はげちゃんの世界

人々の役に立とうと夢をいだき、夢を追いかけてきた日々

第13章 ひび割れとシール

廊下壁に発見されたひび割れ、専有部のひび割れ、共用部のひび割れ、外壁タイルのひび割れ、そして白華現象。劣化していくシールと劣化していた目地。建物を巡回していると愛着がわいてきます。大切な友達に思えると、大病を患わせるなんてできないのです。

1 廊下壁にひび割れ

1993(平成5)年2月9日の理事会報第13号で、「東棟五階の廊下壁にクラックを発見」をお知らせしました。

1993(平成5)年1月17日の20時15分頃、五階の区分所有者より「五階のエレベーターを降りて突き当りの壁上部、天井と隣接している部分に30cmものひび割れを発見。」と電話があり、それが地震の2日後だったので真っ青になりました。

第10号の理事会報記事、「札幌市で大規模地震が発生することや、大規模地震対策特別措置法に基づく警戒宣言が発令されたことはない、との判断で地震保険は契約しておりません。」とお知らせし、釧路沖地震の二日後だったので青くなりました。地震によって生じた損害はだれも保証してくれません。

あわてて現場を見に行くと五階の区分所有者も顔を見せられ、天井に近い壁を指さしました。天井部分から壁に細長いひび割れが入っています。「地震影響かな。」「いえ、地震の前からありました。直接管理会社へ電話しようと思いましたが管理組合を通したほうが良いと思いまして。」「地震の前ですか、見つけたのは。」「ええ、そうです。」「管理会社へ連絡して専門家に見てもらいます。今回は早期に発見してご連絡いただきありがとうございました」。

管理会社へ出向いて説明し専門家の診断を要請しました。マンションの建築会社へ保守点検のチェックを依頼したのち、管理会社も現地視察を行ったそうです。その結果、「各階とも塗装面にのみクラック(ひび割れ)が生じているようですが、塗り下地やコンクリートまで及んでいないようです。見た目は悪いが、このままでも壁面の劣化は起こらないので補修は築後1年目点検のさいに実施します。」と回答がありました。

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2 専有部のひび割れ

1993(平成5)年3月14日の13時過ぎに、五階の区分所有者宅より電話がありました。「居間の西壁に長さ1mほどのひび割れが斜めに走っています。気持ちが悪いので出張先の主人に電話すると、理事長に見てもらえと言われました」。

ご主人が出張中とのことで妻と二人でお邪魔しました。南壁から2mほどのところに天井のすぐ下から始まり、北から南へ向かって斜めにひび割れが走っています。クロスはとぎれとぎれに少しずつ裂けていますが、指で触れてもコンクリート本体にキズは感じられません。

翌日訪れた管理会社の一級建築士は、「コンクリートが乾燥するときにおこる現象で問題はありません。」と説明したそうです。後日質問すると、「コンクリートは乾燥収縮や膨張をする性質がありますのでが、ひび割れることがある素材です。むしろひび割れない方が不思議とも言えます」。自宅の内壁にも短いひび割れができていました。

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3 共用部のひび割れ

専有部の壁にひび割れができるなら、共用部の壁にもひび割れができるはずです。パイプシャフト上の壁にひび割れを発見した区分所有者と監事の三人で調査しました。半数のエレベーター乗り場の上の壁や明り取りの窓下に、縦に走っているひび割れがみつかりました。

東側外壁のタイル上には3mもの縦に走るひび割れがありました。南側のトランクルームの扉上の壁に無数の短いひび割れがあり、西側外壁のタイルにも短いひび割れが3本走っていました。

築後1年目点検で、外壁のひび割れは内部のコンクリートに影響を与えている様子がみられず、2年目点検まで様子を見ることになりました。パイプシャフト上の壁のひび割れは、真っ白な変性シリコンを塗ったのでかえって目立つようになりました。

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4 理事会発注の工事

4-1 タイルにひび割れ

9月17日午前10時に建築会社の主幹が訪れ、外壁タイルの破損ヶ所・東側玄関タイル破損ヶ所・各階エレベーター周辺壁のひび割れなどを調査しました。外壁タイルの新たなひび割れは、西側に6ヶ所、東側は25ヶ所と若干増えていました。北側窓下のひび割れ47ヶ所を含め、タイルの破損は80ヶ所もありました。

