1 端子函の蓋が落ちた
2009(平成21)年1月31日発行の理事会報第270号で「避雷設置用端子函の蓋が二箇所とも劣化」をお知らせしました。
1月23日午後、東棟一階東側外壁にある「避雷接地用端子函」の蓋がはずれて(写真左)落ちているのを管理員さんが発見しました。東棟屋上避雷針からの導線は一階東側外壁の「避雷接地用端子函」(写真中央左)、西棟屋上避雷針からの導線は一階南側外壁の「避雷接地用端子函」(写真中央右)で地中の銅板等に接続されています。東西棟どちらの蓋も固定不可能なまでに劣化し、蓋にさわるだけではずれ落ち、内部の導線に緑青がみられます。
菊水から本通14丁目へ移転していたマンションの建築会社へ照会すると出入りの電気屋さんに依頼するよう薦められ、24日午前11時にK電気株式会社の営業部長に見ていただきました。導線に発生している緑青は問題なく、ふたの爪が磨耗して薄くなっています。本体に差し込んでも固定することは不可能なため、雨水が入らないように周囲を密閉(写真右)しました。避雷接地用端子函を覆い隠すように外壁に固定する方法が最善とされ、理事会は避雷針メーカー製作のステンレス製蓋への更新を決定してK電気株式会社に発注しました
2 危険回避のために
2009(平成21)年3月1日発行の理事会報第272号で「接地極の新設が必要」をお知らせしました。
建築基準法により20メートル以上の建物には避雷針(避雷設備)の設置が義務付けられています。私たちのマンションのエレベーター機械室屋上までの高さは22,41m、東西幅は26m、南北幅は14,85mあり、平成2年の「JIS規格」で避雷針が設置されています。これまでは壁に固定しているボルトのサビに着目し、避雷針のぐらつきを気にしていましたが勉強不足による点検の忘失を思い知らされました。
2-1 避雷針の配線
私たちのマンションの避雷針は、東棟と西棟のエレベーター機械室の壁に向かい合うように設置されています。東棟の避雷針に接続した銅線は東棟六階天井を経由して五階屋上へ下り、東北壁のそばで鉄筋に溶接されています。西棟の避雷針に接続した銅線は、西棟六階天井を経由して五階屋上へ下り、西壁に添って南へ延伸し南西壁のそばで鉄筋に溶接されています。銅線が鉄筋に溶接されている位置は、東棟と西棟を対角線で結ぶもっとも離れた位置になります。
鉄筋の地上から2mほどの位置に銅線を接続して引き出し一次側とします。地中に銅板を埋設し、銅線を溶接して建物の下から引き込んで地上2mほどの位置で引き出しこれを二次側とします。一次側と二次側の銅線は、避雷接地用端子函(写真左)内で接続されています。二箇所ある避雷接地用端子函の蓋が外れ落ちるため、2月17日にK電気株式会社を通して大阪避雷針工業がステンレス蓋を取り付けました。
2-2 接地抵抗値の測定結果
避雷接地用端子函で接地抵抗を測定すると、東棟の避雷針から避雷接地用端子までの抵抗計測値は62Ωで、西棟の抵抗計測値は0.59Ωという結果が出ました。日本工業規格「建物等の避雷設備(避雷針)JISA4201」では、二本ある避雷針の一方が50Ω以下で、他方は10Ω以下でなければなりません。
東棟は規定値を12Ω超え、西棟は規定値以内ですが非常に低い値であり、設置線が地中に埋設されている放電用の銅板と完全に接着していないのではないかと疑えます。銅版の埋設位置が分かる資料は現存せず、落雷時に地中放電ができない危険な状態のため接地抵抗の新設が経費抑制と推奨されました。電気工事士資格保持者の技術と経験が必要なため見積りを依頼しています。
2-3 導線の点検が必要
避雷針設備に落雷があったケースと、全く落雷がなかったケースで避雷針の消耗度合いは異なります。耐用年数は約10年以上とされますが、耐久力よりも接続部位の劣化や緩み、地中へ接続している導線の断裂などの点検作業が重要とされていました。
