はげちゃんの世界

人々の役に立とうと夢をいだき、夢を追いかけてきた日々

第22章 おかしな人々

ウクライナへロシア軍が侵攻して、建物破壊や人命が失われている。なぜ、人命軽視が平然と行われているのだろう。ロシアの言い分は、ウクライナはロシア語を使う住人の集団抹殺を目指しているからという理由が浮かび上がった。

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1 ウクライナ

 1) ウクライナという国

日本外務省の資料によると、面積は603,700平方キロメートルで日本の約1.6倍、人口はクリミア半島を除くと4,159万人、首都はキエフで、言語はウクライナ語が国家語、他ロシア語などがある。

国民は、ウクライナ人77.8%、ロシア人17.3%、ベラルーシ人0.5%、他にモルドバ人、クリミア・タタール人、ユダヤ人等である。2019年5月からヴォロディミル・ゼレンスキー大統領が元首となっている。

ウクライナの近代史を見ると、2013年11月にヤヌコーヴィチ政権がEUとの連合協定の交渉プロセスの停止を決定したことにより、欧州統合支持者や政権の汚職に反対する市民による大規模反政府デモが発生した。

特に2014年2月18日から20日にかけては100名以上の死者を出す大規模衝突に発展し、ヤヌコーヴィチ大統領のロシアへの亡命を受け、ヤツェニューク首相による新政権が発足した。

同3月、クリミア自治共和国において「共和国政府」による「住民投票」の違法な実施を受け、ロシアはクリミアを「併合」したがウクライナ政府はこれをロシアの武力による違法占拠とし承認しない立場を発表した。

その後、東部でも情勢が不安定化して武装勢力等が地方行政府各施設を占拠したことを受け、ウクライナ政府軍と武装勢力の戦闘が開始された。他方、同5月に大統領選挙が繰り上げ実施され、6月にポロシェンコ元経済発展・貿易相が大統領に就任した。

同12月に第2次ヤツェニューク内閣組閣。しかし、その後、与党連合内で足並みが揃わなくなる例が増加し、2016年4月継続的な組閣交渉の末、ヤツェニューク首相が辞意を表明し、フロイスマン最高会議議長を新たに首相とする新内閣が発足した。

2019年3月の大統領選挙で現職のポロシェンコ候補と新人のゼレンスキー候補が残り、同4月の決選投票でゼレンスキー候補が7割以上の得票率で勝利し、同5月に大統領に就任した。

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同7月の繰り上げ最高会議選挙でゼレンスキー大統領率いる国民奉仕者党が単独過半数の議席を獲得し、同8月にホンチャルク新内閣が組閣されたが、2020年3月ホンチャルク首相が辞表を提出してシュミハリ副首相を新たに首相とする新内閣が発足した。

2014年6月のポロシェンコ大統領就任以降、ウクライナ政府はより一層欧州統合路線を推進しEUとの連合協定署名を実現した。2016年1月からはEU・ウクライナ間で深化した包括的自由貿易協定も暫定的に適用が開始された。

クリミア併合及び東部情勢の不安定化によりロシアとの関係は急速に悪化し、2014年9月5日、同月19日及び2015年2月12日、ウクライナ・露・OSCEにより停戦・政治解決を目指すミンスク諸合意が署名され協議が継続されている。

2019年5月に誕生したゼレンスキー政権は、ポロシェンコ前政権の親欧州路線を継続しつつ、ロシアとの対話の用意がある等表明し、同年12月にはおよそ3年半ぶりとなるノルマンディ・フォーマット首脳会合が実現した。

2020年7月22日には停戦合意が実現し停戦違反は大幅に減少した。2021年4月前半及び10月後半以降、ウクライナ国境付近における露軍のさらなる増強が確認され懸念が高まる等、ウクライナ情勢は不安定な状況が続いている。

東部情勢悪化以降一時的動員を定期的に実施しつつ、徴兵制を復活させる等国防力の強化を推進した。2019年2月の憲法改正により、将来的なNATO加盟を目指す方針を確定させた。