東側玄関タイルは保管されている予備のタイルを活用することにしました。玄関タイルの損傷は除雪車によるもので「除雪作業終了後はかならずチェックしなければ、管理費を値上げしなければならなくなりますよ。」との助言をいただきました。

各階エレベーター周辺壁のひび割れはコンクリート建築物特有のもので、見た目が悪いということをのぞけば問題ないそうです。もう少し経過を見て、壁が崩れそうになったら内壁全体の修繕計画を立てるよう勧められました。風除室の扉についている格子は外れている部分のみの補修でなく、そっくりはずして工場へ運び、溶接して焼き付け塗装をしなければならない状態でした。

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1996(平成8)年9月26日の理事会報第45号で「北側外壁に50ヶ所の新たな亀裂」をお知らせしました。

平成8年7月14日開催の管理組合「定期総会議事録」には次のように記録されています。東側壁のひび割れはどうするか?放置できないので直す。新理事会へ引き継いでいただく。(中略)総会議事録に外壁やタイルの損傷部分修繕について決議されたという記録はありません。

しかし、これ以上放置しておくことはできません。壁面のタイルが破損したのは1年以上も前のことです。(中略)みなさんの財産である「マンション」の財産的価値の保全と美観維持のため、(中略)修繕工事をおこないます。

後日届いた見積の内訳は、外壁タイル張替工事4万円、外部床磁器タイル張替工事2,5千円、風除室鋼製建具格子取付工事4,5千円、一般管理費2万円の合計13万円でした。ひび割れの入っている外壁タイルを張り替え、コンクリート内へ雨水の浸入を一日でも早く阻止すべきと考えた理事会は見積もり通り工事を発注しました。

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4-2 増加したひび割れ

2000(平成12)年9月27日理事会報第70号で「修繕見積もりを依頼しました」をお知らせしました。

土曜日の正午、損傷タイルの位置表示のためシールを張り付けたところ東側外壁80枚、北側外壁37枚、西側外壁90枚、合計207枚ものタイルにひび割れがありました。コンクリートから建築当時の水が抜けきっていないとは思えず、マンションの下でゴジラやガメラが寝返りを打っているのではと目をこすっています。

建築会社の主幹に質問しますと次のような答えが返ってきました。「寒暖の差でコンクリートが膨張や収縮を繰り返すので、ちょうどおもちの表面にひび割れが入るのと同じ現象です。内部が崩れるなどの心配はいりません」。

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2000(平成12)年10月17日理事会報第71号で「10月23日より着工します」をお知らせしました。

外壁タイルの損傷をチェックしますと210ヶ所もありました。前回張り替えたタイルも一部破損していました。原因はコンクリートが寒暖の差で動くからとか、地面に近い部分が損傷するのは基礎がしっかりしていないからなど、はっきりしたことはわかりません。

前回のときは、建築会社傘下の方が同じ色のタイルを探すのに一ヶ月もかかりました。タイルの色にも流行があって、この当時、同じ色のタイルは製造されていないということでした。市内の倉庫をたずね回り、見つけた在庫品はすべて運びました。修繕工事が完了したときに余ったタイル700枚ほどはマンションの物置に置いていきました。

一階風除室の扉の格子はこれまでのように専門業者が溶接補修するか、新しい格子と入れ替える、という2つの方法を検討しました。溶接補修は7,9千円、新しい格子の取付けは9,6千円の見積もりで、懇親会参加者のご意見を参考に新しい格子を取り付けることにしました。工事費総額23万5千円+消費税です。

南面大規模改修工事の機運が盛り上がってきたころ、外壁や共用部内壁に発生したこれまでの白華現象の推移を考え、参加した大規模修繕セミナーや関連の書籍でひび割れや白華現象の発生理由などをまなびました。大規模改修工事の計画を練り始めたころにも浮いているタイルや割れているタイルを発見しました。ほとんどが髪の毛ほどの細い幅の割れ目(ヘアークラック)であったため、大規模な修繕の時にまとめて交換することにしました。

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5 ひび割れの捉え方

初代理事長になって建物を巡回し、あちこちに細いひび割れを見つけたときは青くなりました。気が小さいので建物が壊れる、ひびが繋がって大きくならないうちに補修しなければと考えました。マンションセミナーに参加しているうちにそんなことはないようだと考えるようになり、はっきりした根拠を知るまでに多くの時間がかかりました。

