1 具体的に何をするか
1-1 準備段階
準備段階は、調査・診断と設計時に劣化に至った原因(要因)を確定して報告書にまとめます。この報告書を元に改修設計、工事範囲と工法を決めます。
次に、工事仕様、工事範囲と工法など、修繕内容の検討を行います。タイルや塗装の浮き、壁、天井、床のひび割れなどについて、調査・診断に基づいた数量による設計予算を提示して優先させながら、工事範囲と項目を絞り込みます。また、組合員へのアンケートも含めて検討し、工事保証内容を明確化します。
そのうえで、耐用年数を考慮した仕様から、資材の選定比較、耐候性(長持ち度)の比較、設計工事範囲、保証内容を明確化していきます。
1-2 施工会社の選定時
組合員の目線で対応でき、品質が確保できる優秀な施工会社を選定します。このため施工業者さんへ大規模修繕協議会からもご協力をお願いしています。
1-3 工事期間中
工事期間中は作業状況の確認を行い、塗膜厚や防水膜厚検査などは測定器を使用して細かなチェックを行います。
また、仮設足場の解体前には工事監理によるタイル全面打診検査によるチェックを行います。屋上防水やバルコニー床の防水状態についても、打診や触診による検査を実施します。
1-4 工事監理の精度を上げる
工事周期を12年から15年へ延長する際に重要なことは、管理組合側に立った工事監理、精密な工事監理が必要です。このため、施工会社の担当者の十分な理解を得て、一体となって建物修繕の精度を上げていかなければなりません。
工事監理の報告は、組合員が目にしやすいエントランスやホール等に掲示し、いま、何を行っているのか、組合員や居住者が常にわかるようにすべきです。
1-5 工事完了後の対応
工事完了後のアフターフォロー点検は、1・2・5・7・10年目ごとに、管理組合・設計事務所・施工会社の三者が参加して実施しすべきです。
不良箇所の早期発見や想定外の劣化に対応し、直ちに不具合箇所の補修を行います。早めに補修を行うことにより建物が長持ちすることになります。また、塗料や材料の保証切れ前のチェックと補修も重要となります。
また、アフターフォロー点検以外の時期にも定期点検を実施し、その結果を組合員へ提示して報告することも重要です。
1-6 管理組合の心構え
ア. 日頃から組合員の意見に耳を傾ける
理事だけで物事を決めて進めると、何も知らされていない組合員は不安を感じます。
イ. 管理組合主導による毎年の自主点検
少額工事の積み重ねで、高額工事になるのを未然に防止します。
ウ. 修繕時期をしっかり確認
第三者の立場でコンサルタントできる設計事務所を見つけることが重要です。
エ. 自分のマンションは自分たちで守る
業者任せにしないことが基本ベースです。
2 修繕周期を延ばすには
2-1 施工精度
品質が確保できる優秀な施工会社選定と組合員目線に立った精密な工事監理がポイントになります。
2-2 改修材料の選定
改修材料の選定に当たっては、新築時の材料と同等以上のものにすることがポイントです。
2-3 覚悟・技術力・努力
何がなんでもこのマンションを守ると云いう覚悟と、15年間はもたせるという技術力、安易な妥協案い負けずに努力することが重要になります。
3 プロジェクトの取り組み
3-1 決意は4年前
マンションの大規模修繕時期を12年周期から15年周期へ延ばすために、大規模修繕協議会は設計事務所に「大規模修繕設計・工事監理技術者認定」、施工会社に「大規模修繕工事管理技術者認定」を行っています。
この認定制度は、修繕周期を15年に延ばすために必要な知識・技術を習得し、その力を実践委生かすための認定研修です。お客様の要望に応えられるように3回の研修終了後も、定期的な会議や研修を通してマインド力・技術力の強化を図っています。
2015年10月に横浜市都筑区にあるパークシティLaLa横浜(地上12階705戸4棟)で、棟をつなぐ部分の手すりがずれていると複数の住民の指摘を受けて傾斜問題が発覚しました。虚偽データに基づいた工事が行われ、複数の杭が地中の強固な地盤に届いていないために建物が傾き、耐震への安全性が疑われました。
施工業者、下請け施工担当者、工事監理者のチェックの甘さとモラルの低さが露呈したもので、きちんとしたチェック体制のもとで実行されていればという禍根を残しました。
