はげちゃんの世界

人々の役に立とうと夢をいだき、夢を追いかけてきた日々

第6章 無駄使いを防ぐために

2003(平成15)年2月9日に開催された、建築診断設計事業協同組合(略称「建診協」)主催の第8回マンション勉強会で、建診協理事長の山口実氏の「資産が向上する管理手法のツボ」の講演より「管理のツボ」と「無駄遣いを防ぐ」に関する要約です。

1 管理のツボ

1-1 管理組合の経営感覚

 1-1-1 他人任せの管理は損

・ 住宅は余っている。デフレ=供給過剰。

・ 魅力的な新築マンションの供給は続いている。

・ 中古マンションは相対的にその価値が下がる。

・ マンションは競争の時代で、勝手に評価される時代。

・ 中古マンションの価値を維持・向上させるには、それなりの取り組みが必要。

・ 管理を買う時代になっている。買う側の心理を推測。

・ マンションのコミュニティの姿がその外観がその外観に現れる。
    汚いマンション、ボロボエロのマンションはコミュニティがボロボロ。

・ 計画的、合理的、民主的な管理が求められている。

・ 区分所有者だけが、計画的、合理的、民主的な管理の意思決定権を持っている。

・ 他人任せの管理は、他人の意思が働くことを理解しておく。

・ 他人任せの管理は損をする。

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 1-1-2 経営感覚が必要

・ マンションを資産と考え、単純にその行為が「損か得か?」で見る視点が必要。

・ マンションに経営感覚が必要だが、管理組合に経営感覚がない。

・ 管理組合に必要な経営感覚は次の三点である。
  ・ 入りを多くして出を少なくする。
  ・ 目先の損得に惑わされず資産としての損得に注目する。
  ・ 将来に有効となる効果的な投資を行うことである。

・ 経営感覚を取り入れる際に必要なことは、自分のマンションを知ること。

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 1-1-3 まず己を知ること

・ 自分のマンションの管理レベルを知っているか。

・ 建物としての自分のマンションを知っているか。
  ・ 屋上・ポンプ室と受水槽室・管理人室・建物の裏側を見たことがあるか。
  ・ 上の階の人は下の階に、東側に人は西側に行ったことがあるか。 
  ・ 自分のマンションの見学会をしているか。

・ 自分のマンションの現在の価値を散っているか。

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1-2 健全な競争原理を育成

 1-2-1 健全な競争原理を

・ 「高い」「安い」は相対的なもの。感覚で左右されていないか。

・ 「高い」「安い」は比較してわかること。つまり、競争すること。

・ 競争には一定のルールが必要である。ルールを無視した競争はありえない。

・ 大規模修繕の施工会社剪定にはルールが必要。仕様書に基づいて行う。

・ 制度は立派でも、運営にインチキがあれば健全な競争ではない。

・ 残念ながら、区分所有者がルールを破るときがある。資産の下落を招きかねない。

・ 健全な競争は公平なルールに基づき、情報を開示して多数の意見により決定する。

・ 「安かろう悪かろう」の弊害に注意が必要。単純に工事金額だけで判断しない。

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 1-2-2 各種契約の柔軟性

・ 各種工事会社は選択できる。

・ 管理会種は選択できる。

・ 契約前に重要事項の説明が必要。

・ エレベータの保守契約は選択できる。

・ エレベータの取替工事に「競争原理を導入しよう。

・ 教養部の損害保険には各種あり、商品も会社も選択できる。

・ 銀行は選択できる。

・ コンサルタントは選択できる。

・ 工事の内容は選択できる。

・ 工事の時期は選択できる。

・ 工事の費用が不足した時は一時金の徴収以外に借り入れという方法も。

・ 契約行為は双務契約であり、特約を付加することも可能である。

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1-3 情報の集約

 1-3-1 賢い経営のスタート

・ 財団法人マンション管理センター

・ 地方公共団体のセミナー

・ 専門新聞

・ 関係本

・ 管理研究団体との交流会

・ その他

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 1-3-2 情報過多と偏向情報

・ 氾濫する情報 本・自称専門家

・ 情報提供者の属性に注意する。

・ コンサルタント、専門家、管理会社のアドバイス、詳しい区分所有者等々から発せ
  られる情報は、一度、各自のコモンセンスで判断する必要がある。

・ 特に、コンサルタントや管理組合団体の意見を神様のように扱わない。

・ 最後の意思決定は区分所有者自身であり、意思決定者こそが最終的な責任者である
  ことを忘れない。

・ 効果的で有効な情報を得るには費用がかかる。

・ 情報には「インフォメーション」と「インテリジェンス(検証)」がある。

・ その情報(インフォメーション)を受け入れるのか入れないのかは各自の判断。

・ インターネットはITであり、インフォメーションである。

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 1-3-3 管理会社との関係

・ 管理会社に不信感が出たときは、管理業務委託契約の読み合わせ会を開き、契約の
  内容を確認する。

・ 議事録などの文書による確認が必要。

・ 理想的で完全な状態は存在しないと思うこと。各自の理想は異なることを理解。

・ 管理会社を良きパートナーとして育てていく気持ちを持ち、自分も勉強中と思うこ
  と。

・ 管理会社は選べる。契約している管理会社は管理組合が選んだ相手である。

・ 相互に尊重する姿勢が必要。管理会社の社員や管理員を使用人扱いにしていない
  か。

・ 委託契約していることと工事の請負契約とは別。
  ・ 随意契約(非競争)になりやすい。

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1-4 参考情報

 1-4-1 給排水管劣化について

・ 劣化は一般的でない。個々のマンションで相当相違がある

・ 劣化の具合を知ることから始める。

・ 配管の材料には5つの特色がある。
  ・ 激しく腐食するもの
  ・ 部分的に腐食するもの
  ・ 腐食がほとんどないもの
  ・ ほとんど腐食しないが、別のことで問題があるもの
  ・ ほとんど腐食しない

