はげちゃんの世界

人々の役に立とうと夢をいだき、夢を追いかけてきた日々

第65章 工事費はいくらかかる

2019年4月14日に札幌市コンベンションセンターで開催された一般社団法人マンション大規模修繕協議会主催のセミナーで、米沢賢治代表理事の講演「どこをなおしたらいくらかかるの」の要約です。

1 はじめに

築30年以上経過したマンションで実際に起きたことです。大規模修繕工事が始まり仮設足場を設置した後に施工会社が実施した外壁の全面調査で、モルタルの浮きが設計事務所が算出していた数値よりも異常に多く見られました。

外壁のモルタルに打診棒を当てて表面をなでると、モルタルが浮いている部分はカラカラカラという音が鳴ります。この音が鳴る部分の浮きを放置するとモルタルが剥離し、落下事故につながるため大変危険です。

対策としては1平方メートル当り16ヶ所に補強材を入れて補修します。このマンションは追加工事が契約金額の20%を超えてしまい、予備費を10%確保していましたが再度総会決議が必要になりました。

資金があったために紛糾しながらも臨時総会の承認を得て工事が実施できましたが、資金不足のマンションですと工事が中断してしまうことも考えられます。どうしてこのような追加工事が発生したのでしょう。

大規模修繕協議会に寄せられる問い合わせの多くは「見積金額が適正かどうか見てほしい」というもので、見積書の内容は業者の立場からつくられたもので専門的な知識のない一般の方々には分かりにくいのです。

施工会社が見積もる工事金額は、設計事務所が行った建物調査と診断結果に管理組合の要望や予算を反映させた「概算工事金額書」に値入して作られます。しかし、概算工事金額書がどのように作られるのかは専門的なことも多いためあまり知られていません。

今回のセミナーでは、建物の調査と診断結果から工事範囲と内容を決めるプロセスをご紹介しながら、工事金額がどのように決められていくのかを分かりやすく説明します。コストに関するトラブルを防ぐためにも是非参考にしてください。

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2 修繕設計について

 1-1 大規模修繕の流れ

大規模修繕の流れは五段階に分けて考えることができます。

 ① 建物調査と診断
  ② 修繕設計(今回のセミナーは、もっとも大切な修繕設計のお話です)
  ③ 施工会社選定
  ④ 修繕工事
  ⑤ アフターフォロー

修繕設計について知っていただくために、次の場面ごとに説明していきます。

 ① 修繕設計とは
  ② 仮設工事
  ③ 屋上防水
  ④ シーリング工事
  ⑤ ベランダー工事
  ⑥ 屋内共用部工事
  ⑦ 下地補修工事
  ⑧ 塗装改修工事
  ⑨ タイル補修工事

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 1-2 修繕設計とは

  1-2-1 修繕設計は何をするのか

マンション管理組合は、大規模修繕のコンサルタント契約をした設計事務所に大規模修繕の予算を提示しません。予算の枠内でどうするのかは後々考えることで、全てを修繕するにはいくらかかるのかを算出してもらいます。

 ① 修繕内容と方法の整理・検討・決定
  ② 工事予算を明確にする(コスト削減の立案)
  ③ 図面の作成(仕様書、見積内訳書、保証項目)
  ④ 見積要領書に反映(施工会社募集時に配付)

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  1-2-2 見積要領書とは

見積要領書は、施工会社募集時に配付する書類で主な項目は次のようなものです。

 ① 提出書類と期限    ⑦ 管理組合との協議事項
  ② 工事場所と規模    ⑧ 現地調査
  ③ 工事範囲と期間    ⑨ 質疑応答
  ④ 契約範囲と方法    ⑩ 提案書
  ⑤ 支払予定       ⑪ 留意事項
  ⑥ 工事保証       ⑫ アフターケア

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  1-2-3 修繕内容・方法の整理・検討

大規模修繕を念頭に、入念な検討のうえ決定します。

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  1-2-4 建物部位ごとに評価

建物調査診断結果に基づき、12項目の建物部位ごとに評価を行い、適正な使用を提示します。

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  1-2-5 診断結果の評価方法

診断結果は劣化現象評価表に記録され、劣化評価度チャートで危険度・発生程度・発生範囲・修繕時期ごとに評価されます。

劣化現象評価表

劣化評価チャート(危険度・発生程度)

劣化評価チャート(発生範囲・修繕時期)

