はげちゃんの世界

人々の役に立とうと夢をいだき、夢を追いかけてきた日々

第53章 大規模修繕と耐震化
  Yマンション5年間の軌跡

2016年11月26日に札幌市産業振興センターで開催された一般社団法人マンション大規模修繕協議会主催のセミナーで木村純札幌支部長の講演「困難を乗り越え、耐震と大規模修繕工事に挑んだYマンションの5年間の軌跡」の要約です。

1 現状の把握

 1-1 建物の概要

千葉市で耐震化工事と大規模修繕工事を行ったYハイツの建物概要は次の通りです。

・ 建物竣工   昭和49年6月

・ 構造・規模  鉄筋コンクリート造7階2棟

・ 拾戸数    123戸+集会室+管理員室

・ 施工会社   株式会社新井組

 1-2 耐震補強設計までの流れ

・ 耐震診断   施工会社に勧められて実施。

・ 診断後    気になりながらもそのままに。

・ 本格検討   東日本大震災をきっかけに。

・ 補強設計   複数社で設計事務所を選考

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 1-3 耐震性能について

建物の地震対策を行う場合、構造体の耐震性能を正しく把握することから始まります。1981年に改正された耐震基準では、大地震時に建物が地震による水平方向の力に対して、対応する強さを建物が保有しているかどうかを検討するように規定しています。

1981年以前の旧基準の建物は設計法が現在と異なるため、現在と同様な「保有水平耐力」に基づく方法で耐震性の検討を行うことができません。そこで、耐震診断は建物の強度や粘りに加え、その形状や経年状況を考慮した耐震指標「Is値」を計算します

耐震改修促進法等では耐震指標の判定基準を0.6以上とし、基準以下の建物については耐震補強の必要性があると判断されます。つまり、「Is値≧0.6」の建物は「必要な耐震強度に対し100%の強度を持っている」ことを意味します

1968年の十勝沖地震(M7.9、震度5)と1978年宮城県沖地震(M7.4、震度5)で、中破以上の被害を受けた鉄筋コンクリート造建築物の二次診断結果から、震度5程度ではIs値が0.6以上の建物に中破以上の被害が生じていないことがわかりました。また、Is値が0.6を下回るとIs値が低くなるに従って被害を受ける可能性が高くなることがわかりました

施工会社に勧められて実施したYハイツの耐震診断結果は、「Is値が0.49で中破の恐れあり」という結果でした。すぐに対策を講じなかったのはどこのマンションでも同じように、「そのうち、誰かがやるだろう。」という考え方でした。しかし、東日本大震災を経験したのを期に、修繕委員会のメンバーは前向きな方向へ代わりました。

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 1-4 設計事務所の悩み

修繕委員会は、前回の大規模修繕工事を2002年に実施しています。今回は耐震補強をしながら大規模修繕工事の調査設計も進めたいという希望でした。設計事務所側は、耐震や大規模修繕について設計事務所を選考する段階だから、ある程度の準備はできていると考えました

前回の大規模修繕は工事は2002年に実施しています。2015年に予定している大規模修繕では、耐震補強工事設計をしながら大規模修繕工事設計も進めていきたいとの要望です。

修繕委員会より渡された2011年作成の長期修繕計画書を見ると、2015年に耐震補強工事と大規模修繕工事を実施すると、修繕積立金の累計額は工事費の累計額を上回ります。一時的なものではなく、その後も延々と赤字状態が続くことになっています

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2011年作成の予算は
  ・ 修繕積立金残額       45,771,000円
  ・ 前回借入返済        2012年度まで毎年533万円返済  
  ・ 修繕積立金年計       13,915,000円
  ・ 耐震・大規模修繕実施   172,060,000円(2015年実施予定)

耐震補強と大規模修繕を同時にやりたい気持ちはわかりますが、修繕積立金の累計より工事費の累計が毎年上回り、常に赤字の状態が続いています。年金生活の方が多く一時金の徴収に反対が多いと云うこともあり、この計画を進めてよいのだろうか、無理ではないだろうかと設計事務所は悩みました

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2 夢を叶えるための苦悩

 2-1 資金繰りは

長期修繕計画書を基に修繕委員会で資金不足を説明しましたが、それでも耐震補強工事をやりたいとの意見が強く出ました。建物をどのように補強するかというより、最大の問題は資金繰りと区分所有者との合意形成です。必要な工事金額と考えられる資金繰りについて情報を収集することで、半信半疑のままスタートが切られました。