ウクライナ国防省が優先的に取り組んでいる課題は、①東部地域における武装勢力等への対応、②ウクライナ軍のNATO軍標準化に向けた軍改革であり、NATO加盟国及びパートナー国等の各種支援(装備品の供与、教育・訓練支援、戦傷者に対する医療支援、軍改革に係る助言等)を受け、軍のNATO軍標準化に向け着実に取り組んでいる。

同時に、国内における多国籍軍参加による総合演習の計画及び海外演習への積極的な参加を通じ、パートナー国との防衛協力の進展を図っている。ウクライナ人は騙された方が悪いという考え方をするそうだ。

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 2) 多すぎるもめごと

ユーラシア研究所の中澤孝之研究員によると、イスラエルにおける民族浄化と同時進行しているのが、ウクライナにおける民族浄化である。しかし、イスラエルと違ってウクライナの民族浄化は大手メディアからは黙殺されたままである。

オーストラリア政府は14日、2014年にマレーシア航空機がウクライナ上空で撃墜された事件で、ロシアの責任を追及するためオランダと共同で国際民間航空機関(ICAO)を通じた法的措置に着手したと発表した。

ドネツク州の親露派武装勢力「ドネツク人民共和国(DNR)」による攻撃であった可能性が高いと考えられた撃墜事件では、ロシア軍のミサイルが使われたとされ豪州市民ら38人を含む乗員乗客298人全員が死亡した。

2001年にはDNRがウクライナ軍機とマレーシア航空機を誤認して攻撃したのではないかという推測される。同じ年に、訓練中のウクライナ軍がロシアのシベリア航空機を撃墜、乗員・乗客78名が死亡した(ただし、ウクライナ軍は関与を否定)。

高高度を飛行中の旅客機の場合、ミサイルを回避したり、誘導システムに妨害を掛けるなどの手段が存在しないのはもちろん、ひとたびミサイルの直撃を受けると戦闘機のような脱出装置がないため、ほぼ自動的に乗員・乗客が全員死亡という結果になりやすい。。

今まで大手メディアがイスラエルにおける民族浄化をこれだけ大きく取りあげたことがなかった。しかし、東ウクライナの住民に対する民族浄化ぶりは、パレスチナ人が受けている仕打ちよりも負けず劣らず凄惨なものだからである。

1983年に大韓航空007便がソ連の戦闘機に撃墜された際には、ソ連側は007便を米国のスパイ機だと考えていたフシもある。特定の条件が重なれば、非武装の民間機と言えども攻撃を受けるということは充分にあり得る。

ドイツによるホローストを思い出させるウクライナ東部でのジェノサイド事件は、2014年7月のマレーシア航空機撃墜事件と同様、うやむやのうちに闇に葬られ去る気配が濃厚のようである。

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 3) 昔の約束を忘れるな

プーチン大統領の主張では1990年に東西ドイツが統一する際、東ドイツに駐留していたおよそ10万人のソビエト軍を撤退させるために、アメリカのベーカー国務長官がゴルバチョフ書記長にNATOを東に拡大しないという趣旨の約束をしたという。

NATOはもともと東西冷戦時代にソビエトに対抗するために、アメリカなどがつくった軍事同盟である。当時、東欧諸国などの多くが経済的に豊かだった民主主義陣営に入ることを望んでいて、その入口となったNATOへの加盟を望む国が相次いだ。

1999年にポーランドやチェコ、ハンガリーが正式に加盟。また、2004年にバルト3国などが加盟した。こうした動きを「東方拡大」と呼ぶ。また、ウクライナやモルドバ、ジョージアでも欧米寄りの政権が誕生し、NATOに接近する姿勢を示している。

ロシアはこれまで、西側から陸上を通って攻め込まれてきた歴史があるため、安全保障の観点から東欧諸国を「緩衝地帯」と考える意識が強い。NATOの東方拡大に強い抵抗感があり、東欧諸国がNATOに加盟することも軍事施設を設けることを嫌がる。

