1 管理からの引退原因
1-1 ご近所の苦悩
町内にお住まいを建てられた方々は1973年からT字路の突き当りの市有地に除雪した雪を捨てていました 。右下の教会跡に1992年の6月に6階建ての分譲マンションが建ちました。
6階建て分譲マンションは、駐車場の雪を右下の生活道路を越えてレンタカー会社の敷地の方へ押し付け、量が多くなるとダンプカーで排雪していました。
2008年に6月、レンタカー会社跡の敷地に高層の分譲マンションが建ち、右下の生活道路に面して駐車棟が建ちました。高層マンションの駐車棟側へ雪を押し付けることができなくなり、阪神・淡路大震災の復旧工事でダンプカーの手配が難しくなりました。
2008年12月に6階建てのマンション管理組合は、駐車場の12・13・14番の駐車位置を雪置き場に指定しました。一時的に置いた雪の量が多くなったころ、除雪車で右下のT字路からサイクリングロード側へ押し付けてもらうことにしました。
マンションが契約した除雪業者は駐車場の12・13・14番の積雪を、ご近所の方々が利用されている雪捨て場へ除雪した雪を押し付けると作業効率が良いと気付いてしまったのです。
ご近所が利用しているT字路から突き当りの市有地に雪を押し付けると、雪は壁のように積みあがります。高齢者はママサンダンプを持ち上げることはできず、壁の前へ下して壁の上へ雪かきで投げ上げる姿を見ると申し訳なく思います。
降雪量が増えると雪の壁は益々高くなり、ご近所の方々は1973年から使用していた雪捨て場を利用できなくなり、10メートル以上離れた所まで雪を捨てに行かざるを得なくなりました。
除雪業者へT字路の中央部分を避け、左右に雪を積み上げるよう依頼しても徹底できません。その作業を見ていて、雪山の一部を崩してママサンダンプが通れるようにすればと思いつき、T字路の右側から遊歩道の高架下へ向かって幅1メートルの道を開けました。
駐車場や道路を除雪した雪は硬く締まって中々崩れず、力を入れ過ぎると雪かきが壊れます。靴で雪の塊を蹴飛ばして砕きながら前へ進んでいると、マンションの玄関を出てこの様子を見た岡山理事はご苦労様ですと一言残して散歩に出かけました。
これだけの広さがあればママサンダンプに載せた雪を捨てに行くことができると、ご近所の方々が雪を捨てに行く姿を見てホッとしましたが、2013年12月頃になると腰が病みだして無理が利かなくなり、ご近所の方へ通路を開ける除雪の断念を伝えました。
ご近所の方々は自宅駐車場の雪を生活道路際へ押し出して積み上げ、マンショのン駐車場を除排雪している業者に運んでもらえないか相談しました。それぞれの駐車場面積を調べた業者は、雪の量を積算して1軒当たり1シ-ズンの除排雪料を見積もりました。
そして、マンション駐車場12・13・14番の雪置き場に御近所の雪を置かせてもらうと、生活道路の利用者の邪魔にならず車の通行にも支障が少なく、排雪にも便利なので理事長に相談してみたらいかがですかと勧められたそうです。
マンション住人が利用しているごみステーション前を除雪していた早朝、「除雪業者に勧められたんだけど、マンション駐車場の雪置き場に近所の雪を置かせてもらえないだろうか。除排雪費用は私たちも支払うことになっているので」と岩手氏に相談されました。
「わかりました。理事会で検討してみます」と別れ、直近の理事会にご近所の窮状を説明した。「生活道路のT字路へ駐車場の雪を押し付けると、雪が壁のようになりご近所四軒の方々は雪捨て場が無くなり苦慮されています。
ご近所の雪捨て場だった場所を私たちが独占使用しているのが現状です。除雪業者へ除排雪料を払うので、駐車場の雪置き場へ雪を置かせてもらえないか相談されました」。「除雪した雪を捨てられなければ困ります。費用負担ですからいいんでないですか」。
毎年冬季シーズンが始まる前に理事会報で、ご近所の方々の窮状と雪置き場使用に至った経緯を区分所有者と賃貸住人へお知らせした。また、ご近所の方々へ12・13・14番雪置き場の奥へ雪を置いてもらい、通り抜け車両の侵入防止にご協力いただきました。
