1 初めて遭遇した災害
1-1 台風21号の災害
台風21号は、非常に強い勢力で9月4日12時頃に徳島県南部に上陸したあと、日本海へ進んで速い速度で北海道に接近した。5日0時には奥尻島の南南西約140kmに達し、その後、暴風域を伴ったまま北海道の西海上を北上して、5日9時には間宮海峡で温帯低気圧に変わった。
北海道に台風が近づく3日前から湿った空気の影響で雨が降り始め、4日から5日にかけて台風の前線の影響で雨が強くなり所々で激しく降る大雨になった。また、台風の影響で風速20メートル以上の暴風となり、日本海や太平洋西部を中心とした地点で、最大風速が観測史上1位を更新した所もあった。
ゴウゴウとうなりをあげて吹き荒れる風の音で、東札幌の我が家で5日の午前2時に目覚めた。マンションの近かくでバタンバタンと言う物音が聞こえるが、六階のベランダから街灯の明かりが届く範囲を見回しても音の発生源が確認できない。
午前2時8分に訪ねてきた五階の住人が、避難はしごを収納している避難ハッチの蓋が開いていると告げた。真っ暗でベランダの床が見えず、雨の中をパジャマ姿で這い出て蓋を締めた。ハッチにはロックが付いていないことが分った。
暴風により人的被害、住家・文教施設の一部損壊、国道や道道の通行止め、JRの運休などが発生した。直径20センチの樹木は幹の中央で裂けるように折れ、公園やサイクリングロードなどでは何本もの大木が倒れた。
1-2 胆振東部地震
1-2-1 地震の体験
翌日の9月6日3時7分にいきなりガタガタガタというものすごい揺れで目覚め、しばらく布団の上で様子を見ながら直下型地震かなと考えていた。震度5強の揺れが治まったので照明やテレビのスイッチを入れると停電である。
携帯用マイクロテレビでニュースを見ると、NHK札幌放送局は職員が自分のことに追われて情報発信はなく、東京からの報道では他人事のようで現実味が伝わらない。チャンネルをSTVにすると、地元の放送局は地震の速報を伝えていた。
自宅の家具類は防振対策をしていたので動くことはなく、被害は食器棚の扉が開き飛び出した百円ショップで購入したコップとワイングラスが各2個だった。ガスと水道は使えたのでほっとしたが、困ったのは冷蔵庫で保管している作り置きの食材である。
乾電池は4種類を保管し携帯ラジオは三台あり、食料はレトルトの八宝菜・酢豚・中華丼・タコス・ポトフ等と、缶詰め類を十日分ほど備蓄していた。携帯用マイクロテレビは太陽光で充電できても満タンにならないうちに太陽が隠れてしまう。
北電のブラックアウトは想定外ではなく、原子力規制委員会の指示を無視して自己判断に拘り続けた結果、今回の地震で泊原発は外部電源を喪失し非常用ディーゼル発電機6台を起動して、燃料プール内の核燃料の冷却を維持している状態となった。
泊原発が稼働すれば十分な電力を確保できると対応策を考えず、苫小牧火力発電所は施設内設備損傷により復旧に長時間かかることを想定した訓練を一度も行っていない。町内とマンションに電気が来たのは40時間後の7日19時だった。
1-2-2 地震の状況
日本列島で発生する地震は、列島の下に沈み込む海側のプレートの動きによって起こる「海溝型地震」と、内陸のプレート内部で発生する断層運動によって引き起こされる「活断層型地震」のふたつがある。
石狩低地は厚さ5km以上の堆積物に覆われる堆積盆地である。その西側には複数の活火山が分布し、特に支笏カルデラは石狩低地の南部全体を覆う火砕流を噴出してきた。低地帯の東縁には石狩低地東縁断層帯が発達し、その東側には第四紀に隆起した馬追丘陵が発達する。
最近の海域調査の結果によると、石狩低地東縁断層帯は海域へも海岸から40キロ以上連続している可能性が高い。断層帯は逆断層が厚い堆積物中に発達するため、地表付近では断層は伏在し、撓曲帯や活褶曲が発達する。
南部では支笏湖の火砕流堆積物に覆われ、褶曲や撓曲帯の分布が複雑でわかりにくくになっている。反射探査などによって明らかにされた地下構造は、多くの褶曲が低角逆断層の上盤に発達することを示し、断層帯全体が低角で東側に連続すると考えられている。