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 1-3 大規模修繕の考え方

大規模修繕のより長持ちさせるための考え方は、長期的な修繕計画を見据えて優先順位を検討し、建物に合った最適な修繕方法を検討して、目指すのは同じ劣化を繰り返さない修繕です。

マンション大規模修繕協議会が推奨する保証(例)は、

 ① 屋上防水  ⇒ 10年または15年保証の付く仕様
             (アスファルト、ウレタン10年、シート15年)

 ② 外壁塗装  ⇒ 5年以上保証の付く仕様
             (シリコン塗材以上)

 ③ 外壁タイル ⇒ 5年以上保証の付く仕様

 ④ ベランダ  ⇒ 5年以上保証の付く仕様
             (ウレタン材の膜厚2ミリ以上)

など、管理組合と予算、費用対効果を踏まえ検討します。但し、施行箇所や施工方法、条件により変更になる場合があります。

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 1-4 概算工事金額書の内容検討

・ 工事金額の目安を算出したもの(調査診断時に作成)。

・ 組合員が提出したアンケートによる修繕・改修要望を反映。

・ 修繕周期15年システム使用の長期耐久材料も検討。

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 1-5 修繕設計の知恵と工夫

概算工事金額書の工事項目順に沿って内容を説明します。

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 1-6 要望の組み入れ

アンケート結果の例で、組合員や居住者から要望があった修繕や改修内容については、概算工事金額を算出して分かりやすく説明します。

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 1-7 工事予定額の検討

長期修繕計画書を確認し、積立状況と次回の大規模修繕積立額を把握します。この場合、10%程度の余力を持ちます。

積立額が不足の場合は、工事内容の検討と一時金及び借り入れ金などの資金調達を検討します。

   例: 概算工事金額     5億3000万円
       管理組合の希望予算  4億円000万円
       差額         1億3000万円

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 1-8 計画上の予定と概算額の相違

長期修繕計画の工事金額と概算工事金額が違うのはなぜでしょう。

・ 分譲時の長期修繕計画
   標準的な分譲マンションを想定して定めた工事内容や・工事費用を基に、規模や形
  態、使用を補正して作成される。

・ 設計事務所作成の概算工事金額
   建物・設備の工事内容と劣化状況に応じて工事項目を設置し項目ごとに工事に係る
  数量に単価を乗じて、これを積み上げて工事費を積算します。

建物の劣化状況と実勢工事単価を踏まえた算出額は、長期修繕計画を作成してから月日が離れるほど異なります。

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 1-9 工事の必要・不必要

・ 仮説足場の必要・不必要、劣化状況で進行している・進行していないにより、工事
  の実施項目を四つに分類する。

・ 劣化状況で進行している・進行していないの一覧表を作成して、理事や修繕委員に
  工事の優先項目を説明する。

・ 仮説足場が必要で、劣化の状況が進行している部分の工事を優先させる。

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 1-10 予算に合わせた修正と精査

概算工事金額書の詳細項目をA・B・C・Dに分けたものを理事・修繕委員に提示し、工事の仕様と方法を説明して管理組合の希望予算と比較検討し、工事範囲や材料と工法を決定する。

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2 仮説工事

 2-1 仮設足場計画

仮足場の設計では枠組み足場とゴンドラ計画の図面を作成し、工事会社の事務所とトイレだけでなく、居住者の生活や動線を含めて安心・安全の確保を重要視し、ゴンドラの足場、一階の開口部、枠組み本足場部分、足場開口部分を明確に示します。

 2-2 養生

養生とは既存物の保護です。アルミ手摺やサッシ水切りなどに傷がつかないように保護することです。

  2-1-2 工法比較

〇 枠組み足場

  ・ メリット  作業性高く、費用が安い。

  ・ デメリット 工期が長い、メッシュシー
          トにより日照や眺望が阻害さ
          れ圧迫感がある、足場を設置
          するスペースが必要。

〇 移動式昇降足場

  ・ メリット  工事中の日照や眺望が阻害されず居住者のストレス軽減になる、
          工期短く、足場設置スペースが不要。

  ・ デメリット 費用が高い。

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 2-3 コスト比較提案例

コスト比較提案例 ⇒ 金額比較

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3 屋上防水工事

積立金を無駄にしない知恵と工夫です。建物を長期保全する防水改修の大事なポイントは、「下地の重要性」・「改修方法の判断」・「納まりを考える」・「屋上防水工法の比較」の四点です。

