1 標準管理規約の規定
1-1 コミュニティーとは
広辞苑第六版でコミュニティーを調べると「一定の地域に居住し、共属感情を持つ人々の集団。地域社会。共同体。」と説明されています。コミュニティーは、アメリカの社会学者マッキーバーが定式化した社会類型のひとつで、血縁・地縁など自然的結合により共同生活を営む社会集団を指します。したがって、人々が共同体意識を持って共同生活を営む一定の地域、およびその人々の集団。地域社会。共同体をコミュニティーと呼びます。
京都市地域コミュニティ活性化懇話会座長の乾亨氏は、「なぜいま「地域コミュニティの活性化」が求められるのか」で次のように述べられています。
「地域コミュニティ」と言う言葉は近年よく使われていますが、じつはわかるようでわからない言葉です。学問の世界ではいろいろと難しい説明がされていますが、ここでは「地域社会」、あるいは、小学校区程度の範囲の「地域内の住民どうしのつながり」という程度に理解してください。要するに「近所どうしのつながり」のことです。
さてその「地域コミュニティ」ですが、多くの人が指摘しているように近年は人と人とのつながり(コミュニティ)が希薄になり、地域によっては、近所どうしでも挨拶しない、隣に住んでいる人もよく知らない、という状況になりつつありますし、それに伴って町内会・自治会の加入率も低下しつつあります。また「地域コミュニティなんてもう古い。今後は徐々に廃れていくものだ」とか「町内会や自治会などの地域組織は古い体質が残っていて厄介なもの。いらない」と主張する人もいます。
人はひとりでは生きられません。友達や周りの人とつながり、認め合うことで安心を得て生きています。子どもや高齢者の方、障害者の方はもちろん、私たちは誰でも、周りの人たちのちょっとした気遣いや見守りのなかで、支え・支えられながら暮らしています。この当たり前のことを、私たちは長い間忘れて暮らしてきたのかもしれません。
さらに、1995年におこった阪神・淡路大震災は、公共サービスが途絶えたときの「ひとりで生きる」ことの脆さをあらわにしました。結局あのとき役に立ったのは、外部から駆けつけた市民ボランティアの支えであり、なによりも、近所どうしの見守りや支えあう力、すなわち地域コミュニティの力だったのです。地域コミュニティがしっかりしていた地域のほうが、「ひとりで生きる」人の多かった都市部よりも災害被害が少なく、その後の立ち上がりも早かったことはよく知られています。
震災のような非常時だけの問題ではありません。いま私たちの身の回りでおこっている、子どもを狙う犯罪や事故、高齢者の孤独死などのなかには、ちょっとした地域の見守りや支えあいがあれば、(もちろん完璧ではないまでも)防げるものが多くあります。そんな大げさな想定をしなくとも、孤独になりがちな高齢者や小さな子どもを抱えてがんばるお母さんたち、リタイアして居場所を失った中高年、周りに認めてもらえなくて自分を見失いかけている子どもや若者たちにとって、「人と人とのつながり」の中に居る(コミュニティの中で、自分が自分として認められる、認め合う。すなわち、居場所がある)ということは、とても大切なことのはずなのです。
この10年、多くの人たちが、少しずつですが、「地域コミュニティがしっかりしていることが安心の基盤」だということに気づき始めているように思います。とりわけ、子育て真最中の若い世代を中心に、父親の積極的な子育て参加を促進する「おやじの会」活動や、子どもの見守り活動に参加する親たちが増えつつありますし、マンションにお住まいの方も、以前のように「近所つきあいをしたくないからマンションを選んだ」という方は少なくなり、ある程度地域と関わりながら定住していこうという方が増えています。
最近、自分の地域のいいところを大切にし、気になるところを改善していくことで、それぞれの地域ごとに、自分の地域を自分たちで住み心地よくしていこうとする地域が増えてきていて、そのなかで地域コミュニティの役割が見直されてきています。
自分たちの地域に関わることは、行政だけに任せるのではなく、行政と地域の住民が一緒に考え相談し一緒に取り組むことができればずいぶんと効率もいいし、なによりも、それぞれの地域の実情にあったきめ細やかな対応が可能になるはずです。さらに、行政サービスだけでは不十分な部分を地域コミュニティの力で補い協力しあうことで、行政だけあるいは地域だけで取り組むよりも、より暮らしやすい地域をつくりあげていくことも可能なはずです。そのためにいま、全国の多くの市町村で、行政が個々の地域の想いや意図を尊重し(地域分権)、地域と行政が共同で地域課題の解決に取り組む「パートナーシップ型まちづくり」が進みつつあります。