胆振東部地震は、内陸で通常発生する地殻内地震よりも深い場所で未知の断層が動いた逆断層型の「地殻内地震」で、震源は深さが約37キロとより深い場所で発生しているとされた。
北海道胆振地方中東部で発生したマグニチュード6.7の地震により、胆振地方で最大震度7を観測して大規模な被害を伴った。震源地は胆振郡厚真町(あつまちょう)で、札幌市清田区や東区でも大規模な液状化現象が発生した。
東北東から西南西方向に圧力軸を持つ逆断層型で、石狩低地東縁断層帯より深い位置で発生した地殻内地震である。その後M6.7の地震の震源を含む南北約30kmの領域で減衰しつつも活発な状態が継続し、11日16時までに震度4以上を観測した地震が6回発生している。
震源断層は、深さ約15kmから31kmまで垂直に近い角度で伸びており、断層の幅は16.3km、長さは14.9km。震央付近では最大7cmの地盤隆起があり、その東側では最大4cmの地殻変動が観測されている。
今回の地震について、国土地理院は地球観測衛星だいち2号やGPS衛星による地殻変動データを解析して断層面を立体的に表した画像を製作した。解析の結果、地震を引き起こした断層の上端が深さ約15キロまで達した可能性があることがわかった。このため、地震調査委員会は「石狩低地東縁断層帯の深部が動いた可能性を否定できない」として当初の見解を修正している。
北海道胆振東部地震は、震度7を観測した6回目の地震である。
回数 | 発生年月日 | 名称 | 別名 |
---|---|---|---|
0回目 | 1948年 6月23日 | 福井地震 | 翌年震度7とされた |
1回目 | 1995年 1月17日 | 兵庫県南部地震 | 阪神淡路大震災 |
2回目 | 2004年10月23日 | 見井形中越地震 | |
3回目 | 2011年 3月11日 | 東北地方太平洋沖地震 | 東日本大震災 |
4回目 | 2016年 4月14日 | 熊本地震の前震 | |
5回目 | 2016年 4月16日 | 熊本地震の本震 | |
6回目 | 2018年 9月 6日 | 北海道胆振東部地震 |
1-3 知っていれば慌てずに済む
札幌市内のマンションでは次のようなことが起きていた。
・ テレビのニュースが見れない
・ スマーフオンや携帯電話の充電ができない
・ エレベーターが動かない
・ オートロックが作動しない
・ 給水場に行くのが大変だった
・ 電化製品が使えない
・ 風呂に入れなかった
・ その他
給水場は満員で、順番待ちで相当の時間がかかった。
この外にも多くのことでも日常と違っていたと思われるが、給水方式の違いで断水しないマンションがあった。
受水槽式のマンションには受水槽まで水は送られていた。受水槽方式のマンションは停電で揚水ポンプが動かないため各住戸では断水状態になっていたが、受水槽まで水は供給されていたので受水槽から取水は可能だった。
直結加圧方式のマンションは停電で高層階まで水を送るブースターポンプは動かないため、全住戸に水は供給されていなかったが、水圧が高い地域では10階近くまで水道水が届いていた。
ところが、管理組合内で水の供給に関する情報は共有されていない。新任の理事たちは先輩が残した資料を確認せず、建物や設備の状態を点検するのは管理会社の仕事として、自ら確認することはなく名前を貸しているだけという無責任な状態が多い。
直結加圧方式や直結直圧方式などを採用しているマンションは、道路下に敷設されている水道配管が無事であれば、給水場まで行かなくても済んだのである。
水道局の定めにより、非常・故障時用の直圧共同水栓を設置することがマンションに義務付けられているので、今回のような地震災害時には直圧共同水栓の利用は可能である。
災害に備えるために肝心なのは、ルールとコミュニティである
・ 管理組合内でのルール化とコミュニケーションが大事
・ 非常時の取水方法(受水槽、直圧共同推薦の設置場所や取水のルール)の確認や各
住戸への連絡方法
・ 体の不自由な方や独居世帯の把握・対応、助け合いのルールも管理組合として必要