1-2 不思議な人たち
大規模修繕が竣工して地下ポンプ室と旧受水槽室の結露防止のための環境整備事業も終わり、ホッとして迎えた2013年1月末の理事会で岡山理事が不愉快そうな表情で発言しました。
「近所の人がマンションの契約している除雪業者を勝手に利用し、自宅前の道路を除雪させているのをみた」。私は何を馬鹿なことを言い出すのだと確かめた。「近所の人って誰ですか」。
岡山理事は「南側の家の岩手だよ。自分の駐車場のブロック塀の内側や止めてある車の前の雪を削らせていた」。「岩手さんもご近所の方も除雪業者に除排雪料を支払っていますよ」。「マンションと同じくらい払っているのかい」。
岡山理事はなぜか怒っていた。「ほんのわずかしか払っていないで、勝手に利用しているんだろう」。「岩手さんたちは、勝手に利用しているわけではありませんよ。除雪業者が見積もった金額を支払い、除排雪を委託しているのですから何か問題がありますか。
それに、除雪車が来ると岩手さんはいつもマンションのブロック塀に張り付いた雪を落として、塀が傷つかないように排雪のお手伝いをされています。みなさんは一度でもお手伝いをされたことがありますか」。「…」。岡山理事は声を出せなかった。
すると、石川理事より「駐車場を雪捨て場に利用するなら駐車位置の使用料をもらうべきだ」と強硬な意見が出された。続いて香川理事から問題視する質問が出された。「11番駐車位置にも大量の雪が捨てられていますが、あれはどうなのですか」。
「昨日も見ましたが、だれも止めていないからと11番へ雪を置いているのは管理員ですよ。ご近所の方々は約束通り12から14番までしか利用していません」。理事長の答えに一瞬静かになったが、再び苦情があふれでた。
岡山理事は不服そうだった。「昨日の朝、岩手が13番に雪を投げていたんだ。駐車場の雪置き場を利用しているのに顔を見ても黙っているのさ。普通なら有り難うございましたとか感謝していますとか挨拶すべきだろう。
1-3 何もせずに文句ばかり
挨拶しないから何で挨拶しないんだっていったら、なぜ挨拶しなければいけないんだっていうのさ。あんな奴に雪を置かせるべきじゃないよ」。「なぜ、駐車場に近所の雪を置かせているのですか。雪を捨てる場所がないなら公園まで捨てに行けばいいでしょう」。
石川理事は「不公平ですよ、我々は駐車料使用料を支払っています。なぜ、ご近所の方々は無料で利用できるのですか。3ヶ所を利用しているので、毎月2万4千円をもらうべきです」。「3ヶ所に雪を置くだけで駐車位置のように排他的に使用していませんよ」。
「利用しているという事実があれば料金をもらえばいいんです、不公平ですよ」。石川理事は納得せず、岡山理事と香川理事は理事長の敗北を予想して見守っているようだった。名古屋副理事長は自分には関係ないと無表情で聴いていた。
「その考え方からすれば、駐車位置を示すラインを超えて駐車している車から二台分の駐車料金をもらえということになります。私の駐車位置には時々ラインを超えて隣の車が止まっています。見かけたらあなたが請求してくれますか」。
「嫌ですよ。そんなことは理事長がやればいいでしょう」。「なんでも理事長にやらせて理事の方々はご意見を述べて傍観しているだけですか。それこそ、不公平じゃありませんか。自己中心も大事でしょうが相手の立場になって考えることも大切です。
お互いが譲り合ってこそ和が生まれます。町内は住人が協力し合って生活する場です。困っているときは助けあう、これが人の道ではありません。みなさんは経験がないのでお分かりにならないでしょうが、マンションの玄関前除雪だけでも重労働です。
除雪に汗を流した後で、遠くまで捨てに行くのは簡単ではありません。除雪車が来た時に駐車場に雪を置かせてもらっているからと、ブロック塀に張り付いた雪を岩手ご夫妻が落とされていることをご存知でしょう。
除雪で疲れているのに雪は遠くまで捨てに行きなさい、お金を出し合って除雪車や排雪用のダンプを頼みなさいなどと、これまで説明したことを知っていて言えますか」。玄関前の除雪をしたこともない理事たちは周一に逆らっても無駄だと感じたようだ。
