はげちゃんの世界

人々の役に立とうと夢をいだき、夢を追いかけてきた日々

第66章 結露対策に挑む

1 結露とは

新築マンションに入居して15年目の冬を迎えたころから、北側に面する大洋室と小洋室の窓に結露が現れ、ガラスが曇って外の風景が見づらくなりました。結露の発生原因を考え、対策を講じると結露は激減しました。

トップへ戻る

 1-1 身近な結露

真夏には冷たいビールがおいしく感じます。若いころは、お風呂上りに500mlの缶ビールを二缶飲み干して喉の渇きを潤しました。ビヤホールで中ジョッキのビールを飲み干すときは、喉を流れ落ちるビールの感触が堪らなかった時代もありました。

テレビ東京系のバラエティ番組「ローカル路線バス乗り継ぎの旅」シリーズで、失笑恐怖症でモラルに頓着しない蛭子能収をあやしながら、疲労困憊したリーダー役の太川陽介が夕食の時にビールを飲み干すシーンが大好きでした。

冷えたジョッキーに注がれたビールをごくごくとのどを鳴らすように勢いよく飲んで、ジョッキが空になると体をすぼめて身震いする様子に、ビールの美味しさが伝わります。疲労困憊も吹き飛んで、苦労が報われるような気がします。

一般的にラガービールは4~8度くらいが適温とされ、冷やし過ぎると口内が冷気で麻痺した状態になり、ビール本来の甘味や酸味などの旨味を失いがちになるそうです。ドイツ・ベルギー・イギリスなどでは、常温で飲まれることが多いと言われます。

常温で飲むと云えばすぐ思い出すのは赤ワインですが、この常温はヨーロッパにおける石造りの家での常温(18℃前後)をさしています。日本の暑い夏は、少しだけ冷やして飲むほうが美味しく感じます。

辛口のスパークリングワインや甘口の白ワインは4~8℃、極甘口ワインは4~6℃、辛口の白ワインやロゼは6~10℃、軽口の赤ワインは10~13℃、重口の赤ワインは18℃程度が最もおいしく飲めるそうです。

高齢者になるとビールは350ml一缶で十分ですが、冷蔵庫から冷え切った缶ビールを取り出すと、缶の表面に水滴がつき始めてしだいにダラダラと流れ落ち、テーブルが水浸しになってしまいます。ビールの味が変わるわけではありませんが、これが嫌いです。

缶の表面に現れた水滴が結露というもので、四季を通してみられるもっとも身近な結露です。結露は、空気中の水蒸気が集まって水滴にまで大きくなったものです。

トップへ戻る

 1-2 空気中の水蒸気

空から地上に降った雨は、大地に湿り気を与えて川となったり地下水となって海へ注ぎます。水は地上や海から蒸発して空へ昇り、上空で冷やされ結露することで雲をつくり、水滴が大きくなると重くなって地上へ落ちてきます。

地球上には太陽熱が降り注ぎ、この太陽熱で温められた水は蒸発して空まで昇ります。上空で冷やされて結露するときにその熱を捨てるので、地球は平均15℃を保っていられます。水の循環は地球と大気との間の熱交換を果たす重要な役割をになっているのです。

ところが、家の中で発生する水の動きは循環する状態になく、どんどん結露して対象物をびしょびしょに濡らします。結露が乾く間にカビが繁殖し、そのカビを目当てにダニが寄ってきたり、木材腐朽菌が繁殖して木材をボソボソにしてしまいます。

空気の重さを感じることはありませんが、1m×1m=1立方メートルで1kgほどになり、水蒸気はこの空気の中に2~25g程度含まれています。しかし、空気に含まれる水蒸気の量は温度によって変化します。

空気は温度が高くなるほど、水蒸気を多く含むことができるようになります。例を挙げると、10℃の空気は9.4gの水蒸気を含め、20℃の空気は17.3gの水蒸気を含むことができます。また、0℃の空気は4.85gの空気しか含めません。

