1 ウクライナ戦争の真実
1 決断を誤った大統領
アメリカ大統領選挙には民主党からバイデン氏が推薦され、共和党からトランプ氏が推薦された。無所属のロバート・ケネディ・ジュニア氏も立候補し、6月27日前後に「バイデンの外交戦略は戦争をすることだ」という論文を国内紙に掲載した。
日本では報道されていないが、ロバート・ケネディ・ジュニア氏は「ウクライナ戦争というのは、戦争を継続するというアメリカのための代理戦争なのだ。バイデン大統領は二つの謝罪をすべきだ。
偽りの口実で醜い代理戦争をするように誤解させたアメリカ国民に対し、米国の戦略的利益のためにこの戦争に誘導され、国を破壊されたウクライナ人にお詫びをすべきだ」と述べていた。
故安倍晋三前総理は、「ゼレンスキーはウクライナがNATOに加盟しないことを約束し、東部の二州に高度の自治権を与えることができた。しかしゼレンスキーは断った」。ゼレンスキー大統領が決断していれば、ウクライナ全土を荒廃させる戦争は起きなかったと発言していた。
しかも、「プーチンの意図は、NATOがウクライナまで拡大することは絶対に許さない。東部二州の論理でいえば、かってボスニア・ヘルセゴビナやコソボが分離独立したさいに、西側は擁護したではないか。プーチンとしては領土的野心ではなく、ロシアの安全の確保から行動を起こしていると思います。」と解説していた。
この発言は、27回以上プーチンと合ってウクライナ問題も議論してきた阿部元総理だから言えることだ。ウクライナの惨状を取り上げているNHKですら、阿部前総理の発言を取り上げることはしない。プーチンと合っている人の話を聞かない。これが報道の現実なのだ。
なぜなら、ウクライナへの軍事支援を強化するなかで、これに同調するとサミットでロシアを糾弾した岸田首相に、背後から弓を引くに等しいと報道各社は考えているからだ。このように、顔色を見て中国や北朝鮮のことに対しても、正しいことは報道されてこなかった。
2 東部二州の独立問題
ウクライナの状況を知っているだろうか。ウクライナ語を母国語とするのは、クリミア自治共和国で10.1%、ドネツク州24.1%、ルガンスク州30%であった。他は基本的にロシア語を母国語とする人々であった。こうした多民族が同時に住む場合には、他民族を公平に扱うために代表的なのはカナダが採用している方法である。
カナダには英語系民族が多ので英語文化を優先すると、フランス語系のケベック州の民族が孤立する。そこでカナダが政策は、英語と比較的少数のフランス語を共に公用語としている。
ところがウクライナは厳しいウクライナ政策を推進し、ロシア語を母国語とする人々を公的機関から排除した。ロシア語を母国語とする人々は二等国民となり、あまりの差別にそれならばとロシア系住民が独立を目指してロシア併合を望んだ。
これをウクライナ政府が軍事力で制圧し、ロシア系住民がロシアに助けを求めロシアが呼応した。特定地域の帰属をどうすべきかという問題に、住民の意思を最優先するという考えを取るのであれば、一方的にロシアを非難できない。
従来からプーチンは国際法に基づき、国連憲章第1条第2項「人民の同権及び自決の原則の尊重に基礎をおく諸国間の友好関係を発展させること並びに世界平和を強化するために他の適当な措置をとること」での「民族自決」を主張していた。
経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約第1条1で「すべての人民は、自決の権利を有する。この権利に基づき、すべての人民は、その政治的地位を自由に決定し並びにその経済的、社会的及び文化的発展を自由に追求する。
3.この規約の締約国(非自治地域及び信託統治地域の施政の責任を有する国を含む)は、国際連合憲章の規定に従い、自決の権利が実現されることを促進し及び自決の権利を尊重する」に、プーチンは言及していた。
2015年に東部二州にも自治を与えるというミンスク合意をウクライは破り、ウクライナ正規軍とアゾレフ大隊対親ロシア軍の戦闘で13,000人が死亡し、ウクライナがトルコから購入した無人機で東部二州を攻撃し20,000人を殺傷した。
3 ソ連との約束
1990年1月31日、ドイツの統一前にソ連は再び統一されればドイツ全域にNATOの支配が拡大することに懸念した。ドイツが統一されればまたソ連へ侵攻してくるのではないかと恐れたのだ。