1-4 恥を知らないのか
町内会館での理事会終了後に長机と折りたたみ椅子を所定の場所へ片付けていると、石川理事が大きな声で喚いた。「近所の人が支払っている排雪費用は、何に使われているのか誰か知っているかい」。
誰一人答える者はいなかった。業者へ支払ったお金が何に使われるか知る必要があるだろうか。改めてご近所の方々が駐車場の雪置き場を使用せざるを得ない窮状と、排雪費用を業者へ支払っていることも周知した。考えると、石川理事は不思議な人だった。
半年ほど前、屋上を点検すると東棟屋上パラペットの防水層塗装が、幅1メートル高さ20センチほど剥がれて茶色いシミが見えていた。塔屋の雑用具置き場から変性シリコンのチューブを探し出して残りを絞り出し、茶色いシミをすべて覆い隠した。
理事会で「雨が上がったので11日に屋上の雑草をすべて抜き取りましたが、東棟5階屋上を見ると防水層の保護塗料が3箇所剥がれ落ちていました」。東側のパラペットの状態を説明していると、理事長多忙のため増員された石川理事が大声を上げた。
「冗談じゃないですよ、そんな状態を放置しておいていいのですか。すぐ業者を呼んでください、水漏れしたらどうするのですか」。「ですから、どのような状態かお話しているのです。衝撃を与えると周囲の塗装がいまにも剥がれ落ちそうな様子でした」。
答えると石川理事は益々焦ったような声を出した。「説明なんかいいからすぐ業者を呼んでください。放置している暇はないでしょう、何をしているのですか」。増員された理由を知っていても、何をすべきか質問もせずにボーッとしている石川理事が叫んだ。
「変性シリコンで補修しましたよ。焦らなくても、塗料が剥がれ落ちたくらいで水漏れはしません。理事会の建物点検で、ご自宅の天井部分にあたる防水層の状態を確認していないのですか」。一流企業の社員であった男の危機管理能力はこの程度とは驚きだった。
1-5 恥ずかしい言動
大規模修繕が竣工して任期満了で理事長を退任する直前の理事会で、駐車場の雪置き場利用でご近所ともめごとが起きないように雪置き場利用についての理事長通知書を作成して提示し、承認を受けてからご近所へ配付した。
理事長を退任する総会の引継ぎ事項の最終部で「管理会社は契約書に書いてあることをやらない場合があるので、新年度の理事会で契約書の個業毎にやるのかやらないのか確認してください。私がやってきたことはすべて沿革史に記録されています」と伝えた。
総会終了後、管理員室で新年度理事にオートロック暗証番号の設定方法を講習し、全員が設定できるまで数回試してもらった。管理業務主任も設定方法は分からないというので、新年度理事と一緒に講習へ参加していただいた。
師走に副町内会長から電話があった。「雪置き場の利用で岩手さんと理事会へ出席して了解いただきました。前理事長の通知文書を見せるとこんな文書は知らない、見たこともないと言われました。どうなっているのですか。」
任期満了直前の理事会で理事長通知書を提示して承認を受け、理事会議事録にその時の議事を記録して理事長通知書も添付してあるが、理事会での香川理事長の発言を副理事長も管理業務主任も修正しなかったそうだ。
岩手氏より「香川理事長が自宅へきて、私が作成した書類に押印して提出しなさい」と言われたと電話が来た。何事が起きたのか分からずに岩手宅を訪れると「お宅のマンションはどうなってるのさ」と呆れていた。理由を尋ねると、
「香川理事長が、過去の除雪費は何に使われたのでしょうねというのさ。業者が何に使ったか知りませんよと答えると、前の理事長より変な文書が来たけど、文書なんか読みません。マンション住人はほとんど読んでいないはずですっていうのさ。
私はきた文書をすべて読みます、届いた文書を読むのは当たり前の事ですと答えたら、雪置き場の取り決め書を作成したので利用者は記名押印して理事長へ提出しなさいというので、3月にもらった理事会承認の通知書はどうなるのですかと聞いたのさ。
1-6 あきれ果てる言動