トップへ戻る

20℃の空気が水蒸気を含める量の半分である8.65gだとします。この状態を「相対湿度50%」と呼びます。私たちが日常使う湿度はこの相対湿度です。空気中に実際に含まれている水蒸気の量を「絶対湿度」といいます。

    

水が沸騰しているやかんの口を観察すると、口から少し離れたところで白い煙のようなものが出ているのがわかります。これが湯気で、やかんの口と湯気の間にある見えない気体が水蒸気です。

湯気はこまかい水滴の集まりですから液体で、白い煙のように見えるので湯気と呼ばれます。水蒸気は、水素や酸素と同じように無色の気体なので、空気中に含まれていても見ることはできません。

沸騰した水は、まず目に見えない気体の水蒸気となってやかんの口から吹き出し、熱い水蒸気がまわりの空気に触れて冷やされ、目に見える細かい水滴になったものが湯気となります。気体の状態では、空気のように人間の目には見えません。

トップへ戻る

 1-3 結露の発生

20℃の空気が水蒸気を8.65g含んだ相対湿度50%の時に、なにかの理由で急に冷やされたとします。すると空気が持てる水蒸気の量は小さくなり、水蒸気が一杯になる飽和状態となり相対湿度は100%となります。

空気が冷やされて飽和状態になったときの温度を露点温度と呼びます。相対湿度50%の空気が8.7℃まで冷やされると飽和状態になるので、露点温度は8.7℃ということになります。この空気がさらに冷やされると持ちきれなくなった水蒸気は外へ出されます。

20℃の空気が含んでいる水蒸気が8.65gですから、この空気が5℃まで冷やされると5℃の空気が持てる水蒸気の量は6.8g/m3になるので、この差である持ちきれなくなった水蒸気1.85g/m3が結露になってしまいます。

    

トップへ戻る

空気線図は、不飽和空気ではつかみにくい乾球温度や相対湿度、絶対湿度、 比エンタルピーなどの相互関係を比較対照して線図にしたものです。湿り空気線図は、主に空気の状態や熱的変化知るのために用いられます。

トップへ戻る

湿り空気線図を一部拡大して例を挙げて説明します。温度20度で相対湿度60%の空気をA点とします。A点の右側のB点は絶対温度が約9(正確には8.8)g/m3と読めます。A点から左側のC点は飽和状態(相対湿度100%)に達します。

C点を越えてこれ以上冷やすと、飽和状態越えてしまうので結露になります。C点から垂線をおろすとD点の露点温度は12度と読めます。20℃で相対湿度が60%の空気は約12℃が露点温度になり、さらに冷やされると結露が始まるということになります。

トップへ戻る

2 家屋の結露

 2-1 結露を知る

水蒸気の多い空気が冷えると結露が発生します。これが分かると、結露を防ぐ方法は2つあることに気づきます。1つは空気を冷やさないことです。もう1つは、空気に含まれている水蒸気の量を少なくすることです。

空気は冷えなければ小さくならず、空気に含まれている水蒸気が少なければ、冷やされても結露するまでには至らないのです。でも、これは絶対とは言い切れません。結露になりにくい状態であることは確かです。

結露には表面結露と内部結露の二種類があり、全く異なった性格を持っています。表面結露は、部屋の内装表面に起こる結露です。内部結露は、壁の内部や天井裏、床下などの見えない部分で起こる結露です。

表面結露は、外気に直接触れている窓ガラス面や暖かい空気が行き渡りにくい部屋の隅などによく見られ、これは窓表面の温度や室内側壁表面の温度が、室内空気の露点温度より低いために生じるものです。

内部結露は、防湿が不十分または断熱に隙間があるなどの理由で室内の水蒸気が壁の中に浸入し結露することをいいます。内部結露は壁などの構造内部で発生するため発見が遅れる場合が多く、被害が大きくなると建物の腐朽の原因となるので注意が必要です。

