はげちゃんの世界

人々の役に立とうと夢をいだき、夢を追いかけてきた日々

第64章 給排水設備の計画的対処

2018年10月20日にTKPガーデンシティ札幌駅前で開催された建装工業株式会社主催のセミナーで、進藤孝一級管工事施工管理技士の講演「給排水管設備の老朽化と計画的対処の方法について」の要約です。

1 マンション老朽化の課題

 1-1 分譲マンションのストック率

現在のマンションストック総戸数は約644.1万戸(平成29年末時点)である。マンションの居住人口は約1,533万人と推計され、これは国民の約1割にあたる。(平成27年国勢調査による1世帯当たり平均人員2.38人を基に算出)

他の都道府県と比較した北海道のマンションの状況は次の表の通りで、ストック戸数は20万戸を超えてマンション化率は7.59%と全国でも13位と言う高い順位になる。

都道府県名マンションストック戸数マンション化率順位
    北海道           208,259戸    7.59% 13 
    青森県                 5,156戸    0.88% 47 
    岩手県              13,621戸    2.62% 35 
    宮城県              89,963戸    9.28% 12 
    秋田県                 5,845戸    1.38% 46 
    山形県                 6,364戸    1.55% 45 
    福島県              17,373戸    2.25% 41 
    茨城県              38,776戸    3.26% 30 
    栃木県              19,113戸    2.39% 39 
    群馬県              28,795戸    2.28% 33 
 ・ 埼玉県           445,814戸 14.19%    7 
 ・ 千葉県           436,963戸    7.59% 13 
 ・ 東京都           208,259戸 15.91%    5 
 ・ 神奈川県         941,234戸 22.68%    2 
  首都圏       3,651,134戸 21.79%    - 
    新潟県              48,333戸    5.47% 18 
    富山県                 8,757戸    2.15% 42 
    石川県              16,555戸    1.87% 44 
    山梨県              11,578戸    3.31% 28 
    長野県              22,881戸    2.70% 34 
 ・ 岐阜県              17,950戸    2.29% 40 
 ・ 静岡県              91,053戸    5.99% 17 
 ・ 愛知県           359,338戸 11.57%    9 
 ・ 三重県              19,846戸    2.61% 37 
  中部圏           488,187戸    7.91%    - 
 ・ 滋賀県               40,934戸    7.40% 14 
 ・ 京都府           138,868戸 11.86%    8 
 ・ 大阪府           785,098戸 19.12%    3 
 ・ 兵庫県              54,872戸 18.58%    4 
 ・ 奈良県           208,259戸    9.44% 11 
 ・ 和歌山県             16,564戸    7.59% 22 
  近畿圏     1,392,701戸 16.04%    - 
    鳥取県                 5,777戸    2.48% 38 
    島根県                 6,086戸    2.14% 43 
    岡山県              31,066戸    3.79% 23 
    広島県           125,147戸    9.84% 10 
    山口県              24,810戸    3.81% 24 
    徳島県              10,125戸    3.06% 32 
    香川県              26,432戸    6.16% 15 
    愛媛県              22,546戸    3.50% 26 
    高知県              11,427戸    3.26% 31 
    福岡県           361,374戸 15.51%    6 
    佐賀県              10,626戸    3.27% 29 
    長崎県              26,019戸    4.15% 21 
    熊本県              38,752戸    5.08% 20 
    大分県              31,980戸    6.09% 16 
    宮崎県              13,822戸    2.67% 36 
    鹿児島県              13,683戸    3.45% 27 
    沖縄県              27,683戸    5.23% 19 
    全国     6.979,058戸 12.41%    - 

政令市と特別区で比較した札幌市内のマンションのスットック戸数とマンション化率は次のようになります。

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 1-2 築後30年超のマンション

マンションの建て替え状況に関するアンケート結果で見ると、建築後30年を超えたマンションの実態は「管理するうえでの課題」と「管理を続けていくうえでの不安」が現れる。管理するうえでの課題では、「配管や給水設備が劣化」や「地震などに対する安全性に不安」が5割を超えている


管理を続けていくうえでの不安では、建物の老朽化が進むことが76.8%で最多である。居住者の高齢化から管理組合に影響が出ることが第二位で73.3%を占め、震災等により被災することが47.5%で第三位となっている。

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 1-3 設備と機器の変遷

主なマンションの設備等の移り変わりをみると、工事費や維持費の削減と長寿命化や快適性が求められてきている

  1) 給水方式

高架水槽、ポンプ圧送給水方式に加え、1992年(平成4年)ころより直結(直圧・増圧)給水方式が採用されるようになり、改修で変更するケースが多くなってきている。 → 工事費・維持費・動力費にメリット。

  2) 排水方式

伸頂通気、通気立て管排水方式に加え、1980年(昭和55年)頃より伸頂通気(特殊排水継手)排水方式が採用されるようになり、改修で採用するケースが多くなってきている。 → 3、または2立て管を1立てにして工事費減額。