 3-1 屋上防水工法

既存の防水層、既存押え層の劣化状況を把握したうえで、改修材料と工法を選定します。

  3-1-1 アスファルト系防水

アスファルト防水熱工法、アスファルト防水冷工法、改質アスファルトトーチ工法

  3-1-2 シート防水

加硫ゴム系、非加硫ゴム系、塩化ビニール樹脂系

  3-1-3 塗膜防水

ウレタンゴム系、アクリルゴム系、ゴムアスファルト系、FRP防水系、ポリマーセメント系

  3-1-4 その他

ステンレスシート系

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 3-2 下地の重要性

適切な防水工事には、適切な下地作りが重要です。特に改修工事では、適切な下地処理が新規防水の性能を左右します。

① 下地と強固に固定させる

下地処理をきちんとしなかったら、シート系防水で接着工法の場合は下地との接着性が確保できず、浮きやしわ、防水層の飛散が発生するケースもあります。

② 均一な防水塗膜をつくる

下地処理をきちんとしなかったら、液体系の防水材は下地の不陸によって膜厚が変わるため、部位によって耐用年数に差が出てしまいます。各種調整剤を使って平滑にする必要があります。

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③ 下地が防水に悪影響を及ぼさない

トップコートの塗りの腰部分尾防水層が風化します。地の不陸によって膜厚が変わるため、部位によって耐用年数に差が出てしまいます。各種調整剤を使って平滑にする必要があります。1年で0.2ミリ風化すると、10年で2ミリの防水層が失われてしまうことになります。

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 3-3 改修方法の判断

  3-3-1 現場調査時の工法選定ポイント

① 既存防水の上にかぶせて改修施行が可能か(撤去工法又はかぶせ工法か)

② 改修後の屋上の用途

③ 防水施工の際に障害となるものがあるか(アスファルト系・シート系の材料による
  工事が可能か)

④ 改修後の納まりは万全か

⑤ 要求される耐久性

⑥ 周辺環境(騒音などの作業環境、気候風土など)

  3-3-2 撤去工法の採用が望ましいケース

① ほぼ全面に膨れが発生している、または断熱材の挙動が医師印く接着面が低下して
  いる

② シート防水で口開きや縮みが著しい

③ 防水の裏側に雨水が広範囲に侵入している(水枕状の膨れが広範囲)

④ 断熱ゴムシート芒種など、かぶせ工法に適していない下地

⑤ 機械的固定工法の下地

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  3-3-3 相性が悪いケース

屋上にソーラーを設置している場合、既存ゴムシートの上に部分的に塩ビシートにて防水補修した接着工法のため、塩ビシートの収縮・剥離・雨水侵入の可能性が大きい。

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  3-3-4 機械固定工法の不具合事例

強度の少ない下地に対しての機械的固定工法。

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  3-3-5 かぶせ工法の下地との相性

① 既存防水層の上にかぶせて施工する場合、下地との相性がよい防水材料を選定する
  ことが重要となる。

② 改質アスファルト防水常温粘着工法は、様々な下地にかぶせて施工することが可能
  です。

③ 既存アスファルト防水の場合、改質アスファルト防水をかぶせて施工することによ
  り、積層ができるため強固な防水層を形成することができる。

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 3-4 納まりを考える

どんなに優れた防水層を作っても、防水の裏側に水がまわればすぐに漏水してしまいます。新築では設計で納まりを決めることができますが、改修では現況条件で最適な納まりを考えなくてはなりません。

