はげちゃんの世界

人々の役に立とうと夢をいだき、夢を追いかけてきた日々

第54章 修繕周期15年の安全安心
         (セミナー)

2016年11月26日に札幌市産業振興センターで開催された一般社団法人マンション大規模修繕協議会主催のマンション大規模修繕セミナー「修繕周期15年で得る安心と安全」の要約です。講師の米澤賢治代表理事は大規模修繕15年周期を熱く語りました。

1 15年周期の研究理由

 1-1 修繕積立金の不足解消

多くの管理組合では修繕積立金が不足し、修繕積立金の不足を解消したいと願っても増額は簡単にできません。で費用を少しでも節約して、安心なマンション生活が送れないでしょうか

・ 修繕周期を伸ばすことで資金計画を楽にできない
  でしょうか。

・ 不良工事をなくして余計な出費を抑えられないで
  しょうか。

・ 大規模修繕工事の煩わしさを軽減できないでしょ
  うか。

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 1-2 管理組合が抱える問題点

・ 三割を超えるマンションで修繕積立金が不足しています。

・ 建物の老朽化で、築30年を超えるマンションが2030年には369万戸とな
  り、3倍以上に増加します。

・ 組合員の高齢化で、60歳以上が5割を突破し、年金暮らしの世帯が増加します。

このような時期を迎えると、修繕積立金不足が切実な問題となります

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 1-3 同じ誤りを繰り返さない

外壁の塗装は剥がれています。塗装が剥がれた原因を突き止め、改修することが大事です。よく見ると、約半数の窓で水切りの出幅がない状態です。

なぜ、この状態を改善せずに一回目の大規模修繕工事を行ったのでしょうか。

水切りは、外壁面から20mm以上出さなければ効果が見込めません。

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 1-4 建物寿命は施工精度で変わる

大規模修繕を実施してからまだ5年なのに

・ 塗装が剥がれてきた。

・ つい先日、タイルが車の屋根に落下した。

・ 外部廊下に雨漏れが見られた。

このような状態を見ると、どれだけいい加減な工事がされているのかと悩みます

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 1-5 ある現場での出来事

シーリングの打ち替え工事で、工事仕様書には全面撤去を指示していました。ところが、除去せずに既設の上から打ち増し(表面にシールを薄く塗る)をしていました。

外壁には縦横にシーリングが打たれています。経年劣化でシーリングは部分欠損が起こります。剥がしてみるとシーリングはかなりの太さになります。

既設の上から打ち増しをしているかどうか外見上ではわかりません。触手確認が必要です。このような工事をなくすためには、業界全体のモラル・技術・施工精度の底上げが必要です。

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 1-6 理事長として経験したこと

マンションの管理組合は、建物の価値及び機能の維持増進を図るため、常に適正な管理を行うよう努めなければなりません。ただし、マンション管理業務の全部又は一部を、マンション管理業者等の第三者に委託し、又は請け負わせることができます。

マンション管理業務の全部を委託している場合でも、管理組合の管理業務が無いわけではありません。委託している業務がきちんと行われているかの確認が必要です。確認もせずに委託費用を支払っていれば管理業務の怠慢になります

理事会で管理業務主任から建物の点検報告がありません。管理会社の建物点検でも劣化や損傷の報告はありません。不思議に思い建物を点検すると、建物管理は任せておけないと言う状態です。理事長の点検で発見した事例をご紹介します。

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雨があたる鉄部は劣化します。腐食が進むと扉に穴が開いて修繕は面倒になります。右上写真の戸枠は腐食で穴が空いていました。4~5年に1度などの定期的な防錆と塗装をお勧めします。

扉の下に赤サビが落ちていたので、手鏡に写してみると防水層を押さえる金具が腐食して錆だらけです。通り一遍の点検では見落とされる部分です

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防水層が劣化して表層が剥がれ始めていました。また、防水層を押さえるカバーが浮き上がり、雨水が防水層の下へ流れ込む状態でした。変性シリコンを塗布して補修しました。