  3) 給排水管類

鋼管系から腐食しない樹脂系の配管材料の採用が多くなってきている。 → 長寿命化・工事費削減。

  4) 給湯器

13号・16号給湯器から、冬場二ヶ所同時給湯が可能な20・24号給湯機に容量がアップしている。 → 快適性。

  5) 浴室式

在来アスファルト防水浴室からユニットバス浴室に変換するケースが多くなってきている。 → 防水工事費減額配水管の自階床上化。

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 1-4 設備再生の考え方

  1) 物理的老朽化の問題と対応

・ 改良および改善を含めた設備改修工事による対応が必要。

・ 工事内容や範囲の検討、システムの変更や導入等の検討も必要。

  2) 社会的老朽化への対応

・ 現在の生活水準に対応できるよう、住居の機能改善の検討が必要。

・ 専有部分を含めたマンション全体のグレードアップを検討する。

  3) 高齢・高経年化への対応

・ 共用部分の設備改修だけではなく、住戸内設備配管改修についても管理組合が対応
  する検討が必要

・ バリアフリー化やニュニバーサルデザインへの対応を検討する。

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 1-5 計画修繕の基本工事

ほぼ12~15年周期となることが多いようである。

・ 外壁改修、床防水、鉄部塗装工事、金物改修工事が基本工事となる。

・ 大規模な計画修繕工事は、各回ともにこれらの基本工事を主体として行われるが、
  これらの他に第三期・第四期では設備関係工事その他、経年により工事の規模は大き
  くなる。

・ バリアフリー化やニュニバーサルデザインへの対応を検討する。

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 1-6 長期修繕計画の見直し時期

長期修繕計画の見直し策提示に、改良改善を含めた設備改修計画で、項目と費用計上を行い、修繕積立金の設定を行う。

① 住戸内専有設備配管の改修を管理組合が共用と一体化として維持管理を行う計画の
  場合、費用計上を行い修繕積立金に反映させて積み立てる。

※ 修繕積立金は、共用部の維持管理に使用する修繕費であるので、専有部の維持管理
  を組合が一体として行う場合、区分所有者に相応の負担を求めるものとして、修繕積
  立金で徴収したほうが良い。

② 給排水システムの変換や新規設備の導入なども、費用計上を行い修繕積立金に反映
  させて積み立てる。

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 1-7 設備再生時の管理組合体制

専有部の居住者の発案で、管理組合の理事会は専門委員会(例「修繕委員会」)を立ち上げ、設備再生のためにコンサルタントへ設備改修工事の設計を依頼し、まとめられた要望などを工事施工者が実現するという流れになる。

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 1-8 設備再生に要する期間

  1) 共用部と専有部の設備改修を合わせて行っ
   た場合に想定される作業期間(住戸内立入工
   事)


  2) 共用設備改修のみ行った場合に想定される
   作業期間


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2 給排水設備の改修手順とポイント

住戸内設備配管改修を想定した手順は次の通り。

1)パートナーを選ぶ

2)設備の痛みを知る

3)改修基本計画を作成する:改修の物決め

4)改修実施設計を作成する

5)施行者を選定する

6)工事着手前準備

7)工事中

8)工事完了後

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 2-1 パートナーを選ぶ


  1) 給排水設備改修工事はなぜ行うか

① 痛みや不都合(漏水事故や事故修繕)が発生・増加した。

② 長期修繕計画の計画修繕年度に近くなった。

③ 維持管理会社・専門家・管理会社やなどから助言があった。

  2) 自分のマンションの給排水設備がどのよう
   になっているのか、居住者に説明できるか

① どのように各戸に水が供給され、どのように排出されているのか。

② 理事・委員でマンション内の給排水設備を見て、現状を知ろう。

  3) 改修工事のパートナーは

① 改修設計事務所(設計・監理方式:設備改修専門事務所は少ない)。

② 管理会社(設計から工事まで下請けを利用した総合請負方式)。

③ 工事会社(設計責任施工方式)
    設備改修工事業者、総合改修工事業者、管理会社系。

④ マンション管理士(設備改修専門実務者は少ない)。

⑤ マンション内の専門家や理事経験者による委員会
  ※1 パートナーを選定するため第三者コンサルタントに依頼:経歴・実績。
  ※2 改修工事会社から実務を頼んでいるパートナーは選定しない。
  ※3 管理組合からの直実績のないパートナーは選定しない。

  4) 改修工事はどのように進めるのか

① 改修セミナーに参加して勉強。

② 工事見学会(他マンションでの実地見学)。

③ 参考資料(改修の手引き本など)を収集して勉強。

④ パートナーからレクチャー(教えてもらう)。

  5) 給排水設備改修工事は共用部分だけ行うの
   か、専有部分はどうするか。

共用部が傷んでいれば、専有部も傷んでいる。

① 規約の必要な場合。

② 現状規約では、細かなところまで区分されているマンションは少ない。

③ 専有部分の維持管理は、個人で行うより組合で行った方がメリットが多い。

④ 専有部分の修繕費用はどうするのか。

⑤ 長期修繕計画に早めに組み入れて準備を(個人負担は難しい)。

⑥ 平成8年以降、住戸の専有設備配管の改修工事を管理組合が行う事例が多くなって
  いる。(横浜の121の管理組合で、近5年間に共用と専有を併せて給排水改修工事
  を行った件数は58件)。

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 2-2 設備の痛みを知る


  1) 調査の方法

① 一時目視調査 → 対象:設備全体

 ・ 給水設備で目視できる箇所の調査

 ・ 資料調査(設計図・竣工図、修繕履歴、点検報告、清掃報告)

 ・ 居住者へのアンケート調査(痛み、不具合、リフォーム状況)

