はげちゃんの世界

人々の役に立とうと夢をいだき、夢を追いかけてきた日々

第41章 不都合な真実(2)

1972年の日中国交正常化の話し合いで「復交三原則」を十分理解する立場に立ち、国交正常化の実現をはかると共同声明の前文に明記された。しかし、安易に尖閣諸島の国有化に舵を切った民主党政権野田佳彦首相の一連の動きは、野党の政治を知らぬ愚行である。また、台湾問題で戦争をあおるマスコミと麻生副総理に愕然とする。

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1 尖閣諸島への対応

 1 日中両国間の約束

日本国内閣総理大臣田中角栄は、中華人民共和国国務院総理周恩来の招きにより、1972年9月25日から9月30日まで、中華人民共和国を訪問した。田中総理大臣には大平正芳外務大臣、二階堂進内閣官房長官及びその他の政府職員が随行した。

毛沢東主席は9月27日に田中角栄総理大臣と会見し、双方は真剣かつ友好的な話し合毛沢東いを行った。田中総理大臣及び大平外務大臣と周恩来総理及び姫鵬飛外交部長は、日中両国間の国交正常化問題及び双方が関心を有するその他の諸問題について、真剣かつ率直に意見を交換して両政府の共同声明を発出することに合意した。

日中両国は長い伝統的友好の歴史を有する。両国国民は、両国間にこれまで存在していた不正常な状態に終止符を打つことを切望している。戦争状態の終結と日中国交の正常化という両国国民の願望の実現は、両国関係の歴史に新たな一頁を開くこととなろう。

日本側は、過去において日本国が戦争を通じて中国国民に重大な損害を与えたことについての責任を痛感し深く反省する。また、中華人民共和国政府が提起した「復交三原則」を十分理解し、国交正常化の実現をはかるのを中国側は歓迎するものである。

日中両国間には社会制度の相違があるにもかかわらず、両国は平和友好関係を樹立すべ周恩来きであり、両国間の国交を正常化し相互に善隣友好関係を発展させることは両国国民の利益に合致するところであり、また、アジアにおける緊張緩和と世界の平和に貢献するものである。

日中国交正常化については、中国はかねてから復交三原則を公にしており、この三つを柱として日本が受け入れるということによって正常化が実現できるという立場をとっていた。その三原則とは、第1が、中華人民共和国政府は中国を代表する唯一の合法政府であること。

第2が、台湾は中華人民共和国の領土の不可分の一部であること、第3が、日台条約ですでに述べたような経緯・背景の下に日本が台湾(中華民国)と結んだ平和条約は不法で無効であり、廃棄されなければならないということ。

この三つの原則の下に、日中国交正常化を実現するというのが中国の立場である。日本は、日台条約を含む「復交三原則」を十分理解する立場に立って、国交正常化の実現をはかるという見解を再確認し、共同声明の前文(まえがき)に明記された。

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 2 国民慣習の違い

具体的には9項目の内、1と2は合意。3は、中華人民共和国政府の立場を十分理解し尊重しポツダム宣言第八条に基づく立場を堅持すると謳われた。ポツダム宣言第八条では「カイロ宣言の条項は履行せらるべく」とされ、そのカイロ宣言では、台湾は当時の中華民国、すなわち中国に返還されるべきものと書かれている。田中角栄

したがって、ポツダム宣言を受諾した日本は台湾が中国に返還されることを受け入れたのであり、その立場を堅持するというのがこの共同声明第3項の意味である。また、第5中日両国国民の友好のために、日本国に対する戦争賠償の請求を放棄している。

日中共同声明の前文に「日本側は、過去において日本国が戦争を通じて中国国民に重大な損害を与えたことについての責任を痛感し、深く反省する」という一項がある。『反省』といった語が政府間の外交文書に記されるのは、異例なことで非常に意味深長である。

共同声明に賠償放棄が盛込まれたのは、これまたこの種の外交文書の異例と見るほかない。相手に反省を求めることと、みずから賠償請求権を放棄することとは、2にして1であり、そこに一貫した中国の外交姿勢を読みとることができる。

問題は同じ『反省』でも、日本語と中国語では語彙がちがう。反省するからには、当然それが行為となってあらわれるべきだ、というのが中国語の語彙であり、中国側の期待でもある。それにひきかえ日本側は『反省』という文字を記せば、それで反省行為は終わっ大平正芳たと考えている。

言いかえると、共同声明を国交正常化の第一歩としてとらえるか、それとも国交正常化の完了としてとらえるかの違いである。このときに、両国間で表現が同じでも言葉の意味が違うことが議論されていない。これは双方の手落ちである。

未来のために過去を忘れるなという中国側(周恩来首相)の見解に対して、日本側(田中角栄首相)は過去を切捨て『明日のために話合う』ことを提起している。過去を忘れては、未来の設計が成立たぬのは常識と周恩来と漢民族は考えている。

