はげちゃんの世界

人々の役に立とうと夢をいだき、夢を追いかけてきた日々

第3章 マンション管理の諸注意

2001(平成13)年6月27日、北海道主催のマンション管理講座で、北海道合同法律事務所の三津橋彬弁護士から「マンショントラブルとその解決法」についての講演より「マンション管理の諸注意」を要約です。

1 管理組合とは

マンションの管理組合は、共用部分の管理保全とマンション住人の「共同の利益」の維持と強化のため、建物の区分所有等に関する法律に基づいてマンションの区分所有者全員で組織された自治組織です。管理組合には管理組合法人と法人格のない管理組合があり、法人格のない管理組合の場合は理事長個人名義でなければ登記はできません。

理事長個人名義は危険性があり、理事長に万一のことがあれば相続や無断譲渡などで問題が生じる可能性がでてきます。預金は管理組合法人名義でできますが、法人でないときは○○管理組合に個人名義をつけて預金することもでき、理事長が個人財産だと主張した事例もありました。

法人組織にすると、共同の利益を守るために管理組合法人として対応することができ、訴訟を法人名義で起こすことができます。(特に、法第57~60条までの訴訟を法人名義で起こすことができます。)

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2 管理組合の規約

最初の管理組合規約は分譲業者がつくり、最終の分譲が完了すると分譲業者は撤退します。売れ残りがあり、分譲業者が賃貸に出した場合は分譲業者も区分所有者となります。

分譲時には区分所有者全員の書面決議により管理組合が設立されます。この場合、分譲業者からのお仕着せである管理組合規約は組合にとって満足できないことがでてきます。したがって、分譲が一段落したのちに規約を検討して総会を開催し、4分の3の議決により必要な規約改正を行うことが望ましいのです。

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3 図面の整理保管

管理組合は、分譲業者から設計図と施工図を引き継がなければなりません。これらの図面がなければ大規模修繕の時に非常に困ります。

マンションは共用部と専有部からなり、すべては区分所有者の財産です。専有部分だけが自分の財産ではないので、大切に管理し、修繕を行い、建物の寿命を一年でも長くすることに努めるべきです

分譲業者は売り急ぐため、販売時に管理費や修繕積立金の額は少なすぎないか点検してください。多くの場合、修繕積立金の額が少なすぎて値上げに苦慮する事態が生じています。マンションは購入前に専門家の意見を聞くことが必要と言われています。

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4 管理会社の問題

管理会社は分譲会社の子会社であることが多く、区分所有者は分譲時に管理委託契約書に記名押印させられます。何が委託されているのか、かならず調印時に確認しておくべきです。

とくに、管理会社が分譲会社の子会社の場合に問題があります。管理会社は区分所有者の利益を守ることが本来の任務で、民法644条の「善良な管理者の注意」をもって管理に当たるべきですが種々の問題が生じています。

管理費や修繕積立金などを会社名義で保管し、場合によっては親会社に振り込まれて親会社の資金繰りに使われたり、経理報告をしなかったり、勝手に未回収の管理費等の「立て替え払い」をして組合の財政の実勢を超える支出を行い、組合に求償するといったこともありました。

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5 管理会社を管理する

管理会社に任せきりにせずに、管理会社を監督することが必要です。財政状態の指導点検、帳簿の点検、預金残高の点検、管理費滞納督促の状況などは小まめに点検してください。これを怠っている場合は、理事にも賠償責任が及ぶ場合もあります

管理費等の徴収は管理組合(理事)の責任です。管理会社は督促をしても、取り立てなどの実効性のある行為をしてくれません。管理費の滞納者に対して訴訟を提起した場合、弁護士費用の負担を「管理組合は管理費等の徴収責任を果たしていない」として理事長に命じた例もあります会場の様子

管理会社が悪いとか良い管理会社が少ないという話を聞きますが、区分所有者のお役に立とうとして設立された管理会社が悪いはずはありません。悪いのは会社でなく、担当者に問題がある場合が多いのです。今日のようなマンション管理講座へ参加された方々と異なり、区分所有者の財産を管理保全する業務でありながら、勉強もせずに管理会社の担当者の話を鵜呑みにしている理事にこそ問題があるのです

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6 瑕疵の責任

欠陥工事による被害では、雨漏り、かび、床下の浸水など水に関するものが多いのが現実です。売買契約書では瑕疵担保期間は2年と定めることが多く、サービス期間はさらに長いのですが、これを法的な義務に昇華させなければならないとの声が高まっています。

問題は時効の期間で、民法によれば隠れた瑕疵が発見されてから1年以内に損害賠償または補修工事を請求することができますが、2年という担保責任はあまりにも短すぎるのです。不良工事による瑕疵が不法行為と言える場合は、「損害および被害者を知った時から3年」が時効となります。

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7 規則とマナー違反

金魚や小鳥などは別として、主に「犬」と「猫」の飼育マナー違反が多いことが問題になっています。生活音やピアノなどの騒音は、生活態度やマンションの構造にも関係する場合があります。

管理費や修繕積立金、水道料などの滞納は大きな問題で、こまめに請求して千円でも払わせるなど、決して滞納させない配慮が必要です。

駐車場使用料の滞納は、督促して払わなければ契約を解除すべきです。契約を解除し後に路上駐車などをしていればこまめに警察へ連絡し、巡回を要請する方法もあります。

管理規約や使用細則を読まずに、共用部分の使用をめぐる問題も発生しています。壁を破壊して両方の部屋に出入口を開ける、バルコニーと部屋の壁に穴をあけて冷房機の排気部分を取り付ける、衛星放送のアンテナを取り付けた、ガラスのフードを取り付けた、などという例も実際に起きているのです。

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8 管理組合と分譲業者との紛争

法律で定められた共用部分か規約共用部分かの帰属をめぐる争いは、地下駐車場、管理人室、ロビーなどで起きています。規約共用部分として登記すべきでしょう。

欠陥マンションの場合は、共用部の瑕疵、損壊、変更にかかわる訴訟などが起きます。管理組合法人が訴訟の原告となる場合と法人でない管理組合が原告となる場合、法人でなければ訴訟の原告となれない場合と個人でなければ訴訟の原告とならない場合などがあるので注意が必要です。

また、共聴アンテナの維持管理をめぐる管理組合と分譲業者の争いも起きています。

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9 望まれる理事

2001(平成13)年6月24日の定期総会で、修繕積立金月額を1平方メートル当たり単価28.81円から105円に引き上げました。委員の無届欠席が続いて機能しない修繕委員会まかせは人災になると考えました。平成15年度末に予定している大規模修繕計画を理事会作成の提案と、大規模修繕完了まで責任を持って対応するため、理事全員の留任提案も承認されました。

管理組合の役員はやる気のある人、清廉潔白な人、名誉職ではなく働く人であることが重要です。1年交代でやめてしまう人より、場合によっては数年間の継続任期を覚悟する人がベターといえます。やりたい人より、やらせたい人、民主的な運営と情報公開に努める人にお願いすべきです。

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