1 危険の認識
認識不足が問題です。迫りくる災害リスクや問題等に事前に気づくことで、自分の住んでいる地域にどのような災害の危険性があり、どんなことが起きそうなのかを知ることが必要です。
1-1 災害のイメージ
災害や防災というと多くの人は「地震」を想像するようです。大正2年9月1日に発生した関東大震災を忘れないように、全国各所で9月1日に防災訓練が行われるためとも言われています。(9月1日は防災の日です。)
関東大震災では揺れによる建物倒壊のほか、火災による犠牲者が多く発生しました。このため、ほとんどの防災訓練は「地震」または「火災」を想定しています。
しかし、災害には「地震・津波・洪水・火山噴火・火災・土砂崩れ・原子力事故」など様々なものがあります。
1-2 札幌市内での災害
札幌市内にいた場合に、遭遇すると考えられる主な災害は「洪水・地震・土砂災害」の三つです。
1-2-1 洪水ハザードマップ
平成16~17年にかけて、南区と清田区を除く8区で配付され、各区役所や市役所6階の危機管理対策室で入手可能です。
1-2-2 地震防災マップ
平成21年3月から全区を対象に作成・配布され、各区役所や市役所6階の危機管理対策室で入手可能です。
1-2-3 土砂災害危険箇所図
平成20年12月に関係する町内会へ回覧され、平成21年9月から札幌市役所Webページでも閲覧可能となりました。
1-3 地震災害の想定
札幌市に影響を与える断層は、海溝型と内陸型の二種類が存在しているとされます。苫小牧沖にある海溝型の断層は確認されています。
内陸型の断層を目では確認できませんが、過去の地震発生データーから想定された伏在断層は、「石狩低地東縁断層帯・野幌丘陵断層帯・月寒背斜に関連する断層・西札幌背斜に関連する断層」の四ヶ所あります。
札幌市危機管理対策課が平成23年に作成したDVDは、札幌市内で想定される揺れや被害状況について解説しています。札幌市役所の危機管理対策課や区役所などで見ることができます。
1-3-1 地震による被害
1995年1月17日5時46分に発生した阪神・淡路大震災はマグニチュード7.2でした。人口密集地帯のため、死者6,443人、行方不明者2人、負傷者43,177人、家屋の全壊は100,302棟、半壊108,741棟で、避難収容者数は約32万人でした。
2004年10月23日17時56分に発生した新潟県中越沖地震はマグニチュード6.8で、北魚沼郡川口町(現長岡市)で「観測史上2回目の最大震度7を観測」しました。死者68人、負傷者4,805人、家屋の全壊は3,175棟、半壊13,810棟で、避難収容者数は約10万人でした。
2008年6月14日8時44分に発生した岩手・宮城内陸型地震も「マグニチュード7.2」でした。死者17名、行方不明者6名、負傷者は448名、家屋の全壊は23棟、半壊は65棟と人口密集地帯でないことが幸いでした。
阪神・淡路大震災の死者6,443人のうち9割の方々は、家具などによる瞬間圧死でした。新潟県中越沖地震で負傷された方々は家具の転倒や家具からの落下物によるものが40%、本人の転倒によるものが25%、熱湯によるものが11%、ガラスや鋭利物によるものが8%、その他16%となっています。
1-3-2 家具転倒防止が重要
家具の転倒や家具からの落下物などで負傷すると、地震が治まったときの防災行動や避難行動の支障となり、生命を守るためにも望ましくありません。
中越地震を経験した方々へ防災について質問すると、大部分固定した0%、一部固定した26%、ほとんど固定していない74%という結果でした。個人の地震防災対策については、家具の転倒や落下の防止26%、防災頭巾など頭を守るものの用意は4%、家屋の耐震補強0%、消火器などの準備50%、風呂に水をためておく32%、避難袋や非常持出品の準備22%、避難経路の確認22%、その他1%という結果でした。
中越地震を経験したほとんどの人々が家屋の耐震補強も家具の固定もしていなかったのです。この結果から、危険に対する認識を深め、対処方法を知ることが重要と云えます。