② 二次非破壊調査 → 対象:パーツ

 ・ 内視鏡(水栓類の取り外し)

 ・ 超音波、X線(保温材の取り外し)調査

③ 三次破壊調査 → 対象:パーツ

 ・ 使用している給水管・排水管・器具を抜管しサンプル調査を行う。

  2) 調査の時期

① 長期修繕計画作成時:修繕時期策定のための調査(一次・二次調査)。

② 改修工事実施予定:工事予定の2~3年前(一次・二次・三次)。

  3) 給水管の調査場所と箇所数

① 調査場所
  A)共用部:土中埋設管部(直結部・水槽以下部)、横主管部(屋上・最上階等・床
   下ピット内)・立て主管部(継手・異種金部)・給水施設装置。
  B)専有部:住居内配管。

② 調査箇所数(二次・三次調査:給水源から遠・中・近)
  A)土中埋設管部  :単棟型1~2ヶ所、団地型3~4ヶ所)
  B)横主管部    :単棟型1~2ヶ所、団地型3~4ヶ所)
  C)立て管部    :単棟型1~2ヶ所、団地型3~4ヶ所)
  D)量水器廻り枝管部:単棟型遠中近3住戸×2ヶ所、団地型3住戸×2ヶ所×7
  E)住戸内給水部  :単棟型遠中近3住戸×2ヶ所、団地型3住戸×2ヶ所×7

③ 調査方法
  A)土中埋設部   :掘削目視、掘削装置
  B)横主管部    :目視、抜管
  C)立て管部    :目視、抜管
  D)量水器廻り枝管部:目視、抜管
  E)住戸内給水管部 :内視鏡
  F)給水施設装置  :目視

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  4) 配水管の調査場所と箇所数

① 調査場所
  A)共用部
  B)専有部

② 調査箇所数(二次・三次調査:給水部から遠・中・近)
  A)土中埋設部   :単棟型1~2ヶ所、団地型3~4ヶ所)
  B)横主管部    :単棟型1~2ヶ所、団地型3~4ヶ所)
  C)立て管部    :単棟型1~2ヶ所、団地型3~4ヶ所)
  D)量水器廻り枝管部:単棟型遠中近3住戸×2ヶ所、団地型3住戸×2ヶ所×?
  E)住居内給水管部 :単棟型遠中近3住戸×2ヶ所、団地型3住戸×2ヶ所×?

③ 調査場所
  A)土中埋設部  :掘削目視、掘削抜管
  B)横主管部   :目視、抜管
  C)立て管部   :目視、抜管
  D)通気管部   :目視(近年、通期管の不具合が負い)
  E)住戸内給水管部:内視鏡

④ 調査管種
  A)台所系に使用されている鋼管系排水管(腐食と漏水等)
  B)浴室系に使用されている鋼管系排水管(腐食と詰まり等)
  C)便所系に使用されている排水用鋳鉄管(尿石の付着による閉塞)
   ※ 樹脂系は腐食しないため、不具合や事故の発生履歴を確認する。

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 2-3 調査方法の種類

  1) 目視調査

配管等の設備の外面から腐食・漏水・破損等を目視にて視察し、管理者からのヒアリング・使用状況を総合的に判断する。


  2) 内視鏡調査

配管内部に内視鏡を挿入し、配管内部の錆こぶの発生状況や、腐食の進行速度を定期的に知ることができる。内視鏡検査は、非破壊的に管内の錆こぶの状態を直接観察することができ、カメラやビデオに記録として残すことも可能。


  3) サンプリング調査(抜管調査)

配管の一部を切断縦割りにして配管内部の状況を観察できる。マイクロポイントメーターを用いて、配管の推定残存年数を知ることもできる。


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  4) X線調査

X線調査は試験体にX線を照射し、物質内部の密度差によって透過したX線の強度に差が生じることを利用しこれをフィルム状の温度差として検出する方法である。サビこぶ・スケールの付着状況などの内部腐食状況の概略、および腐食減肉による配管の腐植土の概略を把握できる。


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  5) 超音波肉厚調査

超音波厚み計を使用して配管の残存肉厚を測定する。配管の径別に測定点数を設け、測定したデータを表にまとめ推定寿命年数を明らかにする。

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 2-4 継手の腐食

  1) 水道用亜鉛メッキ鋼管と継手内部の錆腐食

・ 建築後25年、亜鉛メッキ鋼管、廊下天井共用管100Aの場合。


・ 建築後14年、亜鉛メッキ鋼管、屋上給水本管80Aの場合。


・ 建築後20年、亜鉛メッキ鋼管、屋上給水本管80Aの場合。


・ 建築後25年、亜鉛メッキ鋼管、天井横引き管50Aの場合。


  2) 硬質ポリ塩化ビニルライニング鋼管と継手
   内部の錆腐食。

・ 建築後13年、塩化ビニルライニング鋼管、フランジ継手部に成長したリング状の
  錆こぶ。


・ 建築後11年、塩化ビニルライニング鋼管、給水枝管エルボ切り断面と内部サビこ
  ぶ、経路がほとんど閉塞している。


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・ 給水枝管、管内部のファイバースコープによる撮影写真。


・ 建築後33年、地上五階建ての一階住戸、トイレ床下の専有給水枝管改修工事によ
 りごく微量の漏水が判明した。作業員が触れたところ一気に漏れ出した。隠れた場所で
 漏れている場合は気づかないという怖さがある。


