラスの姿が消えました。町内の電線やテレビのアンテナにとまる姿を見かけなくなりました。早朝から天気を予想するカラスの声も消えました。建物や車の屋根に落ちている糞は見かけなくなり、マンションの外壁に張り付いた糞は雨で流れ落ちていました。電線の下や道路の白い瘢痕も消えてしまいました。

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17 あふれるごみ

定期総会で賃貸マンション居住者のごみ出しマナーの悪さが問題になりました。役員会では、賃貸マンションの持ち主と管理会社宛の文書はもちろん、賃貸の居移住者へ配付する文書も無駄との意見が多くでました。

なにもせずに苦情をこぼすより、賃貸居住者の一人でも曜日を守ってくれたら、わずか二人でも分別してくれればとの期待を捨て切れません。すべてのごみステーションを整備し終わった翌日、賃貸マンション居住者へ札幌市発行の「ごみの分け方・出し方」のパンフレットを配付しました。

ゴミがあふれているカラスいけいけ甘ったるい願いは踏みにじられ、ごみステーションはごみであふれかえりました。燃やせるごみの収集日にびんやペットボトルが捨てられ、燃やせないごみの収集日に生ごみや雑紙が山のように捨てられていました。

収集日に関係なく、通りかかった人は分別していないごみを捨てて行きました。見たこともない人が車で落ち込んだごみを捨てていきます。分別しないごみは収集されずごみステーションに溜まっていました。

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18 招かざる客

2008年の夏を迎えると、気温の高い日はごみステーション内の冷凍食品や食べ残しの生ごみが腐敗し、あたりに悪臭がただよい始めました。友人が多い人やおしゃれな若者たちは、衣服にごみの臭いが染み付くのを嫌って引っ越して行きました。

賃貸マンションの管理会社宛に、札幌市が決めたルール「ごみの分け方・出し方」を居住者に指導し、きちんと守らせるよう文書で依頼しても暖簾に腕押しです。

賃貸マンションにごみの臭いに無頓着な人々が増え、益々分別されないごみや収集日を守らない生ごみがごみステーションにあふれて道路へ溢れ出しはじめた。

ついに、招かざる客が現れごみステーションの下から引き出されたごみ 電線上から見下ろしているカラスました。町内のようすをつぶさに調べ上げ、ごみステーションの下から生ごみを引き出して試食しました。仲間を集めたら大変なことになります。ごみステーションの下からくちばしを入れても届かないように、出されている生ごみをネットサークルの奥の方へ詰めて置くようにしました。

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19 目隠し

町内会の夏祭り準備で公園へ行くと三羽のカラスが地面の上で話し合っていました。第二ごみ置き場を偵察しているカラスがいます。長雨が上がって今年最高という34.4℃となった日の夕方、公園のあじさいは満開になりました。残りのカラス忌避液を、五箇所のごみステーションと公園周囲の標識や町内の電柱に噴霧して回りました。

第二ごみ置き場のコンパネの床がしだいに湾曲して、中央部分が抜けてもおかしくない状態になってきました。金属製足場を床にしたごみステーション農家を営んでおられた町内会長さんのご親戚が逝去され、鉢物や植木類を好きな方にゆずられると台だけが残り苦慮されています。少々古くても頑丈な金属製足場板を8枚いただいてきました。

ごみステーションの下に敷き詰めると、これまでのような不安定感は解消されました。ごみ袋を地面と接触させないことで湿気をさけ、悪臭の発生を防止して収集される方々の嫌悪感を軽減できると喜びました。

ネットの網目にくちばしを入れているカラスを見かけました。網目から生ごみが透けて下半分を目隠ししたごみステーション見え、網目が大きいのが難点です。発泡スチロール板を裁断してもらい、ごみステーションの前後左右に結束バンドで固定しました。

すると、ある役員から苦情がきました。生ごみが入っているのがわからないので、捨てにきた人を注意できないといいます。材料を購入して作った看板をごみステーションに立て、ごみ収集カレンダーを掲示しました。

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20 飽食時代の終焉

第二ごみステーションは電柱の横にあり、カラスが好む(?)ように電灯線が張られてカラスの糞が落ちているごみステーション 糞の痕跡が多々あるごみステーションいます。早朝になるとカラスが集まり、ごみの引き出し方を検討しているため、ごみステーションの周りは糞だらけになっていました。

ごみを入れるときに糞を踏みそうになり、見た目も非常に汚らしく感じます。ごみステーションの周囲が汚れていると、必然的に使用方法が雑になります。毎朝公園からバケツで水を運び、クレンザーをまいてブラシで清掃しました。二階の窓から見下ろしている役員の姿を見かけたこともありますが、作業に参加することはありません。

ごみステーションの下に隙間から、生ごみの入ったレジ袋をカラスは器用に引き出していました。すべてのごみステーションでくちばしが入る箇所を調べ、ブルーシートを少々大きめに裁断して隙間をすべてふさぎました。

カラスの糞を洗い流したごみステーション ブルーシートで下の隙間をふさいだごみステーション 下半分を完全にふさいだごみステーション

カラスの糞掃除は二か月後に不要となりました。お母さん方が幼児を遊ばせている時間帯に公園を訪れるカラスはいなくなりました。町内のテレビアンテナにとまっている姿も見かけることが少なくなりました。

ごみステーションは、カラスのくちばしが入らない程度の網目の細かいネットとし、底の部分から引き出せないよう内側へ織り込むようにすべきでしょう。しかし、後を引き継ぐ人がいないのが現実です。

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