はげちゃんの世界

人々の役に立とうと夢をいだき、夢を追いかけてきた日々

第71章 変わるマンション管理

2021(令和3)年4月24日13時から札幌市コンベンションセンターで開催された一般社団法人マンション大規模修繕協議会主催のマンション大規模修繕セミナーで、講師の米澤賢治代表理事は「マンションの一生」を熱く語った。

1 日本最古の賃貸マンション

 1-1 軍艦島(端島)の賃貸住居

1810年頃に端島で石炭が発見され、1870年頃には佐賀藩が小規模の採炭を行っていた。1890年に三菱の経営となり本格的に石炭の採掘が開始され、海面下約千m以下の地点にまで及んだ海底炭鉱から採掘される石炭はとても良質だった。

端島は、長崎県長崎港から南西約18kmの海上にあった大きな瀬で、1897(明治30)年から1931(昭和6)年にかけて6回の埋め立てを行い、南北約480m、東西約169m、周囲約1,200m、面積6.5haという大きさの島になった。

1890年から1974年の閉山まで約1,570万トンの石炭を供給し、隣接する高島炭坑とともに燃料や製鉄用原料炭として造船や製鉄・製鋼の分野の面で日本の近代化に大きく貢献した。(写真はながさき旅ネットより転載)


1960年頃の軍艦島の人口はおよそ5千人に及び、島民は炭鉱夫だけでなくその家族や子供がいたので、病院、浄化水槽、小学校や保育園などの施設も整えられた。幼稚園は軍艦島で一番大きな建物の屋上にあり、公共浴場や映画館・遊郭などもあった。

公共浴場は無料で開放され、炭鉱夫は仕事終わりから家に帰る前にそこで汗や汚れを洗い落とすことができた。公娼との売春が認められていた時代で、吉原のように塀で囲われているわけではないが七か所の「遊郭」もあり、朝鮮人専用の遊郭もあった。

島の周囲がコンクリートの岸壁で覆われ、高層鉄筋アパートが建ち並ぶその外観が軍艦に似ていることから「軍艦島」とも呼ばれている。その「廃墟の島」が現在でも人々の好奇心を掻き立てるのは、「島全体が繁栄当時のまま残っている」ことである。


廃墟でありつつも、テレビを始めとする家電や生活の名残がそのまま放置され、昭和の生活を実感することができる。当時のままの姿で無人島になった端島は2001(平成13)年、元三菱鉱業から正式に高島町へ譲渡され長崎市の所有となった。

2009(平成21)年4月より、島への上陸が許可され観光・見学が可能になった。2015(平成27)年「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の構成資産の一つとして世界文化遺産に登録された。

国のエネルギー政策転換に伴い、主要エネルギーが石油へと移行して1974(昭和49)年1月に端島炭坑は閉山、すべての居住者が島を去り無人島となった。30年以上もの時を経て見学施設が整備され、2009(平成21)年に上陸見学が可能となった。

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軍艦島上陸クルーズは3時間10分のツアーで、乗船料は大人3,600円、小人1,800円。別途、見学施設使用料大人310円小人150円が必要となる。上陸ツアーで見学できるのは、整備された歩道と船上からの景観のみで建物に近付くことはできない。

見どころは30号棟。これこそ1916(大正5)年に完成した日本で最初のRC造集合住宅である。階数は地下1階、地上7階。東京、大阪よりも早く九州の離島にいきなりこのような建物が出現したこと自体が、軍艦島の重要性を物語っている。

日本最古の鉄筋コンクリート造りのアパート30号棟は、ロの字型で内部に吹き抜けの空間があり空間の周辺を回るように階段が設置されている。また、ロースハウスは徹底的に装飾が排除された外観から「眉のないビル」と呼ばれ批判を受けた。

65号棟は、地下1階、地上9階一部10階建て、戸数388戸という島内最大の建物で、全体的にはコの字型をしている。建設時期はコの字の3辺ごとに33期に分かれ第1期部分の完成は資材不足の戦争末期1945(昭和20)年だった。

居住棟に囲まれた中庭には公園が、10階と屋上には保育園が設けられ、規模・質ともに当時としては高い建物だった。残念ながら65号棟も船上からコの字の形はあまり見えない。なお、棟番号は現役時代に三菱が付けたもので、建設順とは無関係である。