・ 異なる金属が接触する部分では腐食が進行する。水道メーターの廻りは特に注意を
 要する。


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 2-5 配管の経年劣化

・ 立て外部の劣化と継手部の劣化


・ 横主管の劣化(鋳鉄管)

滞留物より発生した硫化水素ガスにより配管上部が破損した。


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 2-6 超高層マンションの集合管継手

  1) 通気・勾配不良による滞留

・ 地上22階建て鉄筋コンクリート造(一部鉄筋コンクリート造)、住戸95戸(5
  ~22階)+店舗、事務所(1~4階)、築25年。

・ 台所単独系統排水管にて6階住戸内より、流し台シンクに汚水の逆流および異臭が
  発生。

※ オフセット配管:配管経路を平行移動する目的でエルボまたはベンド継手により構
  成されている配管の移行部分。


  2) 集合継手(セクスチャ継手)

・ 地上36階建て、鉄筋コンクリート造、住戸329戸+店舗、築29年。

・ 排水管改修工事の際にサンプル抽出した継手の羽根リングの摩耗から、適正なエ
  アー芯を形成できずに排水が流れ、通期が確保できない状況にあった。

・ 排水が一気に流れることで立て管内の空気を押し出し、押された空気が枝管に逃
  げ、接続される衛生器具に影響が出ていた。

 ※ セクスチャ継手:1本の管で排気と通気が行われる方式。排水は羽根リングを通
   過することで管内の内壁に沿って流れ、排水立て管の中心部に形成されるエアー芯
   の廻りを旋回しながら流下する。また、旋回する流れにより、排水の流下速度を押
   さえる。


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3 基本改修計画の作成

現状設備の把握:共用部と専有部の区分、既存設備の配管経路、痛み。

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 3-1 改修工事範囲

設備システムのすべてを改修範囲とすることが望ましいが、予算上難しい場合は、修繕項目に次を参考にして優先順にをつける。

 A) 痛みと劣化による範囲

 B) 二重投資を考慮した範囲

 C) 工事予算による範囲

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 3-2 改修工事範囲

① 設備システムの変遷の確認が必要。

② 設備システムのパーツ故障時にはシステム変遷の検討が必要(二重投資の防止)。

③ イニシャルコスト(改修工事費)・メンテナンスコスト(維持管理費)・ランニン
  グコスト(運転動力等光熱費)を合わせた検討が必要。

 ※ 高架水槽給水方式→加圧給水方式→直結(増圧・直圧給水方式へ)。

 ※ 伸頂通気・通気立て管排水方式
     特殊継手排水方式(2本や3本の立て管を1本に)。

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 3-3 工事の種類

① 更新工事:取替え(共用排水と専有拝観は建築解体復旧が伴う)。

② 厚生工事:延命(エポシキ樹脂ライニング広報:審査証明広報)。

③ 予防工事:延命(膜式脱気、機械式脱気、電気防食、磁石、イオン化)。

  ※ 給水管尾場合:除錆、防錆、赤水、イニシャルコスト、メンテナンスコスト、
    ランニングコスト、補償範囲補償期間の検討を行うとともに20年から25年の
    サイクルで費用比較を行う。

  ※ 配水管の場合:5年前頃から排水管構成も審査証明を取得し、延命工事が行わ
    れるようになってきた(費用対効果は悪い)。

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 3-4 改修内容の検討

耐久性がありコストの安い材料の比較を行い選定する。配管環境にあった材料の選定が必要となる。

① 現状配管経路案:現在配管されている管を撤去し新たに配管を行う。

 ※ 給水管:仮説配管を行い断水時間を少なくして行う手法と、毎日作業時間内を断
   水して行う手法がある。

 ※ 配水管:排水管の建物の構造上仮説配管は難しく、毎日作業時間内を排水禁止と
   断水を行いながら工事を行う手法。

② 現状脇配管経路案:新たに躯体に穴を開けて現状配管小脇に新設配管を行い、配管
  切り替え後に既存配管の撤去を行う。

 ※ 給水・排水とも新たな配管スペースが必要になるとともに、構造体に穴を新たに
   開けることになる。

 ※ 仮設配管が不要となる。(既存配管を使用したままで新設配管を行うので切り替
   え時のみ断水や排水禁止が発生する)。

③ 別位置配管経路案:外壁など躯体をあまりいじめない配管位置に新設配管経路を行
  う。

 ※ 仮説配管は不要となるが仮説足場などに仮設費用がかかる。(既存配管を使用し
   たままで新設配管を行うので切り替え時のみ、断水や排水禁止が発生する)。

 ※ 外壁などの立て管とメーターまでの配管が露出することとなる。

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 3-5 工程の想定

① 1住戸内工程(工事日程)と断水・排水禁止時間・期間の想定。

② 立て住戸系統工程と断水・排水禁止時間・期間の想定。

③ 全体工程と断水・排水禁止時間・期間の想定。

④ 工事期間:住戸内工事の場合、玄関の開閉から熱が出入りするので、春又は秋の工
  事期間が多い。

これまでの物決めには工事費による影響が多いため、概算工事費の算出が不可欠となる。

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 3-6 その他

① 見積要項(見積条件)の資料作成、検討物決め確定
    設計完了後の工事業者選定に必要。

② 総則の資料作成、検討物決め確定
    改修仕様書の総則に記載される保証や工事完了後の定期点検の内容や機関の物決
   めを行っておく。

③ 共通仮設設置場所の資料作成、検討物決め確定
    改修仕様書の共通仮設に記載される現場事務所・職方休憩所・仮設便所・仮設流
   し・材料置き場・配管加工場・発生材置き場などと工事車両の駐車場の配置の物決
   めを行っておかないと、仕様書の作成ができない。