西欧首脳や米国首脳は「NATOは当方に拡大しない」と説明した。ベーカー、ブッシュ、ゲンジャー、コール、ゲイツ、ミッテラン、サッチャー等は、NATOの東方拡大に反対する安全保証上の確約をした。
1990年2月9日、ベーカー米国国務長官とシュワルナゼソ連外相との会談記録で、ベーカはソ連外相に中立的(どのブロックにも属さない)ドイツは疑いなく自己の独自の核を持つであろう。
しかし、変化したNATO内のドイツは独自の核兵器を必要としないと確約した。シュワルナゼソ連外相は、NATAの管轄ないしNATO軍は、東方に動かないという鉄壁の保証が存在しなければならないとした。
1990年2月9日、ゴルバチョフとベーカの会話のメモには、「ブッシュが1989年12月マルタ会談で述べたことを繰り返し、ベーカーはゴルバチョフに語った。「もし我々がNATOの一部となるドイツに留まるなら、NATO軍の管轄は一インチたりとも東方に拡大しないと確約した。
1990年2月10日、ゴルバチョフとコール会談のメモランダムに、ウクライナがNATO加盟を申請するのはいい。しかし、NATO軍は「東方拡大をしない」とロシアに約束した。これが冷戦後の安全保証の基本だったのである。これを米国が変えようとしたので緊張が生まれたのである。
ケナンは「NATOの拡大は、冷戦後の時代全体におけるアメリカの政策の最も致命的な誤りであり、ロシアがパートナーになることはなく、敵であり続けるだろう。
元駐ソ連米国大使は「NATOの拡大は冷戦終結後、最も重大な戦略的失敗」、ミアシャイマーは「ウクライナのNATO加盟問題はロシアの国家安全保障上に革新的利益にとっても重要であるとした」、コーエンは「もしNATO軍をロシアの国境に向かわせれば、明らかに状況が軍事化する。ロシアは引き下がらないだろう」と述べた。
キッシンジャーは「ウクライナはNATOに加盟すべきではない。ウクライナを東西対立の劇場にする。彼はウクライナの東西対立の一部として扱うことは、ロシアと西側、特にロシアとヨーロッパを強力的な国際システムに引き込むための見通しを何十年もとん挫させるだろう」と述べている。
4 ブラジル前大統領の言葉
プーチンはウクライナに侵入すべきではなかった。しかし、罪を犯しているのはプーチンだけではない。米国もEUも有罪である。ウクライナ侵入の理由はなんでしたか。米欧は「ウクライナはNATOに加盟しない」というべきだった。それで問題は解決したでしょう。
もし私が大統領だったら、戦争は解決策ではないと米独仏首脳に電話を掛けた。私はウクライナ大統領がテレビで、拍手喝さいを受け、すべてのヨーロッパ国会議員から絶賛されたのを見ています。この男はプーチンと同じくらい戦争の責任があります。
なぜなら、戦争では罪を犯した者は1人だけではないからです。いま、ウクライナ大統領は「さあ、NATOの事業について、EU加盟について話すのをやめましょう。しばらくの間、最初にも戻ってもう少し話し合いましょう」ということができるのです。
ゼレンスキーは戦争を望んでいました。もし彼が戦争を望まなかったら、彼はもう少し交渉したでしょう。私は誰もが平和の創造を助けようとしているとは思いません。人々は戦争を奨励しています。
あなたはこの男、ゼレンスキーを励ましています。私達は真剣な会話をする必要があります。ゼレンスキーさん、あなたは素敵なコメディアンでした。あなたがテレビに出演するたびに、戦争するようなことはしないようにしましょう。
バイデンが、ロシアとウクライナの間の戦争について正しい決定を下したとは思いません。米国には多くの政治的影響力があります。そして、バイデンはそれを先導するのではなく、戦争を回避することができたでしょう。彼はもっと話し、もっと参加することができたでしょう」。
2月28日にイギリスのガーディアン紙は、NATOの拡大は戦争になると警告した。我々が米国の傲慢さの対価を払っていると題して「ロシアのウクライナ攻撃は侵略戦争であり、最近の展開ではプーチンは主たる責任を負う。だが、NATOのロシアに対する傲慢で耳持たぬ対ロシア政策は同等の責任を負う」。
これが無視された。ロシアとウクライナの戦争は、国際法に基づく民族自決の戦いであった。日本ではほとんど報道されていないこのような経緯を理解する必要がある。歴史で合意されていればそこが出発点なのだ。