はげちゃんの世界

人々の役に立とうと夢をいだき、夢を追いかけてきた日々

第45章 居住者の高齢化

2012(平成24)年10月14日、京王プラザホテルで開催の第5回建装工業株式会社主催マンションセミナーで、一般社団法人マンションリフォーム技術協会田邉邦男会長の講演「マンションの高年齢化と将来の資金計画」より「居住者の高齢化」の要約です。

1 マンションの二つの老い

 1-1 建物の高経年化

高経年マンションは増え続け、2011年の段階では約562万戸の三分の一弱が20年を超える状況になっています。1981年以前に建てられたものは築30年を経過し、2012年では100万戸が築30年を超える状況となっています。超高層マンションの高経年化も増え、2009年の時点で全国1,000棟220万戸となっています

マンションの長命化を図るために大規模修繕は欠かすことができません。第1ステージは建築から60年間で、概ね第1~第4回の大規模修繕が行われます。第2回目以降の大規模修繕には、マンションのグレードアップ工事が加わります。

大規模修繕工事は多額の費用を必要とするので長期修繕計画で決められます。

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ア. 物理的老朽化の問題と対応

経年による建物各部位の傷みは、改良・改善を含めた大規模修繕工事で対応します。工事内容の検討と、設備ではシステム変更等の検討も必要になります。

イ. マンション再生

相対的(社会的)老朽化への対応は、建物や設備の陳腐化の問題が出てきます。生活水準に対応できる住居の機能改善の検討が必要となり、専有部分を含めたマンション全体のグレードアップ、すなわち「マンション再生」の検討が必要になります。並行して、住戸の多様性と住まい方の提案も必要です。

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 1-2) 居住者の高齢化

マンションという建物の高経年化により、改修工事が増えて工事費はしだいに高額となります。マンションの建物と同様に居住者も高齢化し、工事費負担の資金計画問題が出てきます。

居住者の高齢化に伴いバリアフリー化への対応は欠かせません。階段の手すり設置、スロープ、エレベーター新設等の検討も必要になってきます。どこまでグレードアップが可能か、マンションの規模によっても異なります。

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2 居住高齢者の支援

開催時期を失念しましたが、社団法人高層住宅管理業協会で「マンション居住高齢者への支援マニュアル」がまとめられ、その説明会が開催されました。マンション管理組合やマンションの住人が事故を防ぐために考えなければならないことを抜粋要約しました。

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 2-1 管理組合の高齢者対策

2004(平成16)年の標準管理規約改正で、第32条に管理組合の業務として「地域コミュニティーにも配慮した居住者間のコミュニティー形成」という項目が加えられました。良好なコミュニティー形成は、高齢者との関わりにおいて非常に重要な要素といえます。

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ア. 管理組合の役割

管理組合は自らが支援を受ける対象ともなりえる成り得ることから、互助・共助の精神を持ってコミュニティーを形成し、高齢者支援の環境を整備することが望まれています。高齢者に対する管理組合が行うべき役割の一例をあげると、次なような事柄が考えられます。

 a. 行政との高齢者情報の共有・連携(行政担当理事等の設置)

 b. 管理会社の高齢者支援への理解(管理会社は受託するマンションの居住者構成に
  対応しながら、高齢者を支援するための知識の向上が望まれる。)

 c. 町内会など地域社会との連携

 d. 声かけなどによる見守りや老人クラブなど高齢者コミュニティー形成

 e. 認知症の人などへの理解と支援

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イ. 日常の対応

管理組合は管理業務を管理会社へ丸投げせずに、居住者の安否確認などは行うべきでしょう。安否確認は次の順序で行います。

 a. 建物内を定期的に巡回し、住戸の扉の異常や異臭がないか確認する。

 b. 郵便物や新聞の放置がないか確認する。

 c. インターホンによる問いかけを行う。

 d. 電話をかけて桜桃の有無を確認する。

 e. 本人との連絡が取れない場合は、居住者名簿で臨給連絡先へ連絡する。

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ウ. 生活支援サービス

管理会社との委託契約に入らない業務は管理組合が処理します。管理組合の役員は交代制ですから、役員になったときは居住者のために尽くし、役員を下りた時は役員のお世話になる。これが互助と共助です