④ 委員会との協議:これまでの検討資料を3回から4回に分けて物決め検討・協議を
   行う。

⑤ 改修工事の内容と方向性の説明を居住者に説明を行うとともに、居住者の意見等を
   聞く。

⑥ 専有部を合わせて行う場合には何回も説明を行い、住戸内立ち入り工事となり在宅
  のお願いを合わせて行う。

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4 改修実施設計

基本計画の物決め決定事項を基に設計図書を作成する作業。

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 4-1 官公庁との協議と申請

① 給水方式を直結(増圧・直圧)給水方式に変換する場合、水道事業者と協議を行
  い、確認を行う必要がある。

② その他、保健所(水槽廃止)、電力会社(動力変更)他との協議。

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 4-2 改修工事仕様書の作成

① 総則

② 共通仮設・直接仮設工事

③ 共用給水設備改修工事

④ 共用排水設備改修工事 

⑤ 住戸内専用設備配管改修工事

⑥ 建築工事(内装解体復旧)

⑦ 外構j工事

⑧ 仕様資材メーカリスト
  ※ 各工事種目度との仕様書の作成を行う。

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 4-3 設計積算書の作成

① 建築図面CADデーター化
   住戸8タイプ8、配置図1、住棟平面図7(1F、2F、3F、4F、5F、6F、7F、8F、9F、屋
  上図)。

② 改修設計図
   表紙1、図面リスト1、配置図1、系統図2、住戸配置図8タイプ8、住戸内装解
  体復旧図8タイプ8、住棟平面図7、ポンプ室廻り詳細図1、量水器廻り詳細図1、
  配管雑詳細図1、外構図1・・・合計32枚。

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 4-4 設計積算内訳書の作成

改修設計図から数量拾いを行い、実施設計積算内訳書(標準歩かかりと建設物価による)を作成。

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 4-5 委員会と協議

改修実施設計について検討・協議を行う。

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 4-6 設計居住者説明会

① 改修工事の決定内容を居住者へ説明する。

② 専有部を合わせて行う場合には、何回も説明会を行い、住戸内立ち入り工事となり
  在宅のお願いを合わせて行う。

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5 施工者を選定する


 5-1 見積参加希望業者募集条件、
            選定基準作成

① 改修工事経歴 ② 資本金 ③ 技術者数 ④ 工事資格他。

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 5-2 見積参加希望業者募集方法、
            見積業者選定

① 募集方法等
   A) マンション内工事経験者    B) マンションへの営業者
   C) 当該マンション内での公募   E) オープン公募(新聞等)

② 募集期間
   A) マンション内公募:10~14日間程度で設定
   B) マンション関係の新聞公募:掲載の2~3ヶ月前から準備

③ 見積参加希望者一覧表作成:募集条件尾一覧表を作成する

④ 見積業者選定
   A) ゼネコン系  B) 管理会社系  C) 管工事系  E) 改修専業系

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 5-3 見積要項(条件)書の作成

工期、支払い条件、契約書式、作業時間、見積期間、提出書類、提出方法、調査時の注意事項。

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 5-4 参考見積項目書の作成

設計清算内訳書の単価及び金額を抜いた参考見積項目書作成。
 ※ 提出された見積の比較を容易にする。

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 5-5 現場説明会(見積書渡し)

① 見積参加業者への現場説明会お知らせ通知書の作成と通知

② 現場説明会で配付する設計図書のコピー

③ 改修設計図書「見積要項(条件)書、改修仕様書、改修設計図、参考見積項目書
  (CD)、参考新築時竣工図、住戸内写真」を渡し工事内容等の説明を行う。

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 5-6 見積質疑応答

① 設計図書や調査での見積質疑を提出させ、胸痛回答書を作成して見積各社に配付
  (メール)し、見積の公平性を確保する。

② この時点までに、設計図書の変更、通達事項、追加資料があれば合わせて送付す
  る。

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 5-7 見積比較とヒアリング

① 各社が提出した見積を一覧表にして、設計単価を基準とした価格の色分け表示を行
  うとともに、提出資料のチェックを行い比較表の作成。

② 理事会や委員会で比較表の説明を行い、見積業者からもう少し話を聞きたい(ヒア
  リング)業者の選定。

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 5-8 ヒアリングと工事業者選定

① ヒアリング業者へのヒアリング日時通知書の作成

② ヒアリング時に何を聞くかのメモを作成(各業者に同じ質問をし、比較を容易にす
  る)

③ ヒアリング実施(30分間の休憩をはさみ各1時間)

④ 工事業者選定(内定)