屋上のコンクリートの隙間やルーフドレンに雑草やコケ類が繁茂します。雑草は抜き取らないと根が防水層を破りますし、コケを取り除かないと排水が悪くなり漏水の原因をつくります

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ベランダの隔壁が強風で揺れると、板を固定しているシールがたるんで垂れ下がり強度が不足します。フェンスの付け根に雨水などが染み込むとグラグラするようになります


 窓下の水切り不良でタイル内へ染み込んだ雨水が乾燥すると空洞が残ります。この空洞内へ二酸化炭素が侵入するとコンクリートは中性化して、外壁表面に炭酸カルシュウムが現れます。これを白華現象(エフェロレッセンス)と言います。また、劣化したシーリングには隙間ができて、雨水が入りやすくなります。

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 玄関扉を開閉させる軸受のフロアーヒンジから油が漏れ出てくると粉塵が付着して汚れが目立ちます。インターロッキングのタイルを支える砂が流されると、沈んで捻挫などの原因をつくります

いい加減な清掃をしていると戸室の扉下にモップの汚れが付着します。掃除機の使い方を誤ると廊下の表面は削られていきます

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 外壁に染み込んだ雨水はモルタルを剥離させたり、タイルを浮き上がらせたり、軒天の塗装を剥がしたりします。


 壁のモルタルが部分剥離したり、ベランダの帯部が崩れてしまうこともあります。

マンションの管理は管理組合が行うもので、管理会社に委託している業務がきちんと行われているかを確認しなければ、劣化や損傷が進行して予想外な修繕費用が必要になります。修繕費用は管理会社が払うわけではありません

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 1-6 施工精度で変わる寿命

施工不良の原因は、工事基準の理解力不足からと考えられます。一般的に、大規模修繕工事は国土交通省が作成した標準仕様書に基いて工事を実施します。しかし、多くの現場では監督・職人の経験値で工事が進められています

職業訓練所で技術を学んで職人になった人がいます。親方や先輩から教えられて叩き上げられた職人もいます。大きな工場やマンションなどの工事経験者や、一戸建ての木造住宅の経験しかない者もいます。さまざまな工事現場で腕を磨いた人もいれば、下働きしかさせてもらえなかった人もいます。

マンションの建築工事は同じ技術レベルの職人が工事を担当しているわけではありません。それぞれの経験に基づいて、最もやりやすい方法で仕事をしています。すべての職人が、国土交通省が作成した標準仕様書に基いて工事をしているとは言い難いのです

技術力が低い職人の張ったタイルは剥がれ落ちる確立が高くなります。このような事故を防止するために現場監督がイますが、現場監督も技術力や経験値などで差があり、これらの要素が絡んで施工精度が変わると建物の寿命は低くなります。

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 1-7 ずさんな計画のツケは

新築分譲の長期修繕計画を見ると、30年後の修繕積立金は赤字になるケースが増大しています。その原因は、分譲会社がマンションを売りやすくするために、購入時の費用と維持費を安く押さえるためです。

マンションの購入者はできるだけ早めに管理組合の理事会を開き、同規模のマンションの修繕積立金の額を調査しましょう。マンション管理講座に出席して情報を集めることも大切です。マンション管理講座の参加は管理組合の役員や役員経験者ですから、休憩時間を利用して質問することも有益です。

新築分譲の長期修繕計画のままで放置していると、施設設備の劣化や物価の変動に伴い修繕積立金の値上げがやってきます。一時金の徴収が必要になる場合も出てきます。これが避けられたことは皆無です。

これまでの大規模修繕は10年に1回とされ、60年間で6回必要になります。大規模修繕にかかる費用は毎月修繕積立金で備蓄していますが、備蓄で間に合うどころか不足するというのが常識です。かと言って、毎月の積立額を簡単に上げるわけにも行きません。