2-4 設置極新設の概要
既存の端子函に新設端子函をかぶせ、東棟側は既存の接地線を利用して3端子付きとし、西棟側は既存の接地線を利用できないので2端子付きの接地極(接地銅棒)を地中へ打ち込みます。端子函から接地極までの接地線はVE管で保護して外壁に固定しますが、東棟側は外壁のタイルが浮いている箇所のため検討が続いています。
3 工事が必要な理由
2009(平成21)年3月31日発行の理事会報第273号で「東棟避雷針の接地極工事は雪解け後に」をお知らせしました。
2月17日の避雷接地抵抗測定後、K電気株式会社の営業部長と話し合った危険性は理事会報第272号でお知らせしました。数日後に届いた接地抵抗図面をみると、西棟側は抵抗値が規定内のため東棟だけの工事に変更されていました。西棟側はなぜ工事が不要なのか、避雷接地抵抗を測定した電気工事士の理由説明書がほしいと頼みました。3月12日、大阪避雷針工業榊札幌支店より避雷針の接地抵抗についての「見解書」と、K電気株式会社から「見積書」が届きましたのでお知らせします。
接地極見解書
避雷設置抵抗値は、東棟側62Ω、西棟側0.6Ω(四捨五入)。
「日本工業規格、建築物等の避雷設備(避雷針)JISA4201の接地抵抗」に関する規定は下記による。
ア. 避雷設備の総合接地抵抗は10Ω以下とする。
イ. 各引下げ導線の単独接地抵抗は50Ω以下とする。
東棟側の接地抵抗値(62Ω)は、ア.の規定値(50Ω以下)を超えているため是正の必要があります。西棟側の接地抵抗値(0.6Ω)については規定値内のため避雷設備上問題ありません。非常に低い抵抗値ではありますが、接地抵抗が測定可能である以上、接地材が大地と接触していることと想定できるからです。
但し、低い抵抗値であるが故に建築物の鉄筋への接触若しくは土留めH鋼杭等の鋼材接地も考えられます。埋設状況に関しては推測でしか判断する事は出来ませんが、抵抗結果が規定値内である以上避雷設備上は問題無いと判断致しました。
見解書の内容は資格のある専門家が作成したもので、判断の根拠が示されているので信用できると考えます。工事の見積は、端子ボックスの新設以外は安価な消耗品類ですが、取り付け労務費7万8千円と接地測定一式2万3千円、値引き△6万円,消費税9千円で合計18万9千円となりました。安全確保のため雪解けを待って工事の予定です。
4 設置極の新設工事
2009(平成21)5月10日発行の理事会報第277号で「避雷針設置極の新設工事」をお知らせしました。
22日の午前9時より、東棟の避雷針設置極新設工事を実施しました。設置極表示板の真下にあるツツジを避けて若干南側を掘削すると、タイルがはられていないコンクリートの土台から樹脂製のホースが現れました。更に掘り起こすとホース内部から銅線(左下写真)が現れ、避雷針設置函から建物内部を通り抜けた避雷針の線でした。導通試験でこの線を利用できることがわかり、用意した特注の避雷針設置箱も壁伝いに地中への配線を保護する配線ボックスも不要となりました。費用は若干無駄になりましたが、建物の景観は現状のままで変化ありません。
銅メッキをした1.5mの金属棒を(上左から2枚目写真)三本つなぎ、間隔を測りながら三箇所に打ち込んで銅線でつなぐと(上左から3・4枚目の写真)、抵抗値は規定内の25.7Ωになりました。
避雷針の設置極を再度測定いただき、設置極表示板に「測定年月」と「測定値」を記入してもらいました。西棟避雷針の設置抵抗は0.6Ωでしたが、2月の測定は降雪の影響により誤差がでたようで、再測定の結果は1.0Ωありました。今回の工事で東棟はJISの接地抵抗値である「各引き下げ接地抵抗の単独設置抵抗は50Ω以下」となりました。