⑤ 内定通知書・残念お断り通知書作成

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 5-9 通常総会または臨時総会

① 工事業者、工事費、予算費(10%)、工事監理費などの承認

② 総会の一ヶ月程度前にい、設計説明会を開催

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6 工事着手前準備


 6-1 内定業者と着工打合せ

※ 民間連合協定「マンション修繕工事請負契約約欽」が2016年4月制定。

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 6-2 工事説明会資料作成の指導

表紙、工事概要、仮設計画、工事監理体制、緊急連絡体制、実施工程表、居住者へのお願い、断水・排水禁止計画、広報計画。

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 6-3 工事説明会立ち合い(_日_回)

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 6-4 施工計画作成指導

実施工程表、仮設計画、施工管理体制、緊急連絡体制、資材搬入計画、広報計画、安全計画。

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 6-5 工事要領書作成指導

配管工事(管種毎)、保温、断水、改装解体復旧等。

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 6-6 着工前提出書類確認

着工届、現場代理人届(経歴書共)、実施工程表、下請け業者リスト。

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 6-7 契約立合

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 6-8 職方設計監理趣旨説明

本工事を行う職方を集め、変場入場の注意と設計監理趣旨説明を行う。

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 6-9 住戸内調査立合

調査シートの確認始動、調査方法の立合確認。

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 6-10 選考工事監理

工事業者による工程・品質・安全・養生・人員配置など施工要領の確認工事の監理。

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7 工事中

工事監理はマンションの居住者(管理組合)に代わって行う
  ・ 設計図書通りに適正な工事を行っているか。
  ・ 居住者利益に「反することを行っていないか。
  ・ 安全安心な工事を行っているか。
などをチェックする。


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 7-1 工事監理の方法

① ポイントの監理
  工事監理__週__人日/週(事務所内書類作成共)
  週1回の工事チェックでは、工事管理責任が取れないため管理責任のないコンサル監
 修)となる)。
  ※ 週2~4回の工事チェックの場合は、工事責任のある工事監理ができる。

② 組合報告__回/月×__人日(設備・内装)(事務所内書類作成共)。

③ 検査:共用部分の中間・竣工検査を行う。
  (住戸内工事の場合、組合検査は一般的に行わず、区分所有者等の検査承認による。
  監理検査は工事立合い住戸のみ検査を行う)。

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 7-2 工事監理業務の内容

① 工程確認:工事進捗状況の確認  ② 使用材料の確認

② 安全に関する助言        ④ 広報に関する助言

⑤ 連絡事項に関する助言      ⑥ 検討事項の指導、現場定例会議

⑦ 各種検査の実施による品質の確認、検査記録の確認

⑧ 定例委員会出席報告

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8 工事完了後

・ 工事記録(竣工図書類)の確認を行い、補償期間内のアフターを行う


① 竣工図書作成指導、監修

② 工事費の清算

③ 定期点検計画の助言

④ 性能保証期間内の瑕疵に対する指導

⑤ 監理完了報告書の作成、提出

⑥ 竣工引き渡し立合

⑦ 1年目定期点検の指導及び立合、報告書確認

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9 設備改修工事内容

 9-1 なぜリニューアルが必要か

マンション設備は、人体に例えれば消化管・血管・神経に当たり、給水・急騰設備、排水・通期設備、ガス設備、電気設備、情報設備、消火設備他、多岐にわたっている。

毎日の暮らしに欠かせないライフラインでありながら、建築や内装に比べて視覚的に気づきにくいもので、掛け替えのない資産として快適な環境・状態を保つためには早期の検討が何よりも不可欠と言える


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 9-2 給水設備とは

マンションにおける主な給水設備の概要

参考:受水槽+高架水槽方式

・ 高架水槽給水方式で、集合体で用いられる給水方式の一つ。

・ 高架水槽から水栓までの高低差が水圧となり、各住戸に給水する。
   (高架水槽が大きくなるほど水圧は増大)

・ 受水槽の容量は全住戸1日当りの水道使用量の約1/2となる。

・ 高架水槽の容量は全住戸1日当りの水道使用量の約1/5~1/10となる。


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 9-3 給水方式の選定

  9-3-1 給水方式と特徴

① 設備 受水槽+高架水槽
    概要:水槽と高架水槽に貯水。高架水槽から各水栓の高低差が水圧となる給水さ
      れる。
    緊急時の給水:停電時はポンプが作動しない。ただし、高架水槽に貯水されてい
      る水の利用は普段通り可能である。受水槽の水はくみ上げ利用可能。
    ポンプのメンテナンス:製造メーカーによる定期点検。
    受水槽清掃:専門業者による清掃(年1回)。
    設備の更新:受水槽+高架水槽+揚水ポンプ。

② 設備 受水槽+加圧給水ポンプユニット
    概要:受水槽に貯水する。加圧給水ポンプユニットにより、安定的に各戸へ給水
      される。
    緊急時の給水:停電時はポンプが作動しない。ただし、受水槽に貯水されている
      水の汲み上げ利用は可能である。
    ポンプのメンテナンス:製造メーカーによる定期点検。
    受水槽清掃:専門業者による清掃(年1回)。
    設備の更新:受水槽+加圧給水ポンプ。

③ 設備 直結増圧給水ポンプユニット
    概要:水道本管の水圧を利用し、補助的に直結増圧給水ポンプが作動することで
      安定的に各戸へ給水される。
    緊急時の給水:停電時はポンプが作動しない。ただし、水道本管の供給圧力の範
      囲で、少量の水が利用可能にある。
    ポンプのメンテナンス:製造メーカーによる点検(年1回)。
    受水槽清掃:不要。
    設備の更新:直結増圧ポンプ。