5-1 ひび割れの原因

コンクリートでできたビルや建造物をよく見ると髪の毛のような細いひびが無数に入っています。これはコンクリートの体積の2,5千分の1~4万分の1の割合で、年数を経る間に収縮するという性質があるためです。木材は体積の250分の1~300分の1が縮むと言われていますから、コンクリートよりも劣化が激しいことになります。

コンクリートの表面に入った髪の毛のような細かいひびを「ヘアークラック」と言います。コンクリートは引っ張り方向の力に非常に弱いという欠点がありますが、内部に入っている鉄筋がその弱点をカバーし、逆に鉄筋の圧縮に弱いという弱点をコンクリートがカバーしています。このようなお互いをカバーし合う関係が鉄筋とコンクリートにはあるので、鉄筋コンクリート住宅は強いと言われているのです。

ひび割れの発生原因について、日本コンクリート工学協会はWebページの「Q&A」で次のように説明しています。

コンクリートは、水・セメント・砂・砂利をある分量で混ぜて製造します。コンクリートが固まるのは、水分が蒸発するのではなく水とセメントが化学反応(水和反応)を起こして相応の強度を有する水和化合物ができるからです。コンクリートが固まる過程や固まった後でも一般のコンクリートは収縮する性質を有しています。特に、周囲の乾燥状態が激しいとコンクリートの収縮率も大きくなります。壁は厚さが薄く見付け面積が大きい部材ですので、厚さ方向よりも面内に収縮する量が多くなります。そこにドアや窓の開口があると、その隅角部を広げるように斜め方向に引張力がかかります。コンクリートは引張力を負担できないため、斜めひび割れが生じます。

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5-2 危険なひび割れ

ひび割れの幅が1mm以上ある場合は、構造上、鉄筋との関係で問題が生じる場合があります。このようなひび割れを構造クラックと言い、万一、このようなひび割れが生じた場合は補修が必要です。構造的なひび割れが発生する原因は三通り考えられます。

5-2-1 外力によるひび割れ

地震や過剰な荷重がかかった場合に発生するひび割れです。たとえば、二台のグランドピアノを一部屋に長期間置いていると床にひび割れが起こります。短期間であっても、繰り返し床に荷重がかかればひび割れができます。このひび割れは、場所によりその幅が狭くても(ヘアクラックでも)非常に危険です。

5-2-2 設計上のあやまち

単なる設計ミスで荷重を過小に計算された場合や、適切な補強筋を入れていない場合もあります。構造計算上は安全でも誤配筋があれば荷重でひび割れが発生します。

5-2-3 施工不良と過誤

設計書と異なった配筋量不足や配筋方法の過誤、コンクリート打設後の養生不良や型枠支保工の早期撤去、型枠撤去方法の過誤や施工中の過剰な荷重、使用コンクリートの強度不足、コンクリート打設時に作業性を良くするために水を混ぜるて構造耐力」を低下させる行為などでもひび割れが発生します。

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5-3 危険でないひび割れ

鉄筋コンクリートのひび割れをゼロにすることは不可能です。コンクリートの有害なひび割れは0.3mm以上(常に雨がかかる場所などは0.2mm)と言われ、これ以下のひび割れをヘアークラックと呼んでいます。

乾燥収縮や膨張などによって表面に生じた髪の毛ほどの幅(0.3mm以下)で深さ4mm以下のひび(ヘアークラック)は、構造には特別影響しないので補修の必要はないとされています。あくまでひとつの目安で、明らかな破損や貫通しているひび割れと区別する必要があります。

コンクリート表面にヘアークラックが現れても、内部に太い鉄筋が縦・横に入っているので構造上まったく心配ありません。鉄筋コンクリート構造は、力が加わるとコンクリートは圧縮方向に働き、鉄筋は引張側(ひっぱり側)に働く理論的構造体として造られているからです。ですから百年以上にわたって理想的強度が発揮されるのです

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6 白華現象の捉え方

コンクリートのひび割れから、白色物質が噴出していることがあります。はなたれ・白華現象(はっかげんしょう)・エフロレッセンス(略称をエフロ)などと言われる現象です。

噴出している白色物質は炭酸カルシウムで、毒性はないとされています。セメント硬化時の化学反応で発生する水酸化カルシウムが水に溶けてタイル目地部分から染み出し、乾燥と同時に空気中の二酸化炭素と反応して不溶性の白っぽい色になります

目地の施工後1~2日ぐらいに発生するのが一次白華で目地材に含まれる練り水の水量過多などが原因と言われます。低温下での施工、多湿時での施工、日陰(北側面)での施工、施工した目地表面が短時間で乾燥する場合、練混ぜ水の過剰添加などの条件が単独または複数そろったときに発生するとされます。