自分のマンションの修繕積立金の適正額を早めに知り、即座に手を打つことがことが重要です。何もしなければ、修繕積立金の値上げや一時金の徴収が必要になり、賛成反対で人間関係にヒビが入ることは火を見るよりも明らかです

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 1-8 修繕周期を15年に

一方、10年に1回という大規模修繕を15年に1回にすれば、60年間で4回になり1戸当たり100万円を節約できることになります。積立期間が3年伸びるので急激な積立金の値上げは回避できることになります

ただし、夢のような話を現実にするには今までと同じやり方ではできません。「傷んだ箇所を修繕する」だけでなく、「より長持ちできる建物に改良する」という発想が必要になります。施工精度により建物の耐久性が左右されることを噛みしめるべきです。

完成後、全組合員の笑顔を得るためには、どんな大規模修繕をすればよいか。どうすれば設計事務所と施工会社が、精度の高い大規模修繕工事を実施できるかを考え出さなければなりません。

修繕周期15年を確実にするには、大規模修繕に関わる設計事務所と施工会社の「技術研修」「品質基準」「検査システム」の三位一体により、高品質な大規模修繕を実現させることが可能となります。このような見地から、その最善策として「修繕周期15年システム」を確立しました。

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 1-9 プロジェクトの取り組み

修繕周期を15年にするには、修繕周期15年用の統一書類、マニュアル・ルール・研修などが必要になります。管理組合目線で対応でき、品質かつ施工精度が確保できる設計事務所、施工会社でなければ15年周期に対応できません

管理組合だけでなく、マンションに関わる全ての人から信頼される施工精度と内容でなければ「15年周期認定マンション」にはならないのです。

修繕周期15年を実現するために必要な知識と技術を習得し、実践に活かすための認定研修を実施して、設計事務所には「大規模修繕設計・工事監理技術者」の認定を、施工会社には「大規模修繕工事施工管理技術者」の認定を行います。認定者は年1回開催の研修を通してマインド力と技術力の強化を図っていきます。

修繕周期15年を確実なものとするため、大規模修繕協議会オリジナルの「修繕周期15年システム業務マニュアル(A4版88頁)」を編成しました。修繕周期15年を確実に実施していただく認定技術者が手にする一冊で、本日の講義はこの「業務マニュアル」から一部抜粋して説明しています。

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2 建物の調査・診断

 2-1 大規模修繕の箇所

建物の現状を確認するとともに、劣化に至った原因を判定し追求します。大規模修繕をしていないマンションは老朽化がさらに進み空き家率にも拍車がかかります。

では、どこを修繕するのでしょうか。築年数が同じでも痛み方は異なります。

 外壁・防水等・・・12年(15年)周期で大規模修繕
  給水管・・・・・・20年~25年程度(更正か?更新か?)
  排水管・・・・・・25年~30年程度(更正か?更新か?)
  エレベータ・・・・25年~30年程度
  オートロック・・・15年~20年程度

消防設備・各種電気盤・連結送水管・ポンプ類・ガス配管・外構や庭園・電気引き込み等々。

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 2-2 調査診断のポイント

組合員に建物の状況及び今後の変化予測を伝え、大規模修繕をいつ・どのように行うべきかを明確に伝えます

 ① 建物の問題点・原因を正確に把握
  ② 大規模修繕を15年後とするための材料・工法を検討
  ③ 精度の高い工事概算金額書を作成し、適切な工事費を確保

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 2-3 調査診断スケジュール

理事会と修繕委員会との打ち合わせで、次の内容を検討します

 ① 建物調査・診断実施の周知
  ② アンケート協力の依頼
  ③ 修繕履歴・竣工図書の確認
  ④ その他確認事項

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 2-4 アンケートの流れ

 ① 全戸にアンケート配付(バルコニー立ち入り調査協力の確認)
  ② 立ち入り調査のリストアップ(希望者、問題があるとこと、最上階、ルーフバル
   コニー面、階段)
  ③ 立ち入り調査のご案内(調査者に対しての調査日確認)
  ④ バルコニー立入調査(決定した調査日を連絡)
  ⑤ 調査実施(館外組合員への通知は管理会社に送付を依頼する)

