1 組合員の無関心
2010(平成22)年10月16日午後1時から札幌市産業振興センターで開催された一般社会法人マンション大規模修繕協議会の第10回大規模修繕セミナー「大規模修繕の準備は組合員全員で行う」より「組合員の無関心」の概要です。
1-1 管理組合の問題
大規模修繕を経験されたマンション管理組合の理事長さん方のお話を伺うと、組合員の無関心さが最大の問題とおっしゃいます。問題を大きく分けると次の三点に要約することができます。
ア. 意見を求めても集まらない。
イ. 理事会の出席率もよくない。
ウ. 総会は「委任状」だけで成り立っている。
これらのことから、理事長さん方は「どうして一人で苦労しているのだろう、誰のための大規模修繕なのか。」というのが共通した思いのようです。
無関心さの原因を探ると、次のような理由が見えてきます。
エ. 何のための大規模修繕なのか・・・わからない。
オ. 誰のための大規模修繕なのか・・・わからない。
カ. だから、自分には関係ない、無関心でも問題ない、との発想が生まれます。
そして、誰かに任せておけばよいという発想が生まれます。
キ. 管理組合全体に「自分たちでやる」という意識が薄い。
ク. 日ごろから管理会社に全部任せているから・・・。
ケ. 理事長の知り合いが工事を全部してくれるから・・・。
この結果、希望した工事内容や予算ではなく、丸投げした業者の都合で工事が行われることなります。
1-2 無関心の理由
組合員の無関心である大きな理由は、「大規模修繕の目的を知る機会がない。」ことが挙げられます。
ア. どうして工事が必要なのだろう、壊れていないのに。
イ. まだキレイだからやる必要はないだろう。
ウ. 業者が儲けたいから工事を勧めているんだろう。
エ. 防水工事は雨が漏ってきてからやればいいんだ。
オ. 悪くなったところから直せばいいさ。
無関心をなくするためには、正しい情報を伝え、共通の意識を持つことが必要です。
ア. 屋上防水って、なに。屋上へなんかあがったことはないよ。
イ. バルコニーはウチの専有部じゃないの?
ウ. 図面なんて見せられても読めないよ。
エ. 外壁の汚れなんてたいしてひどくないよ。
多くの組合員はこのように考えているので、建物全体の劣化状況を的確に伝えることが重要になります。
1-3 無関心とこぼす前に
組合員が無関心とこぼしている理事長さんの管理組合は、理事会や修繕委員会が情報を伝えきれていないために、組合員は何が行われているかわからない場合が多いようです。
例えば、理事会から組合員への突然の発表などがあげられます。
・ 理事長「大規模修繕の工事説明会を3日後に行います」。
・ 組合員「いつ施工会社を決めたんだ」。
・ 理事長「広報紙でお知らせしました。」
・ 組合員「見ていない・知らない・覚えていない」。
1-4 分りにくい掲示物
・ 理事長「大規模修繕についてはエントランスホールに掲示していました。」
・ 組合員「貼ってあったかもしれないけど、気付かなかったよ」。
1-5 関心をもたせるために
ア. 周知の重要性
組合員への周知は単に結果だけではなく、これまでの経緯も含めて分りやすく周知すべきです。このためには「広報活動」を欠かすことはできず、全ての組合員が共通理解ができるように写真などを多用して周知すべきです。
a. 現在はどのような状態になっているのか。
b. これまでどのようにしてきたのか。
c. 理事会や修繕委員会はどう考えたのか。
d. その結果、何をどのようにしようとしているのか。
広報は、何について書かれているのか、重要な内容と分かるか、だれからだれへの情報なのかがわかるように表現を工夫します。
イ. 掲示物の見直し
a. 見出しは、離れたところからでもわかるように大きめにします。
b. 目次は、なぜ必要なのか、どうしてほしいのかを簡潔にに表現します。
c. 本文は、目的の詳細や説明を分りやすく表現します。
d. 写真や表などは、理解を深めるために利用します(文章表現が難しくても写真は
現状を伝えます)。
広報紙や掲示物は「誰が・いつ・どこで・なにを・どうする・いくらで(5W1H)」が網羅されているか確認します。
掲示物はきれいな活字よりも、手書きや手作りの方が伝わる場合もあります。
ウ. 広報紙の発行
a. 簡単なものでも、定期的な発行が重要。
b. 製作に費用がかからないように分担で行う。
c. 掲示板、エレベータ、各戸に配付する広報紙を使い分ける。
広報紙は盛りたくさんの内容より、簡単な内容でも定期的な発行が望ましいとされています。
1-6 意見や質問への回答
意見交換ポストなどは、多くの管理組合で設置されているようですが活用方法を見直すことも大切です。質問や意見などの投書には、記名式にすることにより誹謗中傷などに使われることを避けるべきでしょう。
質問や意見などへの回答は掲示板に張り出し、同様の考えを持っている組合員にも見てもらいます。質問や意見と回答を併記して広報紙への掲載も有効です。