納まりとは、防水の裏側に水がまわりこまないような仕組みを考えることです。

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  3-4-1 標準的な新築時の納まり

雨水が防水の端末に伝わらないようにします。水切り目地が付いています。

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  3-4-2 このような状態はどうする

端部に雨水が侵入しやすい状態の時にはどうしますか。水切り目地が付いていません。

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  3-4-3 雨水が侵入しやすい事例

端末シーリングに頼る納まりになっていますが、現状でこのような状態の時にどうしますか。

このような場合の解説策は二つあります。

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  3-4-4 協議会推奨の納まり

断熱防水のドレイン周辺の不具合ですが、断熱材をドレインぎりぎりまで張り込むと、熱の働きで口開きが発生しやすくなります。

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〇 ドレン周辺の改善事例

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〇 ドレイン端部からの防水剥離

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〇 改修用二重ドレインの設置

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 3-5 屋上防水工法の比較

  3-5-1 工法比較の知恵と工夫

例:アスファルト防水 ⇒ 塩化ビニル樹脂系シート防水

メリットデメリットイニシァルコストコスト・ランニングコストから工事実施の判断材料とする。

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例:アスファルト防水 ⇒ 塩化ビニル樹脂系シート防水

メリットデメリットイニシァルコストコスト・ランニングコストから工事実施の判断材料とする。

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例:アスファルト防水 ⇒ 塩化ビニル樹脂系シート防水

メリットデメリットイニシァルコストコスト・ランニングコストから工事実施の判断材料とする。

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 3-6 屋上防水工事の知恵と工夫

 適切な防水改修計画のポイント

① 防水層の状況についての認識が改修提案に反映

② 下地との相性を考慮した改修計画を行う

③ 防水端部の納まりの検討が行われているか

④ 騒音・振動の問題に考慮されているか

⑤ 建物の構造体(鉄筋コンクリート構造など)の保護の検討がなされているか
   (アンカー固定工法の是非・断熱工法の検討など)

⑥ 次回の防水改修のことも視野に入れた改修計画となっているか
   (次回もかぶせ工法でいけるか等)

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4 シーリング工事

 4-1 シーリング

シーリングは様々なところで使われています。

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   サッシ廻りシーリング打ち換え          ベランダ手摺り柱脚部分

  避難ハッチ廻り(塗装面)打ち換え      ベランダ雨水排水管部分

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シーリングの劣化現象は目視で確認できます。

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 4-2 基本的な取り組み

〇 大規模修繕時にはシーリングを撤去する。
  ・ 新設することが基本です。

〇 建物の各面および各部位を仕上げ材の有無ごとに調査する。
  ・ 劣化状況が少ないときは撤去・新設しない場合もあります。

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 4-3 シーリング工事施行例

シーリング工事の施工順序は次のようになります。

① 外壁のシーリングをすべて撤去

② マスキングテープを貼る

③ バックアップ材の設置

④ プライマーの塗布

⑤ 新規シーリング施工

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      シーリング撤去             マスキングテープ貼り


  プライマー塗布(若干のシンナー集あり)      シーリング施工

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 4-4 シーリング材の選定

〇 ウレタンノンブリード(メーカー保証5年)

   シーリングの油成分が塗装ににじまない。塗装が外壁の目地部に使用。

〇 超耐候性(メーカー保証10年)

   一般的な耐用年数は5~8年。タイル外壁で目地保護塗装がない場合。

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 4-5 シーリング材の軟化対応

〇 シーリング材の軟化は成分の化学変化によって起きています。
    最近の関東圏のマンションに多い症状です。

〇 シーリングの新規と撤去新設では価格差は三倍以上になります。

〇 シーリングの軟化は「撤去費用+新設費用」となるため、物性試験を必ず行い状況
  を把握します。 

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5 ベランダの防水

 5-1 ベランダとバルコニーの違い

洗濯物を干す、昼間は鉢花に日光を当てるなど、マンションの暮らしでこんなシーンが見られる場所は、ベランダでしょうか、それともバルコニーでしょうか。マンションのベランダとバルコニーの違いを知っている人は意外に少ないのです。

ベランダは、住戸から外に張り出していてある程度の雨風をしのげる屋根のあるスペースを指します。広さにもよりますが、屋根があるので雨の日でも洗濯物を干すことができます。

バルコニーは、ベランダと同様のスペースですが、大きく異なるのは屋根がないことです。また、ルーフバルコニーと呼ばれるものは、下の階の屋根=ルーフを利用したもので通常のベランダやバルコニーよりも広いケースが多くみられます。

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 ベランダとバルコニーの比較


        ルーフバルコニー           ベランダ

 