また、夏型結露は、冬とは逆に外から壁の中に水蒸気が入り室内側の防湿層で止まりそこで結露する場合です。防湿フィルムの室内側に水滴を生じ、室内の壁がブニョブニョになったり、カビが大量に発生しする場合があります。

逆転結露は、結露の発生する場所が変わるときに使われます。夏の雨上がりにエアコンをかけっぱなしで車を運転していると、車の外側のガラスに水滴(くもり)がつき始めます。これこそが逆転結露です。

車のガラスはエアコンによって冷やされています。外は雨上がりなので水蒸気は大量に発生しています。その水蒸気がエアコンによって冷やされたガラスに触れることで結露が発生したのです。

トップへ戻る

 2-2 結露は病気を招く

欧米の住宅は空気を冷やさない方法を取りました。日本の家は隙間風が出入りするので寒いことから、水蒸気を増やさない方法を取りました。この結果、家の中にカビやダニを繁殖させる結果を招いたと云われます。

冬になると、窓の結露が毎日のように発生します。最初のころは雑巾でていねいに拭き取っていましたが、次第に面倒くさくなりそのうちやめてしまいます。しかし、結露を放置しているとさまざまなトラブルに発展します。

もっとも起こりやすいトラブルがカビの発生です。窓下の壁に茶色のシミのようになったカビを見たとき、壁につけておいたタンスをずらすと真っ黒なカビがタンスの背面と壁にびっしり繁茂していたこと、見た途端に吐き気を催したこともあります。

ガラスをサッシに固定するための、樹脂製の紐のようなビートにも真っ黒なカビが繁茂します。カビはアレルギーの原因や、肺炎を引き起こす原因にもなると考えらる危険な細菌です。家族の健康を守るために、早め早めに除去する必要があります。

カビの繁殖をさらに加速させるのが、掃除を怠ることで溜まっていくホコリです。カビが繁殖すると、そこからは目に見えない胞子が放出されます。また、それをエサにダニが集まり、フンが飛散することもあります。

どちらも初めはごく微量に過ぎませんが毎日吸い込むことで体内に蓄積され、いずれはアトピーやぜんそくなどのアレルギーや呼吸器系の重大な疾患を引き起こす可能性があるといわれます。

また最近では、カビの一種・トリコスポロンが引き起こす夏型過敏性肺炎や、カビをえさとして大量発生したコナヒョウヒダニが原因で起こるパンケーキ症候群など、あたらしい病気も報告され、結露対策は健康面からもますます重要になってきています。

トップへ戻る

 2-3 恐ろしい水蒸気

表面結露でよく見聞きするのは、押し入れの中やタンスの裏側がビショビショになり、お風呂やトイレの天井がカビだらけになる結露です。なぜ押し入れやタンスの裏側に結露するのでしょう。

押し入れは襖で仕切られ中には布団が詰まっています。襖や布団が断熱材となって、室内の熱が押し入れの奥へ入り込めないようになっています。タンスそのものも断熱材になり、室内の熱を壁の奥まで入り込めないようにしています。

このため、押し入れの奥やタンスの裏側は冷えやすくなり、そこに水蒸気が回り込むと結露が発生しやすくなります。水蒸気は目に見えないほど小さく圧力差でどこまでも飛んでいくので、熱がまわれない部分でも回り込んでしまいます。

木の板に口をつけて息を吹きかけると、息は跳ね返ってきますが水蒸気は板の中まで透過します。ビニールクロスの下地に使われている石膏ボードも同じように中まで透過します。水蒸気はガラスや金属以外は透過してしまうと考えなければなりません。

個別に暖房している部屋の水蒸気が冷えた非暖房室に流れれば、最も冷えた部分に水蒸気が集まり窓ガラスが結露します。暖房している部屋の暖房を止めると、部屋は冷えてガラス窓は激しく結露し始めます。

一般的に使われている暖房器は、石油ガスを燃料としたストーブまたはファンヒーターです。このストーブは室内の酸素を燃やし、燃焼ガスを室内に吹き回すので開放型ストーブと呼ばれています。