日本最古の鉄筋コンクリート造りのアパート「30号棟」は、完全に無装飾の集合住宅として実現したことも建築史上特筆すべき出来事である。竣工より105年、無人化して47年が経過した姿に畏敬の念を覚える。(ながさき旅ネットより転載)


日本最古の鉄筋コンクリート造りのアパート「30号棟」は、竣工より105年、無人化して建物管理の手が入らない状態で47年が経過した。台風や荒波に襲われながらも現存している姿に、きちんと管理すれば100年以上の寿命があることを物語っている

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2 同潤会上野下アパート

1923年(大正12)年の関東大震災で、東京・横浜の下町では木造住宅が密集していたことから大きな被害を受けた。震災前から不燃造の集合住宅の必要性が認識され、東京などで鉄筋ブロック造の集合住宅を造り始めていたが計画的な供給が課題になった。

内務省は国内外から寄せられた義捐金の中から1千万円の支出を決定し、震災の翌年5月に財団法人同潤会が震災被害の救済機関として設立され、東京や横浜など16ヵ所に災害復興住宅を建設した。

同潤会はスラム対策の住宅建設も行いながら、都市中間層向けの良質な住宅供給を行った。耐火耐震の鉄筋コンクリート造りで、各戸に水道・ガス・電気・水洗便所・流し台・調理台・ダストシュートがあり、浴場、娯楽室、食堂、遊園地も併設した。

同潤会最初の鉄筋コンクリート造集合住宅の中之郷アパート建設は1925年に始まった。代官山アパートは全36棟337室である。同潤会アパートに住む給与生活者は、かなりエリートであったが申し込みが殺到して常時満室だった。

震災の教訓から「壊れにくい、燃えにくい住宅」として鉄筋コンクリート造が採用され娯楽室や食堂、水洗トイレ、ダストシュート、自家水道施設、児童公園、公衆浴場等が完備されていた当時の最先端住宅だった。

表参道ヒルズにあった「青山アパートメント」や東日暮里にあった「三ノ輪アパートメント」、新宿区にあった「江戸川アパートメント」など16のアパートが建設されたが、上野下アパート以外は老朽化のためこれまでに全て取り壊されている。

日本最古のマンション「同潤会上野下アパート」は、ついに2013(平成25)年6月17日から解体作業が開始された。下の写真は、東京都台東区に存在した同潤会上野下アパートの遺影である。(2013年1月17日に撮影された時事通信社JIJI.COMより転載)

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同潤会上野下アパートは、東京メトロ銀座線稲荷町駅徒歩1分、JR上野駅まで歩いても8分。容積率は600%の地域だが、200%しか使っていなかった。大規模修繕で生まれ変わるか、建物を解体して建て替えるか、土地を処分するか選択は三つである。

新しいスタートに際して理事長が組合員らと「全てを公開して透明性を堅持し公正に事を進める」基本方針を確認した。先輩格の同潤会関係者や、学識者、建築家などに相談、コンサルタントは公募とし、プランを提出した8社の中からUG都市建築を選んだ。

複雑だった登記問題については測量し直し、現状の土地評価額などを反映させながら不動産鑑定士や弁護士などに判定してもらい、新たな評価基準として慎重に住民に提案していった。公正な第三者の判定を得たことで事態が好転した。

老朽化に伴う建物の劣化の著しさと、耐震性などの建物機能の問題で住人にも建て替え希望者が多かった。立地条件が良い場所が多く、高層化することにより個人負担なしで建て替えによるメリットが大きいと考えられた。

事業協力者は三菱地所レジデンスに決まり、戸別訪問せずとも全員が集会室に集まり、3か月程度かかるヒアリングの予定が1か月半で済んだ。制震構造、防災設備など、安心できる設備で、ハイスペックなマンションへの建て替えが決定した。

2015年夏に鉄筋コンクリート造、建築面積約900平方m、建蔽率78.4%、容積率約599,8%、地上14階、地下1階、EV2基、バルコニー面積は4,90平方メートル、店舗区画4を含む総戸数132戸、「ザ・パークハウス上野」が誕生した。

販売価格は4,790万円~7,690万円である。管理費19,910円、修繕積立金11,510円、駐車場26台、駐車料月額:27,000~30,000円である。同潤会育ちの幼なじみからも、新マンションに戻りたいと連絡が入っているそうだ。


