1 マンション老朽化の課題
1-1 分譲マンションのストック率
現在のマンションストック総戸数は約644.1万戸(平成29年末時点)である。マンションの居住人口は約1,533万人と推計され、これは国民の約1割にあたる。(平成27年国勢調査による1世帯当たり平均人員2.38人を基に算出)
他の都道府県と比較した北海道のマンションの状況は次の表の通りで、ストック戸数は20万戸を超えてマンション化率は7.59%と全国でも13位と言う高い順位になる。
都道府県名 | マンションストック戸数 | マンション化率 | 順位 |
---|---|---|---|
北海道 | 208,259戸 | 7.59% | 13 |
青森県 | 5,156戸 | 0.88% | 47 |
岩手県 | 13,621戸 | 2.62% | 35 |
宮城県 | 89,963戸 | 9.28% | 12 |
秋田県 | 5,845戸 | 1.38% | 46 |
山形県 | 6,364戸 | 1.55% | 45 |
福島県 | 17,373戸 | 2.25% | 41 |
茨城県 | 38,776戸 | 3.26% | 30 |
栃木県 | 19,113戸 | 2.39% | 39 |
群馬県 | 28,795戸 | 2.28% | 33 |
・ 埼玉県 | 445,814戸 | 14.19% | 7 |
・ 千葉県 | 436,963戸 | 7.59% | 13 |
・ 東京都 | 208,259戸 | 15.91% | 5 |
・ 神奈川県 | 941,234戸 | 22.68% | 2 |
首都圏 | 3,651,134戸 | 21.79% | - |
新潟県 | 48,333戸 | 5.47% | 18 |
富山県 | 8,757戸 | 2.15% | 42 |
石川県 | 16,555戸 | 1.87% | 44 |
山梨県 | 11,578戸 | 3.31% | 28 |
長野県 | 22,881戸 | 2.70% | 34 |
・ 岐阜県 | 17,950戸 | 2.29% | 40 |
・ 静岡県 | 91,053戸 | 5.99% | 17 |
・ 愛知県 | 359,338戸 | 11.57% | 9 |
・ 三重県 | 19,846戸 | 2.61% | 37 |
中部圏 | 488,187戸 | 7.91% | - |
・ 滋賀県 | 40,934戸 | 7.40% | 14 |
・ 京都府 | 138,868戸 | 11.86% | 8 |
・ 大阪府 | 785,098戸 | 19.12% | 3 |
・ 兵庫県 | 54,872戸 | 18.58% | 4 |
・ 奈良県 | 208,259戸 | 9.44% | 11 |
・ 和歌山県 | 16,564戸 | 7.59% | 22 |
近畿圏 | 1,392,701戸 | 16.04% | - |
鳥取県 | 5,777戸 | 2.48% | 38 |
島根県 | 6,086戸 | 2.14% | 43 |
岡山県 | 31,066戸 | 3.79% | 23 |
広島県 | 125,147戸 | 9.84% | 10 |
山口県 | 24,810戸 | 3.81% | 24 |
徳島県 | 10,125戸 | 3.06% | 32 |
香川県 | 26,432戸 | 6.16% | 15 |
愛媛県 | 22,546戸 | 3.50% | 26 |
高知県 | 11,427戸 | 3.26% | 31 |
福岡県 | 361,374戸 | 15.51% | 6 |
佐賀県 | 10,626戸 | 3.27% | 29 |
長崎県 | 26,019戸 | 4.15% | 21 |
熊本県 | 38,752戸 | 5.08% | 20 |
大分県 | 31,980戸 | 6.09% | 16 |
宮崎県 | 13,822戸 | 2.67% | 36 |
鹿児島県 | 13,683戸 | 3.45% | 27 |
沖縄県 | 27,683戸 | 5.23% | 19 |
全国 | 6.979,058戸 | 12.41% | - |
政令市と特別区で比較した札幌市内のマンションのスットック戸数とマンション化率は次のようになります。
1-2 築後30年超のマンション
マンションの建て替え状況に関するアンケート結果で見ると、建築後30年を超えたマンションの実態は「管理するうえでの課題」と「管理を続けていくうえでの不安」が現れる。管理するうえでの課題では、「配管や給水設備が劣化」や「地震などに対する安全性に不安」が5割を超えている。
管理を続けていくうえでの不安では、建物の老朽化が進むことが76.8%で最多である。居住者の高齢化から管理組合に影響が出ることが第二位で73.3%を占め、震災等により被災することが47.5%で第三位となっている。
1-3 設備と機器の変遷
主なマンションの設備等の移り変わりをみると、工事費や維持費の削減と長寿命化や快適性が求められてきている。
1) 給水方式
高架水槽、ポンプ圧送給水方式に加え、1992年(平成4年)ころより直結(直圧・増圧)給水方式が採用されるようになり、改修で変更するケースが多くなってきている。 → 工事費・維持費・動力費にメリット。
2) 排水方式
伸頂通気、通気立て管排水方式に加え、1980年(昭和55年)頃より伸頂通気(特殊排水継手)排水方式が採用されるようになり、改修で採用するケースが多くなってきている。 → 3、または2立て管を1立てにして工事費減額。
3) 給排水管類
鋼管系から腐食しない樹脂系の配管材料の採用が多くなってきている。 → 長寿命化・工事費削減。
4) 給湯器
13号・16号給湯器から、冬場二ヶ所同時給湯が可能な20・24号給湯機に容量がアップしている。 → 快適性。
5) 浴室式
在来アスファルト防水浴室からユニットバス浴室に変換するケースが多くなってきている。 → 防水工事費減額配水管の自階床上化。
1-4 設備再生の考え方
1) 物理的老朽化の問題と対応
・ 改良および改善を含めた設備改修工事による対応が必要。
・ 工事内容や範囲の検討、システムの変更や導入等の検討も必要。
2) 社会的老朽化への対応
・ 現在の生活水準に対応できるよう、住居の機能改善の検討が必要。
・ 専有部分を含めたマンション全体のグレードアップを検討する。
3) 高齢・高経年化への対応
・ 共用部分の設備改修だけではなく、住戸内設備配管改修についても管理組合が対応
する検討が必要。
・ バリアフリー化やニュニバーサルデザインへの対応を検討する。
1-5 計画修繕の基本工事
ほぼ12~15年周期となることが多いようである。
・ 外壁改修、床防水、鉄部塗装工事、金物改修工事が基本工事となる。
・ 大規模な計画修繕工事は、各回ともにこれらの基本工事を主体として行われるが、
これらの他に第三期・第四期では設備関係工事その他、経年により工事の規模は大き
くなる。
・ バリアフリー化やニュニバーサルデザインへの対応を検討する。
1-6 長期修繕計画の見直し時期
長期修繕計画の見直し策提示に、改良改善を含めた設備改修計画で、項目と費用計上を行い、修繕積立金の設定を行う。
① 住戸内専有設備配管の改修を管理組合が共用と一体化として維持管理を行う計画の
場合、費用計上を行い修繕積立金に反映させて積み立てる。
※ 修繕積立金は、共用部の維持管理に使用する修繕費であるので、専有部の維持管理
を組合が一体として行う場合、区分所有者に相応の負担を求めるものとして、修繕積
立金で徴収したほうが良い。
② 給排水システムの変換や新規設備の導入なども、費用計上を行い修繕積立金に反映
させて積み立てる。
1-7 設備再生時の管理組合体制
専有部の居住者の発案で、管理組合の理事会は専門委員会(例「修繕委員会」)を立ち上げ、設備再生のためにコンサルタントへ設備改修工事の設計を依頼し、まとめられた要望などを工事施工者が実現するという流れになる。