開放型ストーブは部屋の中で暖炉を燃やしているようなもので、嫌な臭いを出し、炭酸ガスを出し、窒素酸化物など化学物質も噴き出します。不完全燃焼を起こせば、最も危険な一酸化炭素まで発生させます。そして、ガスと共に多量の水が噴き出されています。

1リットルの石油を燃やすと1,030gの水蒸気が出ます。プロパンガスを燃やしても水蒸気は出ますし、都市ガスからは最も激しく水蒸気が発生します。このような状態ですから、開放型ストーブは結露を起こすための最大要因になります。

トップへ戻る

3 じっくり考えると

 3-1 日本家屋の問題点

断熱と気密性に無頓着な日本の家は暖房にも無頓着で、個別暖房で間欠暖房を当たり前にしてきました。有害なガスと共に多量の水を噴き出す開放型ストーブを燃やして不安になることもありません。

昔の内装材は調湿性のある自然のもので作られていましたが、今では新建材に代わって調湿力を失いました。隙間だらけだった日本の住宅は気密性が高まり、機械的な換気が必要になってきても隙間風で十分と思い込んで換気をしようともしません。

このような状態の日本家屋では結露することが当たり前で、結露させるように生活しているようなものです。まず、開放型の暖房機を使わないことです。水蒸気が一時的に大量に発生する場合は、局所的な換気で対応することが対策になります。

日本の家は特定の部屋だけ暖房して、他の部屋は寒いままが当たり前になっています。これを個別暖房と言います。欧米の家ではすべてが温かい全室暖房または全館暖房、もしくはセントラルヒーティングと言います。

日本の場合は、家を留守にするときには暖房を消して出かけます。これを間欠暖房と言います。電気代がもったいないから必要なときだけつけるというのは、高性能な省エネ住宅ではあてはまらないことがあります。

日本のトイレは便座を温めています。欧米のトイレは便座を暖める必要がありません。トイレだけを暖房しているわけではなくトイレを含めた家中全体を暖めているからです。従って何も便座を暖める必要がないのです。

結露する条件を作っておいて、それをどのようにしてなくすかという無理を考えることは非常に難しい問題です。なぜ結露しているのかが理解できないまま対処法を試しても、結果はよくなることはないでしょう。

トップへ戻る

 3-2 現実を直視すると

空気汚染を防ぐための換気をすることです。特別に結露対策の換気は必要ありません。断熱と気密を充実させて、家全体に熱を配ることが対策となります。小さな熱で全室暖房です。

電気代がもったいないから必要なときだけ暖房をつけるというのは、高性能な省エネ住宅ではあてはまらないことがあるのです。高気密高断熱で外壁の熱容量が大きい場合は、温まりにくく冷めにくいため、通常に比べて暖冷房の立ち上がりが遅くなります。

断熱材やサッシが入っている住宅では連続暖冷房のほうが効率が良くなります。このような住宅では、熱や冷気が外部に逃げにくいため、少しのエネルギーで連続運転させたほうが効率が良いのです。

エアコンの24時間スイッチが入っていても、設定温度に達すれば温度センサーが感知してオフの状態になります。住宅が南面に大きな窓を設置していれば、24時間連続運転でも9時頃から21時までの12時間程度は、実質的に暖房は稼働していないものです。

暖房機を24時間連続運転している住宅では部屋間の温度差が非常に小さくなります。非常に寒いイメージがある洗面脱衣室やトイレなど、ヒートショックのリスクが高い空間も健康で快適にすごしやすくなります。

逆に、室温が低い部屋は相対湿度が高くなりやすいので、結露やカビ、ダニが発生しやすくなります。高性能住宅であれば、エアコンをこまめに消すことが必ず良いとは限らない、それどころか連続運転するほうが望ましいことが分かると思います。

トップへ戻る

4 換気が家を救う

 4-1 重要な換気

家の中で発生した水蒸気は内装材にも吸収されます。これを吸湿と言います。昔の家は土壁で天井は木の板、床には畳が敷かれて紙の襖に障子がありました。素材のすべてが吸湿性を持っていました。