同潤会上野下アパートは立地条件が良く容積率は600%で200%使用で、市街地再開発事業として助成金制度を利用できたこともあり、高層化することにより個人負担なしで建て替えることができた。このような好条件を備えているマンションは少ない

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3 札幌の建て替えマンション

1972(昭和47)年冬季札幌オリンピックは、2月3日から13日までアジアで初めて開催された。スキージャンプ70m級で笠谷幸生が1位、金野昭次が2位、青地清二が3位と、日本人が冬季オリンピックで初めて表彰台を独占した。

フィギュアスケートの氷上で、尻もちをつきながらも銅メダルをとったアメリカのジャネット・リンが「札幌の恋人」「銀盤の妖精」と呼ばれ、日本中で人気になった。大会のテーマ曲となったのは、トワ・エ・モワほかが歌った「虹と雪のバラード」だった。

選手・役員などの宿泊施設は日本住宅公団が建設する800戸。プレスハウスも800戸(外国人向け450戸、日本人向け350戸)で、外国人向けが日本住宅公団、日本人向けは道か市のいずれかが建設する公営住宅を充てた。

選手などの宿舎となる住宅は日本住宅公団が建設主体となった。警察学校跡に建てるオリンピック村の男子選手宿舎を5つの工区に分割し、住棟番号横にはオリンピックのロゴマーク「雪の結晶」がデザインされて表示された。

冬季オリンピック閉幕後に、「表彰台を独占した日の丸飛行隊や銀盤の妖精と呼ばれたフィギュアスケートのジャネット・リンなど、数々のスター選手が生活していたお部屋・団地に住めるチャンスです!」と、オリンピック村の選手宿舎が売り出された。


 札幌市営地下鉄南北線の真駒内駅から徒歩7分にある旧オリンピック選手村の地上4階建てで総戸数40戸の「泉町マンションC・D棟」は、突貫工事で雑な造りのせいもあり築後40年で建物全般にわたり著しく老朽化が進行して建て替えることが決定した

2005年4月に三井不動産レジデンシャルを事業協力者に選定し、区分所有者全員の合意のもとで11月に解体工事に着手、2007年3月建設工事に着手した。同社グループにとって札幌市内における5物件目のマンション建て替え事業である。

2008年3月に竣工した「パークホームズ真駒内泉町」は、新耐震基準で鉄筋コンクリート造11階建ての総戸数70戸である。2LDK72.32平方メートル~4LDK119.41平方メートル(平均90平方メートル)の全37タイプで、納戸やウォークインクローゼットなど収納スペースも充実。宅配ボックスもある。

IHクッキングヒーターや床暖房などのオール電化仕様で、オートロック、モニターと録画機能付きインターフォン、24時間セキュリティ、テンプルキー、防犯カメラ。駐車場は自走式平面。管理費は1㎡当り112円、修繕積立金1㎡当り99円である。

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2 建て替えのハードル

 2-1 建て替えのネック

マンションの建て替え決議は区所有者および議決権の4分の5以上である。国土交通省の2019年資料によると、全国のマンション数は約12万棟で、建て替えられた事例はたった348件である。ネックになっているのは3点ある

① 費用負担の問題  余剰容積率を活用して分譲数を増やし費用負担を減らす。

② 仮住まいの問題  費用負担、精神的負担。

③ 時間がかかる   検討から完了するまでかなりの年数がかかる。

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 2-2 区分所有者不明

敷地売却は原則所有者100%の同意が必要(耐震不足なら5分の4以上)であり、建物の解体費用も必要となる。解体費用の例を挙げると、48戸のマンションの場合は1戸当たり135万円となる

建て替えと敷地売却問題は、第一に区分所有者の特定が可能かどうかである。

① 新築から長い年月が経過しその間に相続が発生し、もめて相続人が未解決。

② 所有している外国人が本国に戻り、連絡先が不明。

③ 日本人でも海外に移住し、連絡先不明である。

区分所有者の特定ができずに放置していると、売却できずに住んでいなくても固定資産税、管理費・修繕積立金はかかるという負の遺産になることもある。大規模修繕で寿命を延ばし、資産価値を下げずに高値で売却できればいいのだが。

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3 高齢者向けの施設

人生100年時代となり、高齢者が安心して暮らせる住まいが多様化し、特別養護老人ホーム、有料老人ホーム、高齢者向け住宅の三種類ある。いずれも介護サービスは別契約で、現在居住しているマンションが高く売れれば老後の生活レベルが向上する