過去を問わぬ、過去を水に流す、といった日本人にかなり普遍的な和解の習俗や思考習性は、それなりの存在理由があり一種の民族的美徳といえないこともない。ただそれは普遍的なオキテではないことを心得ていないと対等の友好は成立たないはずである。

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 3 周恩来という恩人

1950年、シベリアで5年間抑留された日本軍兵士のうち、約1000人が中国の撫順に送られてきた。「シベリアに残っている約2500人の捕虜の中から、中国で重い罪を犯した者1000人を送るのでその処理を行ってはどうか」というスターリンの提案を受け、戦犯容疑者1000人は撫順(ブジュン)戦犯管理所に収容されることとなった。周恩来がその総責任者である。周恩来

周恩来は「戦犯といえども人間である。人間である以上、その人格は尊重されなければならない。戦犯たちを殴ってはいけない。蹴ってもいけない。ひとりの死亡者、ひとりの逃亡者も出してはならない」という方針で戦犯の処置を徹底するように命じた。

撫順戦犯管理所では、十分な食事が与えられ、強制労働もなく、医師による検診も行われた。中国人所員は戦犯たちに対して礼儀正しく丁寧だった。しかし、過去に日本軍による虐殺事件があった撫順の中国人にとって、相手は恨み骨髄の日本人戦犯である。

それでも所員たちは周恩来の指示に従い、内心の怨みや怒りの感情を抑え、決して戦犯を手荒く扱うことはなかった。1956年、戦犯たちに判決が下る。有罪は45人、残りは全員不起訴となり釈放、極刑はひとりもいなかった。重大な犯罪以外は不起訴として日本へ帰すというのが、周恩来の指示だったからである。

戦犯裁判を担当した検事が、戦犯に寛大すぎると周恩来に抗議に来た。そのとき周恩来は、「日本人戦犯に対する寛大な処置については、20年後に君たちも中央の決定の正しさが理解できるだろう。侵略戦争で罪行を犯した人が十分に反省し、その体験を日本の人々に話す。

われわれ中国共産党員が話すより効果があると思わないかね。日本の人民もきっと納得する」と諭したという。日本人戦犯の処遇と日中国交正常化交渉時の周恩来の言動は、底流で通じているものがあるように見える。

周恩来には、戦争中の賠償や戦犯を訴追することよりも、日本との国交を回復し文化的経済的に交流を深めることが、中国の発展にとってより重要であるという未来志向の戦略眼があった。

周恩来は、優れた大局観を持った希有な政治家のひとりだった。対する田中角栄もビジョンのある政治家だった。日中の国交回復の道筋に、こうした優れた政治家がいたことは両国にとって幸運だった。大平外装が記者会見、台湾との条約はなくなると発表した。

1969年に中ソ国境紛争があり、核戦争になるかもしれないというほど緊迫していたが、周恩来とコスイギンがどうすれば戦争を避けられるか話し合い、領土問題を棚上げにしている。両国はこれ以降互いに約束を守っている。

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 4 尖閣諸島についての約束

尖閣諸島については日本と中国、台湾も領有権を主張し、日本のものとしているのは日本のみである。田中角栄と周恩来の会談で、尖閣諸島は日本の管轄であることを中国が承認し、領有権は棚上げされたことは歴史上の事実である。

田中角栄首相(1918~1993年)が、戦後初めて日本の現職総理大臣として中国を訪問したのは1972年9月25日である。中国の周恩来(1898~1976年)首相との首脳会談は4日間続いた。

周首相は日本に対する戦時賠償請求を放棄し、日米安保には触れないことを田中角栄首相に告げた。両国の話し合いは細部で厳しいこともあったようだが、途中、田中・毛沢東会談を挟み、小異を捨てて大同につく方向で合意に向かって進んでいった。

しかし、最後の最後になって田中首相より尖閣諸島の領有権問題が出た。尖閣諸島は日中どちらの領土なのか。領有権を主張し合えば、国交正常化交渉は暗礁に乗り上げ、まとまらないだろう。

尖閣諸島

このとき周首相が「尖閣問題を言い出したら、双方とも言うことがいっぱいあって、首脳会談はとてもじゃないが終わりませんよ。今回はこれは触れないでおきましょう」と言い、田中首相も「それはそうだ。じゃ、これは別の機会に」と応じ、交渉はすべて終わり日中共同声明が実現したといわれている。

9月29日は、日中政府が「日本国政府と中華人民共和国の共同声明」に調印し、両国の国交が正式に正常化した。元官房長官の野中広務氏は2013年の訪中の際に、「双方で棚上げして、そのまま波静かにやっていく」ことで合意が結ばれたと、田中角栄元総理から直接聞いた話として語った。

2014年の年末から翌2015年正月にかけて英国サッチャーと鈴木善幸政府の情報公開があり、1982年に鈴木善幸首相がマーガレット・サッチャー首相との会談で、尖閣諸島の領有権に関し日本と中国の間に「現状維持する合意」があることを明かしたという報道があった。

