はげちゃんの世界

人々の役に立とうと夢をいだき、夢を追いかけてきた日々

第60章 資産価値の維持

2018年4月21日に札幌市コンベンションセンターで開催された一般社団法人マンション大規模修繕協議会主催のセミナーで、藤田崇大相談員の講演「資産価値を維持していくために管理組合がやるべきこと」の要約に、国土交通省の調査結果を転載しました。

1 区分所有者の永住意識

 1-1 世帯主の年齢

国土交通省が平成20年度に実施した「マンション総合調査」結果を平成11年度・平成15年度の調査結果と比較すると、マンションの居住と管理の現状は次のような傾向がみられました

世帯主年齢の平成11年度から平成20年度の変化をみると、60歳代以上の割合が増加して40歳代以下の割合が減少し、居住者の高齢化の進展がうかがわれます。平成20年度は60歳代以上が39.4%、40歳代以下が35.6%となっています。

世帯主の年齢

平成15年度から平成20年度を比較すると、賃貸戸数割合は20%超のマンションの割合が減少して、平成20年度は18.6%となっています。また、空室と数の割合で平成15年度から平成20年度を比較すると、空き室のないマンションの割合が減少して、平成20年度は43.8%となっています。

1999年度の調査では、世帯主の年齢が60歳代以上の割合は25.7%でしたが、2013年度の調査では50.1%に達しています。逆に40歳代以下は1999年度の48.7%から2013年度の26.8%へと、ほぼ半減していました。また、民間の調査によれば、老朽化したマンションほど居住者の高齢化が進行しているというデータも示されています。

世帯主が高齢化しても、同居する家族が多ければそれほど支障はないかもしれません。マンションに限った話ではありませんが、高齢夫婦の2人世帯、あるいは独居高齢者世帯の急増が大きな社会問題となりつつあるのが現状です。大都市圏のマンションほど、深刻な問題として受け止めなければなりません。

一戸建て住宅地であれば町内会レベルでの取り組みが必要なのと同様に、マンションは管理組合が高齢者問題を考えなければなりません。孤独死を防ぐための見守りなどのほかに、古いマンションでは共用部分のバリアフリー化など検討すべき課題は多いのです。

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 1-2 永住意識

昭和55年度から平成20年度の変化をみると、マンション居住者の永住意識は高まる傾向にあり、平成20年度は約半数の区分所有者がマンションを終の棲家として考えていました

永住意識の高まりは居住者の高齢化を伴っています。「いずれは住み替えるつもり」でマンションを購入したものの、うまく売却できずにそのまま住み続けている事例も少なからずあるようです。

永住意識

表をみますと、20年前から顕著な上昇を示しています。人々の住宅購入や住み替えに対する意識が大きく変わったということが大きいと考えます。30数年前までマンションは、一戸建てに移るまでの仮の住まいとしていた「住み替え派」が半数以上でした。

不動産価格の低迷により、値上がりで得た売却資金を次のより良い物件の購入資金に充当するという方法も難しくなり、20年ほど前から一旦購入したマンションにそのまま最後まで住み続けるという意識を持った人が増加するという傾向が生じたようです

近年は、定年退職したリタイア層が郊外の一戸建て住宅を売って、駅近のマンションへ住み替える事例も増えています。もはやマンションは「仮の住まい」ではなく、そのぶん建物の性能や居住性、快適性、コミュニティなど、消費者がマンションに求める水準も高くなっています。

今住んでいるマンションに「永住するつもりである」と答えた人の割合は、43.7%から49.9%に増加。年齢別で見ると、年齢が高くなるほど永住意識が高くなる傾向にあり、マンションを「終の棲家」として考える傾向が高まっていると言えそうです。

国土交通省が平成28年度末現在で発表した分譲マンションストック戸数は次のようになっています。


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 1-3 長期修繕計画

昭和62年度から平成20年度の変化をみると、長期修繕計画を作成している管理組合の割合は増加傾向にあり、平成20年度は89.0%のマンションで長期修繕計画を作成していました。

長期修繕計画の計画期間は、「26~30年」が32.5%と最も多く、次いで「21~25年」が16.3%。計画期間の平均は23.8年で、完成年次が新しくなるほど計画期間が長くなる傾向にあります。

長期修繕計画

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 1-4 修繕積立金

修繕積立金は、駐車場使用料等からの充当額を含む戸当たり修繕積立金(月額)の平均額は1万1,877円(駐車場使用料等からの充当額を除く戸当たり修繕積立金月額の平均額は1万898円)で、前回調査時の1万967円から増加していました。

平成11年度から平成20年度の変化をみると、月/戸当たり修繕積立金の額と駐車場使用料等からの充当額を含む修繕積立金の総額は共に増加しています。平成20年度の月/戸当たり修繕積立金の額は10,898円、駐車場使用料等からの充当額を含む修繕積立金の総額平均は11,877円となっています