 3-1 特別養護老人ホーム

特別養護老人ホーム(特養)の運営母体は地方公共団体や社会福祉法人で、重度の介護を必要とする方が、少ない費用負担で長期入居できる公的な介護施設である。入居対象者は要介護者3以上の方で、居室タイプは原則個室である相部屋が多い。

 3-2 有料老人ホーム

介護付き有料老人ホームの運営母体は民間企業で、食事、清掃、身体介護、リハビリなど、施設スタッフによる幅広いサービスが受けられる施設である。入居対象者は自立・要支援者・要介護者で、居室タイプは原則個室である。スタッフの虐待があったことも。

 3-3 高齢者向け住宅

高齢者向け住宅の運営母体は民間企業で、見守り、生活相談サービスがついた高齢者向け住宅である。入居対象者は自立・要支援者・要介護者で居室タイプは原則個室である。

サービス付き高齢者向け住宅は、賃貸契約のため初期費用が少なく住み替えがしやすい。家賃月額は10~30万円で敷金は家賃の2~3か月分。高齢者が住みやすい施設で、安否確認と生活相談に対応している。

シニア分譲住宅は初期費用が高額で、物件のリフォームや相続・売却もできる。購入費用は1,500万円から数億円。月額10~30万円が必要となる。

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4 マンション管理の対策

 4-1 東京都が先行

マンションは「きちんと手入して、長く大切に使う」社会へ変わりつつある。従来は、住戸の所有者等が維持管理やリフォームをしない → 市場において良質性を評価できる仕組みが整備されていない → 個々の住宅の良質性が評価されないという悪循環であった。

これからは、住戸の所有者等が維持管理やリフォームをする → 市場において良質性を評価できる仕組みが整備されていない市場において良質性を評価できる仕組みが整備される → 個々の住宅の良質性が評価されるという好循環を目指す。

住宅の質の維持・向上が適性に評価されるように、住宅ストックの維持向上・評価・流通・金融等の一体的な仕組みの開発が進められている。国・地方公共団体・民間も後押し管理組合運営に行政が関わり、マンションの管理不全を予防し適正管理を促進する。

東京都は、平成2年4月1日からマンションの管理状況届出制度を導入した。対象は、1982年12月31日以前に新築されたマンションのうち、住宅が6戸以上のもので、分譲でも任意で届け出が可能となっている。

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 4-2 マンション管理適正化診断

これまで「マンションは管理を買え」と言われながらも、マンションの管理状況について基準となる明確な指標もなく評価が難しかった。近年では、修繕もままならずスラム化した老朽化マンションも問題になっている。

空き家となり崩落の危険もあるようなマンションは、損壊による周辺住民への危険や治安の悪化にもつながる。マンションの老朽化を抑制し、周辺の危害などを防止するための維持管理適正化に向けた取り組みの強化が喫緊の課題である。

2022年4月から国土交通省は住宅ストック・向上促進事業を開始予定し、マンション管理適正評価制度がスタートさせる。改正マンション管理適正化法は、マンションの老朽化を抑制し、周辺の危害などを防止するための維持管理適正化を目指している

これまで、一般社団法人日本マンション管理士会連合会(日管連)は、所定の診断業務研修プログラムを修了した診断マンション管理士が「マンション管理適正化診断サービス」を実施して、診断結果に応じて「S」「A」「B」の3等級の評価を付していた。

管理適正化診断は、管理運営状況、修繕計画状況、法定点検・修繕工事のほか、防犯対策、防火管理、保険事故履歴など、マンションの管理状況全般を対象に目視・書類チェック・ヒヤリングを行い、診断結果やアドバイスを記載した診断レポートを提供する。

診断レポートは、管理組合が建物設備や運営等の管理水準の維持・向上を図るための基礎資料として活用できる。また、マンション共用部分診断結果は、日新火災海上保険株式会社のマンション共用部分用火災保険において割引適用制度を利用することができる。

現時点ではマンション管理業協会の定めたマンション管理評価制度の評価項目と、マンション管理適正化法に新たに規定される国による基本方針に基づく管理計画認定制度等の新制度の内容が、どの程度異なることになるかははっきりと分かっていない。

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一般社団法人日本マンション管理士会連合会のマンション管理適正評価制度の評価項目は、「管理体制関係」「組合収支会計」「建築・設備」「耐震診断関係」「生活関連」といった以下の5つのカテゴリーから構成さている。