しかし、外務省は田中角栄首相の顔に泥を塗り「尖閣諸島が日本固有の領土であることは、歴史的にも国際法上も疑いのないところであり、現にわが国はこれを有効に支配しています。したがって、尖閣諸島をめぐり解決すべき領有権の問題はそもそも存在していません」と虚偽の内容を掲載している。

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 5 先輩たちの智慧に学ぶ

恥をさらしの日本外務省と違い、中国外務省のホームページで、鈴木善幸元首相は首相になる前の1979年に訪中して鄧小平副総理と会談した席上、鄧副総理は「尖閣の将来は未来の世代に委ねることができる」と尖閣問題の「棚上げ」を踏襲していた。

「領土の主権にかかわらない状況下であれば、釣魚島(魚釣島)付近の資源の共同開発を考慮することができる」と、海域の共同開発を提案したという記事も載っているそうだ。

大平正芳元総理の追悼文集『去華就実 聞き書き大平正芳』に、日中国交正常化を担当した中国課長の橋本恕(ひろし)氏の対談が載っており、その中で前述の周恩来首相が提大平正芳案した尖閣問題の「棚上げ」に対し、「それはそうだ」と田中角栄首相が応じたという一文が記されていたという。

「棚上げ」論は、田中首相にとって両刃の剣であった。領土問題をあいまいにしたまま共同声明に調印したことで、日本国内や自民党内の右派勢力から突き上げられることを覚悟しなければならない。最悪の場合、世論の反発を買うおそれもある。

自民党内には、依然として根強い台湾同調者の存在があり、巻き返しを狙っていた。決して万事が順調に進むとは見えない状況であったが、それでも日中の両国の発展のためにはあえて「棚上げ」を選んだ。それが田中角栄の決断である。

尖閣問題が日中間のデリケートな問題であることを知りながら民主党政権は、胡錦濤主席と直接言葉を交わして国有化反対の意思を聞いたにもかかわらず、国有化の手続きを継続した野田佳彦首相の一連の動きは、約束事を守らぬ愚か者と言わざるをえない。

ほんの小さな小競り合いからでも、全面戦争に至ることがある。もし、尖閣諸島周辺で日中衝突となったら、はたして国民は冷静でいられるだろうか。マスコミが先の大戦のように世論をあおればエスカレートする。全面戦争に至る可能性は否定できないだろう。

万一武力衝突が起きれば、それが小規模であっても国民の間にある反感や得体の知れない恐怖は、明確な敵愾心(てきがいしん)に変わり、攻撃的な感情がむき出しになる可能性はないか。おそらくそうなるだろう。

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 6 尖閣諸島の日本側の歴史

領土主権がどちらにあるかは戦争をしなければ解決しない。これは古今の戦争の多くが国境紛争から始まったことからもわかる。領土であれ、権益であれ、それは国民を豊かにする手段である。しかし、領土に関しては、国民の間で合理的な思考が止まりがちだ。現代の戦争で利益を得ることはない。

戦争は勝っても損、負ければ大損である。われわれは、尖閣諸島の領有権にあえて白黒をつけず、棚上げとしたまま国交を回復させた日本と中国の先輩たちの智慧(ちえ)に学ぶべきだ。

中国側は、日本が戦後60年余り平和国家としての歩みを堅持し、平和的手段により世界の平和と安定に貢献してきていることを積極的に評価した。双方は、国際連合改革問題について対話と意思疎通を強化し、共通認識を増やすべく努力することで一致した。

日本の国際連合における地位と役割を重視し、日本が国際社会で一層大きな建設的役割を果たすことを望んでいる。台湾問題に関し、日本側は日中共同声明において表明した立場を引き続き堅持する旨改めて表明した。日中共同声明には、日本国内閣総理大臣福田康夫(署名)と中華人民共和国主席胡錦濤(署名)がある。

尖閣諸島は、1896年に古賀辰四郎が、明治政府より30年間の無料貸与を受けたが、1918年に死去すると、息子の古賀善次が事業を引き継いだ。政府からの貸与は、その後有料になっていたが、1932年に国有地払い下げを申請し認められた。尖閣諸島

1972年に南小島と北小島が、埼玉県大宮市の不動産業・栗原国起に譲渡された。魚釣島は、1979年に善次の死後、妻の古賀花子が相続したが、その後、栗原国起に譲渡された。通常の土地取引とも言われるが、古賀善次・花子夫妻の墓は、大宮市・普門院にある栗原家の墓の中に作られているので、古賀夫妻と栗原家には、特別な関係があったのだろう。

古賀家の墓は福岡県八女市にあり、古賀善次には嫡出でない子があり、古賀花子にも相続人が有ったのだから、古賀夫妻と栗原家の関係は、よほどのものだったのだろう。栗原国起は、かつて、事件などを裏で処理して報酬を得るフィクサーの菅原通済の運転手をしていた関係で、石原慎太郎と親しかったようだ。

南小島・北小島は一時、栗原弘行(国起の弟)の所有になったことがある。また、久場島(黄尾嶼)は栗原和子(国起の妹で養女)の所有。2012年9月、日本政府は、魚釣島・南小島・北小島の3島を20億5千万円で購入した。