修繕積立金の額

平成5年度から平成20年度の変化をみると、長期修繕計画に共づいて修繕積立金を算耐震診断出しているマンションの割合は増加しています。計画期間25年以上の長期修繕計画に基づいて修繕積立金の額を設定しているマンションは36.6%で、平成15年度の19.7%に比べ高くなっています。

直近の計画修繕工事実施時における、新築時又は前回の実施時からの平均経過年数は、平成11年度以降ほぼ一定しています。

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 1-5 耐震診断について

平成20年度の調査において耐震診断の実施状況は、耐震診断を行ったマンションが16.9%、実施していないマンションが75.3%となっています。耐震診断を実施したマンションのうち、75.4%が耐震性を確保しており、耐震改修工事の必要がなかったとしています。

耐震が不足していると分かり、すでに耐震改修工事を行ったマンションは6.0%、実施の予定がある管理組合が1.6%でした。耐震が不足していると分っても工事を行う予定がないマンションが1.6%、決めていないマンションが3.6%となっています。

居住者の高齢化は、費用負担を伴う改修工事などに対する合意形成も難しくします。毎月の修繕積立金で足りないとき、老後の生活資金にゆとりがない高齢者は消極的にならざるを得ません。とくに問題なのが、耐震性の不足するマンションの改修工事です

旧耐震基準に基づいて建設されたマンションのうち、耐震診断を実施した管理組合は33.2%で、過半数の58.0%は実施していません。さらに、診断によって「耐震性がない」とされたのは32.6%ですが、このうちすでに耐震改修工事が行われたのは33.3%にとどまります。

「今後実施する予定」は47.6%であるものの、およそ5分の1の19.0%は「実施する予定がない」と回答しています。東日本大震災を経験し、さらに首都直下地震、南海トラフ地震など巨大地震の発生が懸念されている中で行われたマンション総合調査ですが、「耐震性がない」と判断されながら耐震改修の計画を立てることのできないマンションがかなりの数にのぼる現実はしっかりと受け止めなければならないしょう。

未実施の理由として「不安はあるが耐震改修工事を行う予算がないため耐震診断を行っていない」が44.4%にのぼっている。「管理組合として耐震診断を行うことをこれまで考えたことがなかった」という回答も24.0%あり、耐震性の向上はなかなか進まない。

平成25年度の調査で多かった対応(重複回答)を順に挙げると、定期的に防災訓練を実施している37.7%、防災用品を準備している26.9%、災害時の避難場所を周知している25.1%、「自主防災組織を組織している19.0%、災害時の対応マニュアルを作成している18.6%などとなっています。大地震の発生やその後の混乱などを想定すれば、対応状況としてはまだ不十分かもしれません。管理組合ごとの温度差もかなり大きいことが予想されます。

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 1-6 建て替えの検討状況

建て替えについて具体的に検討しているマンションが0.5%、検討しているが問題あり検討が進んでいないマンションが1.4%となっています。一方、全く検討していないマンションが65.6%、建替えについて当面は改修工事で対応していく予定のマンションが13.8%となっています

建替えの検討状況をみると、建替えの方向での具体的な議論の状況は、建替えに向けて一定の方向性は決定したが、建替えは決定していない(検討継続中)が36.4%、建替えを目指して検討しているが、管理組合の方向性を決定するには至っていない(検討継続中)が13.6%と、半数が検討継続中となっています。

建替えを円滑に実施して行く上での問題としては、建替え資金の調達が困難な区分所有者がいるが40.9%と最も多く、次いで現在のマンションに愛着があり建替えに反対する区分所有者がいるが36.4%、仮住居の確保が困難な区分所有者がいるが31.8%となっています。

区分所有者の建替えの必要性に対する考えについては、建物が相当老朽化又は陳腐化しているので建替えが必要である」が4.9%となっています。一方、建物が相当老朽化又は陳腐化しているが、修繕工事又は改修工事さえしっかり実施すれば建替えは必要ないが30.0%、建物は老朽化も陳腐化もしていないため、今のところ建替えは必要ない」が64.0%となっていました。


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2 資産価値維持の視点

マンション居住者の高齢化が進むと同時にマンションの高経年化が進んでいます。マンション居住者の永住意識が高まる傾向にあり、修繕工事や改修工事さえしっかり実施すれば建替えは必要ないとの意見が30%であることから、より長期に資産価値を維持することが求められるようになりました。

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 2-1 給排水管の諸問題

他の大規模修繕に比べ、給排水工事は実施割合が低い傾向にあり、築20年を超す2割以上のマンションで漏水事故が発生しています。そこで、マンションの資産価値を高めて大規模修繕費用を捻出する裏技として、給排水管の新しい保全方法をご紹介します。

