はげちゃんの世界

人々の役に立とうと夢をいだき、夢を追いかけてきた日々

第15章 生活音等の公害

情報交換会でトイレの使用音を聞こえ無くしてほしいという要望に四苦八苦し、深夜の掃除機音や洗濯機音、カラオケで歌う声、楽器の演奏音、階段室に響く大声で話し合う声とドアの閉まる音など、少ないほうと言われても悩んだおとなしい居住者たち。

1 トイレの使用音

1-1 修繕情報交換会で

建築後一年目点検にそなえ、理事会の承認を得て作成した自宅修繕箇所記入図面を配付すると、1993(平成5)年5月23日開催の「修繕情報交換会」へ記入した図面を持参して21世帯中16世帯が参加しました。

そんな中で、五階の区分所有者から生活音に対する苦情がでました。「理事長宅のトイレ使用音が大きく聞こえ不快だ。小洋室を寝室に利用している娘が理事長宅の便所の使用音に悩まされている。とくに周囲が静かな夜は、トイレ使用音がかなりの音量で響きノイローゼ気味になっている」。

参加者から「水を流す音はかすかに聞こえるときもあるが、気になるような音の高さではない。」「気になったことはない。」「そんな音は聞いたことがない。」との意見が出されました。参加16世帯中15世帯は問題ないとしましたが、その区分所有者は「理事長宅のトイレ使用音を聞こえ無くしてほしい。」の一点張りです。

翌日、建築会社へ調査を依頼しましたが「完全防音ではないので多少の生活音は響きます。苦情が出るほど響くことはありえませんが、スラブの厚さ検討する際に実験したデータや設計図などを調べてみます。」という回答でした。

トイレの使用音を聞かされる五階のご家族はやりきれないでしょうが、聞かれていると知った側の家族も苦痛です。日曜日や祝日の昼間はできるだけ我慢し、近くの公共施設へ出かけて用を足すようにしました。問題は周囲の騒音が消える夜です。膝を深く曲げて腰を落とし、ホースの先端を便器内に入る程度まで押し下げて放尿するしかありません。太ももがはり体を支えるタオル掛けは悲鳴を上げました。

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1-2 建築会社の対応

管理組合役員が全員交代して第二期が発足しました。1993(平成5)年8月23日の理事会へ第一期の役員も呼ばれ、点検に当たった建築会社職員より建築後一年目点検の結果説明を聞きました。「前理事長から要請のあったトイレの防音ですが、このマンションの便器内には常時8リットルの水がたまる構造で、管内に汚物が留まらないよう流し落とす方式を取っています。大便を流すために8リットルの水が使われると、タンクから便器内へ水が補給されます。

マンションで多少の生活音が響くとの苦情はありますが、トイレの使用音が響くという苦情は初めての経験です。様々な方法を検討しましたが、前理事長宅の便器をはずして床に防音効果のある薄いウレタンシートを敷くことにします。」

9月20日、前理事長宅の便器下に薄いウレタンシートを敷く工事が行われ、水を流しながら階下住居で音の聞き取り調査が行われました。調査を終えて引き上げる建築会社の職員に効果を尋ねると、「工事前に聞こえた音の高さは他の住戸と同じでしたが、工事後は少し防音効果が上がりました。でも、まだ聞こえる。」と納得してくれません。

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1-3 分譲会社の対応

10月6日の理事会終了後、第二期の理事全員がトイレの使用音を確かめたいと前理事長宅へみえました。苦情を言う区分所有者宅の玄関で待機してもらい、ヤカンの水を便器内へ注ぎ落す音を数回聞いていただきました。実験後、「わたしたちにはそれほど問題があると思えませんが、3ミリのシートを敷いたぐらいではほとんど効果がない。もっと聞こえ無くしてほしいと言ってました」。

11月7日に分譲会社主催のトイレ使用音についての説明会が開催されました。「マンションという建物は完全防音ではありません。多少の生活音は響きますが、騒音計で計測して一応問題がないとされる程度以下に抑えています。シートを敷き込む方法以外に便器を取り換える方法もありますが、排水音が高くなるという弊害が起きます。このため、少しでも音を和らげる効果のあるシートを敷きこむ方法を取りました。

私どもが分譲したマンションで、トイレの使用音が問題になったのは初めてのため対応に苦慮しています。他のマンションと比較しても問題になるような音の高さではありません。気になりだしたら気になるというのが生活音で、生活音問題は「感情公害」とも言われています。全住戸の便器の下へ構造上許される程度の厚手シートを敷設する計画ですが完全に音が聞こえなくなるということはありません。