すると、そんなものは知りません。私の言うとおりにしてください。取り決め書は副理事長に見せますが、他の人には見せません。理事会の決定ですかと聞くと、私は理事長ですから好きなようにやりますってさ。いいのかいこんな人を理事長にして」。
「すみません、ご迷惑をおかけして」。「香川理事長は変なことも聞くのさ」。「何を聞いたの」。「私はなぜ管理職にならないのでしょうって」。「なにそれ」。「会社の上司に私はいつ管理職になるのですかと聞いたら、さあって、どうかしてますよだって」。
「管理職になれない理由も知らないんだ」。「えっ、そんなことまでわかるの」。「自宅でパソコンへ向かい、雑誌に載せる賃貸住宅の情報を作成しているんだよ。仕事を教える部下もいない管理職なんて聞いたことがないよ」。
「部下がいなけりゃそうだよな。あの人、ずいぶん過去の除雪費用にこだわっていたよ、直接業者へ支払った除雪費の使い道になぜ疑問があるのだろうと思ったけど、あの話しぶりから、前理事長が使い込んでいるとでも思い込んでいるようだった」。
香川理事長の行為は、管理規約に定める「役員の誠実義務等・有害行為の中止要求」の規定に反しているので謝罪を求めたが、香川理事長は「私はいつでも辞めますよ」と平然とし、他の理事たちは黙して語らなかった。
平気でうそをついている人と、それを止めようとしない人たち。このような常識を知らない人たちに、前理事長の信用失墜を咎めても理解できないだろうが、除排雪費の使い込みだけは疑いを晴らさなければならない。全理事と管理業務主任へ文書で通知した。
過去の除排雪費使途についての質問を考察すると、管理組合は駐車場内の除排雪費用で42万円を支払っているが、ご近所の方々が駐車場内に置いた雪の除排雪費用も42万円に含まれていると考えているようである。
したがって、ご近所の方々が支払った除排雪費用は当然管理組合の収入になるべきだが、何に使われたのか明らかにされず、現金は消えていると疑問を持たれたと推測できる。なぜ私が現職当時に「どうなっているのですか」と聞かなかったのだろう。
1-7 知識貧困と名誉棄損
当該年度の理事会で駐車場の除排雪費用は42万円で契約したことを理事会へ報告し、ご近所の方々の駐車場雪置き場利用も承認されました。除雪業者はご近所の方々が雪置き場へ持ち込む雪と、駐車場の雪を完全に区別していた。
ご近所の除排雪に掛かる費用は別料金とし、ご近所の駐車場の面積に応じた料金を見積もった。ご近所の方々は、業者の請求に基づき1シーズン分をまとめて支払う。これも理事会で説明し議事録にも記録されている。
ご近所の方々は理事長宅まで持参して除排雪費を支払うべきか、理事長が除排雪費用を集金すべきか、管理会社の職員がマンションを訪れるまで理事長は保管義務を負うべか。しかし、管理組合はご近所が支払う除排雪費用を収入にすることはできない。
理事長が除排雪費用を受領すれば、すみやかに管理組合の普通預金口座へ入金しなければならない。理事長は交通費を負担して管理会社へ届けに行くべきか、手数料を自己負担して口座振替をすべきかなのか。
当時の理事会はご近所の除排雪費用を、管理組合の普通預金口座へ入金する振替手数料の負担を検討していない。除雪業者への支払いは口座振替のため、管理組合は二重に振替手数料を負担せざるを得ないことになる。
ご近所が支払う除排雪量を管理組合の一般会計予算に計上すれば、法人税法の「公益法人等が収益事業に該当する利益事業に係る業務の全部または一部を委託する契約に基づいて他の者に行わせている場合」に該当し所得税納付の義務が生じる。
これの程度のことをマンションを管理をする理事が考えられないはずはない。除雪業者へ問い合わせればご近所の除排雪料を知ることができ、岩手さんに聞けばご近所の各住戸がいくらの領収証を受け取ったかを知ることができる。
事実関係を確かめもせずに疑うのは大人のすることだろうか。私は町内会長と会計を兼務していたので、使い込みの噂が流れると現職に留まるわけには行かない。謝罪がなければ町内会役員を辞任し以後のマンション管理を卒業すると伝えたが、謝罪はなかった。