2 危険への着目
注意不足が問題です。迫りくる危険に気づきながらも慌てる必要がないと判断して真剣に向き合わなかったり、心理的に真実を見ずに願望を見るよう「危険に対する着目」を怠るのを避けることです。予見可能な危険に対して着目する能力の育成が必要です。
2-1 地震発生時の危険
2-1-1 寝室の危険確認
もしも、寝ているときに地震が発生したら・・・と、寝室を見回します。
確認していただきたいこと
・ 寝ている状態で頭に落ちてくるものはありませんか。
・ 寝ている状態で身体の上に倒れてくるものはありませんか。
・ 寝室の出入口をふさぐ可能性があるものを置いていませんか。
・ ガラスや鏡などが割れた場合に、足を怪我せず安全に移動できますか。
危険回避の対策
・ 家具の配置や枕の位置を見直すことも防災対策のひとつです。
・ 寝室に家具を置かないことも対策と考えられます。
・ 家具の転倒防止と合わせて、ガラスなどの飛散防止対策も効果的です。
2-1-2 リビングの危険確認
居間には倒れるものがないから大丈夫といえますか。倒れるだけではなく、飛んでくる可能性もあります。
確認していただきたいこと
・ ソファなどの腰を下ろす位置に倒れてきそうな家具を置いていませんか。
寝ているときや座っているときに、とっさの対応はむずかしい!
・ 落ちる・飛ぶなどの可能性がある重量物はどこにありますか。
例えば、テレビやトロフィ、パソコンなども「凶器」になります。
・ ガラスや鏡などが割れた場合、足に怪我をせず安全に移動できますか。
リビングでは、応急対応として座布団などをかぶって移動も可能です。
・ ソファなどの腰を下ろす場所に倒れてきそうな家具は置いていませんか。
寝ているとき、座っているときに、とっさの対応はむずかしい!
2-1-3 キッチンの危険確認
地震発生時にキッチンで危ないのは「火」、そして「落下物」と「移動物」も。
確認していただきたいこと
・ 食器棚が倒れたり、食器が落ちてくる可能性はありませんか。
・ 冷蔵庫が動いた場合、火を消せない状態になる可能性はありませんか。
・ 地震があった時、すぐに火を消そうとしていませんか。
・ 。
危険回避の対策
・ 食器棚の上に置いたものは落ちてきます。
・ 揺れ方によって冷蔵庫が「歩く」ように移動することもあります。
・ 火を使っている=熱くなった鍋などが落ちてやけどをする可能性もあり、揺
れが収まってから火を消したほうが安全です。
3 危険への対応
対応不足が問題です。迫りくる危険に気づき着目しながらも効果的な対応できないケースもあり、危険に見合った必要な予防策をとることが必要です。家具の転倒などによる被害を防止するために必要な対策は5種類あります。
3-1 家具転倒防止の種類
家具の転倒防止方法を大きく分けると次の5つの対策になります。
ア. 家具などの配置(位置や向き)変更
イ. 壁への固定
ウ. 天井への固定
エ. 足元の固定
オ. 飛散防止対策
その他として、冷蔵庫の固定とテレビの固定も忘れてはなりません。
家具などの配置(位置や向き)変更というのは、建物が揺れる方向を知る・家具が倒れる方向を知るということにつきます。
3-2 壁への固定
3-2-1 固定する用具
住宅の構造によって可能・不可能がありますが転倒防止効果は高い方法です。マンションの場合、専有部と共用部を分ける壁は専有部になるので、壁に固定することはできません。
ア. L字金具
・ メリット 強度もあり安価。
・ デメリット 利用できない箇所も多い、取付けに手間がかかる。
イ. チェーンやベルト
・ メリット 設置の自由度が高い
・ デメリット 取付けを間違うと効果は薄くなり、美観を損なう可能性もある。
ウ. L字取付金具(粘着シートタイプ)
・ メリット 比較的汎用性が高い。
・ デメリット 凹凸のある面には取付けができず、他と比較してコストが高い。
3-2-2 固定する箇所
壁に固定するのではなく、壁の中の見えない桟や横木に固定します。
ア. 直接固定の場合
