9 タイル補修工事
9-1 タイルはオーダーメイド
タイルは既存タイルに合わせたオーダーメイドになります。既製品で同じものはないと思ってください。製作ロット、光の辺り具合で色が違って見えます。
タイルは施工会社が決定する前に、設計事務所が釜元へ発注します。タイルの必要枚数は、設計事務所が目視と積み上げられた過去のデーターに基づいて算出します。
施工会社が決定してからタイルを発注したら間に合わないのです。足場が出来上がっても焼きあがったタイルが届いていなければ、大規模修繕が遅れて管理組合と区分所有者には莫大な借金が残ります。
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9-2 色合わせには時間かかる
焼きあがったタイルが届き次第工事が行われるのではありません。焼きあがったタイルは既存のタイルと同じ色であることはあり得ないのです。
焼きあがったタイルをタイル壁に張り付けて、周囲のタイルの色と比較します。晴れているとき、曇っているとき、雨のときなどの気象条件や、朝方・昼・夕方などの明るさの違いでタイルの色は微妙に変化します。
試し焼きのサンプルタイルで、周囲のタイルの色と違和感がなくなるまで管理組合は確認します。私はタイル補修の時に試し焼きを四回お願いしました。ですから、タイルの色合わせにおおよそ一ヶ月半程度はかかります。
上の写真は条件により色合いが微妙に変わるようすです。タイルの色合わせが終わって発注すると、必要枚数のタイルが焼成されます。納品までに時間がかかるので、足場の仮設工事が始まるころにタイルが届くようにします。
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概算工事金額書の想定数量より、足場ができ上がってから外壁のタイル全量調査で得られた数量が多い場合は一大事です。信用が厚い設計事務所の場合は問題が起きにくいのですが、万一数量に誤差が生じると、
〇 工事金額のアップ(承認予算を超えたら総会決議が必要)
〇 タイルの追加発注による工期の遅れ
〇 タイルの色合わせに手間がかかる
このような事態が生じたら、管理組合・区分所有者・設計事務所・施工会社も一様に頭を抱え込みます。考えられないような費用が避けられないことになります。ですから、タイルの色合わせは迅速かつ慎重に行いましょう。
設計事務所は修繕設計で安全性を確保し、品質を落とさないよう改修設計を提案しています。
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9-3 タイルの浮き箇所のチェック
建物庁舎と診断時にタイルの浮きを調査します。中央の写真は打診棒といい、タイルを叩く音で浮きが分かります。
直接雨水の侵入に影響を及ぼさない場所や、タイルの周辺の目地が劣化していない比較的軽度の場合は、ネジピンを差し込み樹脂を注入して固定する方法でタイルを張替えをしない場合があります ⇒ 工事費節約。
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9-4 工法別タイル補修
工法別タイルの補修にかかる費用の提案。
張り替え劣化タイルの撤去 タイル張り替え アンカーピンニングエポ
キシ樹脂注入工法
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9-5 劣化による工法の見極め
タイルの浮き
タイル洗浄後にひび割れ・欠損が見つかる場合があります。
設計事務所と施工会社は、調査前にタイル交換するかどうかの基準を決めます。
その他
前提 ・ 職人は決められたことだけをやる
・ タイルは目地が重要
・ 修繕するほどひび割れを起こしてしまうことも
例 ・ 腰高1,200mmまでは行わない
・ 陶辺浮きが1枚の場合は行わない(タイツと下地モルタルの剥離)
設計事務所と施工会社は、調査前にタイル交換するかどうかの基準を決めます。
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実数清算時に外壁タイルの調査枚数が大幅に増えた場合
① 落下の恐れのない場所は注入に変更 ⇒ 一階周囲に花壇がある場合
② 軽微な欠損は張替えを行わない
⇒ ベランダ・共用廊下など、居住者にみえるところは張り替えた方がよい
③ 雨掛かりでない場所は注入に変更 ⇒ ベランダ・共用廊下等の内壁
④ 外壁タイルが陶辺1枚浮きの場合は張り替えない ⇒ 目地が健全な場合
⑤ 腰高1.2mmまでは張り替えない・注入を行わない
⇒ 落下しても事故になる可能性が少ないため
⑥ タイルが1/3程度の場合はサンプルうを最終捨て引張試験を行う
⇒ 接着度0.4N/立方mm以上で張替え・注入も行わない
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9-6 タイル補修方法
〇 張り替え他
タイル(500円/枚)の場合 100,000円/平方
〇 注入工法
エポキシ樹脂注入(350円/穴)の場合
50穴注入樋して17,500円/平方m
補修方法により金額が大きく変わります。タイル付着試験、目視、打診などの劣化調査により、タイル張り替えやピンニング工法が必要かを確認します。その差は約5.7倍にもなります。
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〇 参考例
住戸数40戸、タイル面積1,926.2平方m、タイル全体枚数239,400枚、タイル劣化割合2.4%
1平方m当り
・ 張り替え:100,000円/m3×5m3=500,000円
・ 注入工法:17,500円/m3=×5m3=87,500円
合計:500,000円+87,500円=587,500円の予算を見ます。
補修方法の割合を、調査結果も考慮して50%50%とします。
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9-7 組合員の改善要望
組合員の改善要望アンケートの結果の検討例
組合員から要望のあった修繕・改修内容について、金額を算出してわかりやすく説明します。
〇 多くの住民からの聞き取り
〇 同じ修繕を繰り返さない設計
〇 過剰なせっけいではなくバランスよい設計
〇 優先順位を決め、費用対効果の高い設計
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謝辞:文中に掲載しました写真類は、講演のレジメから転載させていただきました。また、ルーフバルコニーーの写真はアイワハウス株式会社のホームページより転載しました。ありがとうございます。
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