はげちゃんの世界

人々の役に立とうと夢をいだき、夢を追いかけてきた日々

第35章 札幌の地震対策

最新科学で巨大地震の謎に迫ったNHKスペシャル「MEGAQUAKE」が2010年から放送されましたが、北海道の地震を知る助けにはなりません。これまでシリーズで3回放送され、次の脅威を見定めたいとの志を立てたそうですが、結果はどうでしょう。

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1 地下に潜む次の脅威

 1) 警戒すべきは直下地震

新日本出版社からMEGAQUAKE(巨大地震)Ⅲ「地下に潜む次の脅威」が出版されました。著者はNHK取材班です。この本の冒頭で、いま警戒すべきは直下地震との表題で、頻発すべき内陸直下地震ー活断層の脅威ーで次のように述べています。

3013年4月13日、兵庫県淡路島を襲った地震を覚えているだろうか。午前5時33分、淡路島の深さ15キロ付近を震源とするマグニチュード6.3の地震が発生し、淡路島では震度6弱の激しい揺れを観測、2000棟以上の住宅が一部損壊し、液状化現象や水道管破裂による断水などの被害に見舞われた。活断層で起きた内陸直下地震だ。

実は、この6日前、私たち取材班は、NHKスペシャルMEGAQUAKEⅢの第一回「次の直下型地震はどこかー知らざる活断層の真実ー」(2013年4月7日放送)で、こうした内陸直下地震の危険性を伝えたばかりだった。

NHKは、内陸直下地震の危険性を伝えたのに対策をしていないとお怒りのようだ。

番組の冒頭は、阪神・淡路大震災で地表に現れた野島断層の生々しい傷跡の映像をバックに、次のようなコメントから始まる。野島断層
 18年前の大地震で兵庫県淡路市に突然現れた活断層です。地表から確認できたのはおよそ10キロ。地下では、それをはるかに上回る40キロ以上の断層がずれ動き、都市に壊滅的被害を与えました。

活断層による激しい揺れが、足元から襲う直下地震です。日本列島を囲む4枚のプレート。そのせめぎ合いによって、大地に刻まれた傷。それが地震を引き起こす「活断層」です。いま、科学者の間で警戒されているのが、活断層による直下地震です。

「巨大な地震が起こった後にですね、内陸で活断層が大きな地震を引き起こしたという例はたくさんあるわけですね」(広島大学の中田高名誉教授インタビュー)

なぜ、私たちは活断層による直下地震をテーマに取材を続けていたのか。VTRで語っている広島大学の中田高名誉教授だけでなく、多くの科学者たちの話を聞くと、「東日本大震災をきっかけに、日本でいま最も注意すべきは活断層による内陸直下地震だ」と口をそろえて指摘していたからだった。

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 2) 震源断層を探れ

つまり、3月11日の巨大地震によって日本列島全体の地下バランスが変化し、活断層が動きやすくなっているというのだ。
 実際、東北を襲った巨大地震のあと、2年間で震度5弱の揺れの地震が30回近く観測されるなど、内陸の地震は震災前に比べて2倍近く増え、その活動は活発化していた。

日本で活断層も存在が知られるようになったのは、阪神淡路大震災がきっかけだった。1995年1月17日、淡路島北岸から神戸の六鉱山南縁の断層が動いてマグニチュード7.3の大地震を引き起こした。

地表でも大きなずれが現れ、高層ビルや高速道路などの都市のインフラは引きちぎられるように倒壊。平穏な暮らしはとてつもない威力で破壊され、6434人の尊い命が奪われた。

こうした悲劇を繰り返してはならない。被害を目の当たりにした科学者たちは、いつ・どこで・どうやって活断層が動くのか、研究を急ピッチで進めてきた。

2013年2月中旬、私達取材班は、福島県いわき市へ車を走らせていた。科学者たちが注目する大地震の調査に同行するのが目的だった。東日本大震災の発生からちょうど1か月後の2011年4月11日、福島県浜通りで起きたマグニチュード7.0の大地震だ。

その地震とは、東日本大震災の発生からちょうど1か月後の2013年4月11日、福島県浜通りで起きたマグニチュード7.0の大地震だ。福島県浜通りと中通り、茨城県南部で震度6弱の揺れを観測して山が大きく崩壊、高校生を含む4人が亡くなった。

