1 結露とは
新築マンションに入居して15年目の冬を迎えたころから、北側に面する大洋室と小洋室の窓に結露が現れ、ガラスが曇って外の風景が見づらくなりました。結露の発生原因を考え、対策を講じると結露は激減しました。
1-1 身近な結露
真夏には冷たいビールがおいしく感じます。若いころは、お風呂上りに500mlの缶ビールを二缶飲み干して喉の渇きを潤しました。ビヤホールで中ジョッキのビールを飲み干すときは、喉を流れ落ちるビールの感触が堪らなかった時代もありました。
テレビ東京系のバラエティ番組「ローカル路線バス乗り継ぎの旅」シリーズで、失笑恐怖症でモラルに頓着しない蛭子能収をあやしながら、疲労困憊したリーダー役の太川陽介が夕食の時にビールを飲み干すシーンが大好きでした。
冷えたジョッキーに注がれたビールをごくごくとのどを鳴らすように勢いよく飲んで、ジョッキが空になると体をすぼめて身震いする様子に、ビールの美味しさが伝わります。疲労困憊も吹き飛んで、苦労が報われるような気がします。
一般的にラガービールは4~8度くらいが適温とされ、冷やし過ぎると口内が冷気で麻痺した状態になり、ビール本来の甘味や酸味などの旨味を失いがちになるそうです。ドイツ・ベルギー・イギリスなどでは、常温で飲まれることが多いと言われます。
常温で飲むと云えばすぐ思い出すのは赤ワインですが、この常温はヨーロッパにおける石造りの家での常温(18℃前後)をさしています。日本の暑い夏は、少しだけ冷やして飲むほうが美味しく感じます。
辛口のスパークリングワインや甘口の白ワインは4~8℃、極甘口ワインは4~6℃、辛口の白ワインやロゼは6~10℃、軽口の赤ワインは10~13℃、重口の赤ワインは18℃程度が最もおいしく飲めるそうです。
高齢者になるとビールは350ml一缶で十分ですが、冷蔵庫から冷え切った缶ビールを取り出すと、缶の表面に水滴がつき始めてしだいにダラダラと流れ落ち、テーブルが水浸しになってしまいます。ビールの味が変わるわけではありませんが、これが嫌いです。
缶の表面に現れた水滴が結露というもので、四季を通してみられるもっとも身近な結露です。結露は、空気中の水蒸気が集まって水滴にまで大きくなったものです。
1-2 空気中の水蒸気
空から地上に降った雨は、大地に湿り気を与えて川となったり地下水となって海へ注ぎます。水は地上や海から蒸発して空へ昇り、上空で冷やされ結露することで雲をつくり、水滴が大きくなると重くなって地上へ落ちてきます。
地球上には太陽熱が降り注ぎ、この太陽熱で温められた水は蒸発して空まで昇ります。上空で冷やされて結露するときにその熱を捨てるので、地球は平均15℃を保っていられます。水の循環は地球と大気との間の熱交換を果たす重要な役割をになっているのです。
ところが、家の中で発生する水の動きは循環する状態になく、どんどん結露して対象物をびしょびしょに濡らします。結露が乾く間にカビが繁殖し、そのカビを目当てにダニが寄ってきたり、木材腐朽菌が繁殖して木材をボソボソにしてしまいます。
空気の重さを感じることはありませんが、1m×1m=1立方メートルで1kgほどになり、水蒸気はこの空気の中に2~25g程度含まれています。しかし、空気に含まれる水蒸気の量は温度によって変化します。
空気は温度が高くなるほど、水蒸気を多く含むことができるようになります。例を挙げると、10℃の空気は9.4gの水蒸気を含め、20℃の空気は17.3gの水蒸気を含むことができます。また、0℃の空気は4.85gの空気しか含めません。
20℃の空気が水蒸気を含める量の半分である8.65gだとします。この状態を「相対湿度50%」と呼びます。私たちが日常使う湿度はこの相対湿度です。空気中に実際に含まれている水蒸気の量を「絶対湿度」といいます。
水が沸騰しているやかんの口を観察すると、口から少し離れたところで白い煙のようなものが出ているのがわかります。これが湯気で、やかんの口と湯気の間にある見えない気体が水蒸気です。
湯気はこまかい水滴の集まりですから液体で、白い煙のように見えるので湯気と呼ばれます。水蒸気は、水素や酸素と同じように無色の気体なので、空気中に含まれていても見ることはできません。
沸騰した水は、まず目に見えない気体の水蒸気となってやかんの口から吹き出し、熱い水蒸気がまわりの空気に触れて冷やされ、目に見える細かい水滴になったものが湯気となります。気体の状態では、空気のように人間の目には見えません。
1-3 結露の発生
20℃の空気が水蒸気を8.65g含んだ相対湿度50%の時に、なにかの理由で急に冷やされたとします。すると空気が持てる水蒸気の量は小さくなり、水蒸気が一杯になる飽和状態となり相対湿度は100%となります。
空気が冷やされて飽和状態になったときの温度を露点温度と呼びます。相対湿度50%の空気が8.7℃まで冷やされると飽和状態になるので、露点温度は8.7℃ということになります。この空気がさらに冷やされると持ちきれなくなった水蒸気は外へ出されます。
20℃の空気が含んでいる水蒸気が8.65gですから、この空気が5℃まで冷やされると5℃の空気が持てる水蒸気の量は6.8g/m3になるので、この差である持ちきれなくなった水蒸気1.85g/m3が結露になってしまいます。
空気線図は、不飽和空気ではつかみにくい乾球温度や相対湿度、絶対湿度、 比エンタルピーなどの相互関係を比較対照して線図にしたものです。湿り空気線図は、主に空気の状態や熱的変化知るのために用いられます。
湿り空気線図を一部拡大して例を挙げて説明します。温度20度で相対湿度60%の空気をA点とします。A点の右側のB点は絶対温度が約9(正確には8.8)g/m3と読めます。A点から左側のC点は飽和状態(相対湿度100%)に達します。
C点を越えてこれ以上冷やすと、飽和状態越えてしまうので結露になります。C点から垂線をおろすとD点の露点温度は12度と読めます。20℃で相対湿度が60%の空気は約12℃が露点温度になり、さらに冷やされると結露が始まるということになります。