私たちにできること(というより、私たちにしか、コミュニティにしかできないこと、例えば顔が見える関係での支えあい、見守りなど)は、私たちで行ないながら私たちだけではできないところを行政がカバーする、という「パートナーシップ型まちづくり」がいま求められています。そしてそのときの基礎単位は、これまで述べてきたように、さまざまな市民活動であり、なによりも地域コミュニティ(地域組織)なのです。
1-2 平成16年の改正
国土交通省が平成16年1月28日に発表した「マンション標準管理規約」で、管理組合の業務に「居住者間のコミュニティ形成」が新設されました。
第5章管理 第32条業務 第15号 地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成
第27条の10号に「地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成に要する費用」を新設した理由は、コメントで次のように説明されています。
第27条関係
① 管理組合の運営に要する費用には役員活動費も含まれ、これについては一般の人件費等を勘案して定めるものとするが、役員は区分所有者全員の利益のために活動することにかんがみ、適正な水準に設定することとする。
② コミュニティ形成は、日常的なトラブルの未然防止や大規模修繕工事等の円滑な実施などに資するものであり、マンションの適正管理を主体的に実施する管理組合にとって、必要な業務である。
管理費からの支出が認められるのは、管理組合が居住者間のコミュニティ形成のために実施する催事の開催費用等居住者間のコミュニティ形成や、管理組合役員が地域の町内会に出席する際に支出する経費等の地域コミュニティにも配慮した管理組合活動である。
他方、各居住者が各自の判断で自治会、町内会等に加入する場合に支払うこととなる自治会費町内会費等は地域コミュニティの維持・育成のため居住者が任意に負担するものであり、マンションという共有財産を維持・管理していくための費用である管理費等とは別のものである。
1-3 平成28年の改正
平成28年3月14日に改正された「マンション標準管理規約及びマンション標準管理規約コメント」では、第32条第15号の「地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成」が削除され、第27条の「地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成に要する費用」も削除されました。
標準管理規約コメントには、第32条関係として削除した理由が次のように述べられています。
第32条関係
従来、本条第10号に掲げる管理費の使途及び第32条の管理組合の業務として、「地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成(に要する費用)」が掲げられていた。これは、日常的なトラブルの未然防止や大規模修繕工事等の円滑な実施などに資するコミュニティ形成について、マンションの管理という管理組合の目的の範囲内で行われることを前提に規定していたものである。
しかしながら「地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成」との表現には、定義のあいまいさから拡大解釈の懸念があり、とりわけ、管理組合と自治会、町内会等とを混同することにより、自治会費を管理費として一体で徴収し自治会費を払っている事例や、自治会的な活動への管理費の支出をめぐる意見対立やトラブル等が生じている実態もあった。
一方、管理組合による従来の活動の中でいわゆるコミュニティ活動と称して行われていたもののうち、例えば、マンションやその周辺における美化や清掃、景観形成、防災・防犯活動、生活ルールの調整等で、その経費に見合ったマンションの資産価値の向上がもたらされる活動は、それが区分所有法第3条に定める管理組合の目的である「建物並びにその敷地及び附属施設の管理」の範囲内で行われる限りにおいて可能である。
以上を明確にするため、第10号及び第32条第15号を削除するとともに、第32条第12号を「マンション及び周辺の風紀、秩序及び安全の維持、防災並びに居住環境の維持及び向上に関する業務」と改めることとした。また、従来、第12号に「その他敷地及び共用部分等の通常の管理に要する費用」が掲げられていたが、第32条に定める業務との関連が不明確であったことから、「その他第32条に定める業務に要する費用(次条に規定する経費を除く。)」と改めることとした。上述の第32条第12号の業務に要する費用は、本号あるいは別の号の経費として支出することが可能である。