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 7 日本の裏切り行為

1932年に古賀が政府から払い下げを受けた時の購入金額は、笹川平和財団の島嶼資料センターによると、31円50銭(出典:八重山郡石垣町大字登野城処分調査書)とのことだ。今の金額にすると700万円ぐらいだろう。

週刊ポスト(2012.5.25)によると、1972年に古賀氏から栗原氏へ売り渡されたときはの価格は約4600万円だった。今の金額に直すと1億円ぐらいだろう。1億円で買ったものを20億円で国に売ったのだから、栗原氏はずいぶん儲けたといえる。

2012年4月に、東京都知事石原慎太郎は尖閣諸島(中国名・釣魚島)の東京都によ石原慎太郎る購入計画を表明した。50年前の日中国交正常化交渉、歴史認識と台湾問題について合意したあと、尖閣問題は、田中角栄、周恩来両首相)が「いまは触れないでおこう」と棚上げすることで暗黙の了解に達したとされる。

このとき自民党の参議院議員だった石原氏は、台湾との断交に反対し、反共(反共産主義)を旗印に党内グループ「青嵐会」を結成した。青嵐会は1978年の日中平和友好条約にも反対し、石原氏は日本外務省の尖閣問題棚上げを「弱腰」と批判し続けた。

石原氏がアメリカの保守系シンクタンク「ヘリテージ財団」の講演で、東京都として尖閣諸島を購入する計画を明らかにしたのは2012年4月のこと。石原氏は「本当は国が買い上げたらいいけどね、国が買い上げるとシナが怒るからね、なんか外務省がびくびくしてやがる」と説明した。

民主党政権の尖閣諸島国有化の動き察知した中華人民共和国は、栗原国起宅を訪問して尖閣諸島買取の話を持ち出したことがマスコミーのニュースとなっていた。これは当然、石原慎太郎東京都知事の耳にも届いていた。

石原氏は、領土問題という妥協不可能なテーマを設定することにより日中関係を緊張・悪化させ、あえて中国から強硬な姿勢を引き出し、「平和ボケした」日本人の国家防衛に対する意識を高めることにあったようだ。野田佳彦

民主党・野田佳彦政権はまんまとその術中にはまり、2019年9月に魚釣島など3島の所有権を国として民間地主から買い上げ、国有化した。この動きに対して中国側は、尖閣問題の棚上げという「暗黙の了解を日本側胡錦濤が一方的に破り、実効支配を強化した」と非難し、それまで控えていた中国公船を大量に尖閣領海に送り込み、中国全土で反日デモを展開するなどの強硬対応に出た。これも石原氏の計算通りだったろう。

9月9日、ロシア・ウラジオストクでのAPEC会場で、胡錦濤中国国家主席が自ら野田首相に近づき、「あれだけ言ったのに、裏切られた」と尖閣国有化を批判した。野田首相も「ちゃんと説明した」と反論したが、胡錦濤氏は「国有化は違法だ」と突っぱねた。

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 8 解決は外交交渉で

中国の尖閣周辺での行動が目立ち始めたのは2008年ごろだった。日本政府の元高官も「中国の対外姿勢が強硬に転じたのが2008年。北京夏季五輪の成功とリーマンショックからの素早い回復を背景に、対外的に強硬な姿勢を示すべきだという軍主導の考え方が中国世論に支持された」と語る。

元高官は「当時の、民主党政権の外交にも問題があった。ロシアのメドベージェフ大統領の北方領土訪問や、李明博韓国大統領の竹島上陸もあり、民主党政権はくみしやすいと思われてしまった。尖閣国有化は、中国にうまく利用された」と語る。

日本政府内では当時、尖閣諸島に対する中国の強硬姿勢に警鐘を鳴らす声もあった。ただ当時の米国は、ブッシュ(子)大統領からオバマ大統領に移っていく時代だった。当時の自衛隊幹部は「私たちの危機感を共有する米軍関係者がいても、ホワイトハウスまで危機感が届かなかった」と語る。

オバマ大統領オバマ大統領が尖閣諸島について「日米安全保障条約第5条の適用対象となる」となると明言したのは、2014年4月の日米首脳会談後の共同記者会見の場だった。都は尖閣諸島の購入資金として2013年1月までに集まった寄付金約14億8500万円のうち、現地調査に掛かった費用を除く約14億800万円を基金とした。国による同島活用事業に充てることしたが、具体的な活用策は決まってない。

2012年9月6日の参議院で「無人国境離島の適切な管理の推進に関する法律案」が継続審議となった。この法案の16条に、「国が当該島の土地等(中略)を取得することが適正かつ合理的であると認められるときは、この法律の定めるところにより、当該土地等を収用することができる」とある。

法案が通れば栗原家の意思に関係なく、尖閣を買い取ることができる。その際の値段はあってないようなもになる。かつて、栗原家は大宮市(現さいたま市)から、自宅の立ち退きを要求されたことがある。提示された補償額があまりに低かったため父は拒否したが、代執行にかけられ1961年に自宅を失ったことがあった。