東北沖の海底で起きたあの巨大地震とは異なる内陸の直下地震だった。のちに、地下に潜んでいた活断層が動いていたことが判明する。私たちはまず、地元の方たちに当時の状況を聞こうと、いわき市内にある寺を訪ねた。

住職が示す先には、寺の敷地を貫いた活断層が露頭していた。片側の地面がずれ落ち、1メートル近くの段差ができていた。活断層が真下を通っていたため、本堂は全壊、山門やお堂などの施設も倒壊した。

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突然、建徳寺の境内に姿を現した活断層は全長13キロにわたってのびていた。この地震では、この断層を含めて地表に2本の活断層(井戸沢断層と湯ノ岳断層)が現れ、地盤は最大2メートルずれ落ちていた。

このうち、建徳寺を貫いた湯ノ岳断層は、実は、地震の前から一部の専門家によって存在が明らかにされていた。しかし、地震の前に推定されていた断層は、寺にまでは達していなかった。つまり、住職だけでなく、湯ノ岳断層の存在を知っていた活断層の専門家も、ここまで広範囲に被害が生じるとは全く考えていなかったのだ。

寺を訪れた翌日、東北大学の遠田普次教授の調査に同行した。遠田さんは、いわき市を襲った地震の発生直後から調査を続けてきた。活断層を中心に地震のメカニズムを研究している科学者で、主に、地震によるひずみの解消や、地下のひずみがどのように影響しあい、地震がどこで起きやすくなるのかを分析してきた。

この日、遠田さんがフィールドワークの現場として選んだのは井戸沢断層。この断層が過去にいつ動いたのか、断層付近の地層を抜き取り、地震の痕跡を探すボーリング調査を行っていた。その結果、一万数千年前にも同じ規模で大地震が起きていたことを突き止めていた。

地表に現れた断層のずれが、事前に知らされていたよりも大規模だったことをどう考えればいいのか。私たちの問いに、遠田さんは静かに語りだした。「犯人は、この地下。ずっと断層がつながっていて、深さ10キロくらいのところですね。地下の深い部分が悪さをしている」

遠田さんが「犯人」と表現した大地震の正体は、地下深くにあるという。そして、いわき市に出現した活断層と地下の地震の震源、その後に起きた余震の震源の3つを解析すると犯人の正体が見えてくると指摘した。

これら3つのデータから立体図を作成してみると、地下に2つの面が現れた。これが震源断層「震源断層」だ。

活断層には地表に見えている部分と地下深くで地震の際にずれ動き、強い揺れを引き起こす部分があり、地下深くの部分は「震源断層」と呼ばれている。

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震源断層があるのは、地下の硬い岩盤の中と考えられる。周りからの力で岩盤にひずみが溜まり、限界に達すると震源断層が動き、地表にずれや揺れが伝わる。一方、地表に近い、地下数キロほどの堆積層などのやわらかい地層の部分では、強い揺れはさほど発生しないとされている。

いわき市の地震では、深さ10キロ、巾15キロに及ぶ2つの震源断層が同時に大きく動き、これまでの想定を超える範囲で地表にまで活断層が現れたと、遠田さんは考えている。

「地図上に示した活断層は"線"ですよね。地表では"線"ですが、地下にある断層は"面"です。地下の延長部分がどうなっているのか、探る努力が必要だと思います」

専門家たちが活断層の位置を示した地図を見ると、日本列島全体に数多くの傷のような線が刻み込まれている。しかし、遠田さんが強調したのは線は一つの手がかりにすぎず、線が見えているところだけで地震が起きているというわけではないということだ。

それより、地下の「震源断層」の姿を探ることが重要だという。これまで"線"が記されていなかった地表に、ずれが生じたいわき市の大地震は、そのことを私たちに警告していると感じた。

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 3) 調査を阻む堆積層

活断層の姿に迫ろうとする科学者にとって、関東平野はとりわけ「厄介な場所」だという。地下の断層の存在を見えなくする難敵が立ちはだかっているからだ。それは"堆積層"と呼ばれ、関東平野の成り立ちと大きくかかわっている。

今から1600万年ほど前、日本列島は日本海が拡大したことによって大陸から切り離された。東西方向に引き延ばすような力が働いたために、陸地は相対的に低くなり沈下していった。関東平野はおよそ300万年前にさらに沈下し、広い範囲が海に覆われた。