理事会と修繕委員会が強く求めたは、「家族の生命と財産を守る」ための総合コンサルタントでした。しかし、家族の生命と財産を守りたくても、それを可能にする資金が不足しています。この矛盾をどのように埋めていけばよいのでしょう

設計事務所としてできることは、リスクを最小限に収める四段階の分割契約でした。
  ① 耐震補強設計(基本構想を含む)
  ② 大規模修繕調査診断・設計
  ③ 合意形成・施工会社選定補助
  ④ 工事監理
これに基づき最初に必要な工事金額の概算値を算出しました。

考えられる資金繰りは次のものです。
  ・ 手元にある修繕積立金
  ・ 千葉市の耐震補強助成金
  ・ 特別負担金(一時金)
  ・ 借り入れ(公的資金・民間資金)
  ・ 修繕積立金の値上げ

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 2-2 公的な支援内容

  2-2-1 千葉市の耐震補強助成金

助成対象は「分譲マンション・緊急輸送道路沿道建築物・木造住宅」となっています。

分譲マンションの助成金(()内の値は上限値です。)
  ・ 予備診断(1棟3万4千円、1組合17万円)
  ・ 耐震診断(200戸未満116万6千円)
        (200戸以上400万円)    費用2/3
  ・ 補強設計(200戸未満200万円
        (200戸以上500万円)    費用1/2
  ・ 補強工事(200戸未満1,560万円)
        (200戸以上3,000万円)  費用15.2%

  2-2-2 札幌市の耐震補強助成金

助成対象は「分譲マンション・緊急輸送道路船頭建築物・木造住宅」で、三階以上かつ1,000平方メートル以上の建物となっています。

分譲マンションの助成金(()内の値は上限値です。)
  ・ 予備診断(1棟12万円)   費用2/3
  ・ 耐震診断(150万円)    費用2/3
  ・ 補強設計(500万円)    費用2/3
  ・ 補強工事(3,500万円)  費用23%
  ※ 棟の延べ床面積(㎡)に49,700円を乗じた額。

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 2-3 資金繰りと合意形成に奔走

特別負担金(一時金)や修繕積立金の値上げは、どこのマンションでも猛反対が予想されます。千葉市のYハイは築42年で123戸のマンションです。当初の長期修繕計画が甘く、概算で大規模修繕工事費を見積りしたところ、工事費が計画の1.5倍かかることが分かりました。

工事費を支払う時点での積立金は8,000万円。さらに耐震改修工事を同時に行なうと予定工事費の3割にも満たない状況でした。年金生活者も増え、前回の大規模修繕工事では借入れもしています。修繕積立金の値上げや一時金の徴収は、組合員の生活に影響が出ることは明らかで工事の実現には多くの壁が立ちふさがっていました。

資金繰りと合意形成が最大の問題でした。まずは組合員に現状を伝え、組合員の考えを知るためにアンケート調査を行いました。そこで一時金として拠出できる金額をヒアリングしたのですが、なんと平均29万7千円の回答がありました。回答ナシを覚悟していたのでこれには驚きました。しかし、回答率は30%。残り70%の組合員は反対かもしれません。

合意形成のために、修繕委員会は周辺マンションの修繕積立金を調査しました。工事を行った東京や千葉、埼玉のマンションへ出向いて工法を視察しました。組合員の負担を最小限に抑えた工事を実現するために、できることはすべて行いました

工事実現へ向けて、説明会や意見交換会を通じた本格的な合意形成活動をスタートさせました。理事会と修繕委員会はマンションの耐震補強の重要性と大規模修繕の必要性、修繕積立金の状況と公的な耐震補強助成金、概算工事費額と費用の捻出方法などを説明するため二ヶ月に一度臨時総会と説明会を実施しました

臨時総会や説明会への欠席者には修繕委員が交代で自宅訪問を行い、合意形成に至るまで何度も説明と説得が続けられました。反対する方はもちろんいましたが、最後には理解してもらうことができました

このような厳しい状況の中で、資金繰りにおいては「補助金申請の交渉」「借入口を分けた金利の削減」等の努力も続けられました。区分所有者の反応を聞いて目途が立ったと判断した設計事務所は修繕の設計を開始しました。