石原慎太郎都知事がトーンダウンしたのも、この法案「無人国境離島の適切な管理の推進に関する法律案」のせいと思われる。尖閣が収用されたら、管轄権は沖縄県が持つことになる。

領土問題は戦争となる可能性が大である。1972年9月29日は、日中政府が「日本国政府と中華人民共和国の共同声明」に調印した時点へ遡り、今一度当時の交渉を再確認したうえで両国の国交を正常化すべきだろう。

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2 台湾問題は慎重に

 1 対米隷属の日本

安全保障環境が厳しさを増しているなどと称して、台湾周辺での中国との軍事的対立や緊張を岸田文雄自公政権は煽っている。安倍晋三政権時代の戦争法制・集団的自衛権行使容認からさらに一歩進め、敵基地攻撃可能な兵器装備や軍事費をGDP2%にまで拡大する大軍拡に踏み切った。

わが国には多くの政治的政策的課題があり、軍拡などよりも必要性の高い取組に大きな財源が必要であるにもかかわらずである。中国や台湾を巡る情勢は日米のマスコミが報道するように、中国の侵略的態度で本当に「緊迫の度を増している」のだろうか。

むしろ事態は逆で、米国の世界戦略の中で極東が「第二のウクライナ」として位置づけられ、中国というよりも米国の方が軍事的挑発的態度を示していて、対米隷属を続ける日本がそれに追従をしているだけではないだろうか。

台湾には国民党独裁時代を否定できない現実があり、台湾自身を縛る「法統」の具体例を蔡英文挙げると、蔡英文は2016年5月の総統就任式に臨んだ際、声を上げて「中華民国国歌」を唱和した。

「三民主義を我が党の宗とする」というその歌詞は、元々は国民党歌だった。三民主義は国民党を創設した孫文が主唱した社会主義的スローガンである。だから、(台湾の二大政党として国民党と対峙する)民主進歩党員の多くは斉唱を拒否してきた。

総統府で行われる就任式では、孫文の肖像画に向かって宣誓する必要があるが、蔡氏はこれも行った。また、中華民国国旗の左上には太陽に似た紋章が掲げられているが、これも元々は国民党の党章だ。これらの事実は何を物語るのだろうか。

中華民国は、国民党一党独裁下の「法統」に基づくシステムを採用している。1980年代末から90年代にかけての李登輝時代に「民主化し、台湾化した」が、それから30年以上経たいまもなお、「一つの中国」を前提にした憲法と国民党一党独裁時代の「法統」は生き続けている。

民意と相容れない「法統」を、拒否できない台湾の現状は知っておくべきだろう。またそのような現状を知れば、中国側が主張する統一の論理を「非現実的」と、はなから排除することはできなくなるのである。

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 2 煽り立てるマスコミ

台湾人の民意は、米中関係など国際政治をはじめ中国との力関係下でも、永遠に現状維持がトップで28.6%。現状維持し将来再判断が28.3%、現状維持し独立を目指すが25.2%で、いますぐ独立は5.1%、いますぐ統一は1.3%にとどまっている。

李登輝時代の1992年は、台湾人でも中国人でもあるが46.6%でトップ。次いで中国人が25.5%、台湾人は17.6%だった。台湾で政治・社会の民主化が進むと同時に、経済・貿易・文化など多方面で中国との交流が始まった時期に当たる。

それからちょうど30年を経た現在、台湾人は63.7%とトップになり、台湾人でも中国人でもあるは30.4%、中国人に至っては2.4%まで低下した。

中国の呉江浩駐日大使が、着任直後の記者会見で、日本が台湾問題を安全保障政策と結び付ければ、「日本の民衆が火の中に連れ込まれる可能性がある」と語った。中国が日本国民を軍事攻撃することもいとわないという恫(どう)喝(かつ)とマスコミは捉えた。

5月22日「日経新聞」も「産経新聞」「夕刊フジ」も、日本国民を対象にこれほどあからさまな脅しをかけた外国大使はいない。日中平和友好条約第1条第2項は、両国は「すべての紛争を平和的手段により解決」し、「武力又は武力による威嚇に訴えないことを確認」している。この条項を忘れたのだろうかと憤った。

しかも、呉江浩駐日大使の発言に対して鳩山由紀夫が「基本的に同意する」と述べていたと報じられ、マスコミは益々憤慨した。産経新聞は「日本国民よりも中国政府の機嫌をうかがう卑屈な姿勢をとった自身を恥じてもらいたい。」と報道した。

林芳正外相は呉大使本人を外務省に呼び出し、厳重に抗議すべきだ。好ましからざる人物(ペルソナ・ノン・グラータ)として追放するのがふさわしいとの意見も野党議員らから出ていた。しかし、発言内容は最後まで聞かなければ真意が分からない。