④ 設備 直結増圧給水ポンプユニット+高架水槽
    概要:水道本管の水圧を利用し、補助的に直結増圧給水ポンプが作動することで
      高架水槽に貯水する。高架水槽から各水栓の高低差が圧力差となり給水され
      る。
    緊急時の給水:停電時はポンプが作動しない。ただし、高架水槽に貯水されてい
      る利用は可能である。
    ポンプのメンテナンス:専門業者による清掃(年1回)。
    設備の更新:高架水槽+直結増圧ポンプ。

近年は、直結増圧給水方式へ変更されるケースが非常に多い。受水槽類の清掃費が削除され、より衛生的な水の確保や受水槽設置スペースの有効利用といったメリットがある。

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  9-3-2 給水管の劣化

金属による配管材料は経年劣化による腐食のため閉塞などの不具合が発生する。

築年数を重ねるごとに、閉塞率も大きくなる傾向にある。
  ※ 既存の給水管の管種により閉塞状態は異なる。
  ※ 建物の築年数や、配管の施工状態、給水されている水の成分(地域・水源)など
   により、赤錆の発生具合は異なる。


給水管の漏水被害は、自身の階だけが対象でなく下階への被害の方がより大きなものになる。安全で衛生的な給水環境を保つために、給水管による漏水が1件でも発生したタイミングから、改修工事計画を検討しなければならない。

配管の不具合は、接手部(接合部)に多く発生する。これは、表の通り継手類の内面処理方法に起因する。(但し、直観部の配管には、昭和40年代全般より普及された硬質塩化ビニルライニング鋼管が使用されているため、不具合はあまり発生しない)。


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  9-3-3 使用される主な配管材料


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  9-3-4 改修工法の検討

給水管の更新・改修工事は図のように分類される。(共用部・専有部共通)。


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  9-3-5 共用部の更新工事

隠蔽方式(既設同ルート)

既存の配管ルートとほぼ同じルートとし、既存の配管材料から近年開発された耐久性の高い配管材料を用いて更新する。既存移管が撤去された時期は、仮設管撤去に伴い壁・天井の解体・復旧の建築工事を伴う。


露出方式

既存の配管ルートとは別に、新規ルートにて配管を敷設する。既存と同ルートの更新では多額の建築工事を伴う場合や、配管工事が困難な場合に選択されるケースがある。建物上の都合から、一部のみを露出配管とするケースもある。

新規給水管をメーターボックス内の量水器に接続されるため、壁やメーターボックス扉に穴あけが必要になる。共用廊下上部に新規給水管が敷設されるため、美観上の問題が発生する。


隠ぺい方式(敷設同ルート)

既存の配管ルートとほぼ同じルート計画・更新する。配管を撤去・新設するために、器具の脱着、壁・床・天井の解体・復旧などの建築工事を伴う。居住者は工事範囲の片付けをしなければならない。入室作業日数は4~6日を目安とする。

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  9-3-6 共用部の更新工事

台所の工事の流れ(イメージ)


廊下の工事の流れ(イメージ)


洗面所の工事の流れ(イメージ)


ユニットバス解体状況(イメージ)


露出配管工法

隠ぺいされている既存の配管ルートとは別に新規ルートにて配管を敷設する。壁・床・天井の解体、復旧は行わず、壁・天井などに配管モールなどを取り付けて給水管を敷設する。既存同ルートによる更新では、多額の建築工事を伴う場合に予算の都合上選択されるケースがある。壁・天井に新規給水管が敷設されるため、美観上の問題が発生する。


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 9-4 厚生工事

既存配管の内面を、エポキシ樹脂ライニング(コーティング)することで給水管を再利用する工事。専有部における給水管で実施されるケースが多い。更新工事と比較して工事費や居住者の在宅日数が軽減される。(既存の給水管が著しく腐食・劣化している場合は構成工事を採用できない。また、給水管にしか適用されず、給湯管は更生できずに取り残されてしまう)。

いくつかの工法が存在するが(財)建築保全センターなどによる「保全技術審査証明」を取得していることを一つの目安として選択される。厚生工事後の給水管の耐用年数はおよそ10~15年(補償は5~10年)となるため、短いスパンで再度工事を実施しなければならない。

主な給水管校正工法は、アクアシャトルライニング工法(工事日数1日)、NPLⅢ工法(工事日数3日)、NPBラビット工法(工事日数1日)、NPBⅡ工法(工事日数2日)、NewTube-Ⅱ工法(工事日数1日)などがあり、工事日数は工法ごとの樹脂を塗布・乾燥させる回数により異なる。


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 9-5 マンションの排水方式

マンションにおける排水方式には大きく3つのタイプがある。

・ 排水立管が3系統あるタイプ
  ・ 浴室・洗面・洗濯の雑排水系統
  ・ 台所単独の雑排水系統
  ・ 便所単独の汚水系統

・ 排水立管が2系統あるタイプ
  ・ 浴室・洗面・洗濯・台所の雑排水系統
  ・ 便所単独の汚水系統

・ 排水立管が1系統のタイプ
  ・ 浴室・洗面・洗濯・台所・便所のすべてが合流

いずれのタイプも「専有部内横枝管」から「共用部立管」へ流れ、各系統が合流して排水桝から下水本管へ排出される。


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 9-6 配水管の劣化

金属による配管材料は、経年劣化による腐食のために閉塞などの不具合が発生する。
 ・ 漏水  配管内部の錆(水などの電解質と酵素による電気化学作用)
 ・ 排水不良・逆流  配管内部のスケール・サビこぶなどによる閉塞
 ・ 異臭・虫の発生  スケール・油汚れ(特に台所系統)などによる不衛生な環境