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 5-2 ウレタン防水施工例

① ベランダ床面、足場床面の清掃

② 虚弱部分の剥離、撤去

③ 下地調整剤の塗布 ⇒ 乾燥後清掃

④ 塗膜防水層の塗布 ⇒ 乾燥後清掃

⑤ 仕上げ塗りをする ⇒ 平場のウレタン厚さ2mm

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6 屋内共用部工事

 6-1 屋内共用部改修工事

〇 各階 
    共用部階段入口の上部内壁にひび割れ。
    塗装と下地補修。

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 6-2 共用廊下床面防水改修の提案

ベランダ及び共用廊下床面防水改修の提案。

〇 全面改修か ⇒ 部分改修か

〇 劣化状況を撮影して説明
    複合防水になっているかどうか、浮きの発生状況、端末シールの有無と劣化状況

工事には仮設足場が必要なため、全面複合防水として改修を行い耐久性を高めることが望ましい。

利用頻度により異なるケースがあるため、状況を説明しながら確認する。

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〇 工事費を節約するため、部分改修も検討する。

現状の劣化状況に対する2つの修繕方法(全面改修・部分改修)の違いをわかりやすく説明。

〇 メリット、デメリットを一覧表にまとめる。

見積金額が概算工事金額を下回ったときに、どの工事を採用する予め決めておく。

〇 床シートの浮きが部分的に発生していることを確認

〇 共用廊下は仮設足場を使用せず工事ができる

〇 全面改修を行い、複合防水で耐久性を向上させることが望ましい

アイワハウス株式会社のホームページより転載20141013あざみ野マンション

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7 下地補修工事

 7-1 下地(ひび我)補修

ひび割れの幅に応じた工法の採用


                    ※ 補修費用は地域によって差がある。

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 7-2 幅0.2mm未満

幅0.2mm未満のひび割れは、微弾性樹脂刷り込みを採用します。


     微弾性材塗布                    微弾性材刷り込み

 

但し、軽微なひび割れは処理しません。

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 7-3 幅0.2mm以上~1.0mm未満

幅0.2mm以上~1.0mm未満のひび割れはデカデックスマット工法を採用します。


  デカデックス刷り込み     リーマット貼り     デカデックス塗り

 

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 7-4 幅0.2mm以上~1.0mm未満

幅0.2mm以上~1.0mm未満のひび割れで、既存塗装が薄い箇所ははダイレクトシール工法を採用します。


     シール材注入        刷り込み

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 7-5 幅1.0mm以上

幅1.0mm以上のひび割れはUカットシール工法を採用します。


      Uカット        シール充填      樹脂モルタル補修

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8 塗装改修工事

 8-1 外壁塗装修繕方法


       高圧洗浄(天井)             高圧洗浄(壁)


         窓養生                養生の通気

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複層仕上塗材E(+α)

① シーラー  下地と取材の接着性、下地の吸込み抑制

② 中塗り(取材)  防水機能、材質感

③ 仕上げ塗装  主事の保護、対候性・タイ汚染正色、
         光沢、防カビ

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         主材塗り             仕上げ塗り(1回目)


       仕上げ塗り(2回目)           塗装完了

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 8-2 塗装の種類

① 防水機能形  柔らかい、防水性、通気性

② 防水性    柔らかい、防水性

③ 可とう形   やや柔らかい

④ 硬質形    固い ← 新築時

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9 タイル補修工事

 9-1 タイルはオーダーメイド

タイルは既存タイルに合わせたオーダーメイドになります。既製品で同じものはないと思ってください。製作ロット、光の辺り具合で色が違って見えます。

タイルは施工会社が決定する前に、設計事務所が釜元へ発注します。タイルの必要枚数は、設計事務所が目視と積み上げられた過去のデーターに基づいて算出します。

施工会社が決定してからタイルを発注したら間に合わないのです。足場が出来上がっても焼きあがったタイルが届いていなければ、大規模修繕が遅れて管理組合と区分所有者には莫大な借金が残ります。

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 9-2 色合わせには時間かかる

焼きあがったタイルが届き次第工事が行われるのではありません。焼きあがったタイルは既存のタイルと同じ色であることはあり得ないのです。

焼きあがったタイルをタイル壁に張り付けて、周囲のタイルの色と比較します。晴れているとき、曇っているとき、雨のときなどの気象条件や、朝方・昼・夕方などの明るさの違いでタイルの色は微妙に変化します。

試し焼きのサンプルタイルで、周囲のタイルの色と違和感がなくなるまで管理組合は確認します。私はタイル補修の時に試し焼きを四回お願いしました。ですから、タイルの色合わせにおおよそ一ヶ月半程度はかかります。

上の写真は条件により色合いが微妙に変わるようすです。タイルの色合わせが終わって発注すると、必要枚数のタイルが焼成されます。納品までに時間がかかるので、足場の仮設工事が始まるころにタイルが届くようにします。