呉江浩中国大使の発言は「台湾地区の選挙当選者の、いわゆる就任式が行われているところです。日本からは30名以上の国会議員や要人が出席しているようで、このような行動は公然と台湾の独立勢力に加担するものであり、中日間の4つの政治文書の精神と、日本側がこれまで中国側にした政治的約束鳩山由紀夫に違反しています」というものである。

独自の主張で先の戦争をあおった、マスコミの性根は変わっていない。息子の紀一郎氏は「父の説明によれば父が「基本的に同意する」と述べたのは、中国大使の「日本政府は日中共同声明の通り、いわゆる『一つの中国』を理解・尊重すべきだという発言に対するものだったとのことです」と明かした。

「その上で、父は一部の日本の政治家による訪台が、中国政府にとって挑発行為になってしまうリスクを懸念していると述べていました」と、鳩山由紀夫氏の真意を説明した。まさに正論である。沖縄の基地問題を混乱に導いたが、老化してはいないようだ。

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 3 台湾のことは台湾が解決

台湾の民進党は成立当初から、完全な台湾独立組織です。国連総会2758号決議で中国は一つしかない、台湾は国ではなく、中国の一部であることを明確にしました。いわゆる「2つの中国」で、「あるいは一つの中国、一つの台湾」は存在しません。

中日国交正常化当時、日本政府は一つの中国原則について、中国の立場を十分理解し尊重すると、台湾と非政府間の実務関係を維持することを中国側に厳粛に約束しています。その後の一連の中日の間の政治文書においても、日本側は中国は一つであるとの認識を表明しています

中国政府の台湾問題における立場は一貫しており変わっていません。すなわち、我々は最大の努力を尽くして平和統一を目指す一方、武力行使の放棄も絶対確約しません。この武力行使とは外部勢力の干渉と、台湾独立分裂勢力に対するものであり、決して台湾の同胞達に対するものではありません。

日本側に対しては、中国の主権と領土保全を尊重し、中日4つの政治文書の精神、またこれまでの約束を着実に守るよう改めて要請します、というものです。

日本においては、「日本の民衆が火の中に連れ込まれる」ということに焦点が当てられている。しかしこれには、「日本という国が中国分裂を企てる戦車に縛られてしまえば」との条件が付いている。つまり日本が台湾の独立に軍事的に関与すれば、軍事的反撃を受けるという指摘である。

「一つの中国論」に如何なる対応を取るかは別にして、一つの国家が内政問題と見なしている問題に軍事介入すれば、軍事的反撃を取るのは極めて自然である。「日本という国が中国分裂を企てる戦車に縛られてしまえば、日本の民衆が火の中に連れ込まれることになるでしょう」を否定する、世界の軍事専門家はいないだろう。

日中共同声明は「中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する」としました。

ポツダム宣言第八項では「カイロ宣言ノ條項ハ履行セラルベク」とあり、カイロ宣言は台湾を「中華民国ニ返還スルコト」とある。仮に日本側が台湾問題に関する過去の合意が不都合だと判断するなら、改定の交渉を行えばいい。それをしないのなら、過去の合意を守ることが正しい筋道である。

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 4 台湾有事を煽る政治家

世界は今や米国支配、それに呼応するG7主導の時代は終わったと言っていい。この中いかなる理念が主導するかは模索の中にある。日本もこの中に入るべきか模索しているようだが、実際は逆に米国従属度合いを深めている。

岸田文雄首相の訪米により、自衛隊法改正し日米の統一指令部をつくる動きが加速している。岸田文雄ここでは即応性が求められているが、即応性とは米国戦略の中での即応性である。経済安保にせよ、敵基地攻撃能力にせよ、日本の国益には全く合致しない。

米国の戦術上はある程度短期的に合理性のあるものが追求される。国際的には、台湾海峡、尖閣諸島、南シナ海が紛争の対象となる。おのおのは歴史的に異なる背景を持ち、それぞれに合った対応策が求められる。共通して言えることはいかに紛争にしないか、いかに米国の挑発に乗らないかにある。日本の安全保障論議は扇動に陥っている。

2024年1月10日、訪米中の自民党の麻生太郎副総裁は、米ワシントンで記者団に対し「(台湾海峡有事は)日本の存立危機事態だと日本政府が判断をする可能性が極めて大きい」と述べ、日本は中国の台湾侵攻時に集団的自衛権を発動する可能性が高いという考えを示した。

麻生氏は、台湾海峡有事の際、日本は台湾に滞在する在留邦人を救出する必要があるとして、海自艦船などを派遣する必要があると指摘。「(日本の取り得る措置を)中国は頭によく入れておいてもらわないといけない」と求めた。

2023年8月11日にも、自民党の麻生太郎氏は現職の副総裁として初めて台湾を訪問した際に台北市内で講演し、台湾有事を念頭に「戦う覚悟」が求められていると、対中戦争に備えるべきとも受け取れる発言をした。しかし、中国が台湾へ侵攻する不安はないというのが57%を占める台湾人の民意である。