大規模修繕協議会が「修繕周期15年プロジェクト」を立ち上げたのは、4年前にあるマンションの理事長から受けた相談がきっかけとなりました。
1回目の大規模修繕工事から5年が経過すると外壁の塗装が剥がれ始め、日を追うごとに剥がれる範囲が広がって無残な光景になっていきました。このとき、工事を行った施工会社はすでに倒産しています。当時の理事長は大きな責任を感じ、何とか最小限の補修で済ませたいと相談に見えられました。
このマンションでは約半数の窓水切りの出幅がほとんどない状態でした。一般的には外壁面から20~30mm出ていなければなりませんが、ほとんどないに等しい状態です。
なぜ、この状態を改善せずに1回目の大規模修繕工事を行ったのか、現状を目の当たりにしてとても悲しく惨めな気のちになりました。
3-2 モラルと倫理
大規模修繕協議会はモラルと倫理の問題が一番大きいと捉えました。このような悲しい結果を防止するには、大規模修繕に関わる設計事務所と施工会社の「技術者のモラル」と「厳格なチェック」が解消への第一歩と考えました。
3-3 管理組合の対応
設計事務所と施工会社のモラルだけでなく、管理組合が抱えている問題も解消しなければなりません。
ア. 三割超のマンションで修繕積立金が不足しています。
イ. 建物の老朽化で、築30年を超えるマンションが2030年には369万戸とな
り、三倍以上に増加します。
ウ. 住民の高齢化で60歳以上が5割を突破し、年金暮らしの世帯が増加します。
これらの要素が加わり、修繕積立金不足が切実な問題になってきます。修繕費用を節約する方法はないでしょうか。
3-4 データを単純比較
10年度ごとに大規模修繕を行えば60年間で6回です。現行のように12年ごとの大規模修繕であれば60年間で5回になります。しかし、15年ごとに大規模修繕を行えれば60年間で4回になります。回数が1回減ることで一戸当たりの負担額は100万円の節約になります。
60年間で1回分の工事費が節約できれば修繕積立期間は3年間延びるので、修繕積立金の急激な値上げは回避できることになります。夢のような話を現実にするには今までと同じやり方ではできません。
3-5 施工の精度を上げる
建物の寿命は施工精度で大きく変わります。大規模修繕工事を実施してからまだ5年なのに、塗装が剥がれてきた、タイルが車の屋根に落ちてきた、廊下に雨漏りがあるなど、どれだけいい加減な工事がされているか枚挙にいとまがない状態です。施工不良の原因は、工事示基準の理解力不足が原因です。
一般的に、大規模修繕工事は国土交通省が作成した標準仕様書に基づいて工事が行われます。しかし、多くの現場においては経験値で工事が進められているのです。この結果、10年経たずに劣化が著しく進行してしまうマンションと、15年経っても問題のないマンションが生まれる原因です。
施工不良を防ぐ最良の方法は、メーカーの「施工手順書」に基づいて正しく施工することと、適切な工事記録を作成して「可視化」することです。
本来の大規模修繕工事とは、建物の傷んだ箇所を修繕するだけでなく、より長持ちができる建物に改良することでなければなりません。精度の高い大規模修繕工事を行うために何をすれば良いか、どうすれば設計事務所と施工会社は精度の高い大規模修繕工事を実施できるのか、これが修繕周期15年プロジェクトのきっかけです。
3-6 修繕周期15年へ向けて
ア. 新たな作成書類
a. 15年周期スケジュール表の作成
b. 修繕周期15年導入書(管理組合用)の作成
c. 二重チェック体制のルールの作成
d. 着工前現場確認マニュアルの作成
イ. 関係書類の見直し
a. 工事仕様書、特記仕様書
b. 業務実施マニュアル(調査診断~工事監理)
c. 工事監理、品質管理チェックリスト
d. 長期修繕計画書作成マニュアル
e. アフターフォロー、定期検査の作業手順書
ウ. 統一書類と研修の必要性
管理組合目線で対応でき、品質かつ施工精度が確保できる設計事務所、施工会社でなければ15年周期に対応できません。管理組合だけでなく、マンションにかかわるすべて人から信頼される施工精度と内容でなければ「15年周期認定マンション」にはならないのです。