管理組合は、区分所有法第3条に基づき、区分所有者全員で構成される強制加入の団体であり、居住者が任意加入する地縁団体である自治会、町内会等とは異なる性格の団体であることから、管理組合と自治会、町内会等との活動を混同することのないよう注意する必要がある。
各居住者が各自の判断で自治会又は町内会等に加入する場合に支払うこととなる自治会費又は町内会費等は、地域住民相互の親睦や福祉、助け合い等を図るために居住者が任意に負担するものでありマンションを維持・管理していくための費用である管理費等とは別のものである。
自治会費又は町内会費等を管理費等と一体で徴収している場合には、以下の点に留意すべきである。
ア. 自治会又は町内会等への加入を強制するものとならないようにする
こと。
イ. 自治会又は町内会等への加入を希望しない者から自治会費又は町内
会費等の徴収を行わないこと。
ウ. 自治会費又は町内会費等を管理費とは区分経理すること。
エ. 管理組合による自治会費又は町内会費等の代行徴収に係る負担につ
いて整理すること。
上述のような管理組合の法的性質からすれば、マンションの管理に関わりのない活動を行うことは適切ではない。例えば、一部の者のみに対象が限定されるクラブやサークル活動経費、主として親睦を目的とする飲食の経費などは、マンションの管理業務の範囲を超え、マンション全体の資産価値向上等に資するとも言い難いため、区分所有者全員から強制徴収する管理費をそれらの費用に充てることは適切ではなく、管理費とは別に、参加者からの直接の支払や積立て等によって費用を賄うべきである。
1-4 ジキルとハイド
マンション標準管理規約コメントには「管理組合の法的性質からすれば、マンションの管理に関わりのない活動を行うことは適切ではない。」としています。
平成27年3月に出された、「マンションの新たな管理ルールに関する検討会報告書」には、「マンション管理と自治会活動の定義・範囲を整理し、管理費と自治会費の徴収、支出を分けて適切に運用するのであれば、マンションの居住者間のコミュニティ形成や周辺地域のコミュニティとの円滑化は、積極的に行われることが政策的には望ましい旨を、標準管理規約コメントや適正化指針等において記載する。」としています。
また、標準管理規約「地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成」の取扱いと管理費からの支出の如何についての検討結果は次のように説明されています。
今回の問題提起と標準管理規約の見直しは、標準管理規約の第27条及び第32条のコミュニティに係る規定について、管理費の支出をめぐり、意見の対立や内紛、訴訟等の法的リスクがあるという法律論から行っているものであり、別途の政策論からは、マンションのコミュニティ活動は、積極的に展開されることが望ましいこと、そのために、自治会活動や管理業務に該当するか意見が分かれるおそれのある業務・活動については、管理費とは別途の費用徴収が望ましい旨を、標準管理規やコメントの第27条及び第32条関係の解説に新たに明記する。
これを受けて、マンション標準管理規約コメントでは次のように明記されています。
第27条関係
② コミュニティ形成は、日常的なトラブルの未然防止や大規模修繕工事
等の円滑な実施などに資するものであり、マンションの適正管理を主体
的に実施する管理組合にとって必要な業務である。管理費からの支出が
認められるのは、管理組合が居住者間のコミュニティ形成のために実施
する催事の開催費用等居住者間のコミュニティ形成や、管理組合役員が
地域の町内会に出席する際に支出する経費等の地域コミュニティにも配
慮した管理組合活動である。
他方、各居住者が各自の判断で自治会、町内会等に加入する場合に支
払うこととなる自治会費、町内会費等は地域コミュニティの維持・育成
のため居住者が任意に負担するものであり、マンションという共有財産
を維持・管理していくための費用である管理費等とは別のものである。
コメントの第32条関係には「地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成」についての言及はありません。
マンション標準管理規約コメントでは、「管理組合の法的性質からすれば、マンションの管理に関わりのない活動を行うことは適切ではない。」とし、マンションの新たな管理ルールに関する検討会報告書では「マンションの居住者間のコミュニティ形成や周辺地域のコミュニティとの円滑化は、積極的に行われることが政策的には望ましい旨を、標準管理規約コメントや適正化指針等において記載する。」としています。
法律論からは否定したうえで責任問題の可能性を示唆し、政策論からは肯定するといわれても、マンションの現場で管理組合活動・コミュニティ活動に取り組む者は混乱すると指摘する声もあります。