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水が溜まりやすい場所で目地材が硬化した後、雨水等が供給されたときに発生するのが二次白華といわれます。硬化不良の目地材は吸水が大きいため、水による浸食やタイル裏面への水まわりによる剥離、白華発生が起こりやすくなります。酸性雨による雨濡れは、浸食・白華、・水まわり剥離などを促進します。

二次白華の対策は水の供給を絶つことが重要とされます。白華現象を放置するとますます汚れがひどくなる場合があり、発生した白華現象は水の浸入を防がない限り容易には止まらないと言われます

一方で、コンクリートの持っている遊離石灰による治癒作用が働いて、雨水などが浸み込んでいたひび割れが自然にふさがることで白華現象が収まることもあります。このような現象は建物の強度や耐火性など構造上まったく問題はないという説もあります。

白色物質の炭酸カルシウムは、時間とともに水溶性の炭酸水素カルシウムとなり雨で流されて消えます。自然に消えるまでの期間は、気象・環境条件によって異なりますが2年以上かかることが多いとされています。

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7 劣化していくシール

南面大規模改修工事の建物診断で一級建築士を案内しながら質問しました。「外壁のタイルとタイルの間は硬い物質で埋められていますが、外壁の端から端まで縦横に伸びているタイルの切れ目があり、若干柔らかなものが詰められています。これは何のためにあるのですか」。

コンクリートの乾燥収縮は避けられず、セメントの水和熱や外気温等による温度変化や乾燥収縮など地震以外の要因によっても変形が生じ、このような変形がひび割れを発生させることがあります。

何もしていないと、ひび割れは好き勝手なところに発生して見栄えが非常に悪くなります。計画的にひび割れを発生させるため、わざと弱いところを設けたのが「ひび割れ誘発目地」です。上の写真で縦と横に走っている直線のへこみが「ひび割れ誘発目地」です。

計画的にひび割れを集中させた目地をそのままにしていると、雨水などがコンクリート内へ侵入します。ひび割れ誘発目地には、コンクリートと密着する防水効果が高い弾力性のあるシールが詰められています。

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7-1 劣化部分の発見

2003(平成15)年に入ると、シールがコンクリートから部分的に剥がれかけて隙間が空いているところがありました。隙間から雨水が入り込み、入り込んだ水はクラックからコンクリート内へ浸み込みます。コンクリート内の鉄筋にたどりつくと、鉄骨は酸化してサビが発生し、放置していると鉄筋爆裂が起こる可能性があります

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2000(平成19)年7月29日理事会報第226号で、「防水層改修工事も必要」をお知らせしました。

建築会社が仮の見積書を持参されたときに、コーキングの爆裂を見ていただきました。周囲を調査しても水の入るような箇所がないので、樋から落ちた水が跳ね返ってコーキングに穴を開けたと推定し、一旦コーキング材でふさぐ提案を頂きました。このとき、以前から気になっていたことを質問しました。

「建物外壁の所々で防水層とタイルの接触部分に、コーキングが剥がれかけている部分があります。タイルとタイルの目地にも所々に小さな穴が開いています。これらは雨水を吸い込んで建物に影響を与えないでしょうか。」「影響は当然あります。アルミアングルと防水層の補修に使われた変性シリコンで十分ですから役員の方々が補修しますか。それとも今回の補修見積もりに含めましょうか」。

西棟五階屋上は西風が強いせいでしょうか防水層とタイル接触部にコーキングの劣化が目立ちます。タイルの目地の穴は六階屋上西棟エレベータ塔屋への階段壁に多くみられ、タイルの目地も虫食い状に劣化しています。手の届く範囲の穴を含めて劣化部分やコーキングの切れている箇所などを変性シリコンで補修しました。

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2010(平成22)年3月27日理事会報第300号で「外壁タイルと水切りの不具合」をお知らせしました。

風が収まった3月21日の午前11時頃、暴風による建物の影響を点検しました。東西南北の外壁に大きな変化は見られませんが、以前と同様に東外壁のシーリングとその周囲が一箇所変色しています。また、西側の外壁のシーリングとその周囲は二箇所変色がみられます。この現象はシーリング上部に貼られているタイルの目地から染みこんだ雨水などが、シーリング部分の隙間から噴き出した痕跡です。昨年秋に脚立を使って目地を調べましたが、水を吸い込んでいる目地を特定できません。変色したシーリング上のタイルはかなり広範囲にわたって接着剤の効果が薄れ剥がれやすくなっていると推定できます。