ロシアと隣接するウクライナ東部はロシア語を話す住民が多く暮らし、ロシアとは歴史的なつながりが深い地域である。ウクライナ西部はかつてオーストリア・ハンガリー帝国に帰属し、宗教もカトリックの影響が残っていてロシアからの独立志向が強い地域だ。

つまり同じ国でも東西はまるで分断されている状況となっている。8世紀末から13世紀にかけて、今のウクライナやロシアなどにまたがる地域に「キエフ公国=キエフ・ルーシ」と呼ばれる国家があった。その中心的な都市がウクライナの首都キエフだった。

こうした歴史から、同じソビエトを構成した国のなかでも、ロシアはウクライナに対して特に「同じルーツを持つ国」という意識を強く持っていている。もともと30年前までロシアもウクライナもソビエトという国を構成する15の共和国の1つだった。

ソビエト崩壊後15の構成国はそれぞれ独立して新たな国家としての歩みを始めた。これらの国では新しい国旗や国歌が制定された。ソビエト崩壊から30年たっても、ロシアは同じ国だったという意識がありウクライナへの意識は特別なものがあると言われる。

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 4) 日本とウクライナの関係

両国の文化交流は両国大使館の文化広報活動を通じて行われているほか、姉妹都市(京都市とキエフ市、横浜市とオデッサ市)の交流等草の根レベルの交流も行われている。

2017年は日本とウクライナとの外交関係樹立25周年に当たり、同年を「ウクライナにおける日本年」と位置づけ、ウクライナ各地で様々な日本文化行事が開催された。

ウクライナ日本国大使館によれば、日本の援助実績は、有償資金協力1,690億円、無償資金協力98億円、金融支援580億円、チェルノブイリ・核不拡散関連支援218億円、技術協力94億円となっている。

東日本大震災の被災地福島市の渡辺実さん(65歳)のもとへ、5年前にウクライナの子ども達から5枚の絵が届いた。首都キエフのほか、東部のドネツクやルガンスクなど総勢約100人の子どもたちが平和への願いを込めて描いたものである。

東日本大震災から11年目の11日、福島市役所のロビーにウクライナの子どもたちが描いた大きな絵が展示た。日本側には福島第一原発と広島の原爆ドーム、ウクライナ側にはチェルノブイリ原発。2つの国が手をつないだ人たちで結ばれている。

絵は静岡県富士宮市で展示された後、11日に福島や東京など5つの都市でそれぞれ1枚ずつ同時に展示された。平和をイメージする29枚で構成された絵はキエフの姉妹都市の京都市に、虹の中で平和に暮らす地球を描いた絵は長崎市の爆心地公園に。

広島の原爆ドームの対岸に展示されたのは、地球上に存在する5つの大陸が1つの木によって支えられている絵である。それぞれの絵の大きさは20世紀を代表する画家・ピカソが戦争に抗議し、その悲惨さを描いた作品「ゲルニカ」と同じ寸法である。

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2 ロシアの憂慮

 1) ウクライナへの侵攻理由

最新刊『変異する資本主義』(ダイヤモンド社)で、評論家の中野剛志氏はロシアのウクライナへの侵攻理由を次のように解説している。

ロシアがウクライナへ侵攻した理由は、ウクライナがNATOに加盟したらロシアの安全保障が危機に陥るからである。そして、アメリカがロシアに対して経済制裁しかしない理由は、アメリカ本国の安全保障には関係がないからである。

ロシアは1997年から続くNATO(北大西洋条約機構)の東方拡大を阻止するためである。ロシアにしてみれば、歴史的・文化的にも関係の深い隣国ウクライナのNATO加盟は、自国の安全保障に対する直接的な脅威である。

ロシアはウクライナのNATO非加盟を何度も要求してきたし、2014年にはクリミア奪取の挙にも出た。米国は戦争を回避したければ、少なくともウクライナのNATO非加盟を約束し、ウクライナをロシアとの間の地政学的な緩衝地帯とすべきだったろう。