音が聞こえるのはお互い様ということでご理解を得たいと思います。よろしければ全住戸の便器の下へ、構造上許される程度の厚手シートを敷設する工事を11月中旬から開始します」。説明会への参加者は新旧の理事と苦情主の区分初級者だけでしたが、だれ一人異議を申し出るものはありません。

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1-3 座り小便と便器交換

11月15日から、全住戸の便器下へ厚手のシート敷設工事が行われました。翌年6月の第三期定期総会でトイレ使用音について質問された区分所有者は、「厚手のシートを敷設してもあまり効果はない。」と答えましたが、さらなる防音工事については言及しません。翌日の朝、東棟玄関前で出会った区分所有者の奥さんは「あまり気にしないでください。」といいましたが、言葉とは逆に加害者として責められているかのように感じられます。

下の階では消えない排尿音で嫌な思いをしているでしょう。申し訳ないという気持ちを強く感じる一方、あり得ないとは思うが毎回耳を澄ませて排尿音を聞かれていると思うと気が滅入ってきます。膝を深く曲げて腰を落とす体形は不自然なため尿道に尿が残り、排尿障害や前立腺肥大などになりやすいという話を聞くと精神的な圧迫感を感じるようになりました。

掛かり付けの医師に相談すると「あまりにも自虐的に考えすぎる」と諭され、女性と同じ姿勢の座り小便を勧められました。大阪は女性が圧倒的に強い土地柄なので男性の座り小便は全国1位、ジャージ着用率が高い長野と岡山は必然的に座り小便が多いそうです。勧められた座り小便はホースの状態を確認しないと失敗しますが、ホースを下向きにさせることで消音効果が格段に上がりました

便器の洗浄水が節水方向へ進み8リットルから4リットルで洗浄できる便器が登場しました。便器から汚水管までの距離が長ければ、洗浄水が少ないと流れが悪くなり汚物が詰まる恐れがあります。トイレのリフォームをしたときに撮影した写真を見ると、30cm程度で汚水管へ繋がっています。階下宅へ工事の騒音でご迷惑をおかけすることをお詫びしてから便器を取り換えました。水を流す洗浄音はかなり減少しましたが、精神的な重圧感が消えず座り小便をやめるわけにいきません

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2 掃除機と洗濯器音

1993(平成5)年3月中旬に訪れた区分所有者より、「午後9時を過ぎると上階からカラオケで歌う声が聞こえます。午後11時を過ぎると掃除機や洗濯機を使う音が響いて眠れません。直接言えば角が立つので何とかしてもらえませんか。」と、要望がありました。

下手に注意すれば自由だと反発されこじれると被害者は増加します。1993(平成5)年3月222日の理事会報第16号で「21時以降はお互いに注意」を呼びかけました。理事会報の記事は読まれたようで苦情は消えました。

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「ときおり降る雪の中で木々の蕾も膨らんできました。歩道が乾き始めると、ナナカマドの実を探して小鳥の群れが群れ飛びます。道路上を雪解け水が流れ始めたのに、まだ雪が残っています。不思議な天候は北方圏の大都市札幌に春が訪れる前触れです。

ツルツルになった轍を避けながら公園の方角から歩いてくると、暖かい光があふれているバルコニーがみえます。仕事に疲れた体を癒してくれる21世帯のいこいの場がみえてきます。だれにも迷惑をかけないようにとポケットからそっと取り出した金属製のカギが冷え切った指を温めます。不謹慎なオートロックの開錠音に驚き、下されていないエレベータの前で足踏みします。でも、あまり音はたてられません。共用部の音はすべての住戸内に響きます。

夜も9時を過ぎると環状線を走る車は少なくなります。商行為が一段落するにつれ、あふれていた騒音はおさまり街は眠りにつきます。建物の中へ、外の音はそれほど入ってきません。しかし、昼間は気にならなかった生活音が伝わるようになります。

テレビの音量、ステレオの音楽、ファミコンの音。もっとも響き渡るのが掃除機の音や洗濯機の音。やっと自宅にたどり着き、暖房のスイッチを入れてその前にうずくまると、夜の9時を過ぎているのにカラオケで歌う声が聞こえます。

マンションは鉄筋がコンクリートを着ているようなものです。鉄筋はすべてボルトで留められているので、音は鉄筋を伝わり全体へと流れていきます。上下はもちろん前後左右へと広がっていきます。夜の11時を過ぎると掃除機や洗濯機の音は、信じられないほどの振動音を発生して鉄筋に伝達します。

マンションはみんなのもの、疲れた体を癒してくれるいこいの場です。夜の9時以降は明日へ備える時間帯にしようではありませんか」。

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3 昼夜響く音

2010(平成22)年5月27日の理事会報第310号で、総会で寄せられた苦情を紹介しました。

昼間の喧騒が止むと、夜間はほっとする静寂が訪れます。この静寂を破るかのように、時おり住戸の玄関ドアが荒々しく閉まる音が響きます。大声での会話が聞こえるときもあります。室内で大工仕事をしているような音、板金作業のように金属を叩くような音、時にはものをひっくりかえしたような音も聞こえます。