修繕周期15年を実現するためには、業務精査、技術教育、広報(PR)が密接に連携していなければなりません。
4 修繕周期15年の実現へ
修繕周期15年を実現するために、これまでの検討で見出された必要内容をお知らせします。
4-1 建物の調査・診断
建物の調査・診断は、建物の現状を確認するとともに劣化に至った原因を判定し追求します。組合員に建物の状況と今後の変化予測を伝え、大規模修繕をいつ・どのように行うべきかを明確に伝えます。
ア. 建物の劣化状況sの原因を正確に把握します。
イ. 次回の大規模修繕を15年後とするための修繕方法と材料の検討します。
ウ. 精度の高い工事概算金額書を作成し、適切な工事費用の確保を依頼します。
4-2 打ち合わせ
建物の調査・診断のスケジュールは全体工程書と詳細工程書を作成して、理事会や修繕委員会との打ち合わせを行います。
ア. 建物調査・診断実施の周知
イ. アンケートの協力依頼
ウ. 修繕履歴・竣工図書の借用
エ. その他、確認事項
4-3 アンケートの目的
アンケート調査の目的と役割は次の三点です。
ア. 組合員が建物の傷みなどで気にしていることを把握する。
イ. 組合員が生活するうえで改善してほしいことを把握する。
ウ. バルコニーの調査をする住戸の決定(全戸数の10~20%を目安とする。)
4-4 アンケートの実施
ア. 全戸にアンケートを配付
バルコニー立ち入り調査協力の確認。
イ. 立ち入り調査先のリストアップ
希望者、問題があるところ、最上階、ルーフバルコニー面、階段など。
ウ. 立ち入り調査の案内
協力者に対して調査日程確認。
エ. バルコニー立入調査
決定した調査日を連絡。
オ. 調査実施
館外組合員への通知は管理会社に郵送を依頼する。
4-5 アンケートの分析
管理組合の要望が大規模修繕の対象と「なる」「ならない」を組合員にきちんと報告ことが重要です。
アンケートによる改善提案(例)
1位 インターフォン・・・・・17票(38.6%)
カラーモニタ機器への更新。
2位 自転車置き場・・・・・・13票(29.5%)
駐輪幅が狭い(7票)、屋根の設置希望(5票)
3位 ポーチ・門扉・・・・・・ 9票(20.5%)
開閉の府不具合。
4位 その他・・・・・・・・・ 8票(18.2%)
集会室(間仕切りの扉・冠水)。
駐車場(排水ますのぐらつき)。
照明(省エネ、LED化)。
4-6 修繕経緯の把握
修繕履歴や竣工図書を管理組合から預かり、建物の概要・使用材料・修繕面積などの建物の特徴を把握します。
修繕履歴や竣工図書の借用時は、管理組合へ預り書を提出します。
4-7 その他の確認事項
業務を効率よく行うために次の点を確認します。
ア. 集会室・駐車場の使用。
イ. 屋上のカギ・梯子の利用。
ウ. 物性試験のための電源・コンセントカギの使用。
エ. 管理員の勤務スケジュール。
オ. 修繕委員長(理事長)への連絡方法(メールアドレスなど)
5 調査診断の留意点
建物の調査・診断は全体工程書と詳細工程書により実施します。
5-1 徹底した原因究明
図面と現状が食い違っている場合があるので、調査・実測のうえ図面を修正します。劣化箇所や破損個所の現状を認識して、徹底的な原因究明にあたります。
5-2 調査方法
調査方法は、部分から建物全体を推定していきます。
屋上、ルーフバルコニー、外壁(塗装・タイル)、鉄部、バルコニー、開放廊下、外階段、エントランス、外構、その他の施設(駐車場・駐輪場など)。
調査範囲(例)は、建物の共用部分です。
バルコニー調査・・・・・全戸数の10~20%
外壁調査・・・・・・・・全体の15~20%
目視調査・・・・・・・・防水材、建具などの劣化
触診調査・・・・・・・・チョ-キング
打診調査・・・・・・・・タイルやモルタルの浮き
物性試験・・・・・・・・タイル付着力試験・塗膜付着力試験
コンクリート物性試験
シーリングの物性試験
5-3 結果を基に検討
建物調査診断書の作成。
建物調査報告書を基に、回収設計・工事範囲・工法を決めます。
6 建物改修の設計
6-1 設計の心得
修繕周期を15年に延ばすために忘れてはならない心得は次の二点です。
ア. 同じ劣化を繰り返さない
改修材料は新築時同等以上のものとする。