 〇 管理体制関係(20点)

理事長等の管理者に関する規定や、総会の開催、議事録の保管、規約が標準管理規約に準拠しているかなどである。

 〇 組合収支会計(40点))

一般会計に余剰金はあるか、滞納している住戸は何%程度か(またその滞納期間)、修繕積立金の徴収方式についてなどである。

修繕積立金について満点を取るには、「均等積立方式による徴収」「計画期間の推定工事費を積立金累計額が上回る」「組合の年度収入額が長期修繕計画上の年度収入通りに徴収」といった条件が必要になる。

 〇 建築・設備(20点)

長期修繕計画の有無や期間、見直しの頻度、竣工図書や修繕履歴の保管についてである。修繕履歴の保存に関しては、管理会社の協力が必要になるケースもある。

 〇 耐震診断関係(10点)

耐震診断の実施有無、またはその結果による改修計画の有無などである。

 〇 生活関連(10点)

緊急時の対応、消防訓練の実施有無、防災マニュアルの整備状況などである。

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 ◎ マンション管理適正評価制度の評価結果

前記の評価項目の結果、評価結果は以下の5段階に分かれる。

S・・・特に秀でた管理状態     90~100点

A・・・適切な管理状態である    70~89点

B・・・管理状態に一部の問題あり  50~69点

C・・・管理状態に問題あり     20~49点

D・・・管理不全の恐れがある     0~19点

評価項目を見る限り、業務品質が一定程度保たれているマンション管理会社に管理を委託していれば、A評価までは問題なく取れる可能性が高いかと思われる。

「S評価」となったマンションについては、日管連より管理組合へ管理運営状況が優良であることを証する「S評価ステッカー」を発行している。

良い評価がでた場合は、

・ マンション総合保険や区分所有者が支払う火災保険料などの割引が期待できる。

・ 再販や中古売買などの転売の際に高値で売れる可能性であるリセールバリューが期
  待できる。

・ 自宅の担保価値に応じた融資制度で修繕積立金の先払いを行う制度であるリバース
  モーゲージを利用する際に高評価が期待できる。

・ 買主が確認できるだけでなく、管理組合も資産価値をアピールできる。

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5 資産価値の評価

資産価値の評価は資金の融資や資産の売買時に利用され、リセールバリューとリセールバリューがある

 〇 リセールバリューとは

リセールバリューは、10~12年前に分譲されたマンションが、新築時の何%の価格で取引されているかを示す指標である。

リセールバリュー = 中古マンションの流通価格 ÷ その物件の新築時の分譲価格

リセールバリュー数値が大きいほど資産価値を維持していることになる。

 〇 リセールバリューとは

持ち家に継続して住み続けながら、自宅を担保に生活資金を借入し、借入人が死亡したときに自宅の売却で返済する仕組みである。

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6 マンションの維持管理

 6-1 基本的な事項

資産価値を維持し、建物の寿命を延ばすのが大規模修繕である。このためには、マンションの維持管理、合意形成ができる環境、修繕計画を立てて資金確保が必要である。

マンションは劣化していく。計画的な点検項目として、建物目視・消防設備点検・昇降機や立体駐車場の保守点検・電気設備点検・ポンプ類や設備機器類の点検・給排水衛生設備点検・排水管清掃・法定点検業務・清掃業務・鍵交換除菌消臭業務等があげられる。

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 6-2 合意形成へ向けて

 〇 普通決議(過半数の賛成)

・ 一般的な大規模修繕

・ 修繕積立金の値上げ

 〇 特別決議(4分の3以上の賛成)

・ 管理規約の変更

・ 機械式駐車場を平置きへ変更する

・ 集会室を廃止して倉庫にする(用途の変更)

・ 増築して集会室を作る(形状の変更)

 〇 建て替え決議(5分の4以上の賛成)

 〇 敷地売却決議(原則全員の賛成)

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7 資金計画

 7-1 基本的な事項

鉄筋コンクリート造の建物の寿命は数種類考えられている。

・ 国税庁が定める税法上の減価償却資産の耐用年数から、法定耐用年数は47年であ
  る。

・ 国土交通省の期待耐用年数の導出および外装と設備の更新による価値向上から、物
  理的耐用年数は117年である。

・ 構造体としての耐用年数は120年で、適切なメンテナンスで150年に伸びる

鉄筋コンクリートにも質があり、住宅性能表示制度で劣化対策等級(建物の耐久性)はコンクリートの厚さ、強度確保(水セメント比)、保護外装材の選択などによって評価される。