吸湿された水分は室内が乾燥すると放出(放湿)されます。土壁はあつみがあったのでたとえその表面で結露しても水を吸い込んで表面は濡れるようなことはありません。昔の素材は、その調湿性で結露を防ぐ力を持っていたのです。

最近では調湿する内装材の開発が増えてきました。珪藻土や類似の塗り壁材、それらの素材をタイルにしたものや壁紙にしたものなどいろいろで回っています。ただ、吸湿して水を含んだまま乾燥することができなければカビが発生します。

調湿する材料が結露してカビが生えると、表面だけではなく中まで根をはるのでカビを殺すことはむずかしくなります。調湿材で結露を防ぐのではなく、瞬間的に結露する条件になった場合に吸湿してくれる安全策としてと会えることが肝心です。

生活していればたくさんの水蒸気が発生します。冬に40坪の家の中で家族4人が生活すると、1日二6.7kgの水が発生すると言う試算があります。この水を除去するのが換気です。

日本の戸建て住宅はいまだに隙間風が入るようですが、近年のマンションは高気密高断熱になっています。アルミサッシは隙間風の流入を防ぎ、自然換気のための換気口からしか外気が入り込めません。

一般的に生活上の空気汚染を防ぐために必要な換気量は0.5回/時とされ、換気さえしていれば生活上で発生した水蒸気は十分排出できると言われています。しかし、結露防止のためには自然換気だけでは不足です。

トップへ戻る

 4-2 身体を大切に

住宅業界では当たり前の話ですが、日本の家でも結露は常に動いている空気に触れていることで防ぐことができるそうです。窓やサッシの部分などに送風機で常に風を送り、窓回りの空気を動かすことで結露対策を行うことができるそうです。

北海道などの寒冷地では外気温が氷点下になるため結露しやすい環境でも、寒さから換気不足の住宅や賃貸物件がとても多いといわれます。外気温が-10~30℃にもなるので、高気密高断熱のマンションでも自然換気のみを採用している住宅が多いのです。

結露対策で一番効果的なのは間違いなく換気です。換気するとなぜ結露対策になるかというと、部屋の空気を入れ替えてくれるので、室内の湿気が含まれた空気と外の空気と入れ替えることで単純に湿度が高くなることを防ぐことができます。

外気温が低ければ温度も下がりますが、湿気を含んだ空気を外に出すことが最善です。就寝時に暖房を切ってしまい、夜中に起きた時の低温によるヒートショックでかかる医療費を考えると、暖房を付けっぱなしにしている電気代の方が安いのです。

欧米では寒さは人を弱くすると考え、室温が低いことで健康に害を及ぼすさまざまな症状が発症することから、部屋の温度を高くして暮らすことを国を挙げ推奨しています。暖房費はかかるが、その分医療費が減るという考え方になります。

欧米では冬の時期は暖房をつけっぱなしにし、人が健康に暮らすためには家の中の温度は20℃をキープすべきという考え方があります。暖房設備としては、一ヵ所に設置された熱源装置からその建物全体を暖めるセントラルヒーティングが一般的です。

セントラルヒーティングは一箇所に設置した給湯器熱源装置(ボイラー等)から、熱を暖房が必要な各部へ送り届ける暖房方式で、一般的なストーブほど高温にはならないため火災の危険が少なく、ラジエータ自体から燃焼ガスの発散がなく安全性に優れています。

欧米ではどこの建物へ行っても、中は半袖で過ごせる温かさに保たれています。間欠暖房の住宅と比べて住宅内における温度差が無くなるので身体への負担も無くなり、ヒートショックによる事故も防ぐことができます。

トップへ戻る

5 結露対策工事

 5-1 水浸しの窓

私が住んでいるマンションは温水暖房です。ボイラーで都市ガスを燃料にしてお湯を沸かし、部屋につけたファンヒーターで熱を部屋中に循環させています。問題はキッチンで大量に水を発生させる天然ガスを使用していることです。