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 2-5 改善提案(例)

 1位 インターフォン・・・17票(38.6%)カラーモニタ危機への交換
  2位 自転車置き場・・・13票(29.5%)駐輪場が狭い(7)・屋根の設置要
    望(5)
  3位 ポーチ・門扉・・・9票(20・5%)開閉の不具合
  4位 その他・・・8票(18.2%)集会場(間仕切りの扉と冠水)・駐車場(排
    水枡蓋のぐらつき)・照明(省エネ・LED化)

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 2-6 屋上防水の詳細な調査診断

屋上で発生している水たまり箇所と範囲を必ず調査します。住戸に漏水していないか?水勾配が取れているか?を必ず確認します。

左上写真の屋上立ち上がり部分の床には水が溜まっています。右上写真中央左側の防水層にはミミズ腫れのような膨らみが見えます。

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 2-7 塗装の詳細な調査・診断

劣化範囲と度合を目視と付着力試験で確認します。特にひび割れが集中的に発生している箇所は原因を把握し、再発防止と修繕方法を検討します。

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 2-8 タイルの詳細な調査・診断

劣化数量の調査漏れが概算費用算出に大きく影響します。細心の注意が必要です。特に浮きが集中的に発生している箇所は原因を把握し、再発防止と修繕方法を検討します。

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 2-9 鉄部の詳細な調査・診断

チョーキングや膨れ、剥がれの状況確認と同時に過去の修繕履歴も確認します。鉄部の消火栓ボックスなどは腐食の進行によって塗り替えではなく、交換や部品取り替えが必要です。

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 2-10 バルコニーの詳細な調査診断

天井・壁・床などの劣化数量を計測し把握します。バルコニー床の水溜まり、金物関係の目視・触診壁のひび割れ状況を中心に確認する。

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 2-11 シーリングの詳細な調査診断

現状を認識するとともに徹底的に原因究明が必要です。軟化したシーリングの除去は費用が嵩むため必ず調査し劣化状況を把握します。シーリングはゼムクリップを利用して調査すると便利です。

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 2-12 建物調査診断から工事内容を考慮

建物調査診断報告書を基に改修設計、工事範囲・工法を決めます。

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 2-13 組合員への報告会

建物の劣化状況を分かり易くまとめて説明します。

調査診断結果の報告会に出席できなかった組合員に、報告書のダイジェスト版を作成し、掲示・配付します。

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3 修繕15年を確実なものへ

 3-1 概算工事金額書作成

修繕に必要な工事をすべて盛り込み、実施にあたり工事見解の目安を算出します。工事金額の目安を算出するに当たり、調査・診断の結果と組合員からの改善要望も反映させます

ただし、現況の判断を誤ったり、要望をすべて受け入れると修繕範囲が多くなり、工事金額が予算を大きく上回ります。予め予備費を見込んで作成します。

仮設足場設置後に発見される劣化と破損は、調査と診断時では未確認の箇所で発見されます。劣化と破損は工事費にも影響を与えます。実数清算で劣化・破損箇所が増えることもあります。予め予備費(5~10%)を見込みます。

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 3-2 建物の修繕設計

 3-2-1 もっとも重要なこと

建物を15年間維持管理していくために、どのようなことを実施していくべきでしょうか。

修繕周期を15年に延ばすには、同じ劣化を繰り返さないことが重要で、改修材料は新築時同等以上のものにします。また、リカバリー改修では今後の劣化・破損・汚れを生じさせないことが重要です