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3 耐震補強工事の概要

 3-1 日程表の完成

平成18年3月に終了した耐震診断の結果、設計事務所から二階と三階部分の強度が不足しているとの報告がありました。

設計事務所は、耐震補強工事までの流れを次のように提案しました。札幌市と異なり、千葉市は雪害がないので冬季間も工事が可能です

 ・ 耐震診断(平成18年3月終了) 二階と三階部分の強度不足
  ・ 補強設計(平成24年6月~平成27年2月)
  ・ 施工会社選定(平成27年1月~4月)
  ・ 補強工事(平成27年8月~平成28年2月)

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 3-2 耐震補強工事の方法

千葉市のYハイツはRC造り(鉄筋コンクリート造=形状の自由度が高く、耐火・遮音性に優れる、費用が割高)です。耐震補強の方法は三通り考えられます
  A. 外付き鉄筋ブレース補強
  B. 外付け柱・梁(PC・RC)補強
  C. 後内壁(SRC)補強

PCはあらかじめ応力を加えたコンクリート材で板状に工場で生産されたものです。鉄筋コンクリートに比べると、ひび割れが発生せず、水密性に優れています。

RCは鉄筋コンクリート構造で、木枠を組んでコンクリートを流し込む方法で造られ、ひび割れを許容するコンクリートですが強度の高い構造体をつくります。

SRCは鉄骨鉄筋コンクリート構造で、鉄骨で柱や梁等の骨組を組み、その周りに鉄筋を配筋してコンクリートを打ち込む方法で、地震の多い日本で独自に発達した構造形式です。

千葉市のYハイツは、壁面の表側にV状の梁が見える外付け柱・梁(PC)補強は美観を損なうとの理由で断念し、外付け柱・梁(PC)補強工法と後打ち壁補強(ピタウォール)工法を検討しました

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 3-3 耐震補強建物の視察

  3-3-1 外付け柱・梁(PC)補強工法

〇 工事概要(イメージ)

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〇 施工法(メリット・デメリット)

・ バルコニー鼻先外での耐震補強のため、PC構築時における生活影響は小さい。

・ バルコニーでのアンカー打設による騒音あり。

・ 既設手摺の撤去工事を伴う。

・ ブレースがないため、採光・眺望に影響なし。

・ PC基礎及び杭工事有り。

・ 既設柱・梁とのつなぎスラブの構築が必要。

・ 大型揚重機が必要。

・ 1階:7場面、2階:7場面、3階:1場面(想定)

〇 概算金額

・ 79,650,000円

〇 工期

・ 約3ヶ月。

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  3-3-3 後打ち壁補強(ピタウォール)工法

〇 工事概要(イメージ)

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〇 施工法(メリット・デメリット)

・ バルコニー手摺の内側での耐震補強のため、袖壁躯体構築時における生活影響はや
  や大きい。

・ バルコニーでのアンカー打設による騒音あり。

・ 既設袖壁の増厚につき、採光・眺望に影響なし。

・ バルコニーが若干狭くなる。

・ 基礎梁補強(室外機の移設が必要)。

・ 他に比較して、揚重機は小さい。

・ 1階:29場面、2階:29場面、3階:6場面(想定)

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4 耐震補強工法と工事個所

 4-1 ピタウォール工法

千葉市Yハイツの耐震補強方法として採用したのはピタウォール工法でした。集合住宅の耐震補強は難しい条件があり、一つは住居者がいて24時間そこに生活していることです。また住宅の機能として採光面積と避難通路の確保は絶対条件となります。

ピタウォール工法を簡単に説明すると、バルコニーに飛び出している隣家とのしきりになる柱部分を外側からリブ付鋼板を張り付けて補強する方法です。これにより、生活に支障をきたすことなく住宅の機能を損なわないように補強することができます。

この工法の特徴は、屋外から補強する居ながら工事で、通常の外壁と同様にメンテナンスが容易であり、リブ付鋼板を使用するためスリムな補強躯体となることなどが挙げられます。

既存の壁に建物外部からあと施工アンカーを一定ピッチで打設し、そのアンカーを介してリブ付鋼板を設置し、外側はモルタルでアンカーの頭を埋めるものです。このようにして既設壁を補強し、強度と靭性を向上させます。

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 4-2 耐震補強 平面図

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 4-3 耐震補強 立面図(南棟補強図)