新築マンションに入居して15年目の冬を迎えたころから、北側に面する大洋室と小洋室の窓に結露が現れ、ガラスが曇って外の風景が見づらくなりました。窓は外窓と内窓の二重窓ですが、内窓の室内側に結露が現れて水滴が敷居に流れ落ちています


 冬期間は常に結露が現れるようになり、毎朝起床するたびに窓の結露を拭き取っていましたが、数年後には窓下の壁紙が剥がれ始めました。壁紙の内側に見える断熱材の吹付けウレタンに触ると水を含んでいることがわかります。


 結露はガラスの表面を覆って曇りガラスのようでしたが、しだいに水滴状の結露が現れるようになりました。2010年の12月に、マンションのアフターフォローに訪れていた修繕業者に状態を見ていただきました。


 ガラスは非常に熱を伝えやすい性質があるので、2枚の板ガラス(厚さは3mm)の間を6mmして、その間に乾燥した空気を注入したペアガラスを勧められました。ペアガラスに注入した空気層は乾燥空気で、比較的熱を伝えにくい性質があり内部結露を防ぐ効果があるそうです。

ペアガラスには、通常のフロートガラスの片側表面に非常に薄い特殊金属膜をコーティングした「Low-Eガラス」が使われ、太陽から直接受ける日差しを和らげる効果のあるガラスになっているそうです。

試供品を勧められてペアガラスをお借りし、一週間ほど取り替えましたがやはり結露が発生します。窓枠がアルミサッシですから熱伝導が高く、内窓と外窓の間にある空気が冷やされて冷気が窓下の壁の中にこもり、常に冷やされている状態になるのではないかと考えました

トップへ戻る

 5-2 大洋室窓下の断熱

大洋室の北側壁内がどのように断熱されているか確かめることになり、修繕業者が壁の石膏ボードを取り除きました。断熱材として発泡スチロールが建物の壁面に吹き付けられていましたが、針を指すと2cmという厚みしかありません。


 外壁に吹き付けられた発泡スチロールと、室内とを隔てる石膏ボードの間はかなり広い空間ができています。しかも、窓の敷居下は発泡スチロールの薄い層です。壁の内部に冷気が充満しても不思議でない構造でした。

トップへ戻る

 5-3 発泡スチローの充填


 修繕業者より、壁内部の空間を発泡スチロールで埋めると断熱効果が上がるとの提案をいただき了解しました。工事の当日、ノズルを取り付けた発泡ウレタンスプレー缶が出てきたので、そのような製品があることに驚きました。作業は以外に簡単そうですが、ノズルから吹き出す発泡ウレタンの量は細いので時間がかかります。

天井に近い壁内には空洞になっている部分がありました。冷気が貯まりそうなので空洞はすべて発泡スチロールで埋めていただきました。そして、内窓を推薦されたペアガラスに取り換えました。

トップへ戻る

 5-4 湿度は高すぎず

工事が終わりこれで結露とお別れできたと喜ぶと、翌朝なぜか結露が発生しています。工事前より量は少なくなっていますが、窓ガラスは薄っすらと曇って風景がぼやけて見えます。

室内の湿気が多すぎるのではないかと考え、湿度計を部屋の中央で窓の高さにぶら下げてみました。1時間後の湿度は65%ですから、少々高いとは言えカビの生えるような数値とは思えません。


 上の写真は右が大洋室で左が小洋室です。明らかに結露の量に変化は見られますが、このような結果では小洋室も同じ方法で工事をする訳にはいきません。何か良い方法はないかと考え込みました。

トップへ戻る

 5-5 外は湿度が低い

現職当時、増築した建物の二階廊下の窓に結露が発生した事がありました。連絡を受けた建築業者は、二重窓の外側の窓を左右とも2cmほど開けて内側の窓を締めました。2時間ほど経過すると結露が消えています。質問すると、二重窓の間に溜まっている空気を外気で動かせば結露は消えると、答えたことを思い出しました。