大規模修繕では、新築時の未施工部分も対象になります。

 3-2-2 優先項目の検討

次に、優先項目の検討が必要になります。著しく劣化が進行して修繕が必要なもの、仮設足場が必要な箇所を優先します。

 3-2-3 希望予算と比較検討

ここまできてから管理組合の希望予算と比較検討して優先項目を決め、工事範囲・材料・工法を決めます。

また、劣化の状況次第で、バルコニー、共用部分の床防水、全面改修と部分改修の削減提案をします。劣化状況が使用頻度で各部屋、各階数で異なるため、全面改修ではなく部分改修できるケースもあります。

 3-2-4 問題等の考慮

防水工事で一番重要なのは「端末(納まり)」「既存下地」「使用環境」などの問題を考慮することです。

性能の高い仕様であっても部分詳細の検討や、下地調整をきちんとせずに施工した場合は、本来の目的「漏水させない機能」が不十分になる場合もあります。防水層の更新だけでは漏水が止まらないというケースもあります

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 3-3 施工会社の選定

15年間維持管理していくために、どのようなことを実施していくべきでしょうか。それは、修繕周期を15年にできる施工会社選びです。

15年周期認定技術者が在籍し、組合目線で対応でき、品質確保ができる施工会社を選びます。そのために次の点に考慮します。

 ・ 過去に行った物件を見る
  ・ プレゼンテーション時に施工管理者の人間性、技術力、大規模修繕知識、実績
   を確認
  ・ 15年周期を理解し一緒に取り組める会社
  ・ 将来に渡り品質保証できる優秀かつ倒産しない会社

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 3-4 修繕周期15年の工事監理

修繕周期15年を確実にする工事監理とはどのようなものでしょう。

 ・ 着工前研修の実施
  ・ 試験施行の実施(防水、タイル、塗装、シーリング、金物)
  ・ 組合員・居住者への周知・対応
  ・ 工程検査(中間検査、都度の部分検査、足場解体前検査、竣工検査)
  ・ 不良工事の対処

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 3-5 着工前研修

工事監理者、施工管理者、作業従事者(職長)の意思統一(マインド)と問題共有を図るため、入念な打ち合わせを行います

マインドセットでは、管理組合の皆様に対する使命感と工事に対する使命感を確認します。

工事監理者、施工管理者が中心となって品質管理チェック項目、検査項目・時期、工程管理及び組合員への周知方法などの確認を行います。

設計図面に基づき、施工計画書が作成されているか確認します。また、その他、確認及び決定したことが実施計画に反映されているか確認します。

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 3-6 着工前現地確認

  3-6-1 屋上の確認

屋上に水たまりが発生していないか。改修ドレンがゲリラ豪雨の雨量に対応できるか。

 3-6-2 共用部納まり

共用部納まりと施工確認は、見落ちしやすい手すりの根元部分の防水施工状況を支柱カバーを外して確認

 3-6-3 バルコニー等の確認

天井、壁、床、速攻、金物などの現状確認と、修繕箇所及び修繕仕様、汚れのの防止策を検討します。

 3-6-4 定例会議と各種検査

進捗状況の確認と劣化数量の確認を行います。週に1~2回、定例会議とともに検査を実施します。

 3-6-5 工事進捗状況の報告

管理組合の理事や修繕委員と工事の進捗と今後の必要事項を取り決めるため、定期的に工事監理者、施工管理者で総合定例会議を行います。

設計変更がある場合は、資料を作成して説明を行い、必ず内容を確認し合います。

 3-6-6 周知活動

組合員や居住者へ作業の進捗状況を広報します。また、選択した床シートやタイルなどのサンプルを掲示して、組合員や居住者からの意見を集める意見箱などを設置します。

 3-6-7 試験施工の実施

工事監理者は各部位ごとに「仕上がりを厳密に判断し、理事と修繕委員の承認を得ます。

 3-6-8 作業状況の確認

管理組合側に立った精密な工事監理を行うためには、チェックシートを活用した工事監理が重要です。

 ・ 作業手順の確認
  ・ 作業状況の確認
  ・ 使用数量のチェック
  ・ バルコニーの全戸チェック
  ・ 足場解体前検査
    (足場解体前の工事範囲全チェック)