海底となった関東平野の岩盤には、川などから流れ込む土砂などが長い年月をかけて降り積もっ入った。こうして厚さ数キロにも及ぶ"堆積層"が形成されたと考えられている。

関東平野はやがて陸地となったが、地下深くで地震が発生し、岩盤がずれ動いたとしても比較的やわらかい“堆積層“に覆われた地表に大きな変化は現れない。

そして、平野を流れる川や、時折り降り注ぐ火山灰が過去の地形の変化をさらに覆い隠している。関東平野は活断層の姿が見えにくい構造になっているのだ。

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2 北海道の地震

 1) 近年発生の地震

日本全国いつどこで巨大地震が起きてもおかしくないと言われています。1834年2月9日に“石狩地震”というマグニチュード6.4の大地震が起こりました。石狩を中心に約80戸もの建物が半壊・全壊したと伝えられています。当時はレスキュー隊や自衛隊もありません。

1988年の十勝沖地震はマグニチュード7.9、札幌でも震度4を記録しました。その後1982年には浦河沖地震で、苫小牧市や札幌市などで負傷者や家屋の破損などの被害が生じました。

阪神淡路大震災や新潟県中越地震、東日本大震災など数多くの大震災を予測した人たちが、次に起こる巨大地震は“千島海溝沿い”と危機感を抱いています。北海道で、この10年間に発生した震度5以上の地震は16回ありました。辿ってみましょう

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 2) 2013年の地震

発生年月日    地域マフニチュ-ド 最大深度
2013.02.02十勝地方南部の地震活動M6.5最大震度5強

十勝地方南部〔十勝地方中部〕の深さ約100kmでM6.5の地震が発生しました。この地震の発震機構は太平洋プレートの傾斜方向に張力軸を持つ型で、太平洋プレート内部で発生した地震です。GNSS観測結果によると、この地震に伴いえりも観測点(北海道)でわずかな地殻変動が観測されました。

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 3) 2014年の地震

発生年月日    地域マフニチュ-ド 最大深度
2014.07.08胆振地方中東部の地震活動M5.6最大震度5弱

胆振地方中東部〔石狩地方南部〕の深さ約5kmでM5.6の地震が発生しました。この地震の発震機構は西北西-東南東方向に圧力軸を持つ横ずれ断層型で、地殻内で発生した地震です。GNSS観測の結果によると、この地震に伴い「樽前山」観測点で小さな地殻変動が観測されました。

 4)  2015年の地震

発生年月日    地域マフニチュ-ド 最大深度
2015.06.04網走地方の地震活動M5.0

網走地方〔釧路地方中南部〕のごく浅いところでM5.0の地震が発生しました。この地震の発震機構は西北西-東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、地殻内で発生した地震です。

 5)  2016年の地震

発生年月日    地域マフニチュ-ド 最大深度
2016.01.14浦河沖の地震活動mm6.7最大震度5弱

浦河沖の深さ約50kmでM6.7の地震が発生しました。この地震の発震機構は、西北西-東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、太平洋プレートと陸のプレートの境界で発生した地震です。GNSS観測の結果によると、この地震に伴い小さな地殻変動が観測されました。

内浦湾の深さ約10kmでM5.3の地震が発生しました。この地震の発震機構は北東-南西方向に圧力軸を持つ逆断層型で、陸のプレートの地殻内で発生した地震です。この地震の震源付近では、M5.3の地震の前からまとまった地震活動が続き、6月21日のM4.2の地震など7月4日までに震度1以上を観測する地震が39回発生しています。

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 6) 2018年の地震

発生年月日    地域マフニチュ-ド 最大深度
2018.04.14根室半島南東沖の地震活動M5.4最大震度5強
2018.09.06胆振東部地震の地震活動 M6.7最大震度7強
2018.10.05胆振東部地震の地震活動 M5.2最大震5弱

根室半島南東沖の深さ約55kmでM5.4の地震が発生しました。この地震の発震機構は北西-南東方向に張力軸を持つ正断層型で、太平洋プレート内部で発生した地震です。

北海道胆振地方中東部の深さ約35kmでマグニチュード6.7の地震が発生しました。この地震により胆振地方で最大震度7を観測し、被害を伴いました。この地震の発震機構は、東北東-西南西方向に圧力軸を持つ逆断層型で陸のプレート内で発生した地震です。