・ つまり、配管の種類によって劣化は極端に異なる。

・ 配管工事の前には必ず診断が必要であり、管の種類の調査は重要である。

・ 配管の診断結果で、工事が必要でないこともありうる。

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 1-4-2 共用部損害保険は安く

・ 火災保険は評価額が基準となる。

・ マンションの評価額は低下しているのが一般的だが保険料の見直しがしていな
  い場合がある。

・ 時々保険の見直しは必要。

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 1-4-3 その他

・ エレベータの保守契約料金は安くすることができる。

・ エレベータの更新工事費は安くすることができる。それには工夫が必要。

・ 近所のマンションと交流して情報を集める。特に、小規模マンションでは発注
  先を同一にして合理的に契約するなどを検討する。

・ 管理費全般を見直すことができる。

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 1-4-4 合意形成の新しい視点

・ そこに住んでいる人が安全であり、快適であり、健康的であること。

・ 良いコミュニティがあること。コミュニティとプライバシーは対立しない。

・ 改良・改善を億劫にならない。
  こうありたいという我が儘を顕在化し、それが可能か検討する。

・ 女性の意見を尊重する。

・ マンシションの管理は多数決。健全な多数決は健全な情報から生まれる。

・ 合意形成の視点に「損か得か」という視点を加える。

・ 合意形成の視点に「人と違った意見を持つ」という視点を加える。

・ 日本では、世代間に意識の違いが相当ある。相互に理解する努力をしたい。

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2 監査

2-1 監査の目的

管理組合は必ず監事を設置しなければなりません。監事の職務は会計監査と業務監査です。監査の主たる目的は、予算に基づいて管理行為が適切かつ効率良く実施されたか、管理組合の財産はどのようになっているのかを確認することです。したがって、利害関係のある職員(理事長や副理事長、理事)は監査をすることはできません。

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2-2 監査の内容

 2-2-1 会計監査

監事は収支決算書に基づいて監査を行い、会計年度全般の書類を確認します。収支報告書の確認は、目的別会計ごとに作成されているか、対象となる期間が表示されているか、予算項目と実績が対応しているかなどについて確認を行います。

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 2-2-2 業務監査

年度当初に計画されていた点検・清掃・改修工事などが的確に実施されたか、組合運営費の支出目的と支払先、その他総会決議事項の執行状況、管理規約と使用細則に基づいた運営などについて監査を行います。

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3 監事の職務

監事は、マンション管理組合の財産状況と理事の業務執行を監査する機関で、標準管理規約第3節第35条第2項に「理事及び監事は、○○マンションに現に居住する組合員のうちから、総会で選任する。」と規定されています。監事の選任と解任、新規や監事が欠けた場合の処理、仮の監事の選任などはすべて理事と同様です。

監事は理事と同様に1人でも数人でもよく、複数の幹事がいる場合はその職務の性質上単独でも権限を行使することができます。監事は理事の職務執行を監督する立場にあることから、自らの行為を自ら監査したり、理事の職務命令に服するようではその職務を全うできません。そこで、監事は理事などを兼ねてはならないとされています。

監事はその職務の性質上、善管義務(善良な管理者としての注意義務)を負います。理事の業務執行の状況と管理組合の財産状態を監査し、管理規約に違反や著しく不当な事項があるときは集会(総会)に報告し、報告の必要があるときは集会(総会)を招集することができます。

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4 形式主義の廃止

理事会は正当な監査を受ける義務があります。書類を見てもわからないと監事に言わせず、理事会は積極的に書類の説明を行い、監査の場を会計や経理の勉強会にすべきです。きちんと理解したうえで押印をもらうという理事会の姿勢が求められています。

年一回の監査ではなく、毎月監査を実施する体制をつくることで管理会社や管理組合の不正行為は未然に防ぐことができます。監査が形式に流されていると、やっていない仕事に対して支払いをし、管理組合と区分所有者に損害を与えていた事例もあるのです。

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過払いの実例

消防設備点検を年度内(平成12年7月~平成13年6月)に2回行う契約をしました。

契約期間の図解

例えば、1回目の消防点検は平成12年9月に行われました。2回目の消防点検は平成13年6月の予定でしたがバルコニーの修繕工事の為一ヶ月延期して、平成13年7月に実施しました。

消防点検に立ち会った防火管理者を兼務している副理事長は、理事長へ消防点検業務が完了した旨の報告を行いました。点検会社は管理会社へ契約金額を請求し、理事長は管理会社へ防火管理者より消防点検業務完了報告を受けたことを連絡しました。

点検会社も管理会社も多数のマンションを抱えているため、そのマンションの年度内か年度外かの概念は薄れています。管理組合も毎年自動的に同一の点検会社と契約をしているので気付きません。

この結果、だれもが平成13年7月に実施した点検を、平成13年度第一回目の点検としてカウントしてしまったのです。平成12年度の消防点検は1回しか行われず、2回分の費用を支払っていたのです。

管理組合が主体となって契約をしていればカウントの間違いを防止でき、請求書は管理会社宛ではなく管理組合宛にしてあれば点検実施日と契約内容を照合できました。監事も契約内容を監査で確認していれば防げたことです。

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5 他人のお金だから

マンション管理業務を管理会社へ丸投げせず、管理組合が主体的に動くことで区分所有者が納付した管理費の無駄遣いを防ぐことができます。

あなたの財布を預かった人が、あなたの了解も得ずに買い物をしていたらどう思いますか。頼んでいてもやっていない仕事にお金を払うことがあるでしょうか。区分所有者が納付した管理組合のお金も同じです。他人のお金だから慎重に取り扱うことが大切です

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