もっとも水漏れ発生頻度が多いと言われている専有部の横引き管は、住民各自が保全することになっているマンションが多く、ほとんど手つかずの状態です。多くの場合、専有部の横引き管は床のコンクリート内にあるため、居住者が横引き管の状態に無関心です

給排水設備と管路事態に生じた損害はマンション火災保険の適用外になっています。自然の消耗もしくは劣化または、サビや腐食はマンション火災保険の適用外です。共用部ではない専有部からの漏水は、マンション火災保険の適用外になります

マンション火災保険の掛け金は、年々値上がりされて管理組合の費用負担が大きくなっています。何度も水漏れ事故を起こしている物件は、最悪の場合、保険への加入を拒否されるケースもあります。

共用部への水漏れ事故が起きたときに、マンション火災保険が適用されない場合は管理組合が高額の出費を強いられることになります。上階の専有部から階下の専有部への水漏れ事故は、数十万円から数百万円になる場合があります。

管理組合が水漏れ事故による多額の出費を避けるための最善の策は、配管を錆びない材質に取り換えることです。特に、20年以上を経過したマンションは、サビにより水漏れを引き起こす材質の配管を使っている場合が多いため、水漏れを起こす前に早めに配管を取り換える大規模修繕を行う必要があります。

配管の取替を行うと多額な出費が必要なため、バリアフリー化・耐震性の向上・美観や利便性の向上・外壁や防水等の継続的な修繕などの大規模修繕に、お金が回らなくなります。反対に他の大規模修繕を行うために、給排水管の取替工事ができないマンションが増えています。


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 2-2 新たな維持管理法

現在、配管の新たな維持管理方法として脚光を浴びているのは、湧き水の原理を応用した「配管保全装置」です。地中の水は湧き出る時に、無数の砂や小石と摩擦することでプラスの電荷をもった抗酸加水に生まれ変わります

配管保全装置はこの湧き水の作用を応用した良質な水をつくります。水道水を配管保全装置に通すと装置の中で水流が起こり、セラミックの小さな粒の間で流動と摩擦が繰り返されることでプラスの電荷をもった抗酸加水が生まれ変わります。

これまで配管の取替は、工事費も高額で工事日程も長いため更生工事も延命手法が主流となっていました。しかし、保証期間は10年程度で、保証期間を過ぎると再度保全対策が必要となります。また、更生工事を行った後、被膜の劣化でサビコブが被膜内部から隆起してきます。

更新工事と更生工事とも、共用部給水管・専有部給水管、専有部排水管・共用部排水管のそれぞれについて工事が必要になります。専有部は、各自で保全するマンションが多いようですが、修繕積立金のほかに各自が自己負担で高額の出費を行う必要が出てきます。

配管保全の手段検討時のポイントは「確実さ・手軽さ・価格」です。配管の更新と更生結果は即改善するので確実です。手軽さは核磁気と電気防食で、再施工やメンテナンス不要なのは核磁気・電気防食・更新です。価格面では核磁気が安価です。これを表にすると次のようになります。


それでは、新しい「配管保全装置」を採用した維持管理方法をご紹介します。特色は「即改善」ではなく、「徐々に改善」となっているところです。

配管保全装置から給排水管へ常に抗酸加水が流れるようになると、付着したサビやミズアカが徐々に減り、給排水管が保全されます。徐々に、配管内にミズアカやニヌメリが付着しづらくなります


給排水管を更新する場合は工事期間が長くなります。既存の給排水管の内部を研磨して樹脂でコーティングした場合は耐用年数に問題があり、受水槽手前もしくは増圧ポンプ二次側に「配管保全装置」を設置した場合を比較してみました。


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 2-3 配管保全装置とは

湧き水の原理を応用した配管保全装置は、流動・摩擦によりプラスの電荷を帯びた抗酸加水が生まれます。地中の水は湧き出る時に、無数の砂や小石と摩擦することで、質の高い天然水に生まれ変わります。

配管保全装置は良質な水をつくる原理、この湧き水の作用を応用しました。水道水を配管保全装置に通すと装置の中で水流が起こり、セラミックの小さな粒の間で流動と摩擦が繰り返されます。これにより、水はプラスの電荷を帯びた抗酸化水へと変わります

配管保全装置により給排水管内へ常に抗酸化水が流れるようになり、付着したサビやスケールが徐々に減り、給排水管が保全されます。

他の大規模修繕に予算を費やす必要があり、給排水管保全のための予算が十分ではない管理組合にとって、検討の余地のある方法です。但し、地域等により割賦、リース、1年単位でのレンタルが可能な場合もあり、他の大規模修繕のタイミングに和せて実施しやすくなります。