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 4-4 耐震補強 立面図(北棟補強図)

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 4-5 耐震補強助成金の申請

Yハイツは耐震補強方法にピタウォール工法を採用することで、千葉市に耐震補強助成金の申請を行いました。この申請書類のつづりは10cm以上にもなる分厚いものになりました。

5 大規模修繕工事の計画

 5-1 工事までの流れ

設計事務所が提案した大規模修繕工事までの流れは次の通りです。

・ 調査診断    平成26年5月~10月
 ・ 設計      平成26年10月~平成27年1月
 ・ 施工会社選定  平成27年1月~4月
 ・ 修繕工事    平成28年1月~6月

 5-2 大規模修繕工事費の概算

項目金額
共通仮設工事            7,620,000円
直接仮設工事           19,361,115円
下地補修工事           12,594,372円
シーリング工事            8,928,115円
外壁塗装工事           20,031,625円
鉄部塗装工事            4、795、370円
防水工事           10,750,510円
その他の工事            1,409,693円
諸経費           16,300,000円
  合計          110,790,800円

予備費を含めてのフル概算金額は、150,000,000円程度になります。

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 5-3 耐震補強工事費の概算

項目金額
北棟事       61,768,443円
 準備・土工事        3,005,990円
 耐震補強工事       52,080,263円
 仕上げ・既存補修工事        6,682,190円
南棟       46,050,494円
 準備・土工事        1,997,290円
 耐震補強工事       39,065,984円
 仕上げ・既存補修工事        4,987,220円
    合計      107,818,937円

予備費を含めてのフル概算金額は、120,000,000円程度になります。

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 5-4 工事費削減のために

耐震補強工事と大規模修繕工事を分離発注して、足場など双方の工事で共用できるなどの重なる部分を精査して倹約に努めました

また、大規模修繕工事の内容を精査して、ゆとりのある時期に実施しても間に合う工事を仕分けして外すことで倹約に努めました

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これらの努力が続けられた結果、大規模修繕と耐震補強工事費の概算額が示されました。

項目金額
共通仮設工事          110,000,000円
直接仮設工事          107,000,000円
消費税8%(10%)           17,360,000円
 合計          234,360,000円
予備費5%程度           11,718,000円
 総合計          246,078,000円

設計事務所が様々な工夫で節約策を編み出した結果、耐震補強工事費と大規模修繕工事費の総合計額は246,078,000円となりました

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6 資金繰りの結果

 6-1 工事費が不足の場合

工事費が不足した場合、誰もが考えることは次の三点です。

① 南棟と北棟の工事時期を2~3年ずらすことはできないだろうか。

② Is値は0.6にならなくても良いのではないか。

③ 大規模修繕工事だけにしてはどうだろう。

しかし、南棟の工事を実施して2~3年後に北棟の工事をすると、一気に工事をするより工事費は割高となり資金繰りに悩みます。大規模修繕工事だけで耐震補強工事を諦めたり、Is値を0.6以下にして節約すると災害時に建物が中破したら悔いが残ります

これまでの検討で特別負担金を含めて考えられた資金繰りは次のようになりました。

項目金額
修繕積立金(平成27年度)          78,655,000円
千葉市助成金           15,600,000円
特別負担金(30万円/戸)           36,900,000円
借入金          120,000,000円
 総合計          251,155,000円

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 6-2 工事費はなお不足

耐震補強工事費と大規模修繕工事費の総合計額は246,078,000円ですが、これはあくまでも設計事務所の概算額です。施工会社数社に競争見積もりをお願いすることで工事費を安価にできないでしょうか。

工事には足場が必要なので、設計事務所の助言も知り合いの工事業者に聞いても、南棟と北棟の工事を同時に行ったほうが経済効率が良いという意見でした。

資金繰りを考えると、現在の修繕積立金に千葉市の耐震補強助成金を加えても工事費は不足です。やはり、特別負担金(各世帯が負担する一時金)と借入金を考慮しなければなりません。

工事の竣工後は、借入金の返済をしながら他の修繕工事を実施することになり、修繕積立金を増額する必要性があります。

近隣マンションの修繕積立金を調査すると次のような結果となりました。

マンション名概要平均金額
Yハイツ昭和49年竣工 167.7円/㎡  9,427円
H団地昭和43年竣工 333.0円/㎡ 21,645円
Pハイツ昭和49年竣工 237.0円/㎡ 15,405円
Sハイツ昭和52年竣工 229.0円/㎡ 14,885円