・ 等級3  75~90年の耐久レベル

・ 等級2  50~60年の耐久レベル

・ 等級1  25~30年の建築基準法を満たすレベル

日常の清掃・点検・補修が行われることと、通常の自然条件が継続することを前提としている。

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 7-2 第一回目の大規模修繕

分譲時は修繕積立基金が徴収され、修繕積立金が安く設定されている。しかも、工事項目の不足や工事仕様と工事単価が不明瞭である。同じ規模や形状のマンションの修繕内容を参考にするしかないだろう。2回目の大規模修繕で資金が不足する管理組合が多い。

一回目の大規模修繕の際に、長期的な視点に立って長期修繕計画の見直しを行う。計画通りではなく、建物の状態や予算で実施を判断するのが得策である。第一回目に起こりうるのは新築時の施工不良の発見である

鉄筋のコンクリート被り厚不足や外壁タイルの広範囲な浮き、構造スリットの設置不良などである。分譲会社や施工会社との折衝で修繕費を負担してもらえるケースもある。建物の経年劣化を観察しながら新築当時の状態に戻す。

第一回目の修繕内容は、屋上や屋根の防水、コンクリート躯体のひび割れと欠損補修、外壁と上裏等の塗装、タイルのひび割れと浮き補修、バルコニー修繕、ルーフバルコニー修繕、廊下や階段修繕、鉄部塗装、その他要望事項など。

新築時の仕様はローコスト重視で耐用年数が様々で、新築時の劣化原因を取り除くと2回目の修繕費用が抑えられる。第一回目の大規模修繕で、軽度の劣化は延期を検討しアンケート調査で生活不便を確認する。

第三回目の大規模修繕にはかなりのお金がかかる。マンション分譲時は30~35歳だとすると、築36年目の第三回大規模修繕時は66~71歳になっている。収入は減るのに支出は増えるため、先を見通してギャップを埋めなければならない。

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 7-3 第二回目の大規模修繕

二回目の大規模修繕時には、第一回の修繕に加えて次の修繕を検討する。第一回目で延期した項目を含め、毎年建物点検を実施して中間時に実施するケースもある。区分所有者も年齢を重ねる、それを考慮して改良工事を実施する。

外部金物類(換気フード・ガラリ・郵便受け・室名札・物干金物・自転車置き場・立体駐車場等)の修繕・取り換え。ライフスタイルに合わせた改修(エントランス扉の自動化、階段・廊下手すり、段差を解消してスロープ、宅配ボックスの設置等)

第二回目の大規模修繕時かそれ以降に給排水設備の改修が必要になる。給排水設備は築20~30年ころが一般的な時期である。給排水設備の改修(更新・厚生、専有部分一体工事も)、給水方式の変更(受水槽方式から直結増圧方式)、機械式駐車場取り換え。

自動火災報知機設備と消火設備取り換え、ガス管取り換え、オートロック取り換え、エレベーター改修(取替・改修)、集会場・エントランスのリホーム、エアコン・換気扇取替など。

スケールメリットを出すために2回目と3回目の大規模修繕と一緒に実施する場合もある。このため、長期修繕計画に含まれていないこともある。

マンション内付帯設備も後々重荷になる。大型マンションにあるプール・フィットネスジム、大浴場など。設備機器の陳腐化・劣化に伴う更新費用の算出も。また、植栽管理も見直し、専門業者による剪定や間引き、植え替えなど。成長度合いによって変化する。

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 7-4 第三回目の大規模修繕

二回目の大規模修繕とは異なり、第三回目の大規模修繕はコンクリート躯体を除く部材が寿命に達し取り換え時期になっている。屋上防水(劣化状況により前全面剥離も)、外壁塗装(劣化状況により全面剥離も)にかなりの費用が必要となる。

外壁タイル(部位によっては広範囲の張替えも)、鉄部・金物類(部材毎更新も)、設備関係(旧排水管・給水方式・電機幹線)、グレードアップ工事(玄関ドア・廊下・バルコニー、手すり・窓サッシの取替)。