その後の地震活動はマグニチュード6.7の地震の震源を含む南北約30kmの領域で、減衰しつつも活発な状態が継続しています。9月6日6時11分と10月5日8時58分に発生した地震により最大震度5弱を観測したほか、10月12日10時までに最大震度4を観測した地震が20回発生するとしています。

10月12日10時までの最大規模の地震は、9月6日3時20分に発生した マグニチュード5.5の地震です。GNSS観測の結果では、地震に伴って日高町の門別(もんべつ)観測点が南に約5cm、苫小牧市の苫小牧観測点が東に約4cm移動するなどの地殻変動が観測されました。

また、陸域観測技術衛星2号「だいち2号」の合成開口レーダー干渉解析の画像によると震央周辺で最大約7cm(暫定値)の隆起及び、隆起域の東側で最大約4cm(暫定値)の東向きの地殻変動が観測されました。

胆振地方東部・日高地方から浦河沖の周辺では、陸域で通常発生する地殻内の地震よりも深い場所でも地震が多く発生している特徴が見られ、今回の地震活動はこのような特徴がある地域で発生したものです。

地震活動の分布や地殻変動などから、今回の地震の震源断層上端の深さは15km程度にまで達している可能性があります。また、地震活動が続いている場所の西側の地表付近では、石狩低地東縁断層帯が南北方向に延びています。

地震活動は減衰しつつも活発な状態が継続し、10月に入ってからも最大震度5弱を観測する地震が発生しています。一連の活動は当分続くので注意が必要です。

平成30年北海道胆振東部地震の地震活動は10月に入り5日にマグニチュード5.2の地震(最大震度5弱)が発生したほか、最大震度4を観測する地震が4回(9月は16回)発生するなど、減衰しつつも継続しています。

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 7) 2019年の地震

発生年月日    地域マフニチュ-ド 最大深度
2019.02.21胆振地方中東部の地震活動M5.8最大震度6弱

胆振地方中東部の深さ約35kmでマグニチュード5.8の地震が発生しました。この地震の発震機構は東西方向に圧力軸を持つ型で、陸のプレート内で発生した地震です。この地震は、2018年9月6日のマグニチュード6.7の地震後に南北約30kmの領域で継続している平成30年北海道胆振東部地震の活動域内の北部で発生しています。GNSS観測の結果及び陸域観測技術衛星2号「だいち2号」の合成開口レーダー干渉解析の画像によると、今回の地震に伴う有意な地殻変動は観測されていません。

 8) 2022年の地震

発生年月日    地域マフニチュ-ド 最大深度
2022.08.11上川地方北部の地震活動M6.1最大震度5強
2022.01.22日向灘の地震活動M5.4最大震度5強
2022.03.16福島県沖の地震活動M7.3最大震度6強
2022.05.22茨城県沖の地震活動M6.0最大震度5弱

上川地方北部の深さ約5kmでマグニチュード5.4の地震が発生しました。この地震の発震機構は東西方向に圧力軸を持つ逆断層型で、地殻内で発生した地震です。また、この地震の震源付近では、同日00時35分にマグニチュード5.2の地震が発生しました。これらの地震の震源付近では、8月11日から9月8日8時までに震度1以上を観測する地震が28回発生しています。

GNSS観測の結果によると、今回の地震に伴って、北海道幌延(ほろのべ)町の幌延観測点で北向きにごくわずかな地殻変動が観測されました。今回の地震活動域付近では、2012年7月15日から18日にかけて、マグニチュード4.1からマグニチュード4.3の地震が4回発生しました。なお、2022年8月4日の宗谷地方北部のマグニチュード4.1の地震は、今回の地震活動域から北西に約30km離れた場所で発生していました。

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 9)  2023年の地震

発生年月日    地域マフニチュ-ド 最大深度
2023.02.25釧路沖の地震活動 M6.0最大震度5弱
2023.06.11苫小牧沖の地震活動 M6.2最大震度5弱