マンションの管理の適正化に関する指針では、「マンションにおけるコミュニティ形成は、日常的なトラブルの防止や防災減災、防犯などの観点から重要なものであり、管理組合においても、建物の区分所有等に関する法律(昭和三十七年法律第六十九号)に則り、良好なコミュニティの形成に積極的に取り組むことが望ましい。」としています。
さらに、良好な居住環境の維持及び向上について言及し「マンションにおけるコミュニティ形成については、自治会及び町内会等(以下「自治会」という。)は、管理組合と異なり、各居住者が各自の判断で加入するものであることに留意するとともに、特に管理費の使途については、マンションの管理と自治会活動の範囲・相互関係を整理し、管理費と自治会費の徴収、支出を分けて適切に運用することが必要である。なお、このように適切な峻別や、代行徴収に係る負担の整理が行われるのであれば、自治会費の徴収を代行することや、防災や美化などのマンションの管理業務を自治会が行う活動と連携して行うことも差し支えない。」としています。
しかし、コミュニティ活動に管理費から支出(費用負担)する場合に、区分所有者間で意見の相違や争い(訴訟も含む)が起きた事例があり、訴訟等の法的リスクを回避する観点(法律論)からコミュニティ条項は削除されました。
そのうえ、マンションの合意形成の環境づくりといった理由で管理費を支出できるという規約を総会で決議すれば違法であると判断されるおそれがあること、さらに管理と関連性の薄い業務・活動に対して支出をすれば、役員に個人責任や損害賠償責任が生じるおそれがあることの注意喚起を記載することとされました。
1-5 割り切りが大切
自治会費や町内会費などを管理組合が強制徴収する事例や、自治会活動や管理業務に該当するか意見が分かれるおそれのある業務や活動に支出されていることなどが、管理組合側で問題提起されたようです。
自治会費と管理費を便宜上一括して徴収しても、管理費・修繕積立金・駐車場使用料と同様に自治会費と云う項目で仕分けし、自治会費は町内会が開設した口座へ振り込めば問題は生じません。どんぶり勘定をやめることが解決への道を開きます。
また、大半が第三者に賃貸されているマンションや、空室が多いマンションなどで居住しない区分所有者から自治会費などを徴収していれば問題があります。自治会に加入できるのは、その地域に居住していることが条件になっているはずです。
知恵を絞れば解決への道が必ず開きます。京都市地域コミュニティ活性化懇話会座長の乾亨氏の言葉をかみしめましょう「人はひとりでは生きられません。友達や周りの人とつながり、認め合うことで安心を得て生きています。子どもや高齢者の方、障害者の方はもちろん、私たちは誰でも、周りの人たちのちょっとした気遣いや見守りのなかで、支え・支えられながら暮らしています」。
2 身勝手の集合体
年を重ねるに従いわがままになると云いますか、人の話を聞かない、聞いているふりをするだけで持論は曲げない、譲る気はさらさらない。極め付けは、自分の意見は間違っていない、受け入れない管理組合が悪いと総会を混乱させることがあると聞きます。
その人の意見は、多数の組合員の中の一つの意見に過ぎないのです。すぐには声にならなくても他の組合員も様々な考えがあるのですから、時間をかけて意見を聞きながら様々に検討し、結果として決議で結論を出すことで管理組合を運営していることを知らせるべきです。
管理規約にはそのことを定めているのですが、全く気に留める様子がない場合もあります。改めて管理規約と各種の細則に目を通してもらいたいものです。ただ、これとは逆に管理規約や細則の規定を順守することは当然としても、なんでもかんでも白か黒かと結論づけることは如何なものでしょう。一時的にはグレーも有効と柔軟な対応が望まれます。
理事会等では、意見を言う前にちょっと考えてください。自分の発言は誰かを傷つけないか、担当者への一言がやる気をそぐことにならないか、その気遣いがマンションを和やかにします。管理組合の運営が、理事会に参加することが楽しくなるはずです。
管理組合の運営はそこにかかわる方々の「やる気・意欲」が支えています。知識は後からついてきます。まずは体調を整えて、元気であれば元気と笑顔がついてきます。
3 コミュニティーの充実
最近の分譲マンションでのコミュニティー活動といえば、高齢者を中心としたサロン活動が話題になります。当初は特別に参加者を60歳以上とか女性と限ったわけではないのに当然のごとく高齢者や情勢に偏るのが常であり、参加者数もなかなか増えていかないのが主催する側を悩ませています。
3-1 ひとつの例
Pマンションでは206戸で四百数十名余りの方々が居住しています。毎月2回のサロンを開催し、あえて年齢等の制限を設けてはいません。しかし、いつも参加しているのは15名程度の女性であり、ここ最近は体調不良やお部屋で転んで骨折したなどで入院している方が数名いますので、実参加者は10名前後なのが実態です。