築年数を重ねたマンションを中心に配管が閉塞する
 ※ 高圧洗浄などの定期清掃により閉塞状態は異なる。
 ※ 通気性脳や経年劣化による勾配不良によって「汚れやすい管」「詰まりやすい管」
  となり問題が生じやすくなる。


配水管は、用途や系統の違いにより配管内面劣化の進捗や特徴が異なる。

① 雑排水系統台所・浴室・洗面)
  ・ 台所系統から合流する系統は腐食しやすい
  ・ 台所単独系統が特に腐食しやすい
  ・ 台所系統に他の排水が流入する場合は、腐食状況がやや緩和される
  ・ 台所の排水が流れない雑排水系統は腐食の進捗が穏やかになる

② 汚水系統(便所)
  ・ 汚水単独系統となっている鋳鉄管の排水管は耐久性が非常に高い。築50年が経
   過しても問題なく使用されている事例もある。

定期的な高圧洗浄などの清掃を実施しなければ長命化は図れない。これは近年の樹脂系配管材料であっても同様である。但し、用途や配管材料によって耐久性は異なる

適切な排水環境を維持するためにも定期メンテナンスの実施をお勧めする

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  9-6-1 配水管の更新工事

配水管の更新は、給水管と比べて配管口径が大きく、適切な勾配を確保する必要があることから自由度はあまり高くない。既存の配管ルートとほぼ同じルートにて計画・更新する。また、住戸内に排水立管が敷設されている場合も多く、共用部分のみの排水管工事であっても、配管を撤去・新設するために壁・床・天井の解体・復元等の建築工事を伴う。


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  9-6-2 配水管の更生工事

配水管においても更生工法がいくつかあり、壁・床・天井の変地区工事を不要とすることから選択されるケースがある。ただし、既存排水管を再利用するため、勾配・通期・口径・合流箇所等の不良部分への改善は期待できない。

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  9-6-3 住戸内工事の進め方

上階の排水管が下階天井裏に配管されていた。マンションで問題となりやすいので床上配管に変更した。床シンダーコンクリートに埋設されていた給水管を別ルートに改修し、今後のメンテナンス性を考慮した。


・ 在宅対応
   住戸内工事を行うためには、該当する工事期間(4~7日程度)にご在宅をお願い
  する。ご不在となると店等部分の発生、手戻り工事(追加費用)の発生、また、それ
  に伴う上下階への影響が出てしまう。

・ 入室作業時間
   当日の作業時間は、基本的に9時から18時まで。

・ 使用制限
   入室作業時間中は、内装解体や器具の脱着により、該当する衛生器具の使用はでな
  い。ただし、該当しない系統の衛生器具の使用は可能な場合もある。当日の作業終了
  後から翌朝まではご利用いただけるようにする。ユニットバス、洗面、洗濯機につい
  ては使用不可の場合もあるので、仮設のものをご利用いただく。

・ 排水禁止規則
  六階以上の建物において、上層階に当たる住戸は入室対象でなくても下層階やピット
  内で配管作業を行っている場合は排水禁止となる。下層住戸内や作業員に排水がかか
  り、大変な被害につながってしまう

・ 騒音・進藤・粉塵の発生
   工事を行う際に内装の解体やコンクリーチ掘削作業で騒音や振動が発生する。作業
  による粉塵の対策としては、作業範囲内に養生を行うことで粉塵が他の室へ広がらな
  いようにする。

配水管は、居室の壁や床の中に敷設されているため、更新工事を行うためには内装を解体・復旧する建築工事が伴う。


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  9-6-4 給排水設備の耐用年数

部位種類日本建築学会(財)建築保全センター(財)建築・
設備維持保
全推進協会
ポンプ揚水ポンプ    15年            20年    15年
雑排水ポンプ    15年            15年    10年
消火ポンプ    27年            20年    27年
水槽鋼板製    20年            20年     ー
FRP製      ー            25年    20年
ステンレス製      ー            30年    20年
配管配管用炭素鋼鋼管(給水)    20年             ー     ー
配管用炭素鋼鋼管(給湯)    18年             ー    12年
配管用炭素鋼鋼管
   (排水・通気)
    18年            30年    20年
配管用炭素鋼鋼管(消火)    20年            30年    25年
硬質塩化ビニル
 ライニング鋼管(給水)
      ー            25年    30年
鋼管(給湯)      ー            30年    15年
ステンレス管(給水・給湯)      ー            30年    30年
硬質ポリ
   塩化ビニル管(給水)
      ー            20年    30年
硬質ポリ
   塩化ビニル管(排水)
      ー            30年    25年
鋳鉄管(排水)    28年            40年    30年
ヒューム管(排水)    28年            40年    30年

・ 一般的な管理区分は次のとおり。(各マンションの管理規約により区分は異なる)


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謝辞:文中に掲載しました写真類は、講演のレジメから転載させていただきました。ありがとうございます。

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