8.5kmでマグニチュード6.0の地震が発生しました。この地震の発震機構は西北西-東南東方向に圧力軸を持つ型で、太平洋プレート内部で発生した地震です。GNSS観測の結果によると、今回の地震に伴う有意な地殻変動は観測されていません。

6月11日に苫小牧沖の深さ約140kmでマグニチュード6.2の地震が発生しました。この地震の発震機構は太平洋プレートの傾斜方向に張力軸を持つ型で、太平洋プレート内部で発生した地震です。GNSS観測の結果によると、今回の地震に伴う有意な地殻変動は観測されていません。

※ GNSS観測とは、人工衛星の位置と観測地点の距離から計算して位置情報のデータを受け取る測量技術の1つです。 最近ではGNSS測量が可能なスマホアプリが登場し、ワンタップで測量可能になり、リアルタイムで位置情報を取得できるようになりました。 GNSS測量が普及すると、従来では観測不可能であった場所での測量が可能になります。

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3 札幌市の地盤

 1) 地震基盤

関東平野と同様に石狩平野も「厄介な場所」という"堆積層"に覆われています。札幌市を形成する区域には、石狩低地東縁活断層帯のような活断層は発見されていません。ただし、石狩川が長い時間をかけて上流から運んできた堆積物で埋め立てられてできたのが石狩平野ですから、堆積物の下はどうなっているのか誰にもわかりません。活断層はないと断言できないのです。

平成7年兵庫県南部地震を契機に、山地と平地が出会う神戸市のような都市における地震動の増幅による被害の増大が懸念されるようになりました。硬質の岩盤からなる地震基盤及びそれを覆う堆積層の構造と、地表面における強振動の特異な分布との関連性について全国的に調査研究が進んでいます。

札幌市も地震による市民生活と財産に対する被害を分析し、より高度な防災対策を実施するため、文部科学省の地震関係基礎調査交付金を受けて、市街地の大半が立地している石狩平野北部地域を対象に、4か年で地下の3次元的な地下構造を解明し、防災対策に生かすこととしました。

以下のデータは、平成13年度から平成16年度にわたって実施した「石狩平野北部地下構造調査」の成果です。地震基盤とは、地震による被害想定の計算に必要な深いところにある硬い岩盤のことです。

地震基盤における地震のS波(横波)速度は毎秒3000m程度、P波(縦波)速度は毎秒5000m程度と言われています。これまでの調査から、札幌市街地の地震基盤として、このような速度を出す定山渓層群という地層を想定しました。

下図は、地震基盤の深さを示したものです。地震基盤の最も深いところは白石区東米里付近になり、深さ5600m程度と推定されます。地震基盤はここから周辺に向かって徐々に浅くなっていき、平野部と手稲山や藻岩山との境界付近では深さ2000~2400m程度になっています。

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地震基盤の深さ


 札幌市の地下の様子を断面図で示すと下図のようになります。札幌付近の大まかな地質は1000万年前に作られました。地球の年齢46億年を1日に例えると、約3分間になます。この3分間に、手稲山などの西南産地が火山として噴火したり、東西からの押し合う力が働いたり、地下の断面図海水面が上がったり下がったり、巨大噴火によって支笏湖が誕生したり、多くの変動がありました。

特に、300万年前から、日本海の東遠(サハリン~北海道西縁沖~新潟沖)で、東西からの押し合いが活発になり、札幌付近の地下構造に影響を与えました。

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 ① 800万年前

800万年前の札幌は深い海の底でした。定山渓付近では火山活動があり、水中火砕流の堆積などによって札幌の地盤が形成された時期です。夕張・日高方面の山脈の川が海底扇状地を形成し、西へ広がって行きました。

800万年前と200万年前

 ② 200万年前

東西からのプレートの押し合いが活発化して、札幌付近でも地層に大きなしわができました。特に、札幌東部~当別は「大きく下がるしわに当たり、現在も下がり続けています。

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 ③ 13万年前

北極と南極の氷の増減による海面の上昇と加工が繰り返されました。13万年前ころは海面が高く、石狩死から苫小牧市までの海が続いていました。

 ④ 4万年前

苫小牧北西で巨大噴火が起き、大湿原となっていた石狩地帯の中~南部は火砕流で埋め尽くされました。これにより、石狩川の流域が太平洋から日本海へ移ったとされます。

4万年前と6000年前

 ⑤ 6000年前

縄文時代に温暖化で、6000年前頃には海面は今より3mほど高く、札幌部分は内湾となりました。このあと海水面が下がって現在の地形になりました。

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 2) 内陸型伏在断層

平成20年9月18日にまとめられた平成20年度札幌市防災会議「第三次地震被害想定(想定結果)」より転載した地図で、赤い線がしわの頂上部分(背斜)で、青い線がしわの底(向斜)になります。