・ 2×4の壁 壁板は約45cm又は50cmごとの細桟に固定されています。この桟
にL字金具で固定します。
イ. 横木固定の場合
・ 木造軸組壁 壁板は約30cmごとの細桟に固定され、直角に細桟が渡されてい
ます。この桟にL字金具で固定します。
3-3 天井への固定
壁への固定がむずかしい場合は天井への固定を考えてみましょう。
3-3-1 突っ張り棒タイプの固定器具
・ メリット 比較的安価な器具類もある。
・ デメリット 強い揺れで建物自体がゆがむと転倒する。美観を損なう可能性がある。
突っ張り棒と天井の隙間に板を入れてから突っ張り棒で戸棚との間を塞ぎます。本来の目的は「天井と家具の隙間を無くして倒れるのを防ぐ」ことです。通常、天井には十分な強度は与えられていないため、1点に力が集中すると天井が損傷する可能性があります。
応急的な対策として、段ボールに物を入れて隙間を埋めることも有効です。段ボールを落下させない工夫は必要で、段ボールが落下して怪我などをすれば本末転倒になります。
3-3-2 隙間家具タイプの固定器具
・ メリット 収納スペースとしても利用可能。
・ デメリット 比較的高額の器具が多い。圧迫感を感じる、部屋が狭く感じる。
3-4 足元の固定
他の対策と比較すると効果は落ちますが、有ると無いとでは大違いです。
天井との固定を行う際に形容すると転倒防止効果が大きくなります。単体で使用する場合は、効果が落ちることを考慮したうえで家具などの配置にも十分な注意をはらう必要があります。
3-5 飛散防止の対策
窓ガラスや鏡、食器棚などのガラス類は地震の揺れによる衝撃で割れる可能性があります。しかも、室内でガラス等の飛散は地震後の行動を制限する要素となる可能性があります。
ガラス飛散防止フィルム等を貼ることにより、ガラスが割れた際の破片の飛散を防ぐことができます。
3-6 その他の対策
ア. 冷蔵庫の固定
重量があるので、冷蔵庫の重さに合わせた十分な強度を持ったベルト等の器具を使用します。
ベルトの取付け方法によっては冷蔵庫を傷つける可能性もあるので、取り扱い性もあるので取扱説明書を確認してください。
イ. テレビの固定
テレビ第との固定方法、壁との固定など設置状況に応じた方法を検討します。
ボルト固定が可能な機種の場合にはボルト固定が推奨されます。
テレビが大型になるほどふくすうでの作業が必要になります。
4 我が家の地震対策
安全で快適に暮らすための「防災」です。防災対策で日常が不自由になるのは避け、家族で話し合い守るべきものに優先順位をつけましょう。
4-1 現実を重視してください
全ての家具を固定し、ガラス飛散防止対策を図ることは理想ですが、現実の生活や金銭的な負担もあります。
目的は「地震時の被害の軽減」です。家具を固定しなくても被害の軽減が図られるならその方法を採るべきです。
4-2 確認してください
ア. 子ども達が寝る部屋には、タンスなどの背が高いものは一切置きません。
イ. 家具が倒れても影響がないと思われる距離を離して就寝します。
ウ. 各心室からの避難をむずかしくする可能性のあるものを動線上に置きません。
4-3 見直してください
ア. 一番に守るべきものはなんですか。
イ. 揺れた時に、倒れてきそうなものはありませんか。
ウ. 揺れが収まった後に、部屋の外へ出ることはできますか。
エ. 方眼紙に自宅の見取り図を簡単に描き、対策の優先順位をつけてみましょう。
オ. 生活の仕方によっても、対策の優先順位が変わってくるはずです。
5 災害調査から言えること
被害を最小にして、家族や地域の安全確保のためには意識改革が重要です。
ア. 地震は、場所なし、時無し、予告なし。
イ. 日頃の備えは我が身を救う。
ウ. すわ3秒、あなたはどう動く。動けなかったらダンゴムシ。
エ. 揺れたら、あなたを襲う家具と電化製品。
オ. 震災は室内災害、自宅の強化は家族を守る。
カ. つくろう自宅避難所(シエルター)を。
キ. 揺れたあとは足元注意、はだしは厳禁。
謝辞:文中に掲載した写真は、概要説明文書より転載しました。ありがとうございます。