「大事なことは、台湾海峡を含むこの地域で戦争を起こさせないことだ。抑止力には能力が要る。そして、抑止力を行使する意志を持ち、それを相手に教えておくこと。その三つが揃って抑止力だ」と、対中抑止力の強化を訴えた。

その上で、「今ほど日本、台湾、アメリカをはじめとした有志の国々に強い抑止力を機能させる覚悟が求められている時代はない」「戦う覚悟だ」「いざとなったら、台湾海峡の安定のために防衛力を使うという明確な意思を相手に伝えることが抑止力になる」などと強調した。

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 5 続く危険な発言

抑止力強化のために「戦う覚悟」を強調したのだが、日米台の連携強化の下で対立を強調されれば、中国は「対中戦争を煽る発言」と受け取るだろう。麻生氏は日本政府を代表して講演したわけではないが、政権の中枢を担う自民党副総裁の要職に就いているだけに、発言には重みがある。

2021年7月、麻生氏は講演で「台湾で大きな問題が起きれば、存立危機事態に関係すると言ってもおかしくない。日米で台湾を防衛しなければならない」と述べ、集団的自衛権行使を可能とする安全保障関連法の「存立危機事態」に認定して対処すべきとの見解を提起した。

中国外務省は麻生発言に関して報道官談話を発表し、「日本の一部の政治家」という表現を使って名指しを避けながらも、「台湾海峡情勢の緊張を誇張し、対立と対抗をあおり、中国の内政に乱暴に干渉した」と非難。日本側に厳正な申し入れをし、強く非難したとしている。

米経済紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、台湾有事の際に自衛隊が参戦すべきかどうか、日本のリーダーは公の場での議論を避けていると指摘し、「もし生命の危険を冒してまで台湾を防衛したいかと聞かれたら、90%の日本人が反対するだろう」と述べた識者のコメントを引用している。

しかし、2024年1月11日に麻生自民党副総裁は、「台湾有事は日本の存立危機事態として台湾海峡で戦争となれば日本は潜水艦や軍艦で戦う。台湾の有事は間違い無く日本の存立危機事態だ」と発言している。

ロシアによるウクライナの軍事侵攻、中国の台湾への圧力、頻発する北朝鮮のミサイル発射など、いま世界情勢は危険な動きを見せている。何かあったときに、果たして自衛隊は私たちを守れるのか。自衛隊の能力はどの程度なのだろう。

近年、このままでは自国を守れないと徴兵制を復活させた国がある。それがウクライナ、リトアニア、ジョージア、スウェーデンなどヨーロッパの国々である。復活の理由はロシアの脅威で、ロシアがウクライナのクリミア半島を一方的に併合した事件は、ロシアと地理的に近いヨーロッパの国々に衝撃を与えた。

スウェーデンは、ロシアがバルト海での軍事演習を活発化させたため、スウェーデンに攻めてくるかもしれないという危機感から2018年に徴兵制を復活させた。ウクライナはクリミア半島を占領されただけでなく、親ロシア派勢力が支配する東部の2つの地域が独立を宣言するなど、領土の切り崩しに遭った。

フランスでは、国民奉仕制度を創設して16歳の若者は約1か月間、制服を着て軍施設での合宿や奉仕活動を集団で行うことを義務付けた。フランス政府は、若者たちに国を守る意識を植え付けようと考えているのである。

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 6 軍事力強化は防衛ではない

志願制、徴兵制と人集めの方法は国によっていろいろある。しかし問題は軍事力だ。世界に軍隊を持つ国がたくさんある中で、日本はどのくらい強いのだろうか。トップは中国で、2位がアメリカ、日本は5位に入っている。この順位は本当なのだろうか。

アメリカから購入している最新兵器は、極めて高性能で日本の防衛力を高めてくれる。中国が公表している国防費は1991年度からの30年間で約42倍に達し、これからもどんどん増えるだろう。

兵士の数は、人民解放軍218万5千人、インド軍144万5千万人、アメリカ軍140万人、朝鮮人民軍130万人、ロシア軍101万4千万人、日本の自衛隊25万人。しかし、日本は少子高齢化社会で、兵士となるものは少ない。

このため防衛省はミサイルの能力を大幅に向上させ敵の射程圏外からでも攻撃できる、最新の「スタンド・オフ・ミサイル」開発を目指している。開発がうまくいけば、中国の沿岸部や北朝鮮の主要部を射程に収められるようになる。

「12式地対艦誘導弾」の「能力向上型」としているが、飛行性能を大幅に上げるため大型主翼が取り付けられるなど、事実上の新型ミサイルだと言える。陸(地上)、海(艦艇など)、空(戦闘機など)のいずれからも発射できるようになるらしい。

「12式」は三菱重工業が開発した国産のミサイルである。量産することになれば、撤退企業が相次ぐ国内防衛産業の下支えになるといわれ、自衛隊としても国内に生産基盤があれば調達やメンテナンスが容易だというメリットがある。

ロシアはウクライナ侵略時に3500発以上ものミサイルを撃ち込んだ。もしこれの数が撃ち込まれたら、日本はすべて迎撃できないだろう。万が一、中国や北朝鮮のいずれかがミサイル攻撃を仕掛けてきたらどう対処するのか。