マンションの外窓は、窓枠とサッシ枠ともに熱伝導率が高いアルミ製です。ペアガラスの内窓は、窓枠とサッシ枠ともに熱伝導率が低い樹脂製です。熱伝導率が低い樹脂製といえども、熱を完全に遮断することは不可能です。

外窓と内窓の間に密閉された空気は、室内側の窓ガラスが温められると少しずつ熱が伝わり温度が上がります。夜になると暖房の止まった室内の温度は下がり、外窓と内窓の間に密閉された空気の温かみが内ガラスに伝わり、内ガラスと室内との温度差が生じることで結露が現れます。

外窓の外側は外気が動いているので、結露ができる前に蒸発します。空気が動いていると結露はできないことが分かります。

マンションの六階までの北側壁は垂直で、ロッククライミングが得意な人でも体を支えることのできる工作物はありません。人が侵入できる恐れはないと考え、大洋室のクレセントを開放して外窓を左右とも2cm開けておきました

内窓は樹脂製の窓枠とサッシ枠のペアガラスに取り換えているので、外気温が室内へ伝わることはほぼありません。外窓の左右に2cmの隙間ができたことで、外窓と内窓の間は常に乾いた外気が循環しています。これが功を奏して内窓の室内側に結露が出なくなりました

とはいえ、大洋室の敷居は若干しっとりしているので、完全に結露が消えたわけではないことを示しています。ともあれ、効果があることは確かですから、小洋室の外窓も左右ともに2cm開けておくことで結露の発生回数は大幅に減少しました。

トップへ戻る

 5-6 工事の決定

しかし、小洋室の窓下に当たる壁際のじゅうたんが変色し始めました。触ると水を含んでいることがわかります。右端の凹んでいる部分に置いた脚付の棚下の床も変色しています。これ以上放置していると悪性のカビが発生し、老夫婦の健康に問題が生じる可能性も考えられます。


 2015(平成27)年10月24日、マンション管理セミナーを主催された建装工業株式会社札幌支店の一級建築士に写真をお見せし、手の空いた時に見てくださるようお願いしました。

ご多忙の中11月10日にご足労いただき、小洋室の濡れているじゅうたんと大洋室のしっとりしている敷居を診ていただきました。小洋室のリフォーム時に見た窓下の壁の中は空洞であったことを伝え、最善の結露対策を考えていただけるようにお願いしました。

小洋室のじゅうたを剥がして新品と交換し、剥がしたじゅうたんの良好部分を切り取って大洋室の窓下部分を貼り替える方法が最善とされ、換気扇に湿度センサー付きの高密閉電気式シャッタータイプのパイプファンの取り付けを勧められました。

2月14日に届いた見積書に、小洋室は窓のある北側の壁板を剥がして100mmのグラスウールを入れます。大洋室は窓下の壁を剥がして100mmのグラスウールを入れます。このため、窓下は14cm室内側へ出るので、上部に棚板を取り付けます。

換気扇用パイプファンは小洋室のみ取り付けるという内容で、工事期間は日曜日を挟んで4日間、工事費は約40万円でした。マンション管理組合の工事承認が下りたので、3月31日から小洋室の工事が始まりました。

トップへ戻る

6 結露防止工事

 6-1 小洋室の壁工事

小洋室は窓のある北側の壁板を剥がすと、吹き付けられている発泡スチロールの断熱材は2.2mmの厚さしかなく、断熱材と壁板までの間は5cmほどの空洞でした

空洞の中へグラスウールを詰め込みました。木造家屋で断熱材にグラスウールを使用した場合、断熱材に隙間があったり防湿が不十分だと、湿気が壁などの内部に侵入して内部結露が発生しかねません。

グラスウール断熱材は発泡プラスチック系よりはるかに厚みを持って使用されるので、断熱材の厚みは断熱性能にそのまま比例します。厚みを考慮した一般的な施工時の断熱性能では、グラスウール断熱材が最も優れた断熱材と言えるそうです。