管理会社の委託契約に入らない業務で、互助と共助の観点から管理組合がお世話すべきと思われる業務は次の通りです。

 a. 日常生活の支援

粗大ごみだし、古新聞だし、配食サービス、買い物代行、車椅子などの介助、専有部小破修理対応、相談に対する支援と対応、自治会(サークル)活動支援など。

 b. 行政との連携又は支援サービス

管理組合承認の居住者情報の更新と提供、民生委員との連携、地域包括支援センターとの連携、高齢者の行政への緊急連絡の初期対応など。

 c. 各種サービス会社との連携支援サービス

訪問サービスなどの駐車ャスペース確保、集会室等利用のディサービスなど。

 d. 見守りサービス

リスクマネージメントとしての見守り(新聞受けや郵便受けのチェック)、サービスとしての見守り、隣人としての見守りなど。

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エ. 修繕計画で検討事項

段差の解消、手すりやスロープの設置、床の防滑、エントランスの自動扉化、照明の照度アップ。また、エレベーター扉の閉時間延長は即時対応可能。

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 2-2 高齢者関連の問題

社団法人高層住宅管理業協会は、管理会社253社と453人にアンケートを実施して集計結果をまとめています。

ア. 管理員の高齢者対応

・ マンション居住の高齢者のお手伝いをしたことがありますか。
  a. しばしばある                    14.1%
  b. 時々ある                      55.6%
  c. ない                        29.4%
  d. 無回答                        0.9%

・ どのようなお手伝いをされましたか
  a. 荷物を運んであげた                 238件
  b. 専有部内の電球を交換してあげた           147件
  c. 車椅子を押してあげた                 71件
  d. 郵便受けや宅配ボックら荷物を取りだしてあげた     99件
  d. その他                       116件

・ その他のお手伝い
  a. 専有部内(家具の移動、水漏れや詰りの修繕など
  b. ごみだし(新聞出し、粗大ごみなど)
  c. 車関連(タクシーを呼ぶ、駐車場への誘導など)
  d. 相談を受ける(電話の連絡、盲人への代読、話し相手など)
  e. 簡単な介助除(車椅子の補助、住戸までの補助など)

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イ. 高齢者の問題

・ 管理会社からみて

ア. 高齢者に関する問題がありますか。
  a. ある             43.9%
  b. ない             37.5%
  c. 把握していない        17.4%
  e. 無回答             1.2%

イ. 高齢者に関する問題の事例は
  a. マンション居住者間のトラブル  61件
  b. 近隣住戸とのトラブル      36件
  c. 管理員とのトラブル       36件
  e. 訪問販売への苦情        33件
  f. その他             29件

ウ. その他の問題
  徘徊、管理費の滞納、孤立死、部屋の悪臭、役員就任の拒否、騒音トラブル。

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 ・ 管理員からみて

ア. 高齢者に関する問題がありますか。
  a. ある             27.6%
  b. ない             66.0%
  c. 無回答             6.4%

イ. 高齢者に関する問題の事例は、
  a. 訪問販売への苦情        84件
  b. マンション居住者間のトラブル  58件
  c. 管理員とのトラブル       17件
  d. 近隣住戸とのトラブル      15件
  e. その他             67件

ウ. その他の問題
  徘徊、孤立死、部屋の悪臭、騒音トラブル、鍵のかけ忘れ、介護サービス業者
 の駐車、耳が遠くインターホンが聞こえない。

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 ウ. 高齢者の孤立死

平成16年度から平成18年度へかけて高齢者の孤立死がありましたか。管理会社253社の回答は、

a. 平成16年度            28件
 b. 平成17年度            27件
 c. 平成18年度            68件

・ 孤立死の事例

事例1.当該居住者の親族より「四ヶ月くらい連絡が取れないので心配である。」との連絡が管理会社にあり、担当者が警察を同伴してマンションを訪れると居室内で区分所有者が死亡していた

事例2.連休前から○○号室の玄関ドアが少し空いていると管理員から連絡を受け、担当者と区分所有者の弟が現場を確認すると、居室内で区分所有者が死亡していた。

事例3.管理人より○○号室前から異臭がする旨の連絡が入り、本人との連絡がとれなかったため賃貸仲介業者が合鍵で居室内を確認したところ、ベットで賃貸人が死亡していた。

事例4.管理員より○○号室付近で異臭がし、郵便受けに郵便物が貯まっている状況との連絡が入り、理事長と警察の立ち会いで居室内を確認したところ、区分所有者が死亡していた。