4万年前と6000年前

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 3) 直下型地震の想定値

苫小牧沖(プレート内のやや深い場所)で起きる地震は海溝(プレート)型地震で、石狩低地東縁活断層で起きる地震は内陸(活断層)型地震です。第三次地震被害想定で想定された野幌丘陵断層帯・月寒断層・西札幌断層は伏在断層型地震と呼びます。

場所マグニチュ-ド最大深度震度6以上発生面積
石狩低地東縁活断層 M8.0 6弱  0平方km
野幌丘陵断層帯 M7.5 72  44平方km
月寒断層 M7.3 7 169平方km
西札幌断層 M7.7 7 122平方km

災害対策にあたっては、想定される最悪の事態に備えておくことが重要です。「第三次地震被害想定」、今後の地震対策を進める前提とするべく、最新の調査や過去の大震災の経験をもとに、札幌で発生する可能性があり、最大級の被害をもたらす地震を設置して想定される最悪の被害を示したものです。

札幌市を形成する区域には、石狩低地東縁活断層帯のような活断層は発見されていません。ただし、石狩川が長い時間をかけて上流から運んできた堆積物で埋め立てられてできたのが石狩平野ですから、堆積物の下はどうなっているのか誰にもわかりません。活断層はないと断言できないのです。

2004(平成16)年10月23日に発生した直下型の新潟県中越地震は、震源の深さが13kmでマグニチュードは6.8でした。明らかな断層がないので従来から知られていた活断層の活動ではなく、厚い堆積層の下にある未知の断層の活動による地震と考えられています。

このような事実から、札幌市における今後の地震防災対策を進めるため最新の調査で得られた3つの手掛かりをもとに札幌市直下を震源とする地震を引き起こす「伏在活断層」が設定されました。

北海道大学院理学研究院地震火山研究観測センターの高橋浩晃教授(地震学)は、平成6年4月12日の北海道新聞社の「長期地震動 遅れる対策」と不安をあおるような記事の最終部で、「長期地震動で大きく揺れても、多くの建物は構造上倒壊することはほぼない」と説明されました。

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地震想定一覧

震度と揺れ等の状況

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4 能登半島地震

 1) 日本史上最大の地震

2024年1月1日、震度6強の揺れを観測した石川県輪島市の中心部「朝市通り」で発生した大規模な火災現場で、警察などは2日目となる集中的な捜索を行い、巻き込まれた人がいないかなど確認を進めています。

1月1日の午後6時ごろ、輪島市中心部の河井町にある観光名所「朝市通り」で大規模な火災が起き、店舗や住宅など200棟以上が焼けたとみられています。

米地質調査所は、地震は日本海に面する石川県沖で1月1日午後4時10分に発生を確認。気象庁はマグニチュード7.6と発表。これまでに155回以上の地震が起きたそうです。大半はマグニチュード3以上で、強さは徐々に弱まっている。ただ2日早朝にも強い揺れが6回観測されました。光復中学校グランド

地震の発生場所は、石川県能登地方(輪島の東北東30km付近)深さ16km、石川県の志賀町(しかまち)で震度7を観測したほか、北海道から九州地方にかけて震度6強~1を観測。津波警報は、山形県、新潟県上中下越、佐渡、富山県、石川県能登、石川県加賀、福井県、兵庫県北部に発令されました

能登半島地震では多くの住宅が被害を受けています。石川県だけでなく、富山県でも震度5強の揺れで家屋の倒壊が相次ぐなど、甚大な被害となっています。見えてきたのは、なかなか進まない「住宅の耐震化」の実情です。

2018年時点の「住宅の耐震化率」は、全国平均の87%に対して、富山県全体では80%。氷見市は64%にとどまっています。木造の戸建ては61%です。背景には、高齢化が進み「今更お金をかけて対策する必要性を感じない」という心理があります。地割れの道路