ア. 先日のサロンでは、参加者が入院したことでお見舞いの話題が出たのですが、それぞ
れに次のようなご意見があったそうです。
a. サロンの参加者の代表がお見舞いに行く。
b. 仲の良かった方々がお見舞いに行く。
c. あえてお見舞いにはいかない。
イ. 結論は、敢えてサロンとしてのお見舞いにはいかない。お見舞いの云々はその方の個
人の判断にゆだねることにしたそうです。このサロン開催の趣旨を思うと妥当な判断と
思います。つかず離れず、しっかりその方の状況を「見守り」把握することができたの
ですから、サロンとしては賢明な結論だと思います。
ウ. 最近の活動は、認知症防止のために脳トレ(算数、ぬり絵、言葉の練習)を行い、外
部専門家による講話なども楽しみの一つになっています。
3-2 自らの発信が大切
管理組合として、サロンの開催や居住者全体を対象としたバーベキューパーティ、火災訓練等に参加を促すことは重要なのです。それ以上に居住者一人一人が自ら参加を心掛けることが、居住者の方々に自分を知ってもらうためにも、自分の周りの人々を知るためにも必要なことなのです。
周りの居住者がいて、互いにその存在を意識することが「見守り」の原点と思うべきです。アクシデントに見舞われたときには、らちゅうちょなく助けを求めるべきであり、一時でも早く現状の危機を発見してもらうこと、気付いてもらうことに心がけるべきです。
これは誰でもできるわけではありませんし、強制すべきことではありませんが、できれば自分の体調や病気などを管理組合や近隣の方々に知ってもらうことは、内容のある「見守り」につながると思うべきです。ただ、その主な受け皿である管理組合にその意識が備わっているかは、はなはだ疑問です。
3-3 三要素を重視すべき
前記のようなサロンを開催しても、参加するのはほとんどが女性であり男性はなかなか参加しません。男性はただ単に茶話会と称しても、囲碁・麻雀をする会と称してもそれだけで参加の目的とはならないのです。仮に集まっても続きません。
男性は自分に対しての役割を与えられること、仕事としてお願いされること、そのことに対しての評価(謝礼も有効)をすることが重要な要素となるのです。
理事に業務を分担し、報告を受けて謝礼を払う。謝礼と行ってもそれほど高額にする必要はありませんが、当然のことながら謝礼は予算化していなければなりません。
このことは数年前に当方のマンションで理事会の活性化を目的として実践しました。まさにその通りとなり、大げさに言えば改革への大きなきっかけができ、それから4年を経てさらに前向きな運営を続けています。
3-4 見守りは義務ではないが
本来の管理組合の業務は、区分所有者の共同の利益を増進し、良好な住環境を確保するために、敷地、建物および付属施設の管理を行うことです。そのために、区分所有者の利害を調整し、組合としての意思を決定し、決定事項を執行していくために必要な事務を処理することになります。
そもそも区分所有者や居住者個人のプライバシーに関わることを、管理組合の業務とすることは到底考えていなかったのです。しかし、現状は急速に進む高齢化平成25年マンション総合調査では、世帯主の年齢が60歳以上は50.1%であり、永住意識は52.4%の方が終の棲家と回答しています。)で、孤立死や孤独死は珍しいことではなくなり突然の体調不良や事故が近隣い不安を与えるに至っては、個人のことだと放置できない事態になってしまった現状を思えば、必然的に道義的のも居住者の見守りが必要となったのです。
安否確認のマニュアル作成について相談を受け、現在その手順を定めて使用細則に規定した管理組合が複数出てきました。なお、見守りとは違いますが、最近はシュエハウスと民泊に関することでトラブルが起き話題となっていることに注意が必要でっす。
3-5 建物・設備の見守り
そののマンションの建物、設備の維持管理の重要性はいうまでもありません。管理会社に全面委託をしていれば、ついついあなた任せになってしまう例が多いのです。管理会社の担当がしっかりしていれば、定期的な補修等がなされますから何とか体裁は整うものです。しかし、かかる費用はおのずから割高になりがちであり、年金暮らしの組合員が多くなる中で、そうそう値上げもままならないのですから、理事諸君はしっかり主体性を持った維持管理をしてもらいたいものです。そのためには、常に相談できる町医者的な位置づけの施工会社や設計事務所を見つけてください。
税法上の減価償却は45年ですが、マンションを大切に管理すれば100年近くまで持つでしょう。札幌市内でマンションの建て替えが行われたのは6件で、全国では86軒あります。マンションは再生を考える時代に入っています。