総会での苦情は相手の立場に立った優しいものでした。「4月初め頃からでしょうか、昼間聞こえるのはやむを得ないとしても、夜間も楽器を演奏する音が聞こえるようになりました。高齢になると夜遅くまで起きていることはできなくなります。9時すぎに床へ入ると演奏音が耳について眠れなくなります。練習していることは理解できますが、9時以降の楽器演奏はご遠慮いただけないでしょうか。」。

平成20年9月28日開催の臨時総会で「使用細則の一部改正」が承認され、ピアノの搬入と使用が禁止されました。他の楽器については、みんなで決めたルールがあります。(中略)音を出されている世帯の区分所有者は総会へ欠席が続いているため、具体的な困惑状態をご理解いただけないでしょう。だれもがルールを守り、安心して暮らせるようご協力をお願いします。

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4 火のついたタバコ

2009(平成21)年8月30日の理事会報第287号で「火のついたタバコがバルコニーに」をお知らせしました。

8月24日(月)、理事会が終わって20時50分ころに帰宅すると、バルコニーの排水溝にタバコの吸殻が落ちていましたと監事より連絡がありました。CASTERRという銘柄のタバコが、火の着いたままで置かれたように燃え尽きた灰が残っていました。翌朝駐車場へ出てみると、CASTERの吸殻があちこちに落ちています。上の階でタバコを吸っていた方が落とされたのではないかと考えました。

25日は入院見舞いでに行かれた監事さんが22時30分に帰宅すると、CASTERというタバコの吸殻が排水溝に落ちていました。タバコの火は消してありましたが、駐車場側のフェンスの隙間から手を入れて置いたような形跡(右側写真)です。警察への通報も考えましたが、このようなことは2日間だけでなくなりました。

南側駐車場を通り抜ける人の悪質ないたずらと思われますが、可燃物を置いていると放火の恐れもあります。バルコニーは災害時の避難経路のため物品は置けません。ご注意ください。

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9月1日の朝、202号の賃貸契約者より「理事会報に出ていたように、先日202号バルコニーの排水溝にタバコが落ちていました」との連絡がありました。駐車場から二階のバルコニーまでタバコの吸殻を投げ上げることはできません。駐車場に落ちていたタバコが風で舞い上がることも考えられません。監事さんが発見されたタバコの吸殻も、駐車場を通り抜ける人の仕業とは考えにくくなりました。

昨年まで、駐車場に落ちている吸殻を見かけたことはほとんどありません。駐車場の4・5・6・7番周辺に今年の春頃からタバコの吸殻が落ちているのを見かけます。タバコをたしなむ居住者はわずかですが、バルコニーへ出て吸われる方をみたことはありません。火の点いたままのタバコをバルコニーから捨てたり、全員の財産を汚すような行為を区分所有者がするはずはありません。居住者でなければ来客の仕業でしょうか。

仮称ペット飼育委員に応募した区分所有者が姉と暮らすことになって転居されると、しばらく空き家となっていた住居を隣の区分所有者が賃貸して大学生の息子を住まわせました。

学友が空いている駐車場を利用するようになり、数日間連続で駐車していることもありました。駐車場の建物側に、火を消した形跡がないたばこの吸い殻が落ちていることが多くなりました。側溝内で火のついたタバコが燃え尽きた形状で残っていました。駐車場に学友の車が止まっているときは、かならず数本の吸い殻が落ちています。

万一火災が発生したら、巡視もしていない防火管理者である副理事長は処罰されるかもしれません。現場写真を掲載した理事会報第287号の記事と第288号で、「来客の仕業」としたので吸殻を見かけなくなりました。

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5 響く扉の閉鎖音

昼も夜も、住戸の扉の閉まる音が階段室に反響するようになりました。あまりにも頻繁に響くので階段室で見ていると、大学生の息子は一日に何度も区分所有者宅と賃貸住宅を往復しています。

自宅と賃貸住宅を行き来するとき、扉を押し開けたまま手を放しています。ドアクローザーが勢いよく扉を閉めます。扉が戸枠にあたる音が階段室に響き渡ります。ご両親がいる日曜日も同様でした。

ご両親が注意されないので、やむをえず騒音や振動等により他の居住者に迷惑をかけることは禁止されていることを管理員よりお知らせいたいただき、だれもがルールを守り安心して暮らせるようご協力をお願いしました。1年ほど経過すると身に着いたのでしょう扉の閉鎖音はほとんど聞こえなくなりました。

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