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 3-7 工程検査 ①

工程ごとに三段階で検査を実施します。

 ① 職長による検査
  ② 施工会社の社内検査工程検査
  ③ 工事監理者の検査

工事監理者は施工管理者が作成した検査記録を基に確認します。

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 3-8 工程検査 ②

材料の数量、死角部分の確認、下地補修の状況、工程完了時に隠れてしまう部分も確認します。

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 3-9 工程検査 ③

ひび割れや塗装の浮き、破損、排水口先端部分の穴、シーリングの仕上がり部分も確認します。

塗装の塗りムラは金膣になるように修正を指導します。

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 3-10 工程検査 ④

タイルは貼り替えるか、接着剤やステンレスピンを注入するかの判断が工事金額を左右します。

張替えと注入を区別するために色分けしてマークングを行います。

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 3-11 工程検査 ⑤

屋上防水は水たまりや勾配の有無、端部の納まり、ウレタン防水の場合は厚みや回数を確認します。

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 3-12 工程検査 ⑥

バルコニー防水は、排水口とウレタンと下地が剥離せずに密着していることが大切です。

降雨時に水たまりができていないかを確認します。また、排水ドレン内にウレタン材料が流れ込まないよう注意すること。また、床シートとの複合防水の場合は重ねる範囲を確認します。

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 3-13 足場解体前の検査

足場を解体する前に、施工業者・施工管理者による全チエックを実施します

大規模修繕協議会では、協議会認定技術者による工事検査を実施します。

協議会は第三者的な観点から総合的で純粋な判断ができる認定技術者を派遣して、二重検査システムの導入で工事監理の見落としや勘違いを防ぎ是正します。

着工計画書。検査記録・工事写真・チェックリストなどの書類確認た、施工計画書・着工前研修ににおいて決定した材料・工法・使用で適切に行われ、工程検査が各部位ごとに三段階で実施しているかなどについて検査・確認します。

施工業者・施工管理者の検査終了後、管理組合の理事と修繕委員も足場へ上がり施主検査を実施します。

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4 アフターフォロー

次の大規模修繕まで維持管理していくためにどのようなことをしなければならないかを考えます

 4-1 点検の必要性

アフターフォロー点検は、管理組合・設計事務所・施工会社の三者により、1・3・5・7・10・13年目に実施します。管理組合と共に建物共用部の点検を行うことで、問題点をチェックしながら健全な維持を実現します

こまめな点検で、不良箇所の早期発見と想定外の劣化に対応できます。発見した不良箇所は直ちに補修し、早めに補修することで建物を長持ちさせます。また、工事保証が切れる前のチェックと補修が可能になります。

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 4-2 中間期の補修

継続的な維持管理に欠かせないのが中間期の補修です。

 ・ 屋上防水のトップコートに塗り替え
  ・ ドア・手すり・階段等の鉄部塗装(部分補修でも可)
  ・ アフターフォロー、定期点検実施時に発見した劣化箇所の改修

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 4-3 屋上防水への対応

トップコート塗装工事を実施することで防水層の劣化を防止します。劣化している箇所があれば、同時に補修も可能です。

7年目のアフター点検時に行います。

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 4-4 鉄部塗装への対応

ドア・手すり・階段等の鉄部の塗装部分は、錆発生後の実施では本来遅く、錆や腐食が進行すれば下地処理や補修に手間とコストがかかります。

錆はその素材の特性から、少なくとも5~7年ごとの補修が必要です。また。塩害を受ける地域では早めに錆への対処が必要です。

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謝辞:「理事長として経験したこと」以外で文中に掲載しました写真類は、講演のレジメから転載させていただきました。ありがとうございます。