受水槽の有無、高架水槽の有無、直結水圧ポンプの有無に関わらず設置が可能です。世帯当たりの価格目安は、ファミリータイプ・ワンルームタイプ・受水槽の有無・築年数により増減します。

従来のコストの三分の一以下で、6つのメリットがあります。
 ① 給排水管の保全費用を大幅削減
 ② 半日程度の設置工事で済みます
 ③ 専有部での設置作業は一切不要
 ④ 個人の追加負担はなく修繕積立金のみで購入可能
 ⑤ 共用部・専有部のすべての給排水管を保全
 ⑥ 修繕積立金の余剰分はバリアフリーや耐震補強に

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 2-4 安全性と漏水保険

日本治水株式会社が開発した水処理装置(配管保全装置)は、逆浸透膜(RO膜)を利用した純水製造装置のRO膜の延命に利用されています。病院・クリニックでは人工透析におけるROモジュール対策として評価されています。


2006年には、日本生理学会において世界で初めて「抗酸化力のある水」として「エルセで処理された水」が学会発表されました。配管保全装置の発売当初より、JR西日本とは共同研究をすすめて新幹線全車両に導入、2015年開通の北陸新幹線にも導入されています。医療分野においては人工透析の純水装置、農業・畜産分野では生育促進や悪臭対策にも利用されています。

配管保全装置の効果を確かめてみました。

築40年マンションの量水器二次側接手部分、サビとコブができていましたが継ぎ手部分の地肌がはっきり見えてきました

築41年目マンションの洗面台下の給水管、水あかが減って地肌が見えてきました。


経年劣化で配管内部の腐食による水漏れが起こると、一般の火災保険の場合は経年劣化等の理由で保険適用されず、やむなく階下の方がご自身で家財などを直した場合、階下の方が加入している保険会社が加害者に請求する可能性があります。


配管保全装置を設置したマンションであれば、配管保全装置と組み合わせた給排水保全保険と組み合わせることで、共用部・専有部のどちらの損害も補償されます

給排水保全保険の対象は、マンションやアパートの築40年まで加入が可能ですが、保険の契約をする前に保険に加入可能な物件化どうかの診断があります。また、調査診断後は1年以内に加入することが必要になります。

さらに、施行リスク対策として、配管保全装置の設置工事を行う施工業者に3つの保険への加入を推奨しています。

① 施工業者の倒産に備えるため、国土交通大
  臣認可の大規模修繕工事瑕疵保険(給排水管
  路工事に係る保険期間延長特約は10年間)

② 工事中の事故に備えるため、請負者賠償責
  任保険

③ 配管保全装置の万一の事故に備えて生産物
  賠償責任保険

モデルケースとして、築25年100世帯のマンションで築100年までの保証で、従来手法との長期的な費用の比較をしました。この結果、18,317円の+αという結果になりました。


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 2-5 新たな維持管理方法

排水管の高圧洗浄を毎年実施のマンションが多いようですが、配管保全装置を設置した場合は頻度を半分以下に減らした管理組合が多くなりました。排水管の汚れは住民の方々の利用内容に大きく依存するため、状況を総合的に判断して実施の是非を判断します。

従来の方式と新方式で長期的な費用の比較をすると次のようになります。


大規模修繕工事瑕疵保険の併用や、個人賠償責任保険包括特約の工夫により、マンション火災保険の費用を抑えることが可能です。但し、外部腐食等は給排水保全保険では網羅できない場合もあります。


配管の取替を行う際のリスクは、新品となる配管の取替工事(後任工事)はベストな選択肢ですが、実施の合意形成に時間がかかります。来年は共用部の給水管、5年後には共用部の排水管、専有部は各自実施是非の判断を任せる、といった手法の場合、取替が完了するまでに水漏れが発生するリスクがあります。


何度も水漏れを繰り返すうちに、マンション火災保険の加入拒否や保険料の大幅値上げといった事態が発生するリスクがあります。マンション火災保険に加入できなくなったあとで、専有部配管の経年劣化で水漏れが発生した場合、多額の賠償費用を水漏れを起こした区分所有者が負担するリスクがあります。

資産価値の維持のためには、長期間に渡り大規模修繕を行う必要がありますが、それに伴う予算も確実に確保しておくことが必要です。予算が十分でないマンションでは、使うべきところにメリハリをつけて修繕していくことが必要です。

特に、給排水管は時間の経過とともに水漏れリスクが高まるため、予算が十分でないマンションでは早めに低予算で適切な手を打ち、バリアフリー化等の資産価値を高める他の重要な大規模修繕を行うための予算を確保しておくことが肝要です

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謝辞:文中に掲載した写真は、プロジェクターで投影されたものを撮影して転載しました。また、カラー写真は「エルセ保険」のWebページよりお借りしました。ありがとうございます。