米国がそうしなかったから、ロシアがウクライナへの侵攻を決断したのも当然である。そこまでして米国はNATOの東方拡大を達成したいという強い意志と戦略があったのだろうか。実は、そんなものはまったくなかったようである。

ロシアとの緊張が高まる中で、バイデン政権は軍事対決の選択肢を早々に排除した。これを弱腰と批判する声が米国内にはあるようだが、核大国であるロシアとの戦争のリスクなど冒せるはずがないだろう。

ロシアにとって、ウクライナのNATO加盟阻止は、安全保障上の核心的利益である。国家にとって、自国の安全保障は最重要課題であり、経済的利益よりもはるかに優先度が高いのだ。

しかも、経済制裁の効果は相互破壊的、すなわちロシアだけでなく西側諸国にも打撃を与える。ロシアは、安全保障上の核心的利益を守るために相当の経済的損失に耐える用意がある。、西側諸国がウクライナを守るために耐えられる経済損失はロシアほど大きくはない。

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 2) ロシア系住民の虐殺

2021年9月26日に国連総会へ出席したセルゲイ・ラブロフ外相は、国連での記者会見でドネツク郊外で多数の遺体が発見されたことについて、国連事務総長やOSCEの事務総長そして議長と協議したことを明らかにした。

「ウィーンで発表されたヨーロッパ安全保障協力機構報告によって、彼らは民間人であり拷問による暴行を受けたうえに、事実上、至近距離から射殺された可能性があることがとりあえず確認されている。われわれはこのことに深い憂慮の念を抱いている。

調査の結果が出ないうちは誰をも非難することはできないが、そうした調査が実施されそれも公開の独立した調査となるように強く求めていく」と語った。集団埋葬所が最初に発見されたのは9月23日だった。

この集団埋葬場所はドネツクから北東に35キロ離れたコンムナル村の3か所にあり、地雷や手榴弾の配線を除去していた親露派兵士によって、うっすらと土が盛られた4体の遺体が偶然発見された。

男性が1人、女性が3人で、そのうち1人は妊娠していると見られた。4人とも普段着で手を縛られ、頭部に銃弾の跡があった。2人は頭を切り落とされていたという。

さらに、ドネツク市の北東35キロのニジニャ・クルインカ村の炭鉱場敷地内の2か所で見つかった複数の遺体も、同じく身体に拷問の痕跡があり皮膚にナチスを象徴するカギ十字の焼き印が押されていたと伝えられる。

ドネツク人民共和国のアレクサンドル・ザハルチェンコ首相によれば、9月26日の時点で約40の遺体が発見されていた。この知らせを受けて、遺体発見の翌日9月24日には欧州安保協力機構の特別監視団が現地に赴いた。

監視団によれば8月後半に行われた犯罪の跡を示す証拠が見つかったという。国連人権高等弁務官事務所のウクライナ・モニタリング使節団も、遺体発見直後に現地調査を行った。

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 3) ウクライナ政府は否定

ロシアのチュルキン国連大使は9月30日、国連安保理事会に書簡を送って集団虐殺事件への注意を喚起した。同書簡には「犠牲者たちに懲罰が加えられたのは明白だ。後ろ手に縛られ、頭に銃撃の跡があった」と記されている。遺体のそばには薬莢が見つかった。

これらの市民がウクライナの軍人により無慈悲に殺害されたと推測できる根拠がある。埋蔵場所発見の2日前、ウクライナ政府軍と国家親衛隊の戦闘員らがこの地区を離れている。「彼らは長いあいだこの地区を支配下に置いていた」と述べられている。

一方、ウクライナ政府は国家親衛隊による大量殺戮を否定し、その時期には国家親衛隊の戦闘員は一人もいなかったとしながらも、なにがしかのウクライナ軍兵士たちが当時そこに展開されていたことは認めた。

9月29日「ロシアのFBI」ともいわれるロシア捜査委員会(RIC)は、ウクライナ東部のドネツクおよびルガンスク(ルハンスク)各人民共和国のロシア語使用住民に対するジェノサイド事件の捜索開始を決めた。

2021年10月1日の記者会見で、ロシアのラブロフ外相は「ウクライナ東部のドネツク市の近くで集団埋葬場所が見つかり、400人以上の遺体が発見された。西側のメディアはこの事件について明らかに沈黙している」と言明した。

発表によれば、ウクライナ政府幹部、ウクライナ軍、ウクライナ国家親衛隊、それに右派セクターは両共和国に住むロシア語使用住民の完全抹殺を命令し、彼らの行動によって2500人以上の住民が死亡し、さらには30万人以上の住民が生命の危険を感じ、避難を求めてロシア領内に移住してきたという。

ロシア捜査委員会のウラジーミル・マルキン報道官が10月1日発表したところによれば、ドニエプル志願兵大隊所属のセルゲイ・リトビノフと名乗る兵士を逮捕したところ、住民殺戮を供述したという。

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3 ロシアは調査を要求した

 1) 完全抹殺を命令

この志願兵大隊はキエフ当局が東部での住民抹殺軍事作戦を開始した4月に結成され、のちに国家親衛隊に吸収されたという。殺人罪で告発されたリトビノフは、精神医学テストのためにモスクワに移送された。

なお、アムネスティ・インタナショナルは、ウクライナ志願兵大隊による犯罪と人権侵害にはウクライナ政府に責任があると断定している。しかし、日本のメディアも含め多くの主要な西側の報道機関がこの集団虐殺(ジェノサイド)事件を報じなかった。

昨年4月12日に、米国のジョン・ブレナン中央情報局長官が極秘裏にキエフを訪問した。その2日後に、アレクサンドル・トゥルチノフ大統領代行が、米国とNATOを後ろ盾にして民族浄化作戦開始を承認したことで知られている。

ロシア捜査委員会捜査総局は10月2日、ウクライナ国防相ワレリー・ヘレテイ、参謀総長ビクトル・ムジェンコ、ウクライナ軍第25旅団司令官オレフ・ムイカサ、第93旅団幹部などを名指して、ロシア刑法第357条に基づいて刑事告訴に踏み切った。

犯罪要件は東部における国際法で禁止されている兵器(一斉射撃システム「グラード」「ウラガン」、戦術ミサイル「トーチカU」など無差別攻撃用銃火器)使用とロシア系住民のジェノサイド(集団虐殺)である。

同委員会の調査によれば、ムジェンコ参謀総長、ムイカサ司令官および第93旅団司令官は9月3日から5日の間、ロシア語使用の東部住民の完全抹殺を命令したという。

こうしたウクライナにおけるロシア系住民根絶(民族浄化)作戦の陰には、ウクライナのオリガルヒ(新興財閥)の一人といわれる人物がいる。アルセニー・ヤツェニク首相に任命されたドニエプロペトロフスク知事イゴール・コロモイスキー氏である。

イゴール・コロモイスキー氏は、イスラエルとウクライナ両国の市民権(キプロスのパスポートも所有しているとか)をもち、ジュネーブを生活の拠点にし、推定資産28億ドルで、ウクライナの4番目の富豪といわれている人物である。

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 2) 民間人に対する戦争犯罪

39年ドニエプロペトロフスク州党書記に、さらには戦後の46年同州党第1書記として活躍し、のちの党書記長レオニード・ブレジネフと非常に縁のある場所であった。コロモイスキー氏は2021年4月、武装集団「アゾフ」を組織した。

武装集団「アゾフ」は、右派セクターから流れてきた200人ほどのメンバーで構成されているといわれる。その約半数は犯罪歴があり、2021年6月14日のキエフのロシア大使館襲撃事件の中心的存在だったと伝えられる。

コロモイスキー氏はその他にも、「アイダル」「ドンバス」「ドニエプル」(前記の兵士リトビノフが所属)といった武装グループも作ったとのうわさがある。このコロモイスキー氏に対して今年6月21日、ロシアの検察当局はウクライナのアルセン・アバコフ内相とともに国際手配をした。

さらに7月9日にモスクワ市バスマンヌイ地区裁判所は、これもアバコフとともにコロモイスキー氏不在のまま逮捕命令を出した。ウクライナ東部におけるロシア系住民に対する重大犯罪の容疑である。

また、ロシア捜査委員会は9月2日に、コロモイスキー氏が共同経営している株式会社「エリト・ホールディング」のモスクワの事務所建物を差し押さえた。ウクライナ東部におけるロシア系住民の女性や子供を殺害した犯罪行為に財政支援をした容疑である。

コロモイスキー氏自身、ドネツク、ルハンスク両州に対する活動的な戦闘を宣言し、軍事的費用の拠出を申し出ていた。前述の逮捕された兵士リトビノフは、ルハンスク州で女性や子供を殺害したことを認めるとともに、コロモイスキー個人の基金から報奨をもらったことを自供していたタス通信は伝えた。

ロシア下院議長のセルゲイ・ナルイシキン氏は10月3日、「ウクライナ東部におけるジェノサイドの証拠は、ますます多くの大量墓場の発見で顕著になっている」と述べて、ロシア語使用住民に対するウクライナ当局の「犯罪」を厳しく非難した。

一方、リア・ノーボスチ通信が10月2日ワシントン電で伝えたところでは、米国務省のジェン・サキ報道官は10月1日のプレス・ブリーフィングで、ウクライナ東部で発見された大量の墓地の調査を米国は完全に支持する」と言明したという。

10月5日に開かれたジュネーブでのOSCE会議でロシア代表はウクライナでの民間人に対する戦争犯罪の調査を強く要求した。また、ラブロフ外相は10月6日、ジェノサイドに対する調査が一向に進んでいないことにいらだちを隠さなかった。

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 3) マスコミは完全無視

国連やOSCE、欧州議会など国際機関がウクライナにおける戦争犯罪の調査に共同で進めるよう強く要望した。米国やウクライナ当局の目立った動きは伝えられず、こうした発言も一般のマスコミでは完全に無視された。

ウクライナのオデッサでは2021年5月2日に、反政府デモ隊はサッカー・ファンとユーロマイダン活動家との間で衝突が起き、デモ参加者らは労働組合会館に閉じ込められて放火され、少なくとも48人が死亡し214人負傷するという惨事があった。

事件の責任の所在はいまだに不明で西側マスコミもそれを追及する気配はない。米国のバイデン大統領が2021年4月22日にキエフを訪問したが、それに合わせて政府幹部によるオデッサ工作会議が開かれ、そこに「民族浄化」の黒幕コロモイスキー氏もオブザーバーとして参加していたといわれる。

10月10日にロシアのメディアが報じたところでは、国連難民高等弁務官事務所はウクライナにおける監視ミッションの6度目の報告で、同国南東部での戦闘による死者は3360人であることを明らかにした。

同文書は、「反テロ作戦地帯の居住地への砲撃はウクライナ正規軍によっても、分離主義者(親露派)によっても行われた」としながらも、「居住地への無差別砲撃の事例のいくつかは、ウクライナ軍によるものと見られる」と書かれている。

ロシアの軍事専門家ビクトル・リトフキン氏は次のように報告書の公平さに疑問を呈している。「ウクライナ側の情報に基づいているので完全なデータとは言えない。ウクライナ当局は単純なあるいは明らかな理由で、住民の死者の数を少なくしている。国際社会に悪い面を晒したくないからだ。

次の報告には、東部諸州で活動している欧州安全保障協力機構のデータ、さらには分離主義者らや一般市民の情報も加えるべきだ。今のところ、すべての民間人の墓場が発見されたわけでなく、ドネツクの死体安置所にはまだ身元が確認できていない400人の遺体がある。

すべてこれらの事実は、さらなる分析、文書作成や客観的な結論を必要としている。われわれはウクライナでの戦争犠牲に関する全容を知るとき、それをウクライナ東部の州の住民に対するジェノサイド(大量虐殺)と呼ぶことができるだろう」。

ドネツク人民共和国副首相アンドレイ・プルギン氏は9月22日、ウクライナ東部での死者数について、4000人以上と国連の示した数字を上回る数を挙げていた。

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4 裏切者が消えるロシア

 1) 絶対に許さない掟

ロシアの代表的な反政権活動家であるアレクセイ・ナバリヌイ氏が飛行機の中で意識を失って重体となった。ロシアではソ連崩壊後から政治家や記者の殺害が珍しくない。いまも政権に敵対する人物の暗殺事件が起こっているが、なぜか真相が明らかにならない。

チェチェン紛争でのロシア政府による残虐行為などを批判してきたノーバヤ・ガゼータ紙のアンナ・ポリトコフスカヤ記者が、機内で出された紅茶を飲んで意識不明の重体になり奇跡的に回復したが、2年後に自宅アパートのエレベーター内で射殺体で見つかった。

2006年にロシアの元スパイのアレクサンドル・リトビネンコ氏が亡命先のロンドンで殺害された事件では、ロンドン中心部のホテルのバーで飲んだのが緑茶だった。猛毒の放射性物質「ポロニウム210」が混入されており、その3週間後に死亡した。

2059年にミュンヘンで起きたウクライナの民族主義運動の指導者ステパン・バンデラ氏の暗殺。2078年には、ブルガリアから亡命してソ連圏の言論弾圧などを批判した作家ゲオルギー・マルコフ氏がロンドンで毒を仕込んだ傘で刺されて殺された。

ソ連が崩壊してロシアになってからも、2004年にもチェチェンのヤンダルビエフ元大統領代行がカタールの首都ドーハで、乗車中の車を爆破されて死亡。一時より減ったとは言え、最近も政権の関与が疑われる事件が続いている。

2015年に野党指導者ボリス・ネムツォフ氏が、モスクワのクレムリンを目の前に望む橋で銃撃されて殺害された事件。実行犯として有罪となったのはチェチェン共和国駐在の内務省軍副隊長らだったが、背後関係が不明なまま捜査に幕が引かれてしまった。

2018年に英国の商業施設のベンチで元ロシア軍情報機関大佐セルゲイ・スクリパリ氏と娘ユリアさんが意識不明で発見された事件でも、旧ソ連で開発された神経剤「ノビチョク」が使用され、容疑者らは「ロシア軍参謀本部情報総局の将校」と認定した。

暗殺の目的を「対立する人物への警告や見せしめの意味もある」とみる専門家もいる。しかも、ロシアの情報機関には「裏切り者は絶対に許さない」という掟があるとされる。

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 2) 暗殺は権力者の武器

1988年からソ連の国家保安委員会(KGB)に勤務し、ソ連崩壊後も後継組織でテロ対策や組織犯罪対策部門に所属したリトビネンコ氏は、約300人が死亡したモスクワの高層アパート爆破事件について「チェチェン武装勢力によるテロではない。チェチェン侵攻の口実を作ろうとしたプーチンとFBSの自作自演だった」と指摘した。

こういった「裏切り者」への嫌悪感は、一般のロシア国民の中にも多かれ少なかれ、存在している。スクリパリ氏の暗殺未遂事件を伝える記事に国営メディアがつけた見出しは「裏切り者の元スパイが毒を盛られた」だった。

CIA(米中央情報局)といった他の国の情報機関なども暗殺事件を企ててきた過去がある。いまも国内外で反政府派が暗殺され、真実が判明しないという国はロシアに限られる。選挙が近づくと、政治家が命を奪われることもあった。

ほかに大勢が殺されたのが銀行員。アングラマネーを扱うことで一獲千金のチャンスを得た一方、マネーロンダリングなどに失敗すると、容赦なく責任を問われた。1年に百人以上が殺されたという報道もあった。

自国の国民どころか児童にも容赦はない。ロシアはウクライナ侵略を開始してから1週間目にロシアで反戦を訴えた者は50都市で計約7000人が逮捕、拘束された。小学校低学年とみられる3人の児童が連行され、護送車に押し込められた。

プーチンを擁護するロシア国民たちは、現実を見ることを否定し続けている。その一方で、努力して情報を手にして戦争反対を訴えるロシア国民も少なからずいる。だがそれには代償が伴う。サンクトペテルブルクで反戦デモに参加して警官に逮捕された。

ロシア出身の資産家である Alex Konanykhin 氏が、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領を「憲法違反で大統領になった戦争犯罪者」と非難し、身柄を確保した人に100万ドル(約1億1500万円)の賞金を支払うとSNSに投稿した。

「私は憲法の定めるところに従い、ロシアの法律と国際法の下でプーチンを戦争犯罪者として逮捕した者に100万ドルを支払うことを約束します。プーチンはロシア国内にある集合住宅を爆破する特殊作戦により政権を獲得し、その後自由選挙を排除して反対する人を殺害するという憲法違反を犯したので、ロシアの大統領とは認められません」。

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5 日本も戦争に加担

 1) 日本の態度に不信感

日本政府は26日、ロシア軍のウクライナ侵攻を受けた経済制裁の一部を発動した。ロシア政府による新規ソブリン債(国債、政府機関債など)の日本での発行・流通禁止などを岸田文雄首相が23日に表明した項目が中心である。

発動したのはロシア政府による日本での証券新規発行・流通禁止、ウクライナ東部の親露派支配地域「ドネツク人民共和国」「ルガンスク人民共和国」(ともに自称)の議長・閣僚ら関係者24人の資産凍結、2地域との輸出入禁止など。

追加制裁のロシア3銀行の資産凍結のうち、バンク・ロシヤへの措置を3月28日から実施する。ロシアへの輸出管理も強化し、北朝鮮やアフガニスタンなどと同等の厳格な取り扱いとする。

軍事転用が可能な物品や技術の輸出に関し、継続的な取引先への輸出は一定期間分をまとめて政府が審査していたが、今後は個別の契約ごとに審査して厳格化する。いずれも外為法に基づく制裁。また2地域関係者への査証(ビザ)の発給は25日までに停止した。

日本のこれらの措置は本当に正しいものだろうか。ロシアのウクライナへの侵攻は、セルゲイ・ラブロフ外相が国連で「ヨーロッパ安全保障協力機構報告によって拷問による暴行を受けたうえ、至近距離から射殺された可能性があると確認されている」とした。

しかも「調査の結果が出ないうちは誰をも非難することはできないが、そうした調査が実施されそれも公開の独立した調査となるように強く求めていく」と表明していた。その後の調査で、発見された遺体は次第に増え2500人にまで登った。

なぜ武器を持たない民間人がこのように殺されたのだろうか。そこには西側のロシア系住民根絶(民族浄化)作戦があり、アレクサンドル・トゥルチノフ大統領代行が、米国とNATOを後ろ盾にして民族浄化作戦開始を承認したことで知られている。

日本政府も日本のマスコミもこれらを公表していない。国民の目を他の事象にそらしてロシア系住民根絶を黙認していたことになる。戦争反対や自衛隊の海外派遣に反対を唱えているマスコミは、なぜこのような残虐行為に目をつぶっているのだろう。

原爆の放射能汚染と戦争による徹底破壊に苦しんだ日本は、なぜロシアの進攻を食い止めるために仲介の労を取らなかったのだろう。ロシア系住民根絶を黙認するより、人類みな兄弟と世界平和に貢献することこそ日本が選択すべき道だったのではないだろうか。

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参考文献:ウクライナの大虐殺を報じない日本のマスコミ(ユーラシア研究所中澤孝之研究員)、変異する資本主義(中野剛志、ダイヤモンド社)、GIGAZINE(株式会社OSA)、YAHOO!ニュース、など。