 高齢だから耐震化は必要ないではなく、高齢者こそ耐震化が必要という考えのもと、家族が一緒になって行動に移していくことが大切です。富山県内における今回の揺れ以上の地震は江戸時代にまで遡ります。大きな揺れに対する経験値に乏しく、油断があってもおかしくない状況だったのです。

150年ぶりの大地震最大で震度5強を観測した富山県。富山県においては「観測史上最大」です。特に被害が大きかったのは能登半島の付け根に位置する富山県氷見市です。9日午後18時時点で、確認された建物への被害は974棟となりました。

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 2) 防げなかった被害

京都大学防災研究所の西村卓也教授は、2022年に石川県珠洲市で頻発した地震について、同年6月のFLASHの取材に対し「能登半島では今後、マグニチュード7クラスの地震が起きる可能性がある」と”次のように”予言”されていた研究者です。

今回の巨大地震の直接的な原因は活断層です。活断層は過去何百年にわたり、日本列島を東西に押し合う力を受け、巨大なエネルギーを溜めていました。それが動いたわけです」(西村教授・以下同)。だが、その活断層を“暴発”させたのは、一昨年から能登半島で続く“流体地震”です。

能登の地中にある流体は水だと思われます。東京ドームにして20個分以上、約3000万立方メートルほどの水が、地下深くから上昇し、地下10~16kmほどの所に溜まりました。

これが岩盤に圧力をかけたり、摩擦力で固定されていた断層に潤滑油として入り込み、小さな地震を頻発させていました。この “流体” が能登半島北岸の活断層を刺激し、今回の巨大地震を引き起こしたと考えられます」。この地中の流体が地震を引き起こすケースは、今後も発生する可能性が十分あるそうだ。

輪島市の朝市火災現場


 日本はこれまでのおよそ30年、兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災・1995年)、新潟県中越地震(2004年)、新潟県中越沖地震(2007年)、東北地方太平洋地震(東日本大震災・2011年)、熊本地震(2016年)、北海道胆振東部地震(2018年)と地震階級では最大の「震度7」を記録する地震が多く発生しています。

地震のエネルギーの大きさを示すモーメント・マグニチュードで比較すると、兵庫県南部地震を①とした場合、熊本地震は②、明治以降、陸域で発生した最大規模の濃尾地震(1891年)は⑥ですが、今回の能登半島地震はそれを上回る⑨です。日本での近代的な地震観測開始以来、最大の地震だったのです。

東北大学の活断層研究の第一人者遠田晋次教授は、熊本県益城町で震度7の地震を記録した2016年4月14日の翌日、災害科学国際研究所の報告会で「この地震に刺激され、布田川断層か日奈久断層、いずれかの断層が動き、さらに大きな地震が発生する可能性に」ついて語った。

「遠田能登半島の北沿岸の海底下の地盤には、半島に沿って佐渡方面に[F43]、[F42]という活断層があることがわかっていました。調査船からの音波探査で海底下の地盤を調べた成果です。今回、その活断層に向かって能登半島の真下の地盤が乗り上げるように動いたんです、逆断層というタイプの断層です。

関東大震災(1923年)では房総半島の先端部分で2m隆起した記録がありますが、海岸が4mも隆起したのは、ここ100年では初めてです。世界でも非常に珍しい地殻変動です。大きな隆起は、断層が日本海直下とはいえ陸のすぐそばに走っていたからです。

具体的には、茨城県と福島県の県境付近でも流体が地中に存在しており東日本大震災以来、小さな揺れがずっと続いていますし危険な活断層がその近くにあります。京都府亀岡市付近も似たような状況ですね。しかしこれ以外にも、全国の地下100か所以上に流体が溜まっていると推測されます。どこでも発生しうると考えるべきでしょう」。

しかし、西村卓也教授や東北大学の活遠田晋次教授の予知に、真摯に耳を傾けた人はいなかったようです。NHKスペシャル「MEGAQUAKE」でも、日本海側や能登半島の断層の検証は抜け落ち、番組の趣旨から外したのはなぜでしょう。

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参考資料出典:地震防災研究推進本部ホームページ、文部科学省ホームページ、地下に潜む次の脅威(NHK取材班、新日本出版社)、現代ビジネス、札幌の地下構造(札幌市)など。