イ. リカバリー改修
今後の劣化・破損・汚れをw生じない改善策(修繕周期を15年に延ばすため)
・ 新築時の未施工部分も対象とします。
6-2 重要事項の検討
修繕周期を15年に延ばすための心得を噛みしめて工事仕様・工法・範囲などの検討を行います。、
ア. タイルや塗装の浮き、壁・天井・床のひび割れなど。
イ. 調査・診断に基づいた数量による設計予算を提示し、優先させる。
ウ. 工事範囲、項目を絞り込む。
エ. 組合員アンケートを含めて検討(工事保証内容の明確化)
6-3 部分詳細図の活用
修繕周期を伸ばすには、新築時の状態よりも性能を向上させることが大事です。「部分詳細図」を参考に、調査チーム内で十分な打ち合わせを行い最善の改修提案を行います。
例1 防水納まり(屋上防水と壁面)
防水層の端部と壁面の境界はシーリング材で余裕のない無理な形で納められている場合があります。この場合は、防水層の端部と壁面との間にアルミ水切りを設け、防水端部に余裕のあるおさまりを設けます。防水だけでは、外壁面の汚れを防ぐことはできません。
例2 梁天端保護(屋外の雨懸かり部)
マンション購入時のチェックポイントにもなりますが、屋外の雨懸かり部が新築時に防水されていな例が多々あります。屋上笠木の上面をウレタン防水してコンクリートを劣化から守ります。
例3 屋外階段床、壁納まり(屋外階段、壁)
新築時の階段床面と壁の納まりで、防水が考慮されていないケースが見受けられます。大規模修繕時はウレタン防水と床シートとの複合防水で躯体を守ります。
例4 廊下・バルコニー床・壁防水納まり(廊下・バルコニー床・壁)
新築時の外部廊下、バルコニー床面と立ち上がり部分は、防水が最小限に施工されているケースが多々あります。ウレタン防水と床シートとの複合防水で防水層を施工して躯体を守ります。
6-4 防水工事の注意点
防水工事で一番重要なことは「端末(納まり)」「既存下地」「使用環境」の問題などを考慮することです。
防水性能の高い仕様であっても部分詳細の検討や下地調整をきちんとせずに施工した場合、本来の目的「漏水させない機能」が不十分となり、防水層の更新だけでは漏水が止まらないケースも出てきます。
6-5 施工業者選定の注意点
15年周期認定技術者が在籍し、組合目線で対応でき、品質確保ができる施工会社を選ぶことが大切です。このためには、
ア. 過去に大規模修繕を行った物件を見に行く。
イ. プレゼンテーション時に、施工管理者の人間性、技術力、大規模修繕知識と実績を
確認します。
ウ. 15年周期を理解し、一緒に取り組める会社であるか見極めます。
エ. 将来にわたり品質保証できる優秀かる倒産しない会社かどうか見極めます。
7 着工前事前研修
設計監理者、施工管理者、作業従事者(職長)の意思統一と問題共有が大切です。工事管理者が中心となって品質管理、チェック項目、検査項目と次期、工程管理及び組合員への周知方法などの確認を行います。着工前の入念な確認事項を項目で上げると、
a. 工程スケジュール
b. 施工計画、品質管理
c. 施工要領、検査手順
d. 部分納まり詳細
e. 管理組合への周知方法
8 大規模修繕の工事監理
修繕周期を15年に延ばすため、15年間維持管理していくために工事管理はどのように行うべきでしょうか。
施工計画書、要領書、見積内訳書に間違いがないかの確認、試験施工の実施(防水、タイル、塗装、シーリング、金物)、検査(着工前検査、中間検査、都度の部分検査、足場解体前検査、竣工検査)、不良工事の対処などがあげられます。
8-1 施工計画書の確認
着工前に確認及び決定したことが反映されているかを確認します。
5-2 中間検査
劣化箇所を再チェックし、塗装やタイルのひび割れをチェックし工法を確認します。
タイルの浮き箇所をチェックし、直接雨水の侵入に影響を及ぼさない箇所やタイル周辺の目地が劣化していない比較的軽度の場合、ネジピンを差し込み樹脂を注入して固定する方法でタイルを張り替えをしない(工事費の節約)を検討。
下地との相性や色、模様合わせなどで丁寧な施工を考慮し、組合員全員の意見を聞くように配慮します。
8-3 住人への広報
掲示した工程図には、工事ごとに居住者に関係する支障を明記して、事前に組合員に理解していただくことが大事です。