現在では、内部結露を防ぐための防湿シート施工と通気層工法が確立しているので、正しく施工されたグラスウール断熱材にカビが発生することはないとされています。壁の内部に100mmのグラスウールを詰めて石膏ボードで塞ぎました。

窓下のみ12cmの木枠を組んで上に13.5cmの棚板を張り、100mmのグラスウールを二重に詰めて断熱しました。

トップへ戻る

 6-2 小洋室のじゅうたん

小洋室のじゅうたんを剥がし、壁際のじゅうたん押さえを追加して断熱用の樹脂マットを敷き詰めてからじゅうたんを敷き詰めました。

トップへ戻る

 6-3 パイプファンの取り付け

小洋室の換気口に高密閉電気式シャッタータイプの24時間稼働のパイプ用ファンを取り付けました。湿度センサーが付いているので、普段は弱運転で55%以上の湿度を感知すると強運転に切り替わります。パイプファンの本体は黒ですが、カバ-を被せると全体が白くなります。

トップへ戻る

 6-4 大洋室の工事

大洋室の窓下の壁板を剥がすと発泡スチロールの断熱材が現れました。12cmの木枠を組んで上に13.5cmの棚板を張り、100mmのグラスウールを詰めて石膏ボードで塞ぎました。

トップへ戻る

 6-5 大洋室のじゅうたん

若干変色していた窓下のじゅうたんを幅204cm×奥行36cmほど切り取り、小洋室から剥がしたじゅうたんを切り抜いて張りました。

トップへ戻る

 6-5 結露防止工事完了

大小洋室の北面壁クロスを張り替え、小洋室のカビで変色していた床クロスを取り換え、大洋室窓下の変色していた床クロスを取り換え終わるときれいになりました

トップへ戻る

7 工事後の状況

 7-1 室内の湿度測定結果

大洋室と小洋室の結露防止工事が完了したので、取り付けたパイプファンを24時間稼働させた状態で室内の湿度を測定しました。5月6日から10日までの測定値を見ると、依然としてカビが発生しやすい60パーセントを超えている日と時間帯があります。

5月9日の正午以降は大洋室と居間の湿度が下がって来ましたが、10日の夕方から小洋室の湿度が60パーセントになったのが気がかりです。また、居間は若干湿度が高い日があります。

トップへ戻る

 7-2 空気が動いている

翌週も室内の湿度測定を続けると、大洋室の湿度は時々60パーセントに達する時間帯があります。小洋室はほぼ毎日60パーセントに達する時間帯がありますが、60パーセントを超えることはありません。

小洋室で水曜日と土曜・日曜日は風呂を沸かすので小洋室へ湿度が引っ張られるのでしょう。居間では起床時から就寝時まで電気ポットでお湯を沸かしているので湿度が高くなると考えられます。

また、月曜日と木曜日の天気が悪い日は、室内で洗濯物を干しているので湿度が上がる原因になります。しかし、小洋室に取り付けた24時間稼働のパイプ用ファンのおかげで室内の空気は動いています。これではカビが発生できない状態です。

マンション六階の住戸ですから外を通る人から内部は見えないので、冬季間は大洋室と小洋室のカーテンを外しました。これにより窓下まで垂れ下がる結露はなくなり、うっすらとした結露も現れる回数は激減しました。

ボイラーを使ったセントラルヒーティングのためすべての扉をあけ放ち、欧米のように全室暖房にすれば結露はおさまることは分かりますが、どこのご家庭と同じように家族がいるので理解が得られず実現させることは難しい状態です。

結露は常に動いている空気に触れていることで防ぐことができるという説があるので、自作パソコンに使用する電源装置の予備を利用して、自作パソコン用の小型ファンを窓下に置いて見ようかと考えています。

トップへ戻る

謝辞:謝辞、結露対策を考えるにあたり、赤池学・江本央・金谷年展共著の「日本のマンションに潜む史上最大のミステーク(TBSブリタニカ)」と南雄三著の「断熱・機密のすべて(日本実業出版社)」を参考にしました。