特別負担金(各世帯が負担する一時金)や修繕積立金の増額は区分所有者の生活に影響がでます。これまで検討してきたことをお知らせして、子分所有者のご意見を聞くためにアンケートを実施しました。

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 6-3 アンケートの結果

アンケートの回答率は36.6%で、特別負担金と修繕積立金の増額は妥当との結果が出ました。

① 回答戸数       45戸 36.6%

② 特別負担金は妥当   40戸 88.9%

   上記40戸の平均額  296,250円

③ 修繕積立金増額は妥当 35戸 77.8%

   上記35戸の平均%  19.04%(1,791円)

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7 不安解消で健全化のために

 6-1 現状のままでは不安

2015(平成27)年以降は修繕積立期の累計額より工事費の累計額が上回り、完全な借金体質となります

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 6-2 健全化のために

修繕積立金の額と現在の倍額にすると月額18,854円となり、16年後には修繕積立累計額は工事費累計額を上回ります

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 6-3 負担軽減を考慮して

修繕積立金を現在の45%アップさせ、月額13,669円にして負担を軽減させるとどうでしょう。13年後の大規模修繕時に修繕積立累計額は工事費累計額を上回り、さらに25年後の大規模修繕時にも対応できる状態と分かります

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 6-4 区分所有者の合意を目指し

修繕委員会は長期修繕計画を基に説明会を年3回開催し、説明会に参加しない方には戸別訪問で説得を続けました。更に集会室を貸切り、資金繰りに悩む区分所有者の相談にものりました

修繕委員会は考えられる努力をしつくしました。しかし、ここまでボランティアを続けても123戸中2戸は反対意見を述べたそうです

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8 奇跡が起きた理由

 6-1 耐震補強工事の開始

耐震補強工事が必要とされた二階と三階部分の工事が始まりました。耐震補強工事が必要とされた住戸はバルコニー側の窓や出入口は封鎖されます。工事期間中は洗濯物を干すどころか、バルコニーへ出ることも不可能です

バルコニーに張り出している隣家との境になる柱は、リブ付鋼板を張り付けるためにコンクリートがはがされます。かなりの騒音が発生して部屋中に響き渡り、バルコニー側の居間には大きな振動が伝わります

工事期間中は駐車場に止めてある車の移動が必要となり、足場がかかっていることから防犯にも気を配らなければなりません。工事の内容によってはかなりのほこりが舞い上がります

修繕委員会は、耐震補強工事が行われているストレス解消が必要と考え、
 ・ 四階以上にある空き室を借りることができないか。
 ・ 近隣マンションの空き室を賃貸できないか。
 ・ 駐車場にプレハブを建てて一時避難してもらえないか。
などを検討し、公的施設(公民館や著書館など)の利用案内情報なども配布しました。

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 6-2 工事結果の評価

工事が竣工すると生活に不安がなくなりました。工事後、資産価値を評価会社に調査してもらったところ、マンションの市場価格が平均して22.2%も上昇し、さらに今後も上昇が続くと評価されました。かけた費用以上の効果を得ることができ、安心・安全を手にすることができたのです

更に、金利優遇や税金の減税も該当しました。
 ・ 耐震補強工事費借入れ   年利0.5%
 ・ 固定資産税   1年分の1/2が減税
 ・ 所得税  工事金額の10%が控除
 ・ 住宅取得控除もあるようです。

工事費が200,307,000円も不足している状態で、耐震補強工事と大規模修繕工事を行うという困難を乗り越えることができたのは
 ・ 修繕委員会が活発に機能した。
 ・ 修繕委員会と理事会の意思疎通があった。
 ・ 普段からコミュニケーションを大切にしてきた。
 ・ 積極的に意見を聞き話し合いを行った。
ことが挙げられます。

千葉市のYハイツでは、理事会がイベントとして餅つき大会や花火大会、防災訓練で地震体験会や煙体験を実施していました。

大規模修繕工事と耐震改修工事を同時に実現させた、千葉市のYハイツ管理組合の理事・修繕委員の奮闘ぶりをご紹介しました。ご参考になれば幸いです。

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謝辞:文中に掲載しました写真類は、講演のレジメから転載させていただきました。ありがとうございます。

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