修繕周期を延ばす選択肢もあるが、単に時期を延ばせばよいというものではない。適切な時期の行わないと工事費が高くなることもある。一般社団法人マンション大規模修繕協議会は、修繕周期15年システムを推奨している。

協議会認定技術者による工事検査で、施工計画書、検査記録、工事写真、チェックリストなどの書類確認と、着工前研修時に施工計画書で決められた材料・工法・仕様で適切に行われ、工程検査が各部位ごとに三段階で実施しているか等について検査・確認をする。

これらの実績を踏まえ、瑕疵保険も保証期間15年になりつつある。国土交通省承認の15年保障商品の商品化もまもなくである。最近では最低18年に1回で大規模修繕が済むように、新築分譲時から高耐久部材を採用し始めている。

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8 標準管理規約改正案

令和3年4月14日に国土交通省は、管理組合におけるITを活用した総会・理事会のルールを明確化するため「マンション標準管理規約」の改正(案)に関するパブリックコメント(意見公募)を開始した

昨年6月に公布された「マンションの管理の適正化の推進に関する法律及びマンションの建替え等の円滑化に関する法律の一部を改正する法律」及び新型コロナウィルス感染症の感染拡大等の社会情勢の変化を踏まえる必要がある。

このため、国土交通省で令和2年7月にマンション管理の新制度の施行に関する検討会を設置して検討を進めてきたと同検討会における議論を踏まえて、「マンション標準管理規約」の改正(案)をとりまとめました。改正の概要は次のとおりである。

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ITを活用した総会・理事会について、置き配を認める際のルールの定め方について配を認める際のルールの定め方について、専有部分配管の工事を行う際の修繕積立金からの工事費の拠出について必要な規定を整備する

「マンション標準管理規約(団地型)」の改正(案)と「マンション標準管理規約(複合用途型)」の改正(案)がある。パブリックコメントの募集期間は、令和3年4月14日から令和3年5月20日まで。ここでは標準管理規約(単棟型)改正案概要を紹介する。

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  8-1-1 ITを活用した総会・理事会

ITを活用した総会」等の会議の実施が可能なことを明確化し、これに合わせて留意事項等を記載

① 「ITを活用した総会」等の会議を実施するために用いる「WEB会議システム
  等」の定義を定義規定に追加(第2条)

② 理事長による事務報告が「ITを活用した総会」等でも可能なことを記載(第38
  条関係コメント)

③ 「IT を活用した総会」等の会議を実施するにあたっては、WEB会議システム
  等にアクセスするためのURL を開催方法として通知することが考えられることを
  記載(第43条及び同条関係コメント(総会)・第52条関係コメント(理事会)

④ IT を活用した議決権の行使は、総会や理事会の会場において議決権を行使する
  場合と同様に取り扱うことを記載(第46条関係コメント(総会)・第53条関係コ
  メント(理事会)

⑤ 「IT を活用した総会」等の会議の実施が可能であること及び定足数を算出する
  際のWEB会議システム等を用いて出席した者の取り扱い等について記載(第47条
  及び同条関係コメント(総会)・第 53 53条及び同条関係コメント(理事会)

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  8-1-2 感染症の感染拡大対応

① 感染症の感染拡大のおそれが高いと認められた場合における共用施設の使用停止等
  を使用細則で定めることが可能であることを記載(第18条関係コメント)

② 感染症の感染拡大の防止等への対応として、「ITを活用した総会」を用いて会議
  を開催することも考えられるが、やむを得ない場合においては、総会の延期が可能で
  あることを記載(第42条関係コメント)

  8-1-3 置き配

置き配を認める際のルールを使用細則で定めることが考えられることを記載(第18条関係コメント)

  8-1--4 専有部分配管

共用部分と専有部分の配管を一体的に工事する場合に、修繕積立金から工事費を拠出するときの取扱いを記載(第21 条関係コメント)

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  8-1--5 管理計画認定及び要除却認定の申請

総会の議決事項として、改正適正化法第5条の3第1項に基づく管理計画の認定の申請及びマンションの建替え等の円滑化に関する法律(平成14年法律第78号。以下「円滑化法」という。)第102条第1項に基づく要除却認定の申請を追加し、これに合わせて規定順を整理(第48条)

  8-1-8-6 その他所要の改正

改元に伴う記載の適正化、書面・押印主義の見直しや近年の最高裁判決等に伴う改正等

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謝辞:ながさき旅ネットより写真を転載させていただきました。