一階北側窓の水切り板の下、シーリング防水の劣化でタイル内へ水が染み込んでいます。指で押すと染みこんだ水がにじみ出てきます。周辺のタイルはしっとりとした色調となり、水切り板から1mほど下までシーリングの色が変わっています。双眼鏡で見ても一階以外に見当たらない現象ですが、どの階の水切り板も防水処理が必要と推定できます。

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7-2 簡易補修

外壁のタイルにできた幅が0.2mm以下のヘアークラックは、雨水を毛細管現象で吸い上げることはできないようです。ひび割れ誘発目地に人為的にできたクラックは、シールが詰められているのでどの程度の幅が開いているか見当がつきません。

ひび割れ誘発目地に打設されたシールの耐用年数は10年と聞きました。10年を経過すると次第に劣化しますが、弾力性が失われていなければ問題はないといわれ、指で押しても元通りに戻ることを確認していました。

建物診断をお願いした一級建築士の助言で、変性シリコンを購入してシールの隙間に充填しました。雑巾でシールの汚れを落としてから、押し出した変性シリコンをバターナイフにつけて伸ばしましたが表面は平らになりません。

一階の人目に付く手の届く範囲は塗り重ねて平らに伸ばしましたが、変性シリコンは柔らかいので何度挑戦しても波打ったようになります。屋上の棟屋壁やエレベーター機械室階段壁も手の届く範囲に充填んしましたが、人目につかないところなので整形は手抜きしました。

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8 劣化していた目地

ひび割れ誘発目地の亀裂よりも小さなピンホールが、タイルの目地に空いているのが分かりました。タイルの貼り付け作業時に、モルタルがタイル表面を滑って目地全体に充填できないような場合に発生するそうです。多く空気を巻き込んでモルタルを練り混ぜると目地内部に気泡が発生しやすくなると言われます

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8-1 劣化部分の発見

ピンホールのもっとも広い幅が0.3mm以上あると雨水を吸い込みます。ピンホール内にとどまった水はゆっくりモルタルからコンクリート浸透していくでしょう。これも放置していると劣化を呼び込むかもしれません。

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8-2 簡易補修

百円ショップからモルタルを購入し、練り混ぜましたが水の分量が難しくなかなか思うようになりません。一階の人目に付く手の届く範囲は、モルタルをバターナイフで伸ばしました。

屋上の人目に触れないピンホールは、取り扱いが比較的容易な変性シリコンを充てんしました。

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9 建物は大切な友達

ひび割れ誘発目地とタイル目地の補修は、少しでも建物の劣化を抑えようと考えたからです。手の届く範囲ですから全体の一割程度でしかありませんが、なにもしないより良いと考えました。この考えは若いときの経験からきています。

三十代の前半、プール浄化装置の維持管理を担当したことがありました。午前7時に出勤して夜通し働いた浄化装置を分解します。8ヶ所の大きなボルトを外し、スライスしたパイナップル状のろ過器を取り出します。ろ過器と浄化装置の内部を洗浄してから、ストレーナーのごみを取り除いて組み立てます。

珪藻土を入れ、塩素を投入したら試運転。最後はプールの中央から水を採り、残留塩素の濃度と水温の検査。退勤時も同様の操作をすると、24時間稼働しても故障知らずで苦情もでません。

毎日浄化装置と付き合っていると、運転中の音が微妙に違うことに気づきました。珪藻土の量が多すぎるときと少なすぎるとき、ストレーナーの全体が詰まっているときとわずかなつまりのとき。やがて、ストレーナーに紙くずが詰まっているときの音と、手ぬぐいやパンツが詰まっているときの音も判別がつくようになりました。

浄化装置の音で状態が分かるようになると、意志が通じ合える友達のように愛着がわいてきます。マンションという施設の内外を見回り、設備を点検していると同じように愛直がわいてきます。友達のマンションが健康体でいられるよう気遣うようになってきます。

人の場合、ケガをしたときは応急処置をし、けがの程度によっては医師の治療を受けます。病気は早めに原因を調べて治療すれば悪くならないと言います。意思が通じる建物は大切な友達です。大規模修繕のときにシールと破損タイルの更新を計画していますが、それまで大病を患わせることどできないのです。

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