弾道ミサイルを大量に撃ち込む「飽和攻撃」の場合、日本は射程500キロから5500キロの地上発射型の弾道ミサイル・巡航ミサイルを合わせて2000発以上保有しているようだが、すべてを撃ち落とすことは厳しい。

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 7 逆行している日本

北朝鮮は迎撃が難しいとされる極超音速滑空兵器の開発・導入に注力している。自民党の防衛族議員は、「日本の安全を守っていくためには、自衛隊が「盾」の役割を担うだけでは限界がある」と指摘する。

新型スタンド・オフ・ミサイルを含め、全体で新たに数兆円単位の費用がかかるとの見方もあり、恒久的な財源を確保するのか、当面、国債を発行するのかなど、財源のあり方も焦点の1つとなる。

日本政府がことしの防衛白書で中国が軍事活動を活発化させ、台湾との間で軍事的緊張が高まる可能性も否定できないとしていることについて、中国外務省の林剣報道官は「乱暴に中国の内政に干渉し、いわゆる『中国の脅威』を騒ぎ立て、地域情勢の緊張を誇張している。中国は強く不満であり、断固として反対する」と強調した。

たしかに、中国は台湾を掌握するために軍事力を行使していない。中国は平和的統一の方針を堅持し、台湾人が中国寄りとなるようになるよう画策してきた。戦争をせずに和解で丸く収めようとしてきたようだ。アメリカや日本が騒ぐので、軍事力をちらつかせていと見るのが正解だろう。

アメリカの新型迎撃ミサイルシステムを導入には、1基当たりの価格は800億円程度必要で、迎撃ミサイル1発の価格が10億円余りとみられている。ミサイル発射に移動式発射台や潜水艦が使われ、兆候がつかみにくくなっている中、敵基地を攻撃する能力を持習近平つのは現実的ではない。

日本が専守防衛のためにミサイルを配備しても、1発のミサイルで数発のミサイルを迎撃できない。ウクライナへのミサイル攻撃を阻止できず、都市の破壊状況を見れば迎撃しても無意味と分かるだろう。

2022年11月に習近平国家主インドネシア・バリ島で会談したバイデン大統領は、バイデン朝鮮が核実験を繰り返さないよう説得する「義務が」中国にはあると習氏に伝え、中国側が差し迫って台湾を侵攻しようとするとは、私は思わない」と答えた。

「新たな冷戦の必要はないと、私は確信している。そうした事態に決してならないよう、中台間の問題の平和的な解決を望んでいると(習氏に)はっきり伝えた。彼は私が言っていることを理解し、私は彼が言ってることを理解したと確信している」と述べた。

2022年12月16日、日本政府は今後5年間で防衛費を現行計画から1.6倍の43兆円に拡大すると閣議決定した。中国や北朝鮮の脅威を理由としている。装備の取得や施設の整備のため新たに契約する金額は、現行の2.5倍の約43兆5千億円となる。

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 8 麻生副総理は引退を

麻生太郎副総理兼副大臣が「中国が台湾に侵攻したら日米で台湾を防衛しなければならない」と、2021年7月5日の自民党議員の政治資金集めパーティーで述べた。これは台湾有事の際には日本も中国と戦争をするという意思表示である。

この麻生副総理の発言に対して、中国外交部の趙立堅報道官が7月6日の記者会見で早速、「強く不満を持ち、断固として反対」「台湾問題に干渉することは決して受け入れない」と、激しい反発を表明した。

現役の閣僚しかも総理経験者で、かつ第二次安倍政権以来ずっと副総理の要職についている人物による、公の場での発言であり、「個人的見解」では済まされない重大な影響力をもつ。麻生太郎

この麻生副総理の発言に対して、中国外交部の趙立堅報道官が7月6日の記者会見で早速、「強く不満を持ち、断固として反対」「台湾問題に干渉することは決して受け入れない」と、激しい反発を表明した。

麻生副総理が日本には中国に対する侵略の歴史があり、加害者としての過去をもつことをまったく自覚していないというのは、中国側の言い分の通りであろう。しかし、そんな人間ばかりが現代の日本人である、と思われるのは誤解であり心外である。

「台湾は非常にデリケートで微妙なバランス」という微妙な認識を、十分にわかっていない頑迷な政治家の典型が麻生副総理である。麻生副総理の今回の発言は、日本という国家を危うくするものであり、もはやその存在や発言自体が「存立危機事態」とさえいえるのではないだろうか。最近は失言も目立ち、老化が進んでいることは隠しようもない。

政界からの引退を、国民は声をあげて望むべきである。日中国交正常化については、台湾は中華人民共和国の領土の不可分の一部であること、日本が口をはさむのは内政干渉である。外交交渉で田中角栄と周恩来の話し合いを再確認すべきである。

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参考文献:孫崎亨(すぐる)元外務省国際情報局長の講演内容を要約編集して、私見を加えました。