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概算工事金額書の想定数量より、足場ができ上がってから外壁のタイル全量調査で得られた数量が多い場合は一大事です。信用が厚い設計事務所の場合は問題が起きにくいのですが、万一数量に誤差が生じると、

〇 工事金額のアップ(承認予算を超えたら総会決議が必要)

〇 タイルの追加発注による工期の遅れ

〇 タイルの色合わせに手間がかかる

このような事態が生じたら、管理組合・区分所有者・設計事務所・施工会社も一様に頭を抱え込みます。考えられないような費用が避けられないことになります。ですから、タイルの色合わせは迅速かつ慎重に行いましょう。

設計事務所は修繕設計で安全性を確保し、品質を落とさないよう改修設計を提案しています。

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 9-3 タイルの浮き箇所のチェック

建物庁舎と診断時にタイルの浮きを調査します。中央の写真は打診棒といい、タイルを叩く音で浮きが分かります。

直接雨水の侵入に影響を及ぼさない場所や、タイルの周辺の目地が劣化していない比較的軽度の場合は、ネジピンを差し込み樹脂を注入して固定する方法でタイルを張替えをしない場合があります ⇒ 工事費節約。

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 9-4 工法別タイル補修

工法別タイルの補修にかかる費用の提案。


  張り替え劣化タイルの撤去   タイル張り替え     アンカーピンニングエポ
                              キシ樹脂注入工法

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 9-5 劣化による工法の見極め

タイルの浮き

タイル洗浄後にひび割れ・欠損が見つかる場合があります。

設計事務所と施工会社は、調査前にタイル交換するかどうかの基準を決めます。

その他

前提 ・ 職人は決められたことだけをやる

   ・ タイルは目地が重要

   ・ 修繕するほどひび割れを起こしてしまうことも

例  ・ 腰高1,200mmまでは行わない

   ・ 陶辺浮きが1枚の場合は行わない(タイツと下地モルタルの剥離)

設計事務所と施工会社は、調査前にタイル交換するかどうかの基準を決めます。

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実数清算時に外壁タイルの調査枚数が大幅に増えた場合

① 落下の恐れのない場所は注入に変更 ⇒ 一階周囲に花壇がある場合

② 軽微な欠損は張替えを行わない
    ⇒ ベランダ・共用廊下など、居住者にみえるところは張り替えた方がよい

③ 雨掛かりでない場所は注入に変更 ⇒ ベランダ・共用廊下等の内壁

④ 外壁タイルが陶辺1枚浮きの場合は張り替えない ⇒ 目地が健全な場合

⑤ 腰高1.2mmまでは張り替えない・注入を行わない
    ⇒ 落下しても事故になる可能性が少ないため

⑥ タイルが1/3程度の場合はサンプルうを最終捨て引張試験を行う
    ⇒ 接着度0.4N/立方mm以上で張替え・注入も行わない

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 9-6 タイル補修方法

〇 張り替え他

タイル(500円/枚)の場合   100,000円/平方

〇 注入工法

エポキシ樹脂注入(350円/穴)の場合
    50穴注入樋して17,500円/平方m

補修方法により金額が大きく変わります。タイル付着試験、目視、打診などの劣化調査により、タイル張り替えやピンニング工法が必要かを確認します。その差は約5.7倍にもなります。

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〇 参考例

住戸数40戸、タイル面積1,926.2平方m、タイル全体枚数239,400枚、タイル劣化割合2.4%

1平方m当り

 ・ 張り替え:100,000円/m3×5m3=500,000円

 ・ 注入工法:17,500円/m3=×5m3=87,500円

    合計:500,000円+87,500円=587,500円の予算を見ます。

補修方法の割合を、調査結果も考慮して50%50%とします。

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 9-7 組合員の改善要望

組合員の改善要望アンケートの結果の検討例

組合員から要望のあった修繕・改修内容について、金額を算出してわかりやすく説明します。

〇 多くの住民からの聞き取り

〇 同じ修繕を繰り返さない設計

〇 過剰なせっけいではなくバランスよい設計

〇 優先順位を決め、費用対効果の高い設計

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謝辞:文中に掲載しました写真類は、講演のレジメから転載させていただきました。また、ルーフバルコニーーの写真はアイワハウス株式会社のホームページより転載しました。ありがとうございます。

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