8-4 作業状況の確認
塗膜厚や防水膜厚検査などは測定機により細かなチェックを行います。
ある工事現場で実際にあったことです。工事仕様書でシーリングの打ち替えの際に全面撤去を指示していたが、撤去せずに既設シーリングの上から打ち増しをしていることが判明しました。
外見上ではわからないため、触診で確認することが必要です。業界全体のモラル・技術・施工精度の底上げが必要と痛感させられます。
工事状況の確認にはチェックリストを活用して管理組合側に立った精密な工事監理が必要です。チェックリストの目的は、検査項目を明確にしてチェック漏れを防ぐことです。管理組合と設計事務所が決めた大規模修繕工事の基となる「特記仕様書及び設計図」を明確にし、施工会社が提出した「施工計画書、要領書、見積内訳書」に記入漏れや数量間違いがないかなどを確認することです。
チェックリストを活用した工事確認を箇条書きにすると次のようになります。
ア. 作業手順の確認
イ. 作業状況の確認
ウ. 仕様数量のチェック
エ. バルコニーの全戸チェック
オ. 足場解体前検査(足場解体前の工事範囲全チェック)
仮設足場解体前には、工事監理によるタイル全面打診検査によるチェックを忘れるわけにはいきません。
8-5) 不良工事の防止
使用する材料が設計仕様と同等品以上か、予定数量以上に材料が使われているかを確認します。また、各工程毎に指定された施工方法を確認するために写真を残します。
修繕周期を12年から15年へを延ばすには、管理組合側に立った精密な現場管理を行い、」施工会社の担当者にも十分な理解を得て、一体となって建物の修繕精度を上げていきます。そして、大規模修繕協議会を加えた工事監理二重チェック体制を採ります。
大規模修繕協議会は、第三者的観点から総合的で純粋な判断ができる認定技術者を派遣し、二重検査システムの導入で施工不備を防ぎます。工事の二重チェック体制で、「検査記録「検査写真」「工事監理チェックシート」「躯体改修工事チェックシート」などの書類確認と、現場の確認を行います
検査で的確に施工が行われていると認められれば、大規模修繕協議会から「検査合格証書」が発行されます。
9 継続的な維持管理
9-1 工事終了後
継続的な維持管理のためには「アフターフォロー」が大切です。次の大規模修繕まで維持管理していくために、どのようなことをしていくべきでしょう。
アフターフォロー点検の実施は1・2・5・7・10・13年目に、管理組合、設計事務所、施工会社が実施します。また、アフターフォロー点検以外の年である3・4・6・8・9・11・12年目には定期検査を実施します。
継続的な維持管理(アフターフォロー)に実施により、不良個所の早期発見と想定外劣化に対応し、直ちに不具合箇所を補修することにより建物が長持ちします。また、塗料や材料の保証切れ前のチェックと補修も可能になります。
継続的な維持管理に欠かせない中間期の施工箇所は、「屋上防水のトップコート仕上げ加工」「バルコニー、手すり、階段等の鉄部塗装」「アフターフォロー、定期点検実施時に発見した劣化箇所の改修」などがあげられます。
9-2 トップコート仕上げ
屋上防水層の劣化した箇所を見つけられれば部分的に補修も可能で、後々における下地の補修なども最低限い抑えられます。
9-3 鉄部塗装
バルコニー、手すり、階段などの鉄部は、鉄部の錆が発生してからのちの実施は本来遅く、さびや腐食が発生すればするほど下地処理や補修に手間とコストがかかります。鉄はその素材の特性から、少なくても5~7年ごとのメンテナンスが必要です。
鉄部塗装を必要とする部位は、機械式駐車場、鉄骨階段、外構回り扉類、玄関扉やメーターボックスなどの廊下廻りの扉類、屋上廻りの鉄部などです。また塩害を受ける地域では錆への対処が必要です。
最近のマンションの鉄骨階段は亜鉛メッキが多く、25年程度の耐用年数があるといわれています。塗り替えの頻度は少ないのですが、筑井15年以上のマンションではスチール製塗装仕上げが多く、特に雨掛かり部では中間期の塗り替えが必要です。
謝辞:文中に掲載した「二枚の図」は、プロジェクターで投影されたものを撮影して転載しました。ありがとうございます。