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 2-3 居住者の認知症

・ 管理会社からみて認知症と思われる問題

ア. 認知症が原因と思われる問題点はありますか。
  a. ある             38.5%
  b. なし             39.9%
  c. 把握していない        20.6%
  e. 無回答             1.2%

イ. 認知症が原因と思われる事例
  a. 何度も同じことを聞いてくる         61件
  b. 建物内を行ったり来たりして不審がられる   48件
  c. ごみを出す日を間違える           20件
  d. 警報をよく鳴らしてしまう          19件
  e. 水漏れなどを頻繁に起こす          10件
  f. その他                   29件

ウ. その他の問題
  近隣への迷惑行為(排尿・脱糞・騒音・被害妄想など)、自分の居場所が分か
 らなくなる、室内のことができない、鍵のかけ忘れ、管理室への迷惑行為(電話
 や訪問など)。

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・ 管理員からみて認知症と思われる問題

ア. 認知症が原因と思われる問題点はありますか。
  a. ある             20.3%
  b. なし             75.7%
  c. 無回答             4.0%

イ. 認知症が原因と思われる事例
  a. 何度も同じことを聞いてくる         61件
  b. ごみを出す日を間違える           27件 
  c. 建物内を行ったり来たりして不審がられる   26件
  d. 警報をよく鳴らしてしまう           9件
  e. 水漏れなどを頻繁に起こす           5件
  f. その他                   42件

ウ. その他の問題
   近隣への迷惑行為(排尿・徘徊・騒音・被害妄想など)、ガスコンロへ鍋の
  かけ忘れ、オートロックの暗証番号忘れ、ごみの分別ができない。

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・ 認知症への対応

高齢者の中には、認知症になる不安感などから周囲とうまく付き合うことができなくなることもありえます。周囲の理解があれば、コミュニケーションを図る方法や付き合いも大きく変わってくると考えられます。

ア. 認知症の人への対応で心掛けることは3つの「ない」です。
  a. 驚かせない
  b. 急がせない
  c. 自尊心を傷つけない

イ. 具体的な対応のポイントは、つぎの7点を理解しておくことが必要です。
  a. まずは見守る
  b. 余裕を持って対応する
  c. 声をかけるときは1人で
  d. 背後から声をかけない
  e. 相手に目線を合わせてやさしい口調で
  f. おだやかに、はっきりした滑舌で
  g. 相手の言葉に耳を傾けてゆっくり対応する

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 2-4 高齢者虐待への対応

高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律(高齢者虐待防止法)には、次の行為が虐待になるとしています。

ア. 身体的虐待
 イ. 著しく養護を怠ること(ネグレクト=放任)
 ウ. 心理的虐待
 エ. 性的虐待
 オ. 経済的虐待(金品の搾取)

虐待を受けたもしくは受けていると思われる高齢者(65歳以上の者)を発見したものは、

ア. 高齢者の生命又は身体に重大な危険を感じている場合は、市町村へ通報(通報義
  務)
 イ. 前記以外は、市町村へ通報するように務める(努力義務)

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 2-5 施設のグレードアップ

 共用部に関する苦情

・ 居住者から管理会社へ

ア. 段差が多い               71件
 イ. 床が滑りやすい             49件
 ウ. 専有部の対応(小破修理)をしてほしい   29件
 エ. 照明が暗い               22件
 オ. エントランスを自動扉に         19件
 カ. その他                 69件

・ 居住者から管理員へ

ア. 段差が多い               39件
 イ. 床が滑りやすい             24件
 ウ. 専有部の対応(小破修理)をしてほしい   24件
 エ. 照明が暗い    

・ 管理会社が把握するその他の意見

手すりやスロープの設置、エレベーター点検時の対応、機器の操作がわからない、専有部の対応希望(電球交換など)。

・ 管理員が把握するその他の意見

手すりやスロープの設置、エレベーターの扉が閉じる時間が早い、掲示物の字が小さい、扉が重い、機器(メールボックスや宅配ボックス)の操作がわからない、鍵の預かり、床が固い(毛足が長いとつまずく)、廊下に車椅子を置きたい。

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 2-6 避難支援体制の確立

消防法で、管理組合の理事長は権限者とされ防火管理者を置かなければならないと規定されています。火災時はもちろん地震を含む大規模災害時には、高齢者や障害のある方々の避難を支援しなければなりません。

このため、隣人の了解を得て避難支援者となっていただくなどの準備をしておく必要があります

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