1 ウクライナ
1) ウクライナという国
日本外務省の資料によると、面積は603,700平方キロメートルで日本の約1.6倍、人口はクリミア半島を除くと4,159万人、首都はキエフで、言語はウクライナ語が国家語、他ロシア語などがある。
国民は、ウクライナ人77.8%、ロシア人17.3%、ベラルーシ人0.5%、他にモルドバ人、クリミア・タタール人、ユダヤ人等である。2019年5月からヴォロディミル・ゼレンスキー大統領が元首となっている。
ウクライナの近代史を見ると、2013年11月にヤヌコーヴィチ政権がEUとの連合協定の交渉プロセスの停止を決定したことにより、欧州統合支持者や政権の汚職に反対する市民による大規模反政府デモが発生した。
特に2014年2月18日から20日にかけては100名以上の死者を出す大規模衝突に発展し、ヤヌコーヴィチ大統領のロシアへの亡命を受け、ヤツェニューク首相による新政権が発足した。
同3月、クリミア自治共和国において「共和国政府」による「住民投票」の違法な実施を受け、ロシアはクリミアを「併合」したがウクライナ政府はこれをロシアの武力による違法占拠とし承認しない立場を発表した。
その後、東部でも情勢が不安定化して武装勢力等が地方行政府各施設を占拠したことを受け、ウクライナ政府軍と武装勢力の戦闘が開始された。他方、同5月に大統領選挙が繰り上げ実施され、6月にポロシェンコ元経済発展・貿易相が大統領に就任した。
同12月に第2次ヤツェニューク内閣組閣。しかし、その後、与党連合内で足並みが揃わなくなる例が増加し、2016年4月継続的な組閣交渉の末、ヤツェニューク首相が辞意を表明し、フロイスマン最高会議議長を新たに首相とする新内閣が発足した。
2019年3月の大統領選挙で現職のポロシェンコ候補と新人のゼレンスキー候補が残り、同4月の決選投票でゼレンスキー候補が7割以上の得票率で勝利し、同5月に大統領に就任した。
同7月の繰り上げ最高会議選挙でゼレンスキー大統領率いる国民奉仕者党が単独過半数の議席を獲得し、同8月にホンチャルク新内閣が組閣されたが、2020年3月ホンチャルク首相が辞表を提出してシュミハリ副首相を新たに首相とする新内閣が発足した。
2014年6月のポロシェンコ大統領就任以降、ウクライナ政府はより一層欧州統合路線を推進しEUとの連合協定署名を実現した。2016年1月からはEU・ウクライナ間で深化した包括的自由貿易協定も暫定的に適用が開始された。
クリミア併合及び東部情勢の不安定化によりロシアとの関係は急速に悪化し、2014年9月5日、同月19日及び2015年2月12日、ウクライナ・露・OSCEにより停戦・政治解決を目指すミンスク諸合意が署名され協議が継続されている。
2019年5月に誕生したゼレンスキー政権は、ポロシェンコ前政権の親欧州路線を継続しつつ、ロシアとの対話の用意がある等表明し、同年12月にはおよそ3年半ぶりとなるノルマンディ・フォーマット首脳会合が実現した。
2020年7月22日には停戦合意が実現し停戦違反は大幅に減少した。2021年4月前半及び10月後半以降、ウクライナ国境付近における露軍のさらなる増強が確認され懸念が高まる等、ウクライナ情勢は不安定な状況が続いている。
東部情勢悪化以降一時的動員を定期的に実施しつつ、徴兵制を復活させる等国防力の強化を推進した。2019年2月の憲法改正により、将来的なNATO加盟を目指す方針を確定させた。
ウクライナ国防省が優先的に取り組んでいる課題は、①東部地域における武装勢力等への対応、②ウクライナ軍のNATO軍標準化に向けた軍改革であり、NATO加盟国及びパートナー国等の各種支援(装備品の供与、教育・訓練支援、戦傷者に対する医療支援、軍改革に係る助言等)を受け、軍のNATO軍標準化に向け着実に取り組んでいる。
同時に、国内における多国籍軍参加による総合演習の計画及び海外演習への積極的な参加を通じ、パートナー国との防衛協力の進展を図っている。ウクライナ人は騙された方が悪いという考え方をするそうだ。
2) 多すぎるもめごと
ユーラシア研究所の中澤孝之研究員によると、イスラエルにおける民族浄化と同時進行しているのが、ウクライナにおける民族浄化である。しかし、イスラエルと違ってウクライナの民族浄化は大手メディアからは黙殺されたままである。
オーストラリア政府は14日、2014年にマレーシア航空機がウクライナ上空で撃墜された事件で、ロシアの責任を追及するためオランダと共同で国際民間航空機関(ICAO)を通じた法的措置に着手したと発表した。
ドネツク州の親露派武装勢力「ドネツク人民共和国(DNR)」による攻撃であった可能性が高いと考えられた撃墜事件では、ロシア軍のミサイルが使われたとされ豪州市民ら38人を含む乗員乗客298人全員が死亡した。
2001年にはDNRがウクライナ軍機とマレーシア航空機を誤認して攻撃したのではないかという推測される。同じ年に、訓練中のウクライナ軍がロシアのシベリア航空機を撃墜、乗員・乗客78名が死亡した(ただし、ウクライナ軍は関与を否定)。
高高度を飛行中の旅客機の場合、ミサイルを回避したり、誘導システムに妨害を掛けるなどの手段が存在しないのはもちろん、ひとたびミサイルの直撃を受けると戦闘機のような脱出装置がないため、ほぼ自動的に乗員・乗客が全員死亡という結果になりやすい。。
今まで大手メディアがイスラエルにおける民族浄化をこれだけ大きく取りあげたことがなかった。しかし、東ウクライナの住民に対する民族浄化ぶりは、パレスチナ人が受けている仕打ちよりも負けず劣らず凄惨なものだからである。
1983年に大韓航空007便がソ連の戦闘機に撃墜された際には、ソ連側は007便を米国のスパイ機だと考えていたフシもある。特定の条件が重なれば、非武装の民間機と言えども攻撃を受けるということは充分にあり得る。
ドイツによるホローストを思い出させるウクライナ東部でのジェノサイド事件は、2014年7月のマレーシア航空機撃墜事件と同様、うやむやのうちに闇に葬られ去る気配が濃厚のようである。
3) 昔の約束を忘れるな
プーチン大統領の主張では1990年に東西ドイツが統一する際、東ドイツに駐留していたおよそ10万人のソビエト軍を撤退させるために、アメリカのベーカー国務長官がゴルバチョフ書記長にNATOを東に拡大しないという趣旨の約束をしたという。
NATOはもともと東西冷戦時代にソビエトに対抗するために、アメリカなどがつくった軍事同盟である。当時、東欧諸国などの多くが経済的に豊かだった民主主義陣営に入ることを望んでいて、その入口となったNATOへの加盟を望む国が相次いだ。
1999年にポーランドやチェコ、ハンガリーが正式に加盟。また、2004年にバルト3国などが加盟した。こうした動きを「東方拡大」と呼ぶ。また、ウクライナやモルドバ、ジョージアでも欧米寄りの政権が誕生し、NATOに接近する姿勢を示している。
ロシアはこれまで、西側から陸上を通って攻め込まれてきた歴史があるため、安全保障の観点から東欧諸国を「緩衝地帯」と考える意識が強い。NATOの東方拡大に強い抵抗感があり、東欧諸国がNATOに加盟することも軍事施設を設けることを嫌がる。
ロシアと隣接するウクライナ東部はロシア語を話す住民が多く暮らし、ロシアとは歴史的なつながりが深い地域である。ウクライナ西部はかつてオーストリア・ハンガリー帝国に帰属し、宗教もカトリックの影響が残っていてロシアからの独立志向が強い地域だ。
つまり同じ国でも東西はまるで分断されている状況となっている。8世紀末から13世紀にかけて、今のウクライナやロシアなどにまたがる地域に「キエフ公国=キエフ・ルーシ」と呼ばれる国家があった。その中心的な都市がウクライナの首都キエフだった。
こうした歴史から、同じソビエトを構成した国のなかでも、ロシアはウクライナに対して特に「同じルーツを持つ国」という意識を強く持っていている。もともと30年前までロシアもウクライナもソビエトという国を構成する15の共和国の1つだった。
ソビエト崩壊後15の構成国はそれぞれ独立して新たな国家としての歩みを始めた。これらの国では新しい国旗や国歌が制定された。ソビエト崩壊から30年たっても、ロシアは同じ国だったという意識がありウクライナへの意識は特別なものがあると言われる。
4) 日本とウクライナの関係
両国の文化交流は両国大使館の文化広報活動を通じて行われているほか、姉妹都市(京都市とキエフ市、横浜市とオデッサ市)の交流等草の根レベルの交流も行われている。
2017年は日本とウクライナとの外交関係樹立25周年に当たり、同年を「ウクライナにおける日本年」と位置づけ、ウクライナ各地で様々な日本文化行事が開催された。
ウクライナ日本国大使館によれば、日本の援助実績は、有償資金協力1,690億円、無償資金協力98億円、金融支援580億円、チェルノブイリ・核不拡散関連支援218億円、技術協力94億円となっている。
東日本大震災の被災地福島市の渡辺実さん(65歳)のもとへ、5年前にウクライナの子ども達から5枚の絵が届いた。首都キエフのほか、東部のドネツクやルガンスクなど総勢約100人の子どもたちが平和への願いを込めて描いたものである。
東日本大震災から11年目の11日、福島市役所のロビーにウクライナの子どもたちが描いた大きな絵が展示た。日本側には福島第一原発と広島の原爆ドーム、ウクライナ側にはチェルノブイリ原発。2つの国が手をつないだ人たちで結ばれている。
絵は静岡県富士宮市で展示された後、11日に福島や東京など5つの都市でそれぞれ1枚ずつ同時に展示された。平和をイメージする29枚で構成された絵はキエフの姉妹都市の京都市に、虹の中で平和に暮らす地球を描いた絵は長崎市の爆心地公園に。
広島の原爆ドームの対岸に展示されたのは、地球上に存在する5つの大陸が1つの木によって支えられている絵である。それぞれの絵の大きさは20世紀を代表する画家・ピカソが戦争に抗議し、その悲惨さを描